44 / 91
第四部 また追放されました!?
第7話『薬師、双子たちと薬を配る』
しおりを挟む
……結局、ロヴェル君の調合作業が終わったのは、お昼を過ぎた頃だった。
その頃になるとメアリーちゃんもベッドから起きてきて、五人で遅めの昼食を済ませる。
それから皆で薬を配りに行こうとするも……ロヴェル君は自分の作った喉の薬だけを持つと、一人でさっさと出かけてしまった。
「きっと、アンナのところだよ」
「うんうん。間違いないね」
そんな彼の背を見送りながら、双子ちゃんたちはクスクスと笑っていた。
……アンナって誰だろう。
「ねぇエリンさん、まずは誰に薬を持っていくの?」
思わず首を傾げていると、ミーナちゃんがそう訊いてくる。
「えっと、最初は腰痛の薬で、依頼主はベルゼットさんという男性の方です」
「ベルゼットさんだね! こっちだよ!」
「時間あるし、配達がてら村を案内してあげる! メアリーも行こう!」
「わーい! おでかけ! おでかけ!」
言うが早いか、双子たちはわたしの手を引いて走り出す。
そんな中、メアリーちゃんは外出が嬉しいのか、わたしたちの後ろを跳ねるようについてくる。
病み上がりだし、あまりはしゃぎ過ぎないでほしいんだけど。
◇
……やがて二人に案内され、わたしは村はずれにある古い家を訪れる。
「……なんじゃ、お前は」
その扉を叩くと、中から立派なひげを蓄えた初老の男性が姿を現す。
「え、えっと、あのその」
「ベルゼットさん、こんにちは! この人は王都からやってきた薬師さんで、エリンさんっていうの! 遅くなったけど、頼まれてた腰痛の薬、作ってきたよ!」
その容姿に気圧され、わたしがしどろもどろになる中……双子ちゃんたちは顔なじみなのか、愛嬌を振りまきながらわたしを紹介してくれる。
「なんじゃ。噂に聞くニグラード工房の後釜か」
「え、いやその、わたしは後釜ではなくて、指導役……」
そう説明するも、ベルゼットさんは聞く耳持たず。そのシワだらけの大きな手で薬の入った袋をむんずと掴むと、家の中へと戻っていった。
「よかったねー。ベルゼットさん、喜んでたよ!」
「え、あれで?」
メアリーちゃんの言葉に、思わず大きな声が出てしまう。ずっと眉間にシワを寄せていたし、とても喜んでいるようには見えなかったけど。
そんなことを考えていた矢先、再び扉が開く。
「……これでも食え」
ベルゼットさんはそう言って、大量の栗を手渡してくれる。
「わーい! 栗だー!」
「あ、ありがとうございます」
「……」
喜ぶ双子たちの代わりにお礼を言うも、ベルゼットさんはわずかに頷いて、家の中に戻ってしまった。
……無愛想な人だけど、本当に喜んでもらえたのかな。
それからも家々を巡り、薬を届けていく。
その度に双子ちゃんたちがわたしを紹介してくれるのだけど……住民たちは誰もが怪訝そうな目でわたしを見てくる。
田舎特有の……他所者に対する警戒感だとは思うけど、なんだか歓迎されていないような気がして、わたしはなんともいえない気持ちになった。
「あ、エリンさん、ちょっとこっちに!」
……そうこうしていると、前を歩いていたニーナちゃんたちが木の陰に隠れた。わたしも思わず、同じように身を隠してしまう。
「い、いったいどうしたんですか?」
「ほら、あそこ。ロヴェルがいるよ」
言われたほうを見てみると、そこには一人の少女と楽しげに会話をするロヴェル君の姿があった。
「この薬、ロヴェルが作ってくれたの?」
「へへっ、まぁな」
「ありがとう。もう少しでまた寝込んじゃうとこだったよ……ケホ、ケホ」
長い金髪を大きめの三つ編みにした少女は嬉しそうに言うも、直後に咳き込んでいた。
「アンナ、無理すんなよ。また歌、聞きたいしさ」
「うん。また良くなったら聞かせてあげるよ。村の発表会も近いし、そのうち練習も……ケホッ」
アンナと呼ばれた少女は再び咳き込む。喉の薬を欲しがるくらいだし、調子が悪そうだ。
「ロヴェルはねー、アンナのこと、好きなんだよ」
「そうそう。ロヴェルと同い年なんだけど、歌がすごく上手なの」
双子たちは顔を見合わせて笑いあう。
こんな小さな村でも、色恋沙汰はつきもののようだ。
「げ、お前ら、見てたのかよっ」
その時、ロヴェル君に見つかってしまった。彼は血相を変えて、わたしたちの側にやってくる。
「見てたよー。アンナ、元気そうで何よりだね」
「うるさいっ、どっか行けよっ」
ミーナちゃんが茶化すように言うも、ロヴェル君は怒り心頭。ほとんど突き飛ばすように、わたしたちを追い払う。
……まぁ、今のところはアンナちゃんの症状も軽いようだし、急を要することもなさそうだ。
しばらく経過観察をすることにしよう。
その頃になるとメアリーちゃんもベッドから起きてきて、五人で遅めの昼食を済ませる。
それから皆で薬を配りに行こうとするも……ロヴェル君は自分の作った喉の薬だけを持つと、一人でさっさと出かけてしまった。
「きっと、アンナのところだよ」
「うんうん。間違いないね」
そんな彼の背を見送りながら、双子ちゃんたちはクスクスと笑っていた。
……アンナって誰だろう。
「ねぇエリンさん、まずは誰に薬を持っていくの?」
思わず首を傾げていると、ミーナちゃんがそう訊いてくる。
「えっと、最初は腰痛の薬で、依頼主はベルゼットさんという男性の方です」
「ベルゼットさんだね! こっちだよ!」
「時間あるし、配達がてら村を案内してあげる! メアリーも行こう!」
「わーい! おでかけ! おでかけ!」
言うが早いか、双子たちはわたしの手を引いて走り出す。
そんな中、メアリーちゃんは外出が嬉しいのか、わたしたちの後ろを跳ねるようについてくる。
病み上がりだし、あまりはしゃぎ過ぎないでほしいんだけど。
◇
……やがて二人に案内され、わたしは村はずれにある古い家を訪れる。
「……なんじゃ、お前は」
その扉を叩くと、中から立派なひげを蓄えた初老の男性が姿を現す。
「え、えっと、あのその」
「ベルゼットさん、こんにちは! この人は王都からやってきた薬師さんで、エリンさんっていうの! 遅くなったけど、頼まれてた腰痛の薬、作ってきたよ!」
その容姿に気圧され、わたしがしどろもどろになる中……双子ちゃんたちは顔なじみなのか、愛嬌を振りまきながらわたしを紹介してくれる。
「なんじゃ。噂に聞くニグラード工房の後釜か」
「え、いやその、わたしは後釜ではなくて、指導役……」
そう説明するも、ベルゼットさんは聞く耳持たず。そのシワだらけの大きな手で薬の入った袋をむんずと掴むと、家の中へと戻っていった。
「よかったねー。ベルゼットさん、喜んでたよ!」
「え、あれで?」
メアリーちゃんの言葉に、思わず大きな声が出てしまう。ずっと眉間にシワを寄せていたし、とても喜んでいるようには見えなかったけど。
そんなことを考えていた矢先、再び扉が開く。
「……これでも食え」
ベルゼットさんはそう言って、大量の栗を手渡してくれる。
「わーい! 栗だー!」
「あ、ありがとうございます」
「……」
喜ぶ双子たちの代わりにお礼を言うも、ベルゼットさんはわずかに頷いて、家の中に戻ってしまった。
……無愛想な人だけど、本当に喜んでもらえたのかな。
それからも家々を巡り、薬を届けていく。
その度に双子ちゃんたちがわたしを紹介してくれるのだけど……住民たちは誰もが怪訝そうな目でわたしを見てくる。
田舎特有の……他所者に対する警戒感だとは思うけど、なんだか歓迎されていないような気がして、わたしはなんともいえない気持ちになった。
「あ、エリンさん、ちょっとこっちに!」
……そうこうしていると、前を歩いていたニーナちゃんたちが木の陰に隠れた。わたしも思わず、同じように身を隠してしまう。
「い、いったいどうしたんですか?」
「ほら、あそこ。ロヴェルがいるよ」
言われたほうを見てみると、そこには一人の少女と楽しげに会話をするロヴェル君の姿があった。
「この薬、ロヴェルが作ってくれたの?」
「へへっ、まぁな」
「ありがとう。もう少しでまた寝込んじゃうとこだったよ……ケホ、ケホ」
長い金髪を大きめの三つ編みにした少女は嬉しそうに言うも、直後に咳き込んでいた。
「アンナ、無理すんなよ。また歌、聞きたいしさ」
「うん。また良くなったら聞かせてあげるよ。村の発表会も近いし、そのうち練習も……ケホッ」
アンナと呼ばれた少女は再び咳き込む。喉の薬を欲しがるくらいだし、調子が悪そうだ。
「ロヴェルはねー、アンナのこと、好きなんだよ」
「そうそう。ロヴェルと同い年なんだけど、歌がすごく上手なの」
双子たちは顔を見合わせて笑いあう。
こんな小さな村でも、色恋沙汰はつきもののようだ。
「げ、お前ら、見てたのかよっ」
その時、ロヴェル君に見つかってしまった。彼は血相を変えて、わたしたちの側にやってくる。
「見てたよー。アンナ、元気そうで何よりだね」
「うるさいっ、どっか行けよっ」
ミーナちゃんが茶化すように言うも、ロヴェル君は怒り心頭。ほとんど突き飛ばすように、わたしたちを追い払う。
……まぁ、今のところはアンナちゃんの症状も軽いようだし、急を要することもなさそうだ。
しばらく経過観察をすることにしよう。
115
あなたにおすすめの小説
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。