記憶の先で笑うのは

いーおぢむ

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怒りと真実と決心

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トヴァがこのピリザから旅立って数週間。
あれから、俺は魔法の猛勉強を始めた。
トヴァともう一度一緒にいる為には、今年トヴァが入学するはずのドラッヘ魔術学園に入学するしかないと思ったからだ。

年齢的にトヴァより一つ歳下の俺は、仮に入学出来たとしても、一年しか一緒にいられないとは思うけど、それでも全く一緒にいられない今よりは断然マシだ。

ただ俺の場合、生まれた時から魔力は皆無で、先ず "どうやったら魔力持ちになれるのか" の方法から探る必要があった。そもそも、そんな方法が存在するのかさえ分からないどころか、ピリザには魔力持ちが一人もいないので、相談する事もアドバイスを請う事もできない。

溜め息しかでなかった。

イゥとトヴァの仲がギクシャクし出した辺りから、俺はイゥとエイと遊ぶ頻度が減っていき、最近では勉強に時間を割きたいという事もあり、全く遊んでいない。

貯金していた小遣いはほぼ全て、勉強する為の本に費やした。毎日一人でいるようになった俺を心配してか、家族は勿論、兄貴気取りのイゥがたまには遊ぼうと誘ってきたが、全て断っている。

だって俺にはそんな事にかまけている暇なんてないんだ。学園に入学するなら、あと約一年しかないのに、魔力すら持っていないのだから。



イゥもエイも、トヴァがもうこの町にいない事を知らない。

レイは、トヴァの想いも事情も知らず、のうのうと過ごしてきたイゥやエイに静かな怒りを抱いていた。その所為か、イゥのことを兄付けで呼ぶことはなくなっていた。

考えるのはいつもトヴァのことで、何故か、雨が降る度トヴァが悲しんでいるんじゃないかと感じたし、家の中での勉強に飽きれば、ショルダーバッグに勉強道具を一式詰め込んでトヴァとよく遊んだ湖畔に出向き、そのほとりで勉強する事もある。このトヴァとの思い出の場所にいれば、少しだけでも思い出の中のトヴァと一緒にいられるのではないかって思って。



一方イゥは、全く会えないトヴァのことを気にかけていた。
自分だけが彼女のことを避けるのなら、ここまで長い間全く会わないという事はないだろう。それはつまり、イゥ同様にトヴァもイゥを避けているのだという考えに彼を辿りつかせ、心を重くさせていた。

トヴァを一方的に避け、一方的な喧嘩。
既にあの時の怒りも収まり、尚且つ幼過ぎた自分の言動と態度に彼女へ対する申し訳なさも生まれている。何度も謝ろうとしたが、タイミングを掴めず、最近では全く会えなくなってしまったこの状況を早く打破しようと、明日こそ、トヴァときちんと仲直りしようと考えていた。

しかし、決心がついたものの、最近トヴァは何処にいるのか分からない為、明日、唯一知っていそうなレイに聞いてみる事にしたのだった。









***



「おい、レイ!」



湖畔のほとりで魔術書を読んでいたレイは、聞き慣れすぎてうんざりするその声の主の方へと視線を向けた。



「何か用?」


「また一人でそんな分厚い本読んでんのかよ...。マジでどうしちまったんだよ、お前。つーかその顔やめろよ地味に傷付くだろ!」



イゥにそう言わせる程に、今のレイの顔は本当に面倒臭そうで、一度溜め息を吐いた後、すぐにその視線を本へと戻した。



「いやいや、待て待て!今日は遊びの誘いじゃねえから!」


「ふーん。じゃあ何?」


「うっ...、そ、その、何だ」



とても言いづらそうに視線を逸らすイゥに怪訝な顔をしていると、意を決したようなイゥが放った言葉は、



「...あー、ト、トヴァは「イゥ兄ー!」



イゥの背後からタックルするような勢いで抱き着いてきたエイによって妨げられてしまう。
しかし、レイがトヴァの名前を聞き逃すはずはなく、すかさず言及した。



「...トヴァが、何?」


「い、いや...、その...」


「何々!?イゥ兄ってば、ようやくトヴァ姉と仲直りする気になったの!?キャー!すごい嬉しい!これでまた四人で遊べるね!」



イゥの横で本当に嬉しそうに、エイがぴょんぴょんと飛び跳ねる。エイもトヴァのことが大好きなのは知っていたし、気持ちは分からなくもないけど、俺は二人に対して、「今更何だ」という気持ちの方が強かった。

暫くして、小さな声で「…ま、まあな。その、いい加減、謝ろうと思ってな」とイゥが呟いた瞬間、レイの中で、今まで溜め込んでいた怒りが爆発してしまった。



「… …イゥに、トヴァを気にかける資格があるとでも思ってんの?」



突然、怒りの滲むレイのその言葉を聞き、はっとしてレイの方へ顔を向ければ、見たことのない怒りの滲む双眼でイゥを睨み付けていた。

いつものレイとのあまりの違いに、エイがレイの名を呼べば、その鋭い怒りの籠った瞳でエイをも睨み付け、睨まれたエイは恐怖で硬直してしまう。



「能天気なお二人さんは知らないだろうから教えてあげるよ。もうこの町に、トヴァはいない...、とっくに出て行ったから」



言って、自嘲気味に笑うレイの言葉に、イゥもエイも、驚き過ぎて言葉を発せない。
やっと出た言葉は、誰が聞いても分かる程に震えていて...



「…どういう、ことだよ」



イゥがそう問えば、レイは淡々と話し始めた。



「…あの日、イゥの誕生日会の日。
全部あそこから始まったんだ。あの時、イゥがあんなことトヴァに言わなければ、トヴァは今も此処にいたかもしれないのにッ!」


「…っ、あれは!」


「トヴァが来なかったからって?いいよね、毎年祝ってもらう事が当たり前だからその大切さにも気付けない。それ程なんだからさ。
…何で考えなかったの?何でトヴァが来られなかったかを考えなかったわけ?あのトヴァがイゥの誕生日会に来れなかった理由を、何でちゃんと聞こうとしなかったんだよ!!」


「…ッ!!」





―――そうだ…、

何で...、何で俺はあの日…!
毎年必ず来てくれるトヴァがたった一回来られなかっただけで!

あの時の俺は頭に血が上って…っ、俺はレイの言う通り、トヴァに祝ってもらうことが当たり前だと思ってた…、だからッ!



「イゥの妹が亡くなって、イゥが落ち込んでる時、励ます為にイゥの所へエイを行かせたのも、その時エイが言った言葉もほぼトヴァのだ!!」


「... ...は?」


「今思えばあの時からトヴァは決めてたんだ。また同じ事が起こらないように、イゥが苦しまないように "何か" をするって。その何かは俺には分からないけど、多分とても難しい事なんだろうなっていうのは、トヴァの雰囲気から段々と分かった!
それを成し遂げるには、もう今までみたいにイゥと一緒にはいられない、だから変わりにっ、イゥが寂しくないように!押しつぶされないように、本当は自分がいたいイゥの隣をエイに譲ったんだよ!!」



レイの言葉が、鋭利な刃物になって心臓に突き刺さり、ズクズクと痛み出す。



「誕生日会の時にエイがあげた赤いマフラーだって、本当はトヴァが編んだんだ!!でもトヴァは…っ!
けど!一番重要なのは誕生日会に来られなかった理由だよ!あんなに大雨の中、トヴァがあんなに濡れるまで何してたのか、あんなに濡れてまで誕生日を祝いに来てくれたのは何でか!何でそれを考えようとは思わなかった!?
あの日、トヴァを追い掛けるのは、本当はイゥじゃなきゃいけなかったはずなのにッ!あんたは何であんな酷いことを言った!?なあ!答えろよっ!!」



イゥはレイに胸倉を掴まれて怒鳴られているが、先程からショックで動けない。
…先程から、トヴァの笑顔を思い出そうとしても上手く思い出せない自分が信じられない。

エイは震えて、涙目で二人を見守ることしか出来ないでいる。



「それにっ、トヴァは虐待されてた…ッ!」



至極苦しそうに吐き出されたレイのその言葉に、イゥの瞳が更にみるみる大きく見開かれる。

あんなに優しそうな両親が…?



「あの日、俺が追い掛けた時、トヴァの体には痣と傷がいくつもあった!あの日もきっと母親に暴力を振るわれてたんだ!
俺はその後、実際にトヴァが虐待されてるところを見てる!トヴァの家には他にもたくさんの人達がいるのにっ!なのに誰もトヴァを助けようとはしなかった!!
それでもっ、それでもトヴァはっ!誰にも言うなって一人で背負い込んで!!けど言おうと思った!いくらトヴァとの約束でも、これ以上トヴァが苦しむならって!!
でもあんな絵に描いた様な良い家族だって周りにも社会にも思われてるトヴァの親を、子供一人が何か喚いたところで何が変わる!?解決できる!?
それにもし俺がそう言ったら、もっとトヴァが酷い目に合う可能性だって...!」



頭を鈍器で思い切り殴られた様な衝撃が、どんどんと増し、酷くなっていく。



「俺と違って信頼されてたイゥが!俺の欲しいもの全部持ってるあんたがずっとずっと憎かった!!トヴァの気持ちも何もかも分かろうとしないで呑気に過ごしてるイゥとエイが、憎くて憎くて仕方なかったんだよッ!!」



…そうだ。
全部レイの言う通りだ。
俺は我儘で自分勝手のクソ野郎で、トヴァのこと何一つ理解しようとしてこなかった。
トヴァはこんなにも俺のことを真剣に考えて、傍にいてくれたのに…!!



「悪かった、レイ。悪かった」


「今更謝られても意味なんてないよ。トヴァのこと分かろうともしないイゥと、いつも泣いてりゃイゥが助けてくれる、守ってくれると思ってるエイ。
ほんっと、くだらないよあんたら。吐き気する」



レイはそう吐き捨てると、ショルダーバッグと本を無造作に拾い上げ、そのまま帰ろうする。



「レ、レイ!」


「…ッ!レイ!待ってくれ!」


「何?いい加減、あんたらに関わりたくないんだけど」


「トヴァはっ、トヴァは何処に行ったんだ...?お前は何か知って「もし知ってたとしても、俺がそれに答えてあげる義理なんてないよね。まぁでも、俺もそれは知らない」



俺が知らないトヴァのことを、レイは全部知っている。

俺が知らなきゃいけなかったトヴァの苦しみや悲しみを、レイは全部知っている。

レイの去って行く後ろ姿を、俺はただ茫然と見つめるしか出来なかった。数回、エイに名前を呼ばれたけれど、いつもみたいに笑って返事をしてやれる余裕が今の俺には無い。

年下の男に言い負かされて、事実を突き付けられて、ショック過ぎて今も尚動けない俺をダセーと思ったのか。
それともただ単に今声を掛け続けても意味はないと思ったのかは分からない。
エイは俺の横を通り過ぎてレイと同じく去って行った。



"イゥ!"



不意に、風に乗ってトヴァのあの温かい声が聞こえたような気がした。



「…ッ、んだよ、これ… …」



次々に溢れて止まらないソレは俺の涙で、拭っても拭っても止まることを知らない涙を何とかしようと、腕を両目に強く押し付け歯をくいしばる。



「… …ヴァ、トヴァ、悪い...っ」



"許してくれ" なんて言えねえし、"許して欲しい" とも思わない。

普通はそうなんだろう。この胸を締め付けるような壮絶な切なさも、悲しみも、己に対する怒りも全部、自業自得だ。

けど俺は、トヴァに許してもらえるまで何度でも謝り続けたいし、許して欲しいって強く思ってる。

…それでまた、あの頃みたいに一緒にいたいって強く強く望んでる。

それこそ、泣きながらしつこく無い物ねだりするガキみてぇに。





***



… …ムカつく、腹が立つ。

俺がずっと憧れていたトヴァの隣を、始めから当たり前の様に持っていたにも関わらず、自分の事ばかりで彼女の事をちゃんと考えも、見も、理解しようともしなかったイゥという男にも、



「まっ、待って!レイ!」



何も知らず、知ろうともしないで毎日呑気に笑顔でのうのうと過ごしてきたエイという俺の双子の妹にも―――



「...もう気安く話しかけるなよ」



レイがそう言って蔑む様な目を向ければ、エイはビクッとした。既に涙目になっているエイの瞳からポロポロと次々に涙が零れ落ちる。



「ご、ごめんなさ…い!わ、私っ、レイのいう通りトヴァ姉の事、何も考えてなかった!!」


「…で?」


「…っ、一人ぼっちでいるイゥ兄のところへ行った時も…、マフラーのこともっ!他にも、もっともっといっぱい!それに、私が知らない事もまだまだ沢山あるよね…っ、本当にごめんなさいっ」



泣きながら、震えて掠れそうになる声を必死に振り絞り、何とか伝えようとしている気持ちが伝わってくる。

…けどさ、くだらないんだよ。



「イゥもエイも遅過ぎた。知らなかったじゃ済まないんだよ、知ろうと思う箇所はトヴァをちゃんと見てれば確かにあった。実際、俺達は毎日一緒にいたんだから」


「ごめ…っ「俺に謝ったところで何になるの?イゥと同じ事して、本当二人してバカ過ぎて笑えるよ」



レイの冷た過ぎる視線に、ギリギリのところで耐えているのであろうエイの頰は、次々に溢れる涙で濡れていた。



「… …あんたらには失望した。もう俺に関わらないで。あとトヴァにも」


「…っ!!」



エイはそれ以上、レイに手を伸ばせなかった。
去り行く彼の後ろ姿を見つめ、手を引っ込めると、その手をもう片方の手で握り締めた。

胸の前で強く。

それは、何かを懇願しているようにも見えた。
エイは暫くそうしていたが、もう暫くすると俯いていた顔を勢い良く上げた。
全身の震えも、もう止まっているようで、何かを決意したようなその顔は、少し幼さを削り、凛としていた。











―――どれくらい経っただろうか。

未だに自分が佇むこの場所からレイとエイが去って、どのくらい経った?

頭が真っ白になった時間と、ぐるぐると色々な事を考えていた時間、茫然と立ち尽くしてどのくらいだ?



「…俺は、」



トヴァに謝りたい、…謝らなければならない。
けどそれは、トヴァに直接会わなければ成しえない。
今頃何処で何をしているのか、何一つ手掛かりのないまま彼女を捜す。
それは至極困難だとは思うけれど、それでも... ...!
イゥは気合いを入れるかのように、右掌で自分の右頬を思いきり叩いた。



「… …ぅっし」



頭に浮かぶのはやっと思い出せたトヴァの笑顔。小さな頃からずっと一緒に過ごしてきた大切な大切なその少女の笑顔を、もう一度自分の隣に取り戻したいと強く思う。

… …それに本当は分かってた。
もうずっと前から気付いていたのに、気付いていないフリをしていたのかもしれない。



「好き、なんだろうな…」



呟くような声でも言葉にしてしまえばそれは随分としっくりきて、ストンと心地よく自分の中に落ち着いた。

…分かった事はそれだけじゃない。

レイ。あいつもきっと、トヴァが好きなんだろう。
最初にレイがトヴァと対面した時、レイは「宜しく」と微笑むトヴァを見つめたまま、返事をすることもなく立ち尽くしていた。

ハッとして返事をした時のレイの顔は、今でも覚えている位に真っ赤に染まっていて、俺とトヴァは緊張しているのだろうと笑ったんだ。

今考えれば、あれは緊張ではなかったのかもしれない。

確かに緊張も理由の一つだったのかもしれないが、もしかしたらあれは俗に言う、



"一目惚れ"



だったんじゃないだろうか。

俺はチビの頃からトヴァと一緒にいたからか、トヴァの見た目について何かを思った事はないけれど、今テレビや他の町の女の子と比べると、トヴァは格段にレベルが違う事が分かる。

大きな金色の瞳、それを縁取るような金色の長い睫毛。
スッとした形の良い高めの鼻と白い肌。
キャメル色の髪は毛先だけが自然とカールしていてとても愛らしい。

決定的、トヴァは美少女だ。

だからレイもそんなトヴァに魅入ってしまったのだと思う。



レイの方が、トヴァの事を良く理解しているのだろう。
レイの方が、俺よりずっと強くトヴァの事を想ってきたのかもしれない。
レイの方が、トヴァに信頼されているのかもしれない。

不意に掌に痛みを感じてハッとする。
どうやら無意識のうちに固く拳を握っていたらしく、爪が強く食い込み赤く濃い跡となっていた。



「…俺は、お前に謝る。何度だって謝って、…必ずもう一度…お前とっ、」



更に強く握った拳と、前を見つめるその赤茶色の瞳はとても鋭く真っ直ぐで。



「トヴァ、待ってて…。もう君を、一人ぼっちにさせたりしないから」



一方で、彼のその鮮やかな黄緑色の瞳に灯るのは、ただひたすらに大切な彼女を想う熱い光だった。






















今度こそお前 (君)を、

必ず守ってやる (みせる)から―――


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