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最終話 前編
しおりを挟む校門から昇降口まで続く桜並木が満開に咲き誇る本日。
澄み切った青空の下私達は卒業を迎えた。
先程厳かな雰囲気の卒業式が終わり卒業生達は次々と体育館を後にする。
向かうは桜並木。
そこでは卒業生達が後輩や級友達と別れの言葉を交わし合う。
最後の思い出にと写真を撮ったり、制服のボタンを交換したりと別れを惜しんで居る。
もちろん私も桜並木の一角に来ている。
夕子と並んで話して居るとあっという間に人垣が出来ていた。
一際大きな集団となってしまったのは、所謂″お姉様効果″と言うヤツなのだろうか?
瞳を涙で濡らした後輩や同級生達が次々と言葉を掛けてくれた。
「おめでとうございます!
ーーーでもお二人の姿がもうこの学校で見られなくなるなんて、、、うぅっ。。」
「もう泣かないの!お姉様達の門出なんだから!」
「花束を受け取って下さい!二年生一同からです!」
「色紙も受け取って下さい!一年生一同からです。」
「もちろん同級生の私達からもあるわよ。
本当に素敵な三年間だったよ。」
「生徒会からはーーー」
「演劇部からはーーー」
皆それぞれ花束や色紙等多種多様に卒業祝いを私達に贈ってくれた。
そんな彼女達に心からの感謝を述べながら夕子と視線を交わし頷き合う。
「皆ありがとう。
本当はお返しに伝統に則ってブレザーやボタンを渡したかったんだけど生憎数が全く足りないんだ。
だから代わりに私達と写真を撮らない?
これがお礼になるか分からないんだけど、、、私はみんなとの写真が欲しいの。
大好きな学校で大好きなみんなとの思い出を写真に残したいから。
ーーー私の我儘を聞いてくれないかな?」
どんな反応になるか不安に思って居ると、一呼吸置き全員が声を揃えて
「「「はいっ!お願いします!」」」
と快く返事を返してくれた。
そしてそのまま撮影会が開催される運びとなった。
いつの間にかやって来ていた新聞部が撮影係に名乗りを上げ次々と写真を撮影していく。
代わる代わる彼女達が私と並び、満面の笑みで撮影に臨んでいる姿につい顔が綻ぶ。
私は当初みんなから怖がられて居る、避けられているのだと思っていた。
だがそれは私の思い込みだった。
こんな風に慕われていたんだと卒業間近にやっと気付いた。それがどんなに嬉しかった事か。
反面、それに気付くのが遅過ぎたと悔やんでも居る。
彼女達一人一人をしっかりと見ていればもっと早くに打ち解ける事ができただろうに、本当に勿体無い事をした。
だが過ぎてしまった事は仕方がない。
今はこの素敵な時を楽しまなければ。
11時に始まった撮影会が終わりを告げたのは13時過ぎの事。
周りを見渡すと人もまばら。
きっと校舎に残って居る生徒もそのほとんどが帰宅していっただろう。
最後の子達と写真を撮った後新聞部にお礼を告ると、
『こちらこそ素晴らしい被写体をありがとうございました。』
と足早に去っていった。
今から現像に取り掛かるそうで、その顔は満足気だ。
そしてとうとう桜並木に佇む人は私と夕子のみとなる。
「さて、漸く終わったね~。
ふふふっ、人気者は大変だね~ゆづ葉お姉様。」
「あぁそうだね、夕子お姉様。」
不敵な笑顔でお互いがお互いを″お姉様”と呼び合う。
次の瞬間、堪え切れなくなり二人で吹き出し大笑いした。
「「ぷっ、あはははははっ~。」」
落ち着いた所で二人並んで校舎を見上げる。
「本当に卒業しちゃったんだね。
あっという間の三年間だったなぁ。」
「そうだね~。
常にゆづ葉と一緒に居て、時に遠巻きにされたり時に囲まれたり。
ふっ、ゆづ葉のお陰で退屈する暇が無かったわ~。」
「いやいや、人をトラブルメーカーみたいに言わないでよ。」
「何言ってるの?実際トラブルばっかだったじゃん。
もう色々、大変だったんだよ、、、。
私が如何にゆづ葉の為に献身的に動いてきた事か、、、って、なんてね。」
夕子の顔がさっきまでのふざけた表情から目を細め穏やかな表情に変わる。
「ーーー他人を諦めていた私が学校を楽しいって心から感じられたのは、、、今、離れがたいと感じる事が出来るのは、、ゆづ葉が居てくれたからだよ。
ーーー今まで本当に、ありがとう。」
そのまま握手を求める様にスッと右手を差し出してくる。
寂しさを含んだ瞳。差し出されたその手は、震えていた。
これじゃまるで、、、
「、、、お別れみたいな言い方だね。
大学では私は居ないかもしれないけれど、私の席はいつも夕子の隣にあるんだよ?」
差し出された右手に私の左手を重ね、手を繋ぐ。
ここでするのは別れの挨拶じゃ無い。
新たなスタートの第一歩を二人で踏み出す事だ。
「ギリギリの繰上げ合格でビビって恐くなっちゃった?いつも強気の夕子らしくも無い。
何かあればいつでも慰めてあげるから大学も頑張ってみなよ。
違う場所に居ても、違う事をして居てもちゃんと夕子を見ててあげるから。
ーーー親友を信じなさい。」
下を向いた夕子の顔を覗けば目を真っ赤にさせひっそりと涙を流していた。
目が合い私に見られた事に気付いた夕子は左腕の袖で乱暴に涙を拭う。
「っっ!!ふんっ!
繰上げでも合格は合格だもん!
ちょっと勉強のブランクがあり過ぎてやり方忘れてただけで、本当はゆづ葉より頭いいもん!!
大学だってゆづ葉の代わりに楽しんでやるわよ!
楽しすぎてアンタの相手できなくなったらごめんねーーー!
あー、大学楽しみー!!」
憎たらしい口調に反して弱々しい目をしている夕子の頬に手を添える。
「そうそうその意気。
夕子が大学生活を楽しんでくれるのは嬉しいけど、、、私の存在を忘れられるのは、嫌だな。
ーーーだから偶にでもいいから私に構ってね?」
話して居るうちに視界がボヤけ鼻声になってくる。夕子の顔がはっきり見えない。
目を拭いぎこちないであろう笑顔を向けると、夕子も涙でぐちゃぐちゃな笑顔を返してくれた。
「当たり前じゃ無い!!
ーーー私の隣はゆづ葉の席なんでしょ?
ちゃんと逢いに行くし、ゆづ葉も逢いに来なさい!
えいっ!」
デコピンをされその痛みに溜まっていた涙が溢れて出した。
そして止め処なく流れて、止まらない。。
「痛い、なぁ~。うゔ~いたぃ、、、。
夕子、手加減、しっ、てっよ。。」
「べぇー。
私だけ、は不公平だからね~。
、、痛いんでしょ?なら思う存分泣きなよ~。」
そんな風に言われてしまっては止まるモノも止まらない。
声をだして泣きじゃくる。まるで子供だ。
暫く泣き続け、不安と寂しさを纏った涙を全て流してしまう。
そして後に残ったのは、希望だ。
立ち位置が変わったとしても、私達は変わらない。ーーー生涯の親友。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「さぁ、ゆづ葉も泣き止んだし私との時間はこれで終い。
はぁ、泣くって体力使うわ~。
ーーーそろそろ行ってあげたら?
あそこで会う約束してるんでしょ?」
そう言われ中庭の方へ視線を向ける。
想定よりかなり遅くなってしまったがきっと待ってくれて居るだろう。
「うん、行ってくる。」
そう告げればいつもの夕子らしく茶化してくる。
「たっぷりいちゃこらして来なよ~。
もう卒業したんだし枷は無いよ。
まぁ場所が学校って所で若干良心の呵責は生まれるだろうけど、、気にしない気にしない~。」
無責任な言い回しに苦笑いしながら頷いく。
さぁ行こう。
あの人が待っている、あの場所へ。
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