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第五部 薬師学校の先生になります!?
第5話『薬師、懐かしい雰囲気に浸る』
しおりを挟む「……なるほど。王立薬師学校の教師にな」
わたしが事の顛末を話して聞かせると、ミラベルさんたちは一様に感心顔をした。
「あ、あくまで臨時ですが、そういうことになってしまって……正直、怖くて……」
「何が怖いものか。大出世じゃないか」
「そうですよ! エリンさん、すごいじゃないですか!」
胸の前で指をもじもじさせていると、ミラベルさんが嬉しそうに言い、クロエさんが声を弾ませる。
わたしはますます恐縮し、身を縮こませた。
「しゅ、出世もなにも、半年間だけですし。そんな大騒ぎするほどのものでは……」
「でもさ、普通だったらわざわざ呼び戻してまで話を持ってこないよ。それだけ、エリンさんが王様から信用されてるってことだよね?」
椅子の上で飛び跳ねそうな勢いで、マイラさんが言う。
た、確かにそう言うことに……なるのかな。
「マイラの言う通り、エリンは信用されているのだろう。薬師免許も特級ランクだしな」
「……気になったんだけどさ、その『特級薬師免許』って持ってる人少ないの?」
その時、マイラさんが首を傾げながら聞いてくる。
「あっ、そうですね。そんなに持ってる人はいないと思うんですが」
わたしがマイラさんに伝えると、その言葉を聞いたミラベルさんは苦笑していた。
「いないも何も……特級薬師免許の所持者は国内に数えるほどだ。それも、皆年寄りだ」
続いた言葉に、わたしは困惑する。そんなに少なかったんだ。もっと大勢いると思ってた。
「だからエリン、お前は自分の腕にもっと自信を持て」
「私、すごい人に教わってたんですね……!」
表情を引きつらせるミラベルさんの横で、スフィアが口を大きく開けていた。
……わたしもそんなすごいとは思っていませんでした。
「そうだ。ミラさん、今夜はエリンさんの凱旋祝いをしようよ! いいでしょ?」
その時、マイラさんが立ち上がり、ミラベルさんに進言する。
え、凱旋って……別に戦いに勝って戻ってきたわけじゃないんだけど。
「そうだな。クロエ、街一番のレストランを予約してくれ」
「え、私がするんですか? 今の時期、そう簡単に予約できるとは……」
唐突に話を振られ、クロエさんが素っ頓狂な声を出す。
「ここはお前の腕の見せどころだ。この半年間で築き上げた人脈を活かしてみろ」
「むむ……わっかりました! エリンさんのためですし、なんとかねじ込んでみせます!」
ミラベルさんがほくそ笑むと、クロエさんは握りこぶしを作って椅子から立ち上がる。
「い、いえあの、そこまでしてくれなくても。ごちそうより、クロエさんの作るご飯が食べたいです」
「気持ちは嬉しいですけど、私のご飯はこれからいつでも食べられますよ! 今日は豪華にいきましょう!」
言うが早いか、クロエさんはお店の裏口から飛び出していく。
完全に外食の流れだし、わたしはその背を見送ることしかできなかった。
「よーし、それじゃ、ご飯までの間、エリンさんの部屋を掃除しよう! スフィアちゃん、手伝って!」
「わかりました!」
次にマイラさんが立ち上がり、スフィアがそれに続く。
「あ、わたしも手伝います。というか、自分の部屋なので、自分でします」
「いいよいいよ。長旅で疲れてるでしょ。ゆっくりしてて」
その様子を見てわたしも立ち上がるも、笑顔のマイラさんに静止されてしまった。
申し訳なく思いつつも、わたしは再び椅子に腰を落ち着ける。
「どうせ、明日からは学校関連の準備で忙しくなるんだ。今は皆の厚意に甘えておけ」
眼前に座るミラベルさんは朗らかな笑顔で言い、お茶のお代わりを淹れてくれた。
「あ、ありがとうございます……じゃあ、お言葉に甘えて……」
元気に二階へと向かっていくマイラとスフィアを見送って、わたしはお茶の入ったカップを受け取る。
「どうしても手伝いたいというのなら、止めはしないがな。最近、エリン工房の制服はメイド服になったんだ」
「え」
満面の笑みを浮かべるミラベルさんの言葉に、わたしは背中に冷たいものが走る。
メイド服といえば、いつかのチラシ配りの時に着せられたあれかな。
今、あれを着て接客してるの……? 悪夢だ……。
「ま、冗談だがな」
真っ青になっているわたしを哀れに思ったのか、ミラベルさんはからからと笑いながらネタばらしをしてくれた。
……この人は、全然変わってない。
わたしは脱力し、椅子の背もたれに体を預けたのだった。
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