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しばらくしてようやく落ち着きを取り戻したが、なんとなく気まずい沈黙が周囲を包んでいた。
「ぅあのう、アレックス……氏は騎士になったのではなかったのですか?」
空気を変えたくて話しかけたのだがライラさんが何故か吹き出すのを堪えてるようで、また何か失敗したのだろうかとドギマギした。クルーガー氏と言うのが正しかったかと思ったがそこじゃないだろともう一人の自分がツッコミを入れていた。
「呼び捨てでいいよ。しばらく騎士団に居たんだけど、なんか合わなくて辞めたんだよね」
アレックスの答えが意外だった。学園の武術大会で優勝してたはずだし。そのことを告げると、少し言いづらそうに
「あー、まあ、なんていうか……団体行動が苦手で。個人技はそこまでじゃないんだけど」
「「わかる」」
と賛同の声。もちろん私も激しく同意した。
さっきより表情を和らげたアレックスは、
「前世で紅茶が趣味だったから喫茶店やりたいなって思って。まあ、俺もあんまり適応は出来なかったかな」
「そうだったんですか。でも紅茶とても美味しいです」
と言うと柔らかく微笑んでありがとうと返してくれたその顔が眩しすぎて溶けるかと思った。
「それで言ったらエリオットとライラは凄いよな。王子と高位貴族令嬢で、将来の王様と王妃様だもんな」
「将来のことはまだそこまで考えてないけど、前世の記憶があっても子供の頃から王族として過ごしてるからだんだん慣れてきたかな。あとずっと役を演じてる感じもある、ゲームの世界だし」
「私もそうですわね。環境ってここまで影響するんだって思いましたもの。あとはキャラの持ってるポテンシャルにだいぶ助けられました。もとの私はこんなに優秀ではありませんでしたもの」
「あ、それすげー分かる。剣の腕もだけど、普通に体動かすだけでも全然違った。運動神経イイ奴ってこんな感じだったのかって」
「ジュリアンさんのヴァイオリンも素敵でしたわ」
「それもキャラ特性なのかな。楽器なんてやったことなかったけどすぐ弾けるようになったからなぁ」
「ジュリアンが前世持ちなんてまったく気付かなかったな。ゲームと同じように女の子侍らせてたし。こう言っちゃ何だけど、というか俺がそうだからだけど、こういうゲームやる人間だし友達多い方じゃないとか勝手に思ってた」
「あー、それはね」
ふっ、と息を吐き、ジュリアンはどこか遠い目をした。
「前世女だったんだ」
「「‼︎⁉︎」」
そんな可能性があるなんて微塵も考えたことなかった。言われればそういう事もあるかと思うかもしれないが。
思わずジュリアンをしげしげと眺めてしまった。
「それに中高と女子校で背も高かったし、チャラ男はともかく“学園の王子様”だったらなんとなく身に覚えがあるなーって」
「こんなこと聞いていいのか、えっと、トランス的なこととかは?」
ライラさんがおずおずと聞く。魂、精神、もしくは心と呼ばれるものが転生先に影響するのか。ダメだ、頭がこんがらがってきた。
「いや、体はもちろん心も所謂“普通”の女の子だったよ。異性を好きになってたし」
再び沈黙、いや、私含め皆が何と言っていいか分からず言葉を発せずにいた。
あまりに酷い顔をしていたのだろうか、ジュリアンは私の頭を優しくポンポンと叩いた。
もう少しでお姉さまと声に出していたところだった。というか最早お姉さまにしか見えない。ジュリアお姉さまここに爆誕!オイ、頭沸いてんのか!誰か私をぶん殴ってくれ。
ライラさんも手を口元にあて「まあ」と声にならないようだ。エリオット王子とアレックスも二の句を告げる事が出来ない様子だ。
そんな様を見て取ったのか、明るい口調で
「これもキャラに引っ張られてなのか、実を言うとそれほど違和感は無いんだ。最初はもちろん色々戸惑ったけど、そこまではっきり前世の記憶を覚えてるわけでもないし」
だから別になんて事ないとジュリアンは紅茶を口に運んだ。
それでも私だったらこうできてはいなかっただろう。
「ぅあのう、アレックス……氏は騎士になったのではなかったのですか?」
空気を変えたくて話しかけたのだがライラさんが何故か吹き出すのを堪えてるようで、また何か失敗したのだろうかとドギマギした。クルーガー氏と言うのが正しかったかと思ったがそこじゃないだろともう一人の自分がツッコミを入れていた。
「呼び捨てでいいよ。しばらく騎士団に居たんだけど、なんか合わなくて辞めたんだよね」
アレックスの答えが意外だった。学園の武術大会で優勝してたはずだし。そのことを告げると、少し言いづらそうに
「あー、まあ、なんていうか……団体行動が苦手で。個人技はそこまでじゃないんだけど」
「「わかる」」
と賛同の声。もちろん私も激しく同意した。
さっきより表情を和らげたアレックスは、
「前世で紅茶が趣味だったから喫茶店やりたいなって思って。まあ、俺もあんまり適応は出来なかったかな」
「そうだったんですか。でも紅茶とても美味しいです」
と言うと柔らかく微笑んでありがとうと返してくれたその顔が眩しすぎて溶けるかと思った。
「それで言ったらエリオットとライラは凄いよな。王子と高位貴族令嬢で、将来の王様と王妃様だもんな」
「将来のことはまだそこまで考えてないけど、前世の記憶があっても子供の頃から王族として過ごしてるからだんだん慣れてきたかな。あとずっと役を演じてる感じもある、ゲームの世界だし」
「私もそうですわね。環境ってここまで影響するんだって思いましたもの。あとはキャラの持ってるポテンシャルにだいぶ助けられました。もとの私はこんなに優秀ではありませんでしたもの」
「あ、それすげー分かる。剣の腕もだけど、普通に体動かすだけでも全然違った。運動神経イイ奴ってこんな感じだったのかって」
「ジュリアンさんのヴァイオリンも素敵でしたわ」
「それもキャラ特性なのかな。楽器なんてやったことなかったけどすぐ弾けるようになったからなぁ」
「ジュリアンが前世持ちなんてまったく気付かなかったな。ゲームと同じように女の子侍らせてたし。こう言っちゃ何だけど、というか俺がそうだからだけど、こういうゲームやる人間だし友達多い方じゃないとか勝手に思ってた」
「あー、それはね」
ふっ、と息を吐き、ジュリアンはどこか遠い目をした。
「前世女だったんだ」
「「‼︎⁉︎」」
そんな可能性があるなんて微塵も考えたことなかった。言われればそういう事もあるかと思うかもしれないが。
思わずジュリアンをしげしげと眺めてしまった。
「それに中高と女子校で背も高かったし、チャラ男はともかく“学園の王子様”だったらなんとなく身に覚えがあるなーって」
「こんなこと聞いていいのか、えっと、トランス的なこととかは?」
ライラさんがおずおずと聞く。魂、精神、もしくは心と呼ばれるものが転生先に影響するのか。ダメだ、頭がこんがらがってきた。
「いや、体はもちろん心も所謂“普通”の女の子だったよ。異性を好きになってたし」
再び沈黙、いや、私含め皆が何と言っていいか分からず言葉を発せずにいた。
あまりに酷い顔をしていたのだろうか、ジュリアンは私の頭を優しくポンポンと叩いた。
もう少しでお姉さまと声に出していたところだった。というか最早お姉さまにしか見えない。ジュリアお姉さまここに爆誕!オイ、頭沸いてんのか!誰か私をぶん殴ってくれ。
ライラさんも手を口元にあて「まあ」と声にならないようだ。エリオット王子とアレックスも二の句を告げる事が出来ない様子だ。
そんな様を見て取ったのか、明るい口調で
「これもキャラに引っ張られてなのか、実を言うとそれほど違和感は無いんだ。最初はもちろん色々戸惑ったけど、そこまではっきり前世の記憶を覚えてるわけでもないし」
だから別になんて事ないとジュリアンは紅茶を口に運んだ。
それでも私だったらこうできてはいなかっただろう。
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