第三次世界大戦

一二三 雄

文字の大きさ
3 / 14
一章

一章②

しおりを挟む
「僕が犬達の行動を不審に思い調べ出したのが君の研究室に来る3ヶ月ほど前だったな。」
一条は驚いた様子で、話を聞きながらコーヒーを飲み干して、紅茶の紙コップに砂糖とミルクを入れる。
「驚いたな。そんなに前から、再会した時ですらペットによる事件が多いくらいの報道だったはずだ。」
「僕と君の差はシンプルだよ。」
一条はハッとして、続く言葉を遮り話し始めた。
「すまない。配慮が足りなかった。」
「いや、構わない。辛い事ではあったが今は考察の方が重要だ。僕の飼っていた犬も急に失踪したんだ。」
夏月もコーヒーを片づけて、紅茶の紙コップを手に取るが何も入れずにそのまま飲み始める。
「私は噛まれたり、する事はなかったが首輪を引きちぎって脱走していたからね。朝起きたら、リビングで血だらけになっていたから慌てて病院に連れて行こうと玄関を開けたら急に走り去ってね。」
「君を攻撃したくなかったんだろうか。」
「それは希望的感想だね。動揺させて逃げ切ったように感じてはいたよ。」
夏月は新たな資料を鞄から取り一条に差し出しながら話を続けた。
「そうか。」
「ああ、それまでに異変は何もなく突然だったからね。狂犬病の疑いもないから、不思議に思い同様の事件を調べたのさ。まずは資料を読んでみてくれ。」
「わかった。」

そして、一条は資料と共に当時のニュースを夏月は飼い犬であるアーサーが逃げ出した暑い夏の日を思い出す。

2199年夏
探偵事務所にて
犬科の生物が狂犬病の様な症状を起こす事が多発しているニュースは以前から気にしていた。だが、自分のペットには予防接種などを十分にしているので心配していなかった夏月だったが、近頃は動物園で飼育されている動物から野犬にいたるまで同じ様に症状が広がるのは狂犬病としてはおかしいと考えていた。依頼のない日に飼い犬のアーサーのためにも原因を調べてみようかと考えて、休みの日だったが早くに起き、部屋を出てまず異臭に気付く。脳裏をよぎったのは折にぶつかり続けて死んでしまった狼のニュースを思い出して慌ててリビングに走って行く。そこで見たのは首から血を流してぐったりと倒れている飼い犬アーサーだった。
「アーサー!大丈夫か?」
アーサーを抱き抱えて、玄関を開けるとすぐに暴れ出したアーサーを離してしまう。
普段の夏月であれば、昨今のニュースを考えていればすぐに玄関を開けることはなかっただろう。だが、やはり自分の飼い犬が倒れている姿を見て冷静さを失っていた。すぐに追いかけたが見失い家に帰った頃には冷静さを取り戻していた。
「おかしい。アーサーは賢いが、今回のこれは人間の様な知性を感じる。」


現代 一条研究室
「そこからだね。僕が一連の犬についての事件を調べ始めたのは」
「そうか。」
紅茶も飲み終えた一条は、インスタントコーヒーを淹れる。
「だが、わからない。それで何故あの犬の知性が人間並だと感じたんだ。」
少しだけ、淋しく笑いながら答えた。
「君は僕を騙し切れるか。」
「何を、」
と言いつつ、どんなドッキリやサプライズも見破られる事を思い出す。
「無理だな。」
「彼はやってのけたんだよ。僕の認識を利用して、古式ゆかしい騙しの手段ただそれだけで、僕を騙し逃げ切った。人間の自分達に対する認識を逆手に取って実に鮮やかにね」
「そう言われると、怖いな」
「それからは、足で調べたさ。そこから君と合うまでの3ヶ月を振り返ろう。」

一章③に続く




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

Amor et odium

佐藤絹恵(サトウ.キヌエ)
ファンタジー
時代は中世ヨーロッパ中期 人々はキリスト教の神を信仰し 神を軸(じく)に生活を送っていた 聖書に書かれている事は 神の御言葉であり絶対 …しかし… 人々は知らない 神が既に人間に興味が無い事を そして…悪魔と呼ばれる我々が 人間を見守っている事を知らない 近頃 人間の神の信仰が薄れ 聖職者は腐敗し 好き勝手し始めていた 結果…民が餌食の的に… ・ ・ ・ 流石に 卑劣な人間の行いに看過出来ぬ 人間界に干渉させてもらうぞ

【新作】1分で読める! SFショートショート

Grisly
ファンタジー
❤️⭐️感想お願いします。 1分で読める!読切超短編小説 新作短編小説は全てこちらに投稿。 ⭐️忘れずに!コメントお待ちしております。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

処理中です...