3 / 14
一章
一章②
しおりを挟む
「僕が犬達の行動を不審に思い調べ出したのが君の研究室に来る3ヶ月ほど前だったな。」
一条は驚いた様子で、話を聞きながらコーヒーを飲み干して、紅茶の紙コップに砂糖とミルクを入れる。
「驚いたな。そんなに前から、再会した時ですらペットによる事件が多いくらいの報道だったはずだ。」
「僕と君の差はシンプルだよ。」
一条はハッとして、続く言葉を遮り話し始めた。
「すまない。配慮が足りなかった。」
「いや、構わない。辛い事ではあったが今は考察の方が重要だ。僕の飼っていた犬も急に失踪したんだ。」
夏月もコーヒーを片づけて、紅茶の紙コップを手に取るが何も入れずにそのまま飲み始める。
「私は噛まれたり、する事はなかったが首輪を引きちぎって脱走していたからね。朝起きたら、リビングで血だらけになっていたから慌てて病院に連れて行こうと玄関を開けたら急に走り去ってね。」
「君を攻撃したくなかったんだろうか。」
「それは希望的感想だね。動揺させて逃げ切ったように感じてはいたよ。」
夏月は新たな資料を鞄から取り一条に差し出しながら話を続けた。
「そうか。」
「ああ、それまでに異変は何もなく突然だったからね。狂犬病の疑いもないから、不思議に思い同様の事件を調べたのさ。まずは資料を読んでみてくれ。」
「わかった。」
そして、一条は資料と共に当時のニュースを夏月は飼い犬であるアーサーが逃げ出した暑い夏の日を思い出す。
2199年夏
探偵事務所にて
犬科の生物が狂犬病の様な症状を起こす事が多発しているニュースは以前から気にしていた。だが、自分のペットには予防接種などを十分にしているので心配していなかった夏月だったが、近頃は動物園で飼育されている動物から野犬にいたるまで同じ様に症状が広がるのは狂犬病としてはおかしいと考えていた。依頼のない日に飼い犬のアーサーのためにも原因を調べてみようかと考えて、休みの日だったが早くに起き、部屋を出てまず異臭に気付く。脳裏をよぎったのは折にぶつかり続けて死んでしまった狼のニュースを思い出して慌ててリビングに走って行く。そこで見たのは首から血を流してぐったりと倒れている飼い犬アーサーだった。
「アーサー!大丈夫か?」
アーサーを抱き抱えて、玄関を開けるとすぐに暴れ出したアーサーを離してしまう。
普段の夏月であれば、昨今のニュースを考えていればすぐに玄関を開けることはなかっただろう。だが、やはり自分の飼い犬が倒れている姿を見て冷静さを失っていた。すぐに追いかけたが見失い家に帰った頃には冷静さを取り戻していた。
「おかしい。アーサーは賢いが、今回のこれは人間の様な知性を感じる。」
現代 一条研究室
「そこからだね。僕が一連の犬についての事件を調べ始めたのは」
「そうか。」
紅茶も飲み終えた一条は、インスタントコーヒーを淹れる。
「だが、わからない。それで何故あの犬の知性が人間並だと感じたんだ。」
少しだけ、淋しく笑いながら答えた。
「君は僕を騙し切れるか。」
「何を、」
と言いつつ、どんなドッキリやサプライズも見破られる事を思い出す。
「無理だな。」
「彼はやってのけたんだよ。僕の認識を利用して、古式ゆかしい騙しの手段死んだフリただそれだけで、僕を騙し逃げ切った。人間の自分達に対する認識を逆手に取って実に鮮やかにね」
「そう言われると、怖いな」
「それからは、足で調べたさ。そこから君と合うまでの3ヶ月を振り返ろう。」
一章③に続く
一条は驚いた様子で、話を聞きながらコーヒーを飲み干して、紅茶の紙コップに砂糖とミルクを入れる。
「驚いたな。そんなに前から、再会した時ですらペットによる事件が多いくらいの報道だったはずだ。」
「僕と君の差はシンプルだよ。」
一条はハッとして、続く言葉を遮り話し始めた。
「すまない。配慮が足りなかった。」
「いや、構わない。辛い事ではあったが今は考察の方が重要だ。僕の飼っていた犬も急に失踪したんだ。」
夏月もコーヒーを片づけて、紅茶の紙コップを手に取るが何も入れずにそのまま飲み始める。
「私は噛まれたり、する事はなかったが首輪を引きちぎって脱走していたからね。朝起きたら、リビングで血だらけになっていたから慌てて病院に連れて行こうと玄関を開けたら急に走り去ってね。」
「君を攻撃したくなかったんだろうか。」
「それは希望的感想だね。動揺させて逃げ切ったように感じてはいたよ。」
夏月は新たな資料を鞄から取り一条に差し出しながら話を続けた。
「そうか。」
「ああ、それまでに異変は何もなく突然だったからね。狂犬病の疑いもないから、不思議に思い同様の事件を調べたのさ。まずは資料を読んでみてくれ。」
「わかった。」
そして、一条は資料と共に当時のニュースを夏月は飼い犬であるアーサーが逃げ出した暑い夏の日を思い出す。
2199年夏
探偵事務所にて
犬科の生物が狂犬病の様な症状を起こす事が多発しているニュースは以前から気にしていた。だが、自分のペットには予防接種などを十分にしているので心配していなかった夏月だったが、近頃は動物園で飼育されている動物から野犬にいたるまで同じ様に症状が広がるのは狂犬病としてはおかしいと考えていた。依頼のない日に飼い犬のアーサーのためにも原因を調べてみようかと考えて、休みの日だったが早くに起き、部屋を出てまず異臭に気付く。脳裏をよぎったのは折にぶつかり続けて死んでしまった狼のニュースを思い出して慌ててリビングに走って行く。そこで見たのは首から血を流してぐったりと倒れている飼い犬アーサーだった。
「アーサー!大丈夫か?」
アーサーを抱き抱えて、玄関を開けるとすぐに暴れ出したアーサーを離してしまう。
普段の夏月であれば、昨今のニュースを考えていればすぐに玄関を開けることはなかっただろう。だが、やはり自分の飼い犬が倒れている姿を見て冷静さを失っていた。すぐに追いかけたが見失い家に帰った頃には冷静さを取り戻していた。
「おかしい。アーサーは賢いが、今回のこれは人間の様な知性を感じる。」
現代 一条研究室
「そこからだね。僕が一連の犬についての事件を調べ始めたのは」
「そうか。」
紅茶も飲み終えた一条は、インスタントコーヒーを淹れる。
「だが、わからない。それで何故あの犬の知性が人間並だと感じたんだ。」
少しだけ、淋しく笑いながら答えた。
「君は僕を騙し切れるか。」
「何を、」
と言いつつ、どんなドッキリやサプライズも見破られる事を思い出す。
「無理だな。」
「彼はやってのけたんだよ。僕の認識を利用して、古式ゆかしい騙しの手段死んだフリただそれだけで、僕を騙し逃げ切った。人間の自分達に対する認識を逆手に取って実に鮮やかにね」
「そう言われると、怖いな」
「それからは、足で調べたさ。そこから君と合うまでの3ヶ月を振り返ろう。」
一章③に続く
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
異世界で農業を -異世界編-
半道海豚
SF
地球温暖化が進んだ近未来のお話しです。世界は食糧難に陥っていますが、日本はどうにか食糧の確保に成功しています。しかし、その裏で、食糧マフィアが暗躍。誰もが食費の高騰に悩み、危機に陥っています。
そんな世界で自給自足で乗り越えようとした男性がいました。彼は農地を作るため、祖先が残した管理されていない荒れた山に戻ります。そして、異世界への通路を発見するのです。異常気象の元世界ではなく、気候が安定した異世界での農業に活路を見出そうとしますが、異世界は理不尽な封建制社会でした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる