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Liebe guard
14話 作戦室にて
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『城塞都市ゼレスティア』は、建国するまでは何もないただの丘陵地帯だった。
高さ20ヤールト余りもあるゲートを城郭として建設し、次いで王宮とを囲む様に市街地を並べた構造となっている。
ゲートがある他の『剣鎧都市ガストニア』などは、元々が集落や村であったため、時代と共に発展し『都市』として発展するようになってからゲートを建設していた。
ゼレスティアが“城塞都市”と冠される所以は、ゲートありきで建国されたのがゼレスティアのみだったからだ。
そして、丘の一番高い位置に聳え立つ王宮こそが、ゼレスティアの心臓部となる。
“要塞”と呼ぶにふさわしい程に堅固に造られたその王宮には、マルロスローニ家が住まうだけでなく国軍の主戦力であり中核を担う、親衛士団の作戦室があった――。
◇◆◇◆
「サクリウス、ワインロック。ただいま帰還した」
重鉄で出来た両開きの扉から、二人が作戦室に足を踏み入れる。
大理石で造られた、学園の教室ほどの広さを誇る作戦室。
室内には高級そうなソファーやテーブル、団士達が武器を立て掛ける鉄製の台などが置かれていた。
「ご苦労、成果を聞かせてくれ」
そして部屋の最奥。
ゼルコーバの木で造られたデスクが置かれ、同様の材質の椅子に腰掛けたバズムントが、二人に任務の成果を尋ねた。
「あれ、なんでバズムントがそこ座ってんのー? 団長は?」
「ヴェルスミスならビナルファとシングラルを連れてガストニアで任務だ。ゼレスティアの使者としてのな。あと数日は帰って来んぞ」
親衛士団の長であるヴェルスミスが留守の際は、副団長のバズムントが作戦指令のイスに座ることになっていた。
「まーた、外交任務ね。最近団長多いなー」
「おいおい、口を慎めよサクリウス。仕方ないだろう? 近い内に大々的な掃討作戦があるんだ。気難しい性格の騎士達が集うガストニアと共同戦線を張るなら、団長自らがあちらさんへと話し合いに出向くのが一番効果的なんだ」
ヴェルスミスと話したがっていたサクリウスは皮肉混じりに拗ねてみせるが、扱いに慣れているバズムントが論理的に嗜めた。
「それで、お前さん方の成果はどうだったんだ? まだ何も聞いてないぞ?」
「まぁ、いつも通り。滞りなく終わったわ」
「僕も、特には無かったかなあ」
サクリウスが報告し、ワインロックもそれに続く。
「そうか、なら良し! 今日はもう帰っていいぞ。メシでも食ってこい」
「んじゃ、お先に~」
ワインロックはそう告げると、一足早く作戦室を後にした。
「そういえば、オリネイはどうした? 一緒に行ったんじゃなかったのか?」
「あーー、えーと……アイツは体調が優れないとかなんとか言ってたから先に帰らせたわ」
『授業を放棄して遊びに出掛けていた』
なんて報告をすると、連帯責任で説教されることを承知していたサクリウス。やや苦し紛れではあるが、嘘の報告をしたのだ。
「そうか……。まあ、女性は色々大変な面もあるからな」
(そうじゃねえんだけどな~、まーバレてないならいいかぁ……)
適当に取り繕った嘘がバレずに済み、サクリウスが胸を撫で下ろす。
「……そういや、今日は何も愚痴って来ないんだな」
「ん?」
報告が終わり、帰ろうとドアの持ち手に片手をかけたサクリウス。
バズムントに言われ、手が止まる。
「お前さん、いつもなら授業の帰りは”こんな仕事やるだけ無駄だ“とか、よく言ってたじゃないか」
「あーーーーー」
『思い返せばそうだったな』
と、過去の自分を振り返るサクリウスだったが、アウルについてはまだ様子見で居るつもりだった。
”ピースキーパー”という出自が話を面倒なことにすると思っていたので、敢えて触れないようにしていた。
それに話をするならバズムントではなく、直接ヴェルスミスにした方が有意義だろうと踏んでいたのだ。
「……そーだっけ?」
シラを切る。
その反応を見たバズムントは、少しだけ不審に思う――が。
直後に作戦室の扉がバンッと勢いよく開かれ、サクリウスは右半身を強打してしまう。
「あーイライラする! なんなのあの男!? アタシが軍の人間って知った途端お店の代金すら払わないで……! アタシは財布じゃないっての! もう最ッ悪!」
デートをしてきた相手に対し、愚痴を吐き捨てながら作戦室に入って来た女性。
明るい金髪にキツめの化粧。メリハリのついた扇情的な体つき。素肌の露出が多い際どい服装――。
彼女こそが、第15団士であるオリネイ・メデュープだった。
「あら、サクリウス。そんなところでなにやってんのよ」
「おま……痛てーし、入ってくるタイミング考えろよ……!」
オリネイは自分の仕業だということに気付かず、痛みに悶えるサクリウスを不思議に捉える。
「オリネイ、お前さん……体調が良くないからって先に帰ってたんじゃないのか?」
ガタッと席を立ち、バズムントは怪訝そうな表情で彼女に尋ねる。
「ハァ? 誰がいつそんなこと言ったのよ。アタシは今日ずっと……あ!」
遊んできた男への怒りで、本日の本来の任務をすっかりと忘れていたオリネイ。
尋ねられ、今になって思い出してしまう。
(さ、サクリウス……!)
ヨロヨロとしながら立ち上がろうとするサクリウスに、オリネイはアイコンタクトで助けを求める。
(
(せっかく俺が上手く誤魔化しといたってのに………台無しじゃねーか!)
サクリウスは言葉には出さず、眼力だけでそう威圧した――が。
「サクリウス。今すぐワインロックを連れ戻してこい。これは一体どういうことなのか、三人で説明してもらおうか……」
根が真面目な上に、仕事第一でもあるバズムント。
性格上、部下の不手際に対し人一倍厳しかったのだ。
(あーー、今日はもう帰れねえな。なんて日だよ畜生……)
その後、ワインロックを含めた団士三人にバズムントの雷が落ちた――。
高さ20ヤールト余りもあるゲートを城郭として建設し、次いで王宮とを囲む様に市街地を並べた構造となっている。
ゲートがある他の『剣鎧都市ガストニア』などは、元々が集落や村であったため、時代と共に発展し『都市』として発展するようになってからゲートを建設していた。
ゼレスティアが“城塞都市”と冠される所以は、ゲートありきで建国されたのがゼレスティアのみだったからだ。
そして、丘の一番高い位置に聳え立つ王宮こそが、ゼレスティアの心臓部となる。
“要塞”と呼ぶにふさわしい程に堅固に造られたその王宮には、マルロスローニ家が住まうだけでなく国軍の主戦力であり中核を担う、親衛士団の作戦室があった――。
◇◆◇◆
「サクリウス、ワインロック。ただいま帰還した」
重鉄で出来た両開きの扉から、二人が作戦室に足を踏み入れる。
大理石で造られた、学園の教室ほどの広さを誇る作戦室。
室内には高級そうなソファーやテーブル、団士達が武器を立て掛ける鉄製の台などが置かれていた。
「ご苦労、成果を聞かせてくれ」
そして部屋の最奥。
ゼルコーバの木で造られたデスクが置かれ、同様の材質の椅子に腰掛けたバズムントが、二人に任務の成果を尋ねた。
「あれ、なんでバズムントがそこ座ってんのー? 団長は?」
「ヴェルスミスならビナルファとシングラルを連れてガストニアで任務だ。ゼレスティアの使者としてのな。あと数日は帰って来んぞ」
親衛士団の長であるヴェルスミスが留守の際は、副団長のバズムントが作戦指令のイスに座ることになっていた。
「まーた、外交任務ね。最近団長多いなー」
「おいおい、口を慎めよサクリウス。仕方ないだろう? 近い内に大々的な掃討作戦があるんだ。気難しい性格の騎士達が集うガストニアと共同戦線を張るなら、団長自らがあちらさんへと話し合いに出向くのが一番効果的なんだ」
ヴェルスミスと話したがっていたサクリウスは皮肉混じりに拗ねてみせるが、扱いに慣れているバズムントが論理的に嗜めた。
「それで、お前さん方の成果はどうだったんだ? まだ何も聞いてないぞ?」
「まぁ、いつも通り。滞りなく終わったわ」
「僕も、特には無かったかなあ」
サクリウスが報告し、ワインロックもそれに続く。
「そうか、なら良し! 今日はもう帰っていいぞ。メシでも食ってこい」
「んじゃ、お先に~」
ワインロックはそう告げると、一足早く作戦室を後にした。
「そういえば、オリネイはどうした? 一緒に行ったんじゃなかったのか?」
「あーー、えーと……アイツは体調が優れないとかなんとか言ってたから先に帰らせたわ」
『授業を放棄して遊びに出掛けていた』
なんて報告をすると、連帯責任で説教されることを承知していたサクリウス。やや苦し紛れではあるが、嘘の報告をしたのだ。
「そうか……。まあ、女性は色々大変な面もあるからな」
(そうじゃねえんだけどな~、まーバレてないならいいかぁ……)
適当に取り繕った嘘がバレずに済み、サクリウスが胸を撫で下ろす。
「……そういや、今日は何も愚痴って来ないんだな」
「ん?」
報告が終わり、帰ろうとドアの持ち手に片手をかけたサクリウス。
バズムントに言われ、手が止まる。
「お前さん、いつもなら授業の帰りは”こんな仕事やるだけ無駄だ“とか、よく言ってたじゃないか」
「あーーーーー」
『思い返せばそうだったな』
と、過去の自分を振り返るサクリウスだったが、アウルについてはまだ様子見で居るつもりだった。
”ピースキーパー”という出自が話を面倒なことにすると思っていたので、敢えて触れないようにしていた。
それに話をするならバズムントではなく、直接ヴェルスミスにした方が有意義だろうと踏んでいたのだ。
「……そーだっけ?」
シラを切る。
その反応を見たバズムントは、少しだけ不審に思う――が。
直後に作戦室の扉がバンッと勢いよく開かれ、サクリウスは右半身を強打してしまう。
「あーイライラする! なんなのあの男!? アタシが軍の人間って知った途端お店の代金すら払わないで……! アタシは財布じゃないっての! もう最ッ悪!」
デートをしてきた相手に対し、愚痴を吐き捨てながら作戦室に入って来た女性。
明るい金髪にキツめの化粧。メリハリのついた扇情的な体つき。素肌の露出が多い際どい服装――。
彼女こそが、第15団士であるオリネイ・メデュープだった。
「あら、サクリウス。そんなところでなにやってんのよ」
「おま……痛てーし、入ってくるタイミング考えろよ……!」
オリネイは自分の仕業だということに気付かず、痛みに悶えるサクリウスを不思議に捉える。
「オリネイ、お前さん……体調が良くないからって先に帰ってたんじゃないのか?」
ガタッと席を立ち、バズムントは怪訝そうな表情で彼女に尋ねる。
「ハァ? 誰がいつそんなこと言ったのよ。アタシは今日ずっと……あ!」
遊んできた男への怒りで、本日の本来の任務をすっかりと忘れていたオリネイ。
尋ねられ、今になって思い出してしまう。
(さ、サクリウス……!)
ヨロヨロとしながら立ち上がろうとするサクリウスに、オリネイはアイコンタクトで助けを求める。
(
(せっかく俺が上手く誤魔化しといたってのに………台無しじゃねーか!)
サクリウスは言葉には出さず、眼力だけでそう威圧した――が。
「サクリウス。今すぐワインロックを連れ戻してこい。これは一体どういうことなのか、三人で説明してもらおうか……」
根が真面目な上に、仕事第一でもあるバズムント。
性格上、部下の不手際に対し人一倍厳しかったのだ。
(あーー、今日はもう帰れねえな。なんて日だよ畜生……)
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