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幕間 ある男子生徒の独白
しおりを挟む俺はA学園に在籍している三年生だ。
そんな俺は高校生活に夢を見ていた。
高校に上がれば自然と彼女ができると思っていたんだ。
思い描いていたのは幸せな青春の日々。
彼女とイチャイチャ登下校。
昼には彼女特製手作り弁当をあーんと食べさせて貰い、食後は恥ずかしがりながら彼女の膝枕で昼寝。
放課後はリア充デートをし、帰りには別れを惜しん温もりを感じるキスをする。
テスト週間には彼女の家で一緒に勉強。
さらりと解き方を解説し、彼女からの尊敬の眼差しと共に更に愛を深める。
イベント毎にプレゼントを渡し合う理想のカップル。
そんな甘い生活が高校生になれば誰でもできると思っていたんだ。
でも違った。
それが実現するのは一部の選ばれし者だけだったのだ。
俺はどこにでもいるモブ。選ばれるわけがなかったんだ。
絶望した俺はクラブ活動のみに青春を捧げるようになった。目立つクラブでは無い天文学部。
夜空を見れば星座の名前がサラッと出るスペシャリスト。、、が一緒に見るのは自分と同じもさい男子だけ。
彼女がいなきゃこの能力を発揮できないじゃないか。二度目の絶望である。
そんな折、我が校に合併の話が持ち上がった。なんと姉妹校の女子校とうちの共学校が合併すると言うのだ。
願っても無いことだ。
姉妹校は地元屈指のお嬢様学校。可憐でお淑やかなお嬢様方がわんさか居て、彼女達と同じ学舎で過ごせるのだ!!!
男子一同狂喜乱舞のお祭り騒ぎとなった。
男子1対女子3。
これならモブな自分にも彼女持ちとなれるチャンスがある!神様ありがとう!
合併が済み意気揚々と元乙女の花園へ、楽園へ足を踏み入れた!!!
そして俺、いや全男子生徒は
絶望の涙を流した。。。。
我が校は女子至上主義の世界だった。可憐でお淑やか?いやいや今日の女性は逞しかった。
クラスは学校の縮図。女子30人男子10人弱。圧倒的に女子が多い空間では我々男子は居場所が無いのだ。
休み時間になる毎に女子特有のあけすけ無いトークが始まり、男子は教室を後にし男子トイレ前へ移動する。
体育の授業前は超特急で教室を出ないと女子から針のむしろにされてしまう。着替えは女子は教室、男子は校舎から離れた体育館裏の更衣室だからだ。
昼休み、学食組は食堂の日の当たらない隅の隅。弁当購買組は男子トイレ前に集合だ。
そんな所じゃなく好きな所で堂々と食べればいいじゃないか、だって?
いやいや、女子の『何で居るの?出ていって欲しいんだけどー』という冷たい視線(何人かは実際に声に出している)に耐えられる強者は男子にはいない。
そして男子は常に緊張と隣り合わせだった。
重そうな荷物を持っている女子を見かければ率先して代わらなければ、いつの間にか冷ややかな視線と共に悪評が広がってしまう。
イスにスカートで胡座をかいてる女子を見るなんて問題外。
気付かぬふりして教室を出ねばクラスで爪弾きに遭ってしまうのだ。
そこで出てくるのが男子トイレ前。ここは女子が来ない唯一の我々の憩いの場なのだよ。
だがそんな緊張と隣り合わせの日々でもオアシスは確かに存在するんだ。
それは天上から舞い降りた女神。
本郷ゆづ葉様だ。
彼女はこの世のものとは思えない程に美しい。
綺麗な艶のある黒髪をしており、彼女の慈愛のある眼差しに誰もが息を呑む。
彼女は常に優しく微笑みを絶やさない。
男子にも分け隔て無く接してくれる女神だ。
そう例えば彼女の重そうな荷物を代わりに持とうとすれば
『ありがとう、優しいんだね。じゃあ半分お願いしていいかな?』
と言葉を掛け微笑んでくれる。半分で良いとか、お願いしていい?とか、優しいのはあなた様だーーー!
他の女子なんて
『遅ーい、もっと早く声かけてよねー。さっさと持っててー』だ。
優しさのかけらもなくドンっと渡して去っていくのだ。だがめげない。
何故ならそんな様子を我らが女神が慈愛顔で見ていてくれるのだから!!
そしてその後はポンっと肩を叩き
『ありがと。』
と微笑んで頂けるのだ。
女神のためならいくらでも運びます!と逆に男子は我先にと仕事を探している始末。
競争率が高いのだ。
だがクラスメイトとなると倍率は一気に低くなる。チャンスは常に側にあるのだから。
そう、俺は何を隠そう女神と同じクラス。なんと幸運な事だろう。同じ教室で同じ空気を吸えるのだ。
別のクラスの男子から嫉妬に混じり殺気を感じるが、もし刺されたとしても
『わが人生に一片の悔いなし!』
と片手のこぶしを掲げて言えるだろう。
ーーーそう、それまではそんな風に思っていたんだ、、、。
だが!なんと!卒業間近!!!
最後の最後に、女神からバレンタインチョコを賜ったのだ!!
『このクラスになれて本当に良かった。ありがとう。手作りは出来なかったけど気持ちはこもってるからね。
みんな今までありがとう。
これからも宜しくね。』
と一人一人に手渡しだ!
何人かは渡されたと同時に意識を手放して居たが俺は耐えた。耐え抜いた!
この光景を目に焼き付けなければと気力を振り絞ったのだ。
女神と同じクラスだと言うだけで嫉妬する別のクラスの奴らに刺されなくて良かったと心から思った瞬間である。
この光景を目に焼き付けていると教室の外から担任の山センが睨みつける様に見ていた。
その視線の先には我が女神から賜ったチョコレート。
《ははぁん、山センよ。あんた、羨ましいんだね。
だが仕方がない。
あんたには無いんだよ。ふっ、女神の手提げを見てごらん。
もう空っぽさ。》
そんな風に担任を見下していると何故かあちこちの女子から憐れみの視線を一身に受けた。
『馬鹿だねー』
『特別仕様は他と一緒に持ち歩かないし』
『何も気付かないとか、、、だからモテないんだって』
『いや、その方が幸せなんじゃ無い?無駄に傷つかなくて済むし?』
『えっ、でも同窓会とかやったら傷は深くなりそうじゃね?』
何だろう。見えない所にぐりぐり針を刺されて居るこの感覚。
いや、いやいや気のせい気のせい!
ふっ、女子達もこのバレンタインチョコを羨ましがっているのだろう。
このチョコは我が家の家宝にする。
例えチョコが食べ物として朽ちようが一生保管するつもりだ。
喜びに包まれていたが、あと数日で卒業という事実を思い出し気を重くする。
俺は就職組で女神は確か進学組だ。
同じ学校ならまだしも完全なる別々の道。
もうこれで会えなくなると思うと胸が締め付けられる位の痛みを感じる。
だがふと閃いた。
《ん?あっ、そうだ!女神に会う為に毎年同窓会開いちゃえばいいじゃん!なんなら隔月でもアリだな。
学級委員の特権行使するぜ。》
そんな素晴らしい閃きに自分で自分をベタ褒めしながら幸せなバレンタインを満喫したのだった。
その閃きが知りたくも無い事実を明るみにする行為になるなんてこの時の俺は全く知らずに、、、。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は高校生活に夢を見ていた。
夢は夢でしかなく何度も絶望したが、高校生活は全く後悔していない。
むしろ描いていた以上の夢を見させてもらっただろう。
《女神と会わせてくれてありがとーーーー》
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