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絶望の果てと、裏切りの先に
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「――あぁ、やっぱり…。僕は、ただの盾だったんだ」
視界が赤く染まっていく。
血の匂いと、背後から迫る魔物の咆哮。
リアンは地面に這いつくばりながら、遠ざかっていく背中を眺めていた。
かつて“仲間”と呼び、命を懸けて守ってきた勇者パーティの面々。
その中のリーダーの勇者が、振り返りもせずに冷たく言い放った言葉が耳にこびりついている。
「悪いなリアン。お前の聖女の力も精度が悪くなってただろ。ここで魔物の足止めをして死ぬのが、お前の最後の役目だ」
(そんなのは嘘だ。僕の精度は落ちてなんかいない…!)
リアンたちのパーティは無謀な特攻を繰り返し、そのすべてのダメージを聖女であるリアンが自身の能力で肩代わりし続けてきた。
そのせいでリアンの体はもうボロボロで、能力を上手く出力することもままならなかった。
「……っ、がはっ……!」
魔物の鋭い爪が、リアンの脇腹を深く抉った。
痛い。熱い。苦しい。
治癒魔法を使おうにも、彼らの傷を治すために魔力は底をついている。
(信じていたのに…!全部、捧げてきたのに……!)
尽くして、尽くして、最後はゴミのように捨てられる。
男でありながら“聖女”の力を宿した異端児として、彼らだけが居場所だと思い込もうとしていた。
意識が遠のいていく。
冷たい地面に頬を寄せ、リアンは最後の力を振り絞って呪った。
(もし……もしも次があるなら…。もう二度と、あいつらには何もやらない。僕の心も、体も、この力も……絶対に……!)
バリバリと、骨が砕ける音が聞こえた。
「かはっ………」
絶望と激痛の中、リアンの意識は真っ暗な闇へと落ちていった。
==
「――っ!? はぁっ…はぁ…」
激しく息を乱しながら、リアンは跳ね起きた。
真っ先に感じたのは静寂で、先ほどまで戦っていたはずの魔物の咆哮も、肉を裂く音も聞こえない。
代わりに聞こえるのは、遠くで鳴く鳥の声と、穏やかな朝の喧騒。
「ここ、は……?」
震える手で自分の体を確認する。魔物に食い破られたはずの脇腹に傷はない。
それどころか、ボロボロだったはずの指先も、ひび割れていた掌も、驚くほど綺麗だった。
見覚えのある、安い宿の天井。
リアンの属する勇者パーティが拠点にしていた王都の宿屋だ。
机の上に置かれたカレンダーに目を向け、リアンは息を呑んだ。
「……一週間、前……?」
それはパーティを追放され、あの戦場で見捨てられる、ちょうど一週間前だった。
「戻ったの……? 僕、死んだはずじゃ……」
夢ではない。あの時の痛み、冷たさ、そして仲間の冷酷な瞳は今も脳裏に焼き付いている。
「時間が…巻き戻ったの…?」
神様の気まぐれか、あるいは自分の執念か。リアンはどうやら、一週間前に死に戻ったらしい。
突如、ガタガタと膝が震えた。
このままここにいれば、また一週間後に確実に自分は死ぬ。
勇者たちは今頃隣の部屋で、次の攻略でリアンをどう使い潰すかを笑いながら話し合っているはずだ。
「逃げなきゃ……」
もう、あいつらの顔は見たくない。
でも、どこへ……
聖女の力を持つリアンは、勇者たちの権力からは逃げきれない。王都の騎士団も、教会の手も、すべて彼らの味方だ。
「このままじゃ、また……」
リアンの震えが収まらない。まだ混乱する頭で必死に考え、そして、一つの噂を思い出した。
この国には、勇者たちも手出しできない“化け物”がいる。
冷酷公爵。人はそれを、北の死神と呼ぶらしい。
「……アルヴィス公爵だ…!」
人間界に潜む、最強の魔王、アルヴィス・フォン・ベルシュタイン公爵。
彼は強大すぎる魔力の暴走を抑えるため、自身の毒を吸い出す器を探しており、一時期その噂が街で持ち切りになったことがあった。
普通の人間なら、公爵の魔力に触れただけで発狂し、死んでしまう。
しかしリアンの聖女の力は、あらゆる負のエネルギーを肩代わりし、浄化するためのものだ。
「あそこなら、生きられるかもしれない」
たとえそこが地獄よりも恐ろしい死神の住処だとしても、魔物に食い殺され、仲間に見捨てられるよりはマシだ。
リアンは震える手で、わずかな荷物とマントを掴む。
そして夜明け前の薄暗い部屋を飛び出し、彼は一度も振り返ることなく走り出した。
二度目の人生。
今度は、死ぬために力を使うんじゃない。
生きるために、あの“死神”に、この身を捧げに行くんだ。
視界が赤く染まっていく。
血の匂いと、背後から迫る魔物の咆哮。
リアンは地面に這いつくばりながら、遠ざかっていく背中を眺めていた。
かつて“仲間”と呼び、命を懸けて守ってきた勇者パーティの面々。
その中のリーダーの勇者が、振り返りもせずに冷たく言い放った言葉が耳にこびりついている。
「悪いなリアン。お前の聖女の力も精度が悪くなってただろ。ここで魔物の足止めをして死ぬのが、お前の最後の役目だ」
(そんなのは嘘だ。僕の精度は落ちてなんかいない…!)
リアンたちのパーティは無謀な特攻を繰り返し、そのすべてのダメージを聖女であるリアンが自身の能力で肩代わりし続けてきた。
そのせいでリアンの体はもうボロボロで、能力を上手く出力することもままならなかった。
「……っ、がはっ……!」
魔物の鋭い爪が、リアンの脇腹を深く抉った。
痛い。熱い。苦しい。
治癒魔法を使おうにも、彼らの傷を治すために魔力は底をついている。
(信じていたのに…!全部、捧げてきたのに……!)
尽くして、尽くして、最後はゴミのように捨てられる。
男でありながら“聖女”の力を宿した異端児として、彼らだけが居場所だと思い込もうとしていた。
意識が遠のいていく。
冷たい地面に頬を寄せ、リアンは最後の力を振り絞って呪った。
(もし……もしも次があるなら…。もう二度と、あいつらには何もやらない。僕の心も、体も、この力も……絶対に……!)
バリバリと、骨が砕ける音が聞こえた。
「かはっ………」
絶望と激痛の中、リアンの意識は真っ暗な闇へと落ちていった。
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「――っ!? はぁっ…はぁ…」
激しく息を乱しながら、リアンは跳ね起きた。
真っ先に感じたのは静寂で、先ほどまで戦っていたはずの魔物の咆哮も、肉を裂く音も聞こえない。
代わりに聞こえるのは、遠くで鳴く鳥の声と、穏やかな朝の喧騒。
「ここ、は……?」
震える手で自分の体を確認する。魔物に食い破られたはずの脇腹に傷はない。
それどころか、ボロボロだったはずの指先も、ひび割れていた掌も、驚くほど綺麗だった。
見覚えのある、安い宿の天井。
リアンの属する勇者パーティが拠点にしていた王都の宿屋だ。
机の上に置かれたカレンダーに目を向け、リアンは息を呑んだ。
「……一週間、前……?」
それはパーティを追放され、あの戦場で見捨てられる、ちょうど一週間前だった。
「戻ったの……? 僕、死んだはずじゃ……」
夢ではない。あの時の痛み、冷たさ、そして仲間の冷酷な瞳は今も脳裏に焼き付いている。
「時間が…巻き戻ったの…?」
神様の気まぐれか、あるいは自分の執念か。リアンはどうやら、一週間前に死に戻ったらしい。
突如、ガタガタと膝が震えた。
このままここにいれば、また一週間後に確実に自分は死ぬ。
勇者たちは今頃隣の部屋で、次の攻略でリアンをどう使い潰すかを笑いながら話し合っているはずだ。
「逃げなきゃ……」
もう、あいつらの顔は見たくない。
でも、どこへ……
聖女の力を持つリアンは、勇者たちの権力からは逃げきれない。王都の騎士団も、教会の手も、すべて彼らの味方だ。
「このままじゃ、また……」
リアンの震えが収まらない。まだ混乱する頭で必死に考え、そして、一つの噂を思い出した。
この国には、勇者たちも手出しできない“化け物”がいる。
冷酷公爵。人はそれを、北の死神と呼ぶらしい。
「……アルヴィス公爵だ…!」
人間界に潜む、最強の魔王、アルヴィス・フォン・ベルシュタイン公爵。
彼は強大すぎる魔力の暴走を抑えるため、自身の毒を吸い出す器を探しており、一時期その噂が街で持ち切りになったことがあった。
普通の人間なら、公爵の魔力に触れただけで発狂し、死んでしまう。
しかしリアンの聖女の力は、あらゆる負のエネルギーを肩代わりし、浄化するためのものだ。
「あそこなら、生きられるかもしれない」
たとえそこが地獄よりも恐ろしい死神の住処だとしても、魔物に食い殺され、仲間に見捨てられるよりはマシだ。
リアンは震える手で、わずかな荷物とマントを掴む。
そして夜明け前の薄暗い部屋を飛び出し、彼は一度も振り返ることなく走り出した。
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今度は、死ぬために力を使うんじゃない。
生きるために、あの“死神”に、この身を捧げに行くんだ。
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