《完結》私好みのあなた。もう離しませんよ。

ポカポカ妖気

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第3話

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山田先生の笑顔は夢だったと結論付けたがそれからというものの、ついつい山田先生の動向を気にしてしまう自分がいた。


授業中板書する先生。
生徒を指導する先生。
窓から空を眺める先生。
落し物を拾う先生。
生徒の鞄を見る先生。。。ん?鞄?


山田先生の視線を辿ると鞄の一部を凝視している。
正確には持ち手に付いた”ファンシーなウサギのぬいぐるみ”をだ。
一瞬口角が上がりそうになったのをギュッと締め、途端眉間にシワがよった。


(あれ?何か自分を見てる様な既視感が、、、はっ?!ってことはここは見なかった事にしてスルーすべきだ!)
そう思いあたり、サッと視線を逸らし慌てて後ろを向き足早にこの場を去ったのだ。
この時私は背後からの突き刺さる視線に全く気付いていなかったのである。


その後も気づくと山田先生が目に入ってしまい、姿を見つけると自然と目で追ってしまっていた。
そうして改めて先生の行動を見ていると、その行動の真意が見えてきた。


例えば夕子が言っていた生徒を不機嫌に睨みつける行動。
実は生徒の顔をしっかり見て体調不良な子が居ないかをチェックし、居れば声を掛け強引に連行保健室へ。居なければついでとばかりに生徒の可愛い小物をチラ見しては緩みそうな頬をギュッと締め眉間のシワを深くする。


例えば落し物を拾う先生。
破れたり壊れてしまっているもの授業の空き時間に中庭のベンチで綺麗に直し、さり気なく落とし主に返し満足気に眉間のシワを深くする。

窓際の席の私からギリギリ見える位置だったのだが直している時の顔は鬼気迫る顔だったが、時折不器用な微笑みが見え隠れしていた。


(あぁ!!!なんだっアレ!!!可愛い~!!!)


山田先生のそんな姿を見る内に私の中の「可愛いモノを愛でたい」という欲求が満たされるのを感じてきた。
男性に可愛い成分を見出すとは正直思わなかった。
《あれか、ギャップ萌えと言うヤツか!!》
そう結論を出したのだった。




こうして日々山田先生の動向観察をルーティンとしていたある日、朝のホームルーム後にその当人の山田先生から頼み事をされた。なんでも昼食後社会科準備室から授業で使う資料を運んで欲しいとの事らしい。
本日日直だった私は素直に頷いたのであった。


社会科準備室へ向かうと山田先生が先に来ており授業内容の確認をしていた。
朝言っていた資料を取りに来た旨を言うと窓際にあると言うので取りにいき、運ぼうと資料室の出入り口へ向かうと腕を組んだ山田先生が立ちはだかっていた。


どうしたのかと首を傾げ顔を見つめていると、山田先生は眉間にシワがよった表情で私に言ってきた。


「 ーー 何を探ってる?」


低い威圧的な言葉が出てきて一気に空気が凍りついた。


私は最近ストーカー張りに先生に張り付いていたのを気づかれたのだと瞬時に察し、俯いてしまった。何より自分の行動がバレていたことに恥ずかしさや後ろめたさがあり何も言えないでいた。


俯いたまま私が何も答えないので先生は更に言葉を紡いだ。


「べっ、別に怒っている訳ではない。
ただお前がなんの為に俺の事を見ていたのか気になっただけだ。、、、自意識過剰だったなら謝る。」


その言葉を聞きパッと顔を上げると、先生は困ったように眉を下げていた。
多分これは俯いて固まっている私へのフォローなのだろう。
紡いだ言葉は低音で威圧的だったが表情が物語っている。


(先生の表情をちゃんとみていれば真意がわかるんだよな。語彙が直接的過ぎて一見苛ついている様に見えるけど本当は会話する相手をおもんばかっているんだから)


とても不器用な先生を目の当たりにして、これは正直に言わないと先生に失礼だと思い私は素直に話すことにした。
例え私の行動が気持ち悪がられても真摯に向き合わなければいけないと思ったのだ。
だから思い切って先生の目を見て話した。


「すいません、探っていた訳ではありません。ただ先生を見ていました。
怖い顔しながら生徒を気遣っている先生。可愛いモノを見て本当はニンマリしたいのに感情を抑えている先生。落とし物を隠れて直して返す先生。どの先生もとても可愛くて、、、目が離せなかったんです。」



先生は驚いたかの様に目を見開いた。
私は不味い事を言ったのかと焦り、慌てて話を続けた。


「あっ、ストーカーとかではなく私可愛いモノが好きでキュンとくるとつい行き過ぎてしまうと言うか、好きなモノから目を離したく無くなってしまって、、、あれ?やっぱりストーカー??すいません、やっぱりダメですよね、気持ち悪いですよね。。。」


弁解の為早口で話したが次第にしどろもどろになってしまった。
これは確実に不審に思っているだろうと察してしまった。
判決を待つ様に押し黙っていると、先生は眉間にさっきより更に深いシワを寄せ低い声で言ってきた。


「、、、いや、本郷に他意が無いのは分かった。だが、、、俺が、可愛い訳ないだろう。」



そう言っている先生の耳が赤くなっていることに気付いた私は


「可愛い」


と自分がストーカー紛いの事をして反省しなければいけない状況なのに、つい口元を綻ばせてしまったのであった。





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