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第三部 夏の思い出を作りに行きます!?
第14話『薬師、薬を配る 前編』
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レリックさんと別れたあと、わたしは資料を手に客室へと戻る。
「エリンさん、おかえりー。その手に持ってるのは何?」
部屋の扉を開けるやいなや、マイラさんの明るい声が飛んできた。
「た、ただいま戻りました。えっと、これはですね……」
わたしはその場で経緯を説明し、食中毒事件の調査を任されたことを伝える。
同時に薬の調合を依頼されたことも話し、スフィアにその手伝いをしてくれるようにお願いした。
「もちろんです! 街の皆さんのため、頑張って作ります!」
彼女は快諾してくれ、愛用の薬研を引っ張り出しながら、やる気に満ちあふれていた。
街の皆のため……と言うところがスフィアらしくて、師匠として嬉しくなる。
「食中毒事件については、私のほうで下調べをしておきますね。商会の情報網を使えば、何かわかるかもしれませんし」
口元に手を当てながら、クロエさんが言う。
つい忘れがちになるけど、彼女はリーベルグ商会のお嬢様だった。わたしが想像できないような情報網を持っているのだろうし、こういう時は本当に頼りになる。
「あ、完成した薬を配る時は、もちろん私たちにも声をかけてくださいね。手伝いますから」
「そうだよー! エリンさん、人前に出たら銅像みたく固まっちゃうだろうしさ!」
「あ、ありがとうございます。その時は、よろしくお願いします」
続いてそう言ってくれる二人に頭を下げたあと、わたしは割烹着に着替える。
それからスフィアの手を引いて、調合室へと向かった。
調合室の扉を開けると、そこにはすでにエドヴィンさんの姿があった。
「エリン様、お待ちしておりました」
「ど、どうも。お待たせして、すみません」
一言謝ってから、わたしはスフィアとともに調合室へと足を踏み入れる。
エドヴィンさんは薬棚の前に立っていて、一足先に準備を進めてくれているようだった。
「そ、それで、どの薬を作るかもう決めているんですか?」
「いえ、それこそエリン様に相談しようと思っていたところです」
わたしが問いかけると、エドヴィンさんは難しい顔をしながら言い、一枚のメモを差し出してくる。
それに目を通してみると、そこには見慣れた薬材名がずらりと並んでいた。
「あの、これは?」
「現状、この屋敷にある薬材のリストです。どう組み合わせるべきか、頭を悩ませていまして」
「そ、そうですね。この薬材だと……」
受け取ったリストを一通り眺めてから、わたしは考えを巡らせる。
そして小さく息を吐いたあと、それを言葉にしていく。
「は、伯爵様から頂いた資料には、患者さんたちの症状も細かく書いていました。それによると、主な症状は嘔吐と下痢、腹痛だそうです。なので、ここはオバケソウモドキや音止め草、オレンジの皮を使った薬を作るのがいいかと」
「ふむ……ゴールデンリーフを主薬としたものではなく、その三つの薬材を選んだ理由はございますか?」
「ゴールデンリーフも胃腸薬として優秀ですが、強力な分、体質によっては合わない方がいるんです。資料によれば、食中毒を起こしているのはお年寄りや子どもが多いですし、こちらのほうが良いかと思いまして。効き目は多少緩やかになりますが、オレンジの皮が入っているので飲みやすいですし、この組み合わせなら健胃薬としての効果も申し分ないかと」
「飲みやすさ……そこまでお考えでしたか。いやはや、感服いたしました」
「エリン先生、さすがです!」
一気に説明を終えると、エドヴィンさんとスフィアは顔を見合わせてから、称賛の言葉をかけてくれた。
嬉しいのだけど、何度経験しても、この感覚は慣れない。
「い、いえ、わたしの薬のほうが多くの薬材を使ってしまいますし、調合も時間がかかります」
「それでも、薬師が三人いれば問題ないでしょう。では、エリン様の配合で調合に取りかかりましょう」
言うが早いか、エドヴィンさんは薬棚から必要な薬材を取り出していく。
「わ、わかりました。スフィアも、よろしくお願いしますね」
「はい! 粉骨砕身の精神で頑張ります!」
「ど、どこでそんな言葉を覚えてきたんですか。砕くのは薬材だけにしておいてください……!」
思わずそんな言葉を口にしたあと、わたしたちはそれぞれの作業に取りかかった。
◇
三人の努力の甲斐あって、お昼前には必要数の薬が完成する。
「エリンさんたち、おつかれさまー! ご飯食べたら、さっそく配りに行こうよ!」
その作業が終わるのを待っていたかのように、マイラさんとクロエさんが調合室へとやってきた。
二人からサンドイッチを受け取ったあと、それを頬張りつつ、わたしたちは急ぎ足で街へと向かった。
四人で相談した結果、薬はフランティオ工房の近くで配ることにした。
以前の経験から、体調を崩した人たちは薬を求めて薬師工房に殺到していると予想したのだ。
「うわー、すごい並んでるね」
「本当ですね……薬、間に合っていないんでしょうか」
工房周辺までやってくると、想像以上にたくさんの人が薬を待っていることがわかった。
その様子を見て、マイラさんとクロエさんが心配そうな声を上げる。
街の住民だけでなく、旅行客らしき姿も見える。
観光の街ならではの事情もあって、患者数が増えているのかもしれない。
「それじゃ、さっそく薬を配っちゃいましょう! エリンさんは私たちの後ろにいてください!」
その人の多さに圧倒されていると、クロエさんがそう言って、わたしの前に出てくれる。
「い、いえ。わたしも頑張って配ります。人は怖いですけど」
自然と後ろに下がりそうになった自分を押し留めて、クロエさんに立ち並ぶ。気持ちは嬉しいけど、彼女たちに頼ってばかりもいられない。
「それでは、頑張って配りましょう! おー!」
「おー!」
その様子を見て、スフィアが可愛らしく拳を突き上げる。
マイラさんとクロエさんがそれに続いたあと、わたしも少し遅れて声を上げたのだった。
「ノーハット伯爵様の使者として、お薬を持ってまいりましたー! どうぞ、受け取ってくださーい!」
「よく効くお腹のお薬ですよー!」
「効き目は、ここにいるエリンさんが保証するよー!」
その後、薬を待つ人たちに向けて、三人の元気な声が飛ぶ。
「え? 薬を配ってるのか? しかも無料だって……?」
「いくら伯爵様のご厚意とはいえ、そんな虫のいい話があるのか?」
「気にはなるけど、俺は並んででも工房の薬を買うよ。怪しい連中が作った薬を飲ませて、ばーさんにもしものことがあったら大変だ」
その声を聞いた人々は一瞬反応するも……すぐに怪訝そうな顔をし、誰一人として薬を受け取ってはくれなかった。
先日の一件から、フランティオ工房の工房長は調合があまり上手ではないことはわかっている。
それでも、長年店を出しているということもあり、突然現れたわたしたちよりは街の皆の信頼を得ているようだ。
伯爵様の配慮で薬を無料にしたのも、怪しさに拍車をかけてしまっているのかもしれない。
「あのー、怪しくないですよー。先生の薬は、すごいんですからー……」
先程まで元気だったスフィアの声も、急激にしぼんでいく。
薬を使ってさえもらえれば、その効果がわかってもらえるというのに。
「……おや、そこにいるのは、いつぞやの薬師様ではありませんか」
なんとも言えない空気がわたしたちを包んだ時、背後から声がした。
振り返ってみると、そこに立っていたのは、以前心臓の薬を作ってあげたおじいさんだった。
「エリンさん、おかえりー。その手に持ってるのは何?」
部屋の扉を開けるやいなや、マイラさんの明るい声が飛んできた。
「た、ただいま戻りました。えっと、これはですね……」
わたしはその場で経緯を説明し、食中毒事件の調査を任されたことを伝える。
同時に薬の調合を依頼されたことも話し、スフィアにその手伝いをしてくれるようにお願いした。
「もちろんです! 街の皆さんのため、頑張って作ります!」
彼女は快諾してくれ、愛用の薬研を引っ張り出しながら、やる気に満ちあふれていた。
街の皆のため……と言うところがスフィアらしくて、師匠として嬉しくなる。
「食中毒事件については、私のほうで下調べをしておきますね。商会の情報網を使えば、何かわかるかもしれませんし」
口元に手を当てながら、クロエさんが言う。
つい忘れがちになるけど、彼女はリーベルグ商会のお嬢様だった。わたしが想像できないような情報網を持っているのだろうし、こういう時は本当に頼りになる。
「あ、完成した薬を配る時は、もちろん私たちにも声をかけてくださいね。手伝いますから」
「そうだよー! エリンさん、人前に出たら銅像みたく固まっちゃうだろうしさ!」
「あ、ありがとうございます。その時は、よろしくお願いします」
続いてそう言ってくれる二人に頭を下げたあと、わたしは割烹着に着替える。
それからスフィアの手を引いて、調合室へと向かった。
調合室の扉を開けると、そこにはすでにエドヴィンさんの姿があった。
「エリン様、お待ちしておりました」
「ど、どうも。お待たせして、すみません」
一言謝ってから、わたしはスフィアとともに調合室へと足を踏み入れる。
エドヴィンさんは薬棚の前に立っていて、一足先に準備を進めてくれているようだった。
「そ、それで、どの薬を作るかもう決めているんですか?」
「いえ、それこそエリン様に相談しようと思っていたところです」
わたしが問いかけると、エドヴィンさんは難しい顔をしながら言い、一枚のメモを差し出してくる。
それに目を通してみると、そこには見慣れた薬材名がずらりと並んでいた。
「あの、これは?」
「現状、この屋敷にある薬材のリストです。どう組み合わせるべきか、頭を悩ませていまして」
「そ、そうですね。この薬材だと……」
受け取ったリストを一通り眺めてから、わたしは考えを巡らせる。
そして小さく息を吐いたあと、それを言葉にしていく。
「は、伯爵様から頂いた資料には、患者さんたちの症状も細かく書いていました。それによると、主な症状は嘔吐と下痢、腹痛だそうです。なので、ここはオバケソウモドキや音止め草、オレンジの皮を使った薬を作るのがいいかと」
「ふむ……ゴールデンリーフを主薬としたものではなく、その三つの薬材を選んだ理由はございますか?」
「ゴールデンリーフも胃腸薬として優秀ですが、強力な分、体質によっては合わない方がいるんです。資料によれば、食中毒を起こしているのはお年寄りや子どもが多いですし、こちらのほうが良いかと思いまして。効き目は多少緩やかになりますが、オレンジの皮が入っているので飲みやすいですし、この組み合わせなら健胃薬としての効果も申し分ないかと」
「飲みやすさ……そこまでお考えでしたか。いやはや、感服いたしました」
「エリン先生、さすがです!」
一気に説明を終えると、エドヴィンさんとスフィアは顔を見合わせてから、称賛の言葉をかけてくれた。
嬉しいのだけど、何度経験しても、この感覚は慣れない。
「い、いえ、わたしの薬のほうが多くの薬材を使ってしまいますし、調合も時間がかかります」
「それでも、薬師が三人いれば問題ないでしょう。では、エリン様の配合で調合に取りかかりましょう」
言うが早いか、エドヴィンさんは薬棚から必要な薬材を取り出していく。
「わ、わかりました。スフィアも、よろしくお願いしますね」
「はい! 粉骨砕身の精神で頑張ります!」
「ど、どこでそんな言葉を覚えてきたんですか。砕くのは薬材だけにしておいてください……!」
思わずそんな言葉を口にしたあと、わたしたちはそれぞれの作業に取りかかった。
◇
三人の努力の甲斐あって、お昼前には必要数の薬が完成する。
「エリンさんたち、おつかれさまー! ご飯食べたら、さっそく配りに行こうよ!」
その作業が終わるのを待っていたかのように、マイラさんとクロエさんが調合室へとやってきた。
二人からサンドイッチを受け取ったあと、それを頬張りつつ、わたしたちは急ぎ足で街へと向かった。
四人で相談した結果、薬はフランティオ工房の近くで配ることにした。
以前の経験から、体調を崩した人たちは薬を求めて薬師工房に殺到していると予想したのだ。
「うわー、すごい並んでるね」
「本当ですね……薬、間に合っていないんでしょうか」
工房周辺までやってくると、想像以上にたくさんの人が薬を待っていることがわかった。
その様子を見て、マイラさんとクロエさんが心配そうな声を上げる。
街の住民だけでなく、旅行客らしき姿も見える。
観光の街ならではの事情もあって、患者数が増えているのかもしれない。
「それじゃ、さっそく薬を配っちゃいましょう! エリンさんは私たちの後ろにいてください!」
その人の多さに圧倒されていると、クロエさんがそう言って、わたしの前に出てくれる。
「い、いえ。わたしも頑張って配ります。人は怖いですけど」
自然と後ろに下がりそうになった自分を押し留めて、クロエさんに立ち並ぶ。気持ちは嬉しいけど、彼女たちに頼ってばかりもいられない。
「それでは、頑張って配りましょう! おー!」
「おー!」
その様子を見て、スフィアが可愛らしく拳を突き上げる。
マイラさんとクロエさんがそれに続いたあと、わたしも少し遅れて声を上げたのだった。
「ノーハット伯爵様の使者として、お薬を持ってまいりましたー! どうぞ、受け取ってくださーい!」
「よく効くお腹のお薬ですよー!」
「効き目は、ここにいるエリンさんが保証するよー!」
その後、薬を待つ人たちに向けて、三人の元気な声が飛ぶ。
「え? 薬を配ってるのか? しかも無料だって……?」
「いくら伯爵様のご厚意とはいえ、そんな虫のいい話があるのか?」
「気にはなるけど、俺は並んででも工房の薬を買うよ。怪しい連中が作った薬を飲ませて、ばーさんにもしものことがあったら大変だ」
その声を聞いた人々は一瞬反応するも……すぐに怪訝そうな顔をし、誰一人として薬を受け取ってはくれなかった。
先日の一件から、フランティオ工房の工房長は調合があまり上手ではないことはわかっている。
それでも、長年店を出しているということもあり、突然現れたわたしたちよりは街の皆の信頼を得ているようだ。
伯爵様の配慮で薬を無料にしたのも、怪しさに拍車をかけてしまっているのかもしれない。
「あのー、怪しくないですよー。先生の薬は、すごいんですからー……」
先程まで元気だったスフィアの声も、急激にしぼんでいく。
薬を使ってさえもらえれば、その効果がわかってもらえるというのに。
「……おや、そこにいるのは、いつぞやの薬師様ではありませんか」
なんとも言えない空気がわたしたちを包んだ時、背後から声がした。
振り返ってみると、そこに立っていたのは、以前心臓の薬を作ってあげたおじいさんだった。
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