スペリオンズ~異なる地平に降り立つ巨人

バガン

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剣よ花よ その3

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 これで12本目、いや13本目だったか。とにかく斬っては折ってを繰り返してきた。

 「今度は大丈夫だろうか。」
 「そう思うんならちょっとは手加減して振るえ。」
 「戦闘で手加減が必要になるか!」
 「これはテストだっつってんだよ!」
 「テストにだって手は抜かないぜ!」
 「その意気込みを、勉強にも向けてくれるとありがたいのだが・・・。」

 先生のつぶやきを無視して、剣に意識を集中させる。

 「ぬぬぬぬ・・・。」
 「ただ纏わせるだけじゃダメよ。それを飛ばすことを意識させないと。」
 「そうは言われても難しいんだよ・・・。」
 「せっかく雷の刃を使えるのに、近接攻撃にしか使えないんじゃもったいないだろ。」
 「刃の形、刃の形に・・・。」

 今のドロシーには、武器に雷エネルギーを纏わせ、岩をバターのように切るぐらいなら出来るが、その程度はゼノンには出来て当たり前。

 理想的なのは、斬撃を遠方にまで飛ばす『ゼノンスラッシュ』の技。これでもゼノンの中では初歩の初歩だが、使いこなせれば一振りで100人の軍勢を切り伏せるという。

 普通に電気を発しても、四方八方へ散らばってしまい、大したダメージにもならない。シャロンがよく使うショックボルトのように、狙った相手に的確に当てるには、これがなかなか難しい。

 「ドロシー、また余計な力が籠り過ぎてるわよ。」
 「おっと、また折っちまうところだった。」
 「しかし、鉄を溶かすレベルの高圧電流とは恐ろしいな。」

 集中しようとすると、肩から手に、手から剣にどうしても力が入ってしまう。このままじゃまずいと焦ると、余計に力が入る。

 「リラックスせいリラックス。藁人形一体を切り倒すのに、山を崩すほどの威力はいらんだろう?」
 「深呼吸・・・すー・・・はー・・・。」

 大きく息を吸って吐くごとに、剣に纏わせていた力が落ち着いていく。

 「いけるか?ゼノンスラッシュ!」
 「おー・・・けど外したな。」
 「うっせ!でも出来たんだよ!」
 「そうだな、よくやったよくやった。」
 「撫でるな!」

 ポンポンとガイに頭を擦られる。嬉しいが、ちょっと恥ずかしい。

 「でも、まだまだ研ぎ澄ませられるわね。」
 「そうねど刃が拡散しすぎて、斬撃としての威力は無いけれど、けどハンマーとしての威力はありそうね。」
 「なるほど、それはそれでいいかもしれないわね。」

 オカマふたりがなにやら相談している。練習に付き合ってくれたり、アドバイスをくれたり、この二人にも感謝だ。

 「ところで、今度は壊さなかったろガイ?あれ、ガイは?」
 「ガイはエリーゼに呼ばれて行っちゃったわよ。」
 「妙に嬉しそうだった。」
 「ふーん・・・。」

 その言葉に、ドキッと心臓が痛くなった。それと同時に、さっきまで壊れていなかった剣が折れてしまった。

 「あっ・・・しまった。またやっちまった。」

 これで14本目。

 「どうやらこっちにも一波乱ありそうね。」
 「青春ね。」
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