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High voltage
46話 必要
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――AM12:50、フルコタ市。アルセア教会、聖堂地下。
地中を掘り、岩盤を綺麗に均し、坑道のように整備された地下空間。
ここが、天使教のゼレスティアに於ける活動拠点となる。
拠点内部は、鉄扉に閉ざされた部屋がいくつもあった。その中でも一際広く、王宮の庭ほどの広さを誇る空間。
灯飾の類いは一切設置されておらず、部屋を囲うように並べ立てられた松明だけが、僅かに空間を照らす。
部屋の最奥には玉座の如く古びた木製の台が置かれ、そこに座る者へ信者数十人が地べたに跪き、小声で天使言語を紡ぎながら祈りを捧げている。
天使教にとっての"聖堂"がここなのだ。
足組みの姿勢で少女が台の上に座している。
爬虫類のような真紅の瞳。
肩程まで伸ばしたブロンドの髪に、素肌の露出度が高いデザインの鱗鎧。
鎧を形成している鱗の一つ一つが、硬質な光沢を輝き放つ。
材質となっている鱗は何百年も前に絶滅したと言われている、竜族の鱗で拵えた物だとか。
枚挙した点だけでも少女が異質な存在だという事は大いに理解はできるが、中でも目を引くのが肘から指先にかけて赤黒く染まった両腕だ。
今まで殺めてきた人間の血で染め上げたかのようなその色は、細腕ながらも禍々しい暴虐性を充分過ぎるほどに孕んでいた――。
「……ほう、今オマエが手に持ってるそれが、あたい達と同等の強さを得ることができるって薬なのか?」
座ったままの少女が、側近であるかのように傍らで立つワインロックへ。
「それは所詮"謳い文句"だよ、クィン。実際のところは魔神の血と向精神薬を混ぜただけの代物に過ぎない。飲んだところで、キミ達"上位魔神"の足元にすら及びもしないさ」
数日前に彼がピリムへ渡した物と同様の、錠剤が入った小瓶。それを軽く上に放り投げてはキャッチ、という動作を何度も繰り返しながら、ワインロックが答える。
「はっ、そりゃそうだ。ヒト族程度の叡知では、何世紀かけてもあたい達の領域には辿り着けやしないだろうからね」
"クィン"と呼ばれた魔神の少女は、並び跪く信者達を嘲笑し、侮蔑の眼差しで見下ろしながらそう告げた。
「それはそうと、ワインロック」
呼んだと同時に、突如として真顔となった少女。
「わかっているよ、クィン。今月分の贄だね」
「毎度のこと、わざわざ同胞に無理を言って転送してもらっているんだ。そんなあたいに対して、血だけ頂いてサヨナラってワケにはいかないよなあ?」
「もちろんさ」
あどけなさを残す顔付きながら、殺気を孕んだ凍てつくような笑みを浮かべる少女に対し、柔和な表情で臆することなく応じたワインロック。
彼は聖堂の脇に構えられた部屋を向くと、パチンと指を鳴らしてみせた。
軋んだ音を立てて鉄扉が開かれる。
開いた先には、両手首を荒縄で結び、頭から被るように顔を白い布で覆った人物が姿を現した。
「づjっklfyっkgcヴぉsdyjlおgxっshgび~~」
その人物は、くぐもった声で呪詛のように天使言語を口走りそのまま聖堂内へ足を踏み入れると、素足でクィンの目の前までひたひたと歩み寄る。
「ふむ、マナに満ち溢れた良い香りがするな。とても――」
値踏みでもするかのように、眼前に立つ人物の頭から爪先までをじっくりと見定める少女。
「――"おいしそう"だ」
ありのままの感想を漏らしたその口の端からは、恥ずかしげもなくじゅるりと涎を垂らしている。
たった今、贄と呼ばれクィンの目の前に差し出されたこの人物は、正真正銘の人間となる。
クィンは月に一度、転送術でここに現れ、自らの血を提供する代わりに生きた人間を食料として受け取っていた。
ちなみにワインロックが調達してくる人間は、ゼレスティア軍が管理している刑務所に収監された死刑囚。
刑務所の所長も彼に――ひいては教団に与する者で、死刑という名目で身柄を秘密裏で受け渡し、薬漬けにしてから囚人を少女に提供していたのだった。
松明の中の火種が弾ける音が響いて聴こえる程の張りつめた静寂に、人間の体を囓る咀嚼音が不快感を付加する。
「ふふふ……やっぱり生きた人間を喰らうのが一番舌に合うな」
「お気に召してくれたようで何よりだよ――」
尻餅をつけて機嫌良く食事を摂る少女の背中にワインロックがそう告げると、地鳴りのような音が聖堂中に響き渡る。
衝撃音の発信源は、聖堂から真上に位置する地上――教会からだ。
土でできた天井からは、衝撃によってぱらぱらと砂が粉雪のように降る。
「……地上で何かが起きてるみたいだね、侵入者かな?」
天井を見上げ、ワインロックが呟く。
「厄介事ならあたいが手を貸そうか?」
口の回りをべっとりと血で塗れさせた少女が振り向き、提案する。
「大丈夫だよ。僕たちで何とかする。それにキミがひとたび表に出て力を奮ってしまっては、国の存亡に関わるレベルでの惨事になってしまう。僕もそれだけはご勘弁願いたいからね」
少女に対し、ワインロックがキッパリと断る。
「ふふ……そうか。しかし、ワインロック。やはりオマエは面白いヤツだな。天使教の人間でありながらも、あたい達にへりくだることなく、媚も売らず、対等に接しようとする。前々から気になってたが、一体何が目的なんだ? ヒト族の滅亡を望んでいるんじゃないのか?」
返答次第では首が胴体から切り離されてもおかしくない問い掛け。
しかし彼は薄笑みを絶やすことなく、臆することなく、なんの気兼ねもなく答えてみせる。
「目的? そんな大層な物は持ち合わせていないよ。ただ僕はね、クィン。魔神族の事も、僕達人間の事も、好きで好きでたまらないんだ――」
◇◆◇◆
――アーカム市、東門前広場。
オープンカフェや屋台の出店などで、平日であるにも関わらず賑わうこの区画。
現在の時刻は13時台に差し掛かる頃。
本来であれば勤務中である時間帯なのだが、ピリムはアイネを半ば無理矢理連れ出すような形で遊びに来ていたのだった。
「ホラ見てよ。アイネの大好きな"フェニーズ"のクレープ屋さんだよ! やっぱり平日のこの時間だと空いてるね~! ね、食べようよアイネ」
心の奥底から溢れ出る"楽しい"という感情。
それを存分に剥き出しにしたピリムが、屋台を指差しながら手を繋ぐアイネへと伝える。
「うんっ! 食べよー!」
誘いに対し、満面の笑みで応えるアイネ。
少女はバズムントから与えられた任務を放棄し、ピリムと共にここぞとばかりに幸せな一時を満喫していたのだ。
(うーん! やっぱりピリムと一緒にいるのは楽しいなぁ!)
意図せず口元が綻び、目尻が垂れ下がる。
ピリムと一緒に居てしまうと、表情はともかく心も緩んでしまう。
それほど、アイネはピリムを敬愛していたのだ。
(――って私のバカ! ダメだってば……!)
しかし、その親友が殺人に手を染めてしまったという事実。
『出来心』や『仕方ない』の言葉で片付けてしまってはいけない。
『殺人』は勿論、『親殺し』は当然重罪だ。
誘われるがまま一緒に愉しんでいてはダメだ、と我に返り、自身の行いをアイネは悔いた。
(ピリムに、ちゃんと言わなきゃ……)
そう意を決したアイネは、屋台へと向かう足をピタリと止める。
「……アイネ、どうしたの?」
手を繋いでいた相手の足が止まったことに気付き、ピリムが振り向く。
「やっぱりダメだよ……ピリム」
「なにが?」
友人の口からこぼれた咎める言葉に対し、ピリムは表情を変えず。
アイネは湧き出る笑顔をどうにか圧し殺し、シリアスに話を切り出す。
「ピリムのママさん、殺す……必要、あったのかな……?」
「どうしてそんな事きくの? アタシを困らせる存在を殺しただけだよ? それの何がいけないの?」
善悪の区別もつかず、開ききった瞳孔で笑む少女。
言っている内容もそうだが、明らかに現在のピリムの状態は普通では無かった。
だが愛する友人がしでかした罪に対し、アイネは目を背けずに立ち向かう。
「いけない事だよ……! 私、もうお父さんもお母さんもずっと前からいないし、親子の愛情とか良くわかんないけど……。自分の親は大事にしなきゃいけないって事くらいわかるよ……!」
視線を合わせ、探り探りで言葉を選ぶアイネ。
それと同時にこれまでのピリムと共に過ごした時間に、思いを馳せる。
(ピリムのさっきの言葉、すごく嬉しかったなあ)
「何言ってるの? アタシを困らせる人間が一人減ったんだよ? アイネも嬉しいでしょ? アタシのこと……大好きでしょ?」
(私の事を必要、って言ってくれた)
「……大好きだよ! 大好きだけど……ダメなものはダメだよ」
(ねえ、ピリムはおぼえてるかな?)
「大好きなら、それでいいじゃん。これからもずっと一緒に居ようよ、アイネ」
(学園に入学したての頃、私は魔女族とのハーフだから、っていう理由だけでみんなからずっと気味悪がられてたこと……)
「私だって……ピリムとずっと一緒に居たいよ……でも」
(いつもへらへらしてて、無視され続けても明るく振る舞う私に、一番最初に話し掛けて、一番最初に友達になってくれて、みんなの輪に入れてくれたのが、ピリムだったんだよ?)
「大好きだからこそ……やっちゃいけない事を許しちゃダメなんだよ? それが……」
(こんな私を救ってくれて、ありがとピリム。今度は、私がピリムを救う番だよ。私はピリムの一番の――)
「友達だもん……!」
少女は意志を以て訴え、反省を促す。
口元から零れ出そうになる笑みを我慢し、必死に、懸命に。
しかし、その訴えはピリムの心に届く事は無かった――。
「……ふーん。そっか、わかったよ」
ふと、ピリムの顔から笑みが消え失せる。
「じゃあ……もうアイネも"いらない"」
その口振りはまるで、幼い子供が機嫌を損ねて玩具でも捨てるかのよう。
少女はそれだけを簡単に告げると、繋いでない方の手をアイネへと向け――。
(――"イグニート"――)
念じで、火術を唱えて見せたのだ。
「――!!」
身体中を駆け巡るマナが豪炎となって迸り、アイネを襲った――。
地中を掘り、岩盤を綺麗に均し、坑道のように整備された地下空間。
ここが、天使教のゼレスティアに於ける活動拠点となる。
拠点内部は、鉄扉に閉ざされた部屋がいくつもあった。その中でも一際広く、王宮の庭ほどの広さを誇る空間。
灯飾の類いは一切設置されておらず、部屋を囲うように並べ立てられた松明だけが、僅かに空間を照らす。
部屋の最奥には玉座の如く古びた木製の台が置かれ、そこに座る者へ信者数十人が地べたに跪き、小声で天使言語を紡ぎながら祈りを捧げている。
天使教にとっての"聖堂"がここなのだ。
足組みの姿勢で少女が台の上に座している。
爬虫類のような真紅の瞳。
肩程まで伸ばしたブロンドの髪に、素肌の露出度が高いデザインの鱗鎧。
鎧を形成している鱗の一つ一つが、硬質な光沢を輝き放つ。
材質となっている鱗は何百年も前に絶滅したと言われている、竜族の鱗で拵えた物だとか。
枚挙した点だけでも少女が異質な存在だという事は大いに理解はできるが、中でも目を引くのが肘から指先にかけて赤黒く染まった両腕だ。
今まで殺めてきた人間の血で染め上げたかのようなその色は、細腕ながらも禍々しい暴虐性を充分過ぎるほどに孕んでいた――。
「……ほう、今オマエが手に持ってるそれが、あたい達と同等の強さを得ることができるって薬なのか?」
座ったままの少女が、側近であるかのように傍らで立つワインロックへ。
「それは所詮"謳い文句"だよ、クィン。実際のところは魔神の血と向精神薬を混ぜただけの代物に過ぎない。飲んだところで、キミ達"上位魔神"の足元にすら及びもしないさ」
数日前に彼がピリムへ渡した物と同様の、錠剤が入った小瓶。それを軽く上に放り投げてはキャッチ、という動作を何度も繰り返しながら、ワインロックが答える。
「はっ、そりゃそうだ。ヒト族程度の叡知では、何世紀かけてもあたい達の領域には辿り着けやしないだろうからね」
"クィン"と呼ばれた魔神の少女は、並び跪く信者達を嘲笑し、侮蔑の眼差しで見下ろしながらそう告げた。
「それはそうと、ワインロック」
呼んだと同時に、突如として真顔となった少女。
「わかっているよ、クィン。今月分の贄だね」
「毎度のこと、わざわざ同胞に無理を言って転送してもらっているんだ。そんなあたいに対して、血だけ頂いてサヨナラってワケにはいかないよなあ?」
「もちろんさ」
あどけなさを残す顔付きながら、殺気を孕んだ凍てつくような笑みを浮かべる少女に対し、柔和な表情で臆することなく応じたワインロック。
彼は聖堂の脇に構えられた部屋を向くと、パチンと指を鳴らしてみせた。
軋んだ音を立てて鉄扉が開かれる。
開いた先には、両手首を荒縄で結び、頭から被るように顔を白い布で覆った人物が姿を現した。
「づjっklfyっkgcヴぉsdyjlおgxっshgび~~」
その人物は、くぐもった声で呪詛のように天使言語を口走りそのまま聖堂内へ足を踏み入れると、素足でクィンの目の前までひたひたと歩み寄る。
「ふむ、マナに満ち溢れた良い香りがするな。とても――」
値踏みでもするかのように、眼前に立つ人物の頭から爪先までをじっくりと見定める少女。
「――"おいしそう"だ」
ありのままの感想を漏らしたその口の端からは、恥ずかしげもなくじゅるりと涎を垂らしている。
たった今、贄と呼ばれクィンの目の前に差し出されたこの人物は、正真正銘の人間となる。
クィンは月に一度、転送術でここに現れ、自らの血を提供する代わりに生きた人間を食料として受け取っていた。
ちなみにワインロックが調達してくる人間は、ゼレスティア軍が管理している刑務所に収監された死刑囚。
刑務所の所長も彼に――ひいては教団に与する者で、死刑という名目で身柄を秘密裏で受け渡し、薬漬けにしてから囚人を少女に提供していたのだった。
松明の中の火種が弾ける音が響いて聴こえる程の張りつめた静寂に、人間の体を囓る咀嚼音が不快感を付加する。
「ふふふ……やっぱり生きた人間を喰らうのが一番舌に合うな」
「お気に召してくれたようで何よりだよ――」
尻餅をつけて機嫌良く食事を摂る少女の背中にワインロックがそう告げると、地鳴りのような音が聖堂中に響き渡る。
衝撃音の発信源は、聖堂から真上に位置する地上――教会からだ。
土でできた天井からは、衝撃によってぱらぱらと砂が粉雪のように降る。
「……地上で何かが起きてるみたいだね、侵入者かな?」
天井を見上げ、ワインロックが呟く。
「厄介事ならあたいが手を貸そうか?」
口の回りをべっとりと血で塗れさせた少女が振り向き、提案する。
「大丈夫だよ。僕たちで何とかする。それにキミがひとたび表に出て力を奮ってしまっては、国の存亡に関わるレベルでの惨事になってしまう。僕もそれだけはご勘弁願いたいからね」
少女に対し、ワインロックがキッパリと断る。
「ふふ……そうか。しかし、ワインロック。やはりオマエは面白いヤツだな。天使教の人間でありながらも、あたい達にへりくだることなく、媚も売らず、対等に接しようとする。前々から気になってたが、一体何が目的なんだ? ヒト族の滅亡を望んでいるんじゃないのか?」
返答次第では首が胴体から切り離されてもおかしくない問い掛け。
しかし彼は薄笑みを絶やすことなく、臆することなく、なんの気兼ねもなく答えてみせる。
「目的? そんな大層な物は持ち合わせていないよ。ただ僕はね、クィン。魔神族の事も、僕達人間の事も、好きで好きでたまらないんだ――」
◇◆◇◆
――アーカム市、東門前広場。
オープンカフェや屋台の出店などで、平日であるにも関わらず賑わうこの区画。
現在の時刻は13時台に差し掛かる頃。
本来であれば勤務中である時間帯なのだが、ピリムはアイネを半ば無理矢理連れ出すような形で遊びに来ていたのだった。
「ホラ見てよ。アイネの大好きな"フェニーズ"のクレープ屋さんだよ! やっぱり平日のこの時間だと空いてるね~! ね、食べようよアイネ」
心の奥底から溢れ出る"楽しい"という感情。
それを存分に剥き出しにしたピリムが、屋台を指差しながら手を繋ぐアイネへと伝える。
「うんっ! 食べよー!」
誘いに対し、満面の笑みで応えるアイネ。
少女はバズムントから与えられた任務を放棄し、ピリムと共にここぞとばかりに幸せな一時を満喫していたのだ。
(うーん! やっぱりピリムと一緒にいるのは楽しいなぁ!)
意図せず口元が綻び、目尻が垂れ下がる。
ピリムと一緒に居てしまうと、表情はともかく心も緩んでしまう。
それほど、アイネはピリムを敬愛していたのだ。
(――って私のバカ! ダメだってば……!)
しかし、その親友が殺人に手を染めてしまったという事実。
『出来心』や『仕方ない』の言葉で片付けてしまってはいけない。
『殺人』は勿論、『親殺し』は当然重罪だ。
誘われるがまま一緒に愉しんでいてはダメだ、と我に返り、自身の行いをアイネは悔いた。
(ピリムに、ちゃんと言わなきゃ……)
そう意を決したアイネは、屋台へと向かう足をピタリと止める。
「……アイネ、どうしたの?」
手を繋いでいた相手の足が止まったことに気付き、ピリムが振り向く。
「やっぱりダメだよ……ピリム」
「なにが?」
友人の口からこぼれた咎める言葉に対し、ピリムは表情を変えず。
アイネは湧き出る笑顔をどうにか圧し殺し、シリアスに話を切り出す。
「ピリムのママさん、殺す……必要、あったのかな……?」
「どうしてそんな事きくの? アタシを困らせる存在を殺しただけだよ? それの何がいけないの?」
善悪の区別もつかず、開ききった瞳孔で笑む少女。
言っている内容もそうだが、明らかに現在のピリムの状態は普通では無かった。
だが愛する友人がしでかした罪に対し、アイネは目を背けずに立ち向かう。
「いけない事だよ……! 私、もうお父さんもお母さんもずっと前からいないし、親子の愛情とか良くわかんないけど……。自分の親は大事にしなきゃいけないって事くらいわかるよ……!」
視線を合わせ、探り探りで言葉を選ぶアイネ。
それと同時にこれまでのピリムと共に過ごした時間に、思いを馳せる。
(ピリムのさっきの言葉、すごく嬉しかったなあ)
「何言ってるの? アタシを困らせる人間が一人減ったんだよ? アイネも嬉しいでしょ? アタシのこと……大好きでしょ?」
(私の事を必要、って言ってくれた)
「……大好きだよ! 大好きだけど……ダメなものはダメだよ」
(ねえ、ピリムはおぼえてるかな?)
「大好きなら、それでいいじゃん。これからもずっと一緒に居ようよ、アイネ」
(学園に入学したての頃、私は魔女族とのハーフだから、っていう理由だけでみんなからずっと気味悪がられてたこと……)
「私だって……ピリムとずっと一緒に居たいよ……でも」
(いつもへらへらしてて、無視され続けても明るく振る舞う私に、一番最初に話し掛けて、一番最初に友達になってくれて、みんなの輪に入れてくれたのが、ピリムだったんだよ?)
「大好きだからこそ……やっちゃいけない事を許しちゃダメなんだよ? それが……」
(こんな私を救ってくれて、ありがとピリム。今度は、私がピリムを救う番だよ。私はピリムの一番の――)
「友達だもん……!」
少女は意志を以て訴え、反省を促す。
口元から零れ出そうになる笑みを我慢し、必死に、懸命に。
しかし、その訴えはピリムの心に届く事は無かった――。
「……ふーん。そっか、わかったよ」
ふと、ピリムの顔から笑みが消え失せる。
「じゃあ……もうアイネも"いらない"」
その口振りはまるで、幼い子供が機嫌を損ねて玩具でも捨てるかのよう。
少女はそれだけを簡単に告げると、繋いでない方の手をアイネへと向け――。
(――"イグニート"――)
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身体中を駆け巡るマナが豪炎となって迸り、アイネを襲った――。
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