アネモネを君に

野部 悠愛

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気が付きたくなかった

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なんの約束もなかったけれど、
君はずっと隣に居てくれるって思ってた。

______________

君との出会いは、小学校の入学式。
なんで仲良くなったかなんて、今ではもう思い出せないけれど、君はずっと隣にいてくれた。

世界の全てが君でできてた。

それが変わってしまったのは、高学年になってからお互いに忙しくなったからだった。

会えないのが寂しくて、どうしようもなくて、
そんな時に君が他の友達と遊んでるのを見て、
どす黒い塊が胸の奥底から込み上げてきた。

それで一方的に怒ってからは、君はずっとそばに居てくれるようになった。

お互いにお互いしかいない関係は心地よかった。でも、その心地良さの分、君から他の友達を奪ってしまったようで申し訳ないと思いながらも、優越感に浸っていた。

友達への独占欲。

ずっとそう思ってた。

____

高校に入学して半年近くがたった。
何となく入った運動部が思っていたよりきつくて早くも辞めたいと思う今日この頃。

夏休みも終盤だけれど、今年は部活をしていた記憶しかない。
あぁ、でも市内で一番大きな夏祭りに友達と行ったのは楽しかった。

そして今日、部活が終わってから花火大会に行く。それも好きな人と一緒に、2人きりは気まずいから部活の友達とその彼氏が着いてきてくれることになってる。

ずっとずっと友達だと思ってた男の子。

好きって気が付いたら止められなくなって、
とにかく距離を縮めたくて勢いで花火大会に誘った。
隣の市でやる県内でも有名な花火大会だ。

浴衣も出して干してあるから、あとは部活を頑張るだけだ。

……


夏といえば花火!っていうイメージがつくくらい花火って言うものに人は心を踊らせるみたいで、会場に着いた途端に人混みがすごかった。
どこを見ても人しかいない。

花火を見る前に適当に屋台をひやかして行く。

「……人が多いね。」
「おう。普段人多いとこに行かないから新鮮だわ。」
彼は笑っていた。

「………はぐれたら困るから、手ぇ繋ぐ?」
なんて、本当は嘘。はぐれても皆スマホを持ってるからそんなに困らない。

彼はこくりと頷き私の手を取る。
そのまましばらく歩くと人混みを抜けて、人がまばらにしかいなくなった。
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