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第三部 夏の思い出を作りに行きます!?
第17話『薬師、お嬢様と採取に赴く』
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無事にオレンジの皮を手に入れたわたしたちは、続いてオバケソウモドキを探すことにした。
一旦別荘に戻り、作戦を考える。
「オバケソウモドキ……花屋さんに売ってますかねぇ」
「さ、さすがに売ってないと思います。薬材の知識がない人からすれば、野に咲く花の一つにしか見えないでしょうから。わざわざ花屋さんに卸す価値がありません」
客室のベッドに寝っ転がりながら、スフィアが期待を込めて言うも……わたしはすぐにそれを否定する。
「じゃあ、どこかに採りに行くんですか?」
「は、はい。この近くの丘の上に生えていると、エドヴィンさんから教えてもらいました」
「そうなんですね! なら、今すぐ行きましょう!」
「あ、スフィア、待ってください」
「ぐえっ」
今にも部屋から飛び出さんとするスフィアの襟首を捕まえる。直後、彼女はカエルのような声を出した。
「近いと言っても、険しい山道を登らないといけません。今から出発しても、到着するころには日が落ちてしまいますので、採取は明日にしましょう」
「そ、そうなんですね。うぅ、早くイアン様を助けたいのに……」
「ス、スフィアの気持ちはわかりますが、あの丘には魔物も出るんです。なので、明日はお留守番です」
「そんなぁ……」
わたしの言葉を聞いて、スフィアはへなへなとその場に座り込んでしまう。
かわいそうだけど、この子を危険な目に遭わせるわけにはいかない。明日はわたしとマイラさんの二人で採取に向かうことにしよう。
◇
……そして翌朝。
昨夜のうちにマイラさんに事情を説明し、日の出とともに出発……するつもりだったのだけど。
玄関扉を開けると、そこには満面の笑みのスフィアとオリヴィア様が立っていた。
その後ろには、浮かない表情のエドヴィンさんの姿も見える。
「あの、どうかしたんですか。お見送りにしては、人数が多いような」
なんとなく状況を察しつつも、わたしはそんな言葉を口にする。
「エリンさん、スフィアちゃんから話は聞かせてもらいました。仲間外れはいけません」
オリヴィア様は笑顔のまま言い、スフィアを連れ立って前に出てくる。
「今回の採取、スフィアちゃんを同行させてあげてください」
そして、そう続けた。
昨夜、やけにお風呂からの帰りが遅いと思っていたけど、スフィアはオリヴィア様に相談しに行っていたようだ。
「あの、オリヴィア様の気持ちはわかりますが、丘の上は危険なんです」
「存じ上げておりますわ。それでしたら、わたくしも同行いたします」
「えぇ!?」
思わず、妙な声が出てしまった。
どうしてそうなるの。わたし、危ないって言ったよね!? 万が一、貴族様に怪我をさせようものなら、薬師としての面目が……!
「あのあの、本当に危ないんですよ。魔物も出るんです。そうですよね?」
わたわたしながら言葉を紡いだあと、二人の背後にいるエドヴィンさんを見る。
「……危険なのでおやめくださいと、私も幾度となくお伝えしたのですが」
そう言うエドヴィンさんは、すでに諦め顔だった。
「危険なことは百も承知ですわ。イアンが苦しんでいるというのに、姉のわたくしが何もしないわけにはいきません」
「私もです!」
凛とした表情でオリヴィア様が言い、スフィアがそれに続く。ああ、そういうことかぁ……。
「スフィアちゃん、イアンのため、力を合わせて頑張りましょうね!」
「はい!」
直後、二人は笑顔で握手を交わす。これは、完全にイアン同盟が結ばれてしまっているようだった。
「マ、マイラさん~……」
わたしはワラにもすがる思いで、隣のマイラさんを見る。
用心棒としての経験から、丘の上は危険なのだと、二人にびしっと言ってほしい。
「んー、エドヴィンさん、あの丘に出る魔物って、グレーウルフだっけ?」
「そうですね。基本的に単独行動を好み、群れを作ることは滅多にありません」
「それなら、あたし一人でもなんとかなるかなぁ。ついてきても良いんじゃない?」
マイラさんが軽い口調でそう告げると、スフィアとオリヴィア様は手を取り合って喜んでいた。わたしの願いは、もろくも崩れ去ってしまったようだった。
……エドヴィンさんに見送られながら、わたしたちは別荘をあとにする。
「そ、それでは、行ってまいります」
「お気をつけて。オリヴィアお嬢様を頼みましたよ」
今から向かうのは、オバケソウモドキの採取場所。そこはノーハット家の別荘から、小高い丘を登った先にある。
小高い……といっても、この街は半島に突き出しているので、四方から吹きつける海風によって岩肌が削り取られ、その道中は悪路を極めていた。
「ほらエリンさん、あたしの手を掴んでー」
「あ、ありがとうございます……」
「スフィアちゃんも、足元気をつけてよー」
「ひー、頑張りますー」
所々に難所と呼べるような場所があり、わたしとスフィアはその都度、先頭を行くマイラさんに助けてもらう。
「薬材というものは、こんな厳しい環境下で育つものなのですね。採取する方の苦労も知らずに使っていた自分が恥ずかしいですわ」
……そんな中、オリヴィア様は平然とした顔でわたしたちの後ろをついてくる。
いやいや、今回はたまたまこんな場所にしか生えてなかっただけで、散歩コースになっている森の中とかにも、普通に生えてるから!
心の中で叫ぶも、実際に口にはできず。
というか、両手に荷物を持った状態でわたしたちについてくるオリヴィア様のほうがすごい。
右手のバスケットはお弁当だとしても、反対の手にあるのは……長い棒? 布に包まれていて、よくわからない。
何にしても、イアン様への愛情が為せる技なのかな。
……それからしばらくして、わたしたちはようやく丘の上にたどり着いた。
一旦別荘に戻り、作戦を考える。
「オバケソウモドキ……花屋さんに売ってますかねぇ」
「さ、さすがに売ってないと思います。薬材の知識がない人からすれば、野に咲く花の一つにしか見えないでしょうから。わざわざ花屋さんに卸す価値がありません」
客室のベッドに寝っ転がりながら、スフィアが期待を込めて言うも……わたしはすぐにそれを否定する。
「じゃあ、どこかに採りに行くんですか?」
「は、はい。この近くの丘の上に生えていると、エドヴィンさんから教えてもらいました」
「そうなんですね! なら、今すぐ行きましょう!」
「あ、スフィア、待ってください」
「ぐえっ」
今にも部屋から飛び出さんとするスフィアの襟首を捕まえる。直後、彼女はカエルのような声を出した。
「近いと言っても、険しい山道を登らないといけません。今から出発しても、到着するころには日が落ちてしまいますので、採取は明日にしましょう」
「そ、そうなんですね。うぅ、早くイアン様を助けたいのに……」
「ス、スフィアの気持ちはわかりますが、あの丘には魔物も出るんです。なので、明日はお留守番です」
「そんなぁ……」
わたしの言葉を聞いて、スフィアはへなへなとその場に座り込んでしまう。
かわいそうだけど、この子を危険な目に遭わせるわけにはいかない。明日はわたしとマイラさんの二人で採取に向かうことにしよう。
◇
……そして翌朝。
昨夜のうちにマイラさんに事情を説明し、日の出とともに出発……するつもりだったのだけど。
玄関扉を開けると、そこには満面の笑みのスフィアとオリヴィア様が立っていた。
その後ろには、浮かない表情のエドヴィンさんの姿も見える。
「あの、どうかしたんですか。お見送りにしては、人数が多いような」
なんとなく状況を察しつつも、わたしはそんな言葉を口にする。
「エリンさん、スフィアちゃんから話は聞かせてもらいました。仲間外れはいけません」
オリヴィア様は笑顔のまま言い、スフィアを連れ立って前に出てくる。
「今回の採取、スフィアちゃんを同行させてあげてください」
そして、そう続けた。
昨夜、やけにお風呂からの帰りが遅いと思っていたけど、スフィアはオリヴィア様に相談しに行っていたようだ。
「あの、オリヴィア様の気持ちはわかりますが、丘の上は危険なんです」
「存じ上げておりますわ。それでしたら、わたくしも同行いたします」
「えぇ!?」
思わず、妙な声が出てしまった。
どうしてそうなるの。わたし、危ないって言ったよね!? 万が一、貴族様に怪我をさせようものなら、薬師としての面目が……!
「あのあの、本当に危ないんですよ。魔物も出るんです。そうですよね?」
わたわたしながら言葉を紡いだあと、二人の背後にいるエドヴィンさんを見る。
「……危険なのでおやめくださいと、私も幾度となくお伝えしたのですが」
そう言うエドヴィンさんは、すでに諦め顔だった。
「危険なことは百も承知ですわ。イアンが苦しんでいるというのに、姉のわたくしが何もしないわけにはいきません」
「私もです!」
凛とした表情でオリヴィア様が言い、スフィアがそれに続く。ああ、そういうことかぁ……。
「スフィアちゃん、イアンのため、力を合わせて頑張りましょうね!」
「はい!」
直後、二人は笑顔で握手を交わす。これは、完全にイアン同盟が結ばれてしまっているようだった。
「マ、マイラさん~……」
わたしはワラにもすがる思いで、隣のマイラさんを見る。
用心棒としての経験から、丘の上は危険なのだと、二人にびしっと言ってほしい。
「んー、エドヴィンさん、あの丘に出る魔物って、グレーウルフだっけ?」
「そうですね。基本的に単独行動を好み、群れを作ることは滅多にありません」
「それなら、あたし一人でもなんとかなるかなぁ。ついてきても良いんじゃない?」
マイラさんが軽い口調でそう告げると、スフィアとオリヴィア様は手を取り合って喜んでいた。わたしの願いは、もろくも崩れ去ってしまったようだった。
……エドヴィンさんに見送られながら、わたしたちは別荘をあとにする。
「そ、それでは、行ってまいります」
「お気をつけて。オリヴィアお嬢様を頼みましたよ」
今から向かうのは、オバケソウモドキの採取場所。そこはノーハット家の別荘から、小高い丘を登った先にある。
小高い……といっても、この街は半島に突き出しているので、四方から吹きつける海風によって岩肌が削り取られ、その道中は悪路を極めていた。
「ほらエリンさん、あたしの手を掴んでー」
「あ、ありがとうございます……」
「スフィアちゃんも、足元気をつけてよー」
「ひー、頑張りますー」
所々に難所と呼べるような場所があり、わたしとスフィアはその都度、先頭を行くマイラさんに助けてもらう。
「薬材というものは、こんな厳しい環境下で育つものなのですね。採取する方の苦労も知らずに使っていた自分が恥ずかしいですわ」
……そんな中、オリヴィア様は平然とした顔でわたしたちの後ろをついてくる。
いやいや、今回はたまたまこんな場所にしか生えてなかっただけで、散歩コースになっている森の中とかにも、普通に生えてるから!
心の中で叫ぶも、実際に口にはできず。
というか、両手に荷物を持った状態でわたしたちについてくるオリヴィア様のほうがすごい。
右手のバスケットはお弁当だとしても、反対の手にあるのは……長い棒? 布に包まれていて、よくわからない。
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