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第四部 また追放されました!?
第9話『薬師、森で食料を探す』
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ルークリッド村の近くにある森は、以前訪れたことのあるミランダ王国近郊の森と違って、ほとんど人の手が入っていなかった。
好き放題に伸び切った草をかき分けて、わたしたちは森の中を進む。
「あ、これはイノシシが通ったあとだねー」
「こっちは野ウサギの巣穴があるー」
わたしの前を軽快な足取りで進みながら、双子の少女たちは歌うように言う。
「え、危ない動物はいないって言ってませんでしたか?」
「そりゃ、熊はいないけど。他の動物はいるよー」
「そ、そうですか」
イノシシは危なくないのかな……なんて考えつつ、二人のあとをついていく。まぁ、それだけ森が豊かということなのだろう。
無理矢理に自分を納得させながら、更に森の奥へと進む。やがて開けた場所に出た。
「この辺でいいかなー。それじゃ、薪を集めよう!」
続いてミーナちゃんがそう号令を発し、三人で枝拾いを始める。
思えば、また彼女に主導権を握られている気がする。わたし、一応最年長者なのに。
頭の片隅でそんなことを考えつつ、地面に落ちた枝を拾ってはかごに入れていく。
……道中、近くの茂みから飛び出してきた野ウサギに驚かされたりしたけど、それ以外は特に何の問題もなく、木の枝を集めることができた。
「これだけあれば、しばらく薪には困らないかなー。じゃあ、次は食材探しだね!」
来た道をゆっくりと戻りながら、姉妹は周囲に視線を向ける。
この辺りの植物にはまだ詳しくないけど、食べられるものが多いのかな。
「あっ、このキノコは食べられるやつだ!」
そんな矢先、ニーナちゃんが朽木に生えたキノコを手に取る。
「え、それって白メリルタケでは?」
「そうだよー。エリンさん、知ってるの?」
「し、知ってるも何も……それって高級食材じゃないですか。王都だと、貴族専用のレストランにしか卸さないと、クロエさん……お友だちが言っていました」
「そうなのー? そこら中に生えてるけど」
首を傾げたあと、ニーナちゃんは周囲を見渡す。彼女の言う通り、至るところに真っ白いキノコが生えていた。
「これは、晩ごはんはキノコ鍋だね! ニーナちゃん、調理よろしく!」
ぶちぶちと高級キノコを引き抜きながら、ミーナちゃんが何か言っていた。
貴族御用達の高級キノコでキノコ鍋とか、信じられない。
王都周辺で採取されないから高値がついているだけで、この村ではそこまでの価値がないのかも。あるいは、ただ単に価値を知らないだけかもしれないけど。
……そんなこんなで食料を探して森の中を歩いていると、真っ赤な実を大量に実らせた木を見つけた。
「あっ、リクの実だ! 懐かしい!」
その木を見た瞬間、ニーナちゃんが叫ぶ。
「この木の実、食べられるんですか?」
「うん! おばあちゃんがよく、この実を使ったジャムを作ってくれてたの!」
「そうそう! おいしかったよねぇ」
二人はその木を見つめながら、なんとも言えない表情をする。それは懐かしいものを見るようでもあり、寂しげでもあった。
「せっかくだし、エリンさんも食べてみてよ! そのままでもおいしいから!」
その時、ミーナちゃんがそう言ってリクの実をむしり取り、わたしに差し出してきた。
それを受け取ると、一口で食べてみる。
……少し硬い野イチゴのような食感のあと、かなり強い酸味が口の中に広がる。それに加えて、種が多かった。
「んー! んー! ぺっぺっ」
口の中の違和感に耐えきれず、わたしはリクの実を吐き出してしまう。
「あっははは! すっぱいでしょー?」
「もー、ミーナちゃん、意地悪しちゃダメだよー」
申し訳ない気持ちでいっぱいになっていると、彼女たちはそう言って笑った。
……どうやら、二人にしてやられたみたいだ。
「エリンさん、ごめんねぇ。でも、ジャムにしたらおいしいのは本当だよ」
「そ、そうなんですね……」
そこまで言われて、わたしはあることを思いついた。
もし、この子たちの言う『おばあちゃんのジャム』を再現することができたら、ロヴェル君も喜んでくれるかもしれない。
うまくことが運べば、彼と打ち解けるきっかけになるかもだし。
「あの、この木の実、持って帰ってもいいでしょうか。そのジャム、作ってみたくて」
わたしがそんな提案をすると、双子たちは顔を見あわせた。
「いいけど……ジャムのレシピとかあったかなぁ」
そう言われればそうだ。レシピが残っているのなら『懐かしい』なんて表現はしない。すでに失われている可能性が高い。
「もしかしたら、おばーちゃんの部屋にあるかもしれないけど……あそこは誰も入れるなって、ロヴェルにきつく言われてるしね」
「うん……さすがに入れないよ」
続いて彼女たちは、そう言って頷きあう。
言われてみれば、二階の廊下の突き当りに扉があった。あの部屋がそうなのかな。
「まぁ、レシピはロヴェルに聞いてみるとして、とりあえずリクの実を摘んで帰ろうよ」
「そうだね。ジャム以外にも、ソースとかに使えるし」
やがて二人は納得顔で言って、リクの実を採り始める。
わたしは慌てて、彼女たちに続いたのだった。
好き放題に伸び切った草をかき分けて、わたしたちは森の中を進む。
「あ、これはイノシシが通ったあとだねー」
「こっちは野ウサギの巣穴があるー」
わたしの前を軽快な足取りで進みながら、双子の少女たちは歌うように言う。
「え、危ない動物はいないって言ってませんでしたか?」
「そりゃ、熊はいないけど。他の動物はいるよー」
「そ、そうですか」
イノシシは危なくないのかな……なんて考えつつ、二人のあとをついていく。まぁ、それだけ森が豊かということなのだろう。
無理矢理に自分を納得させながら、更に森の奥へと進む。やがて開けた場所に出た。
「この辺でいいかなー。それじゃ、薪を集めよう!」
続いてミーナちゃんがそう号令を発し、三人で枝拾いを始める。
思えば、また彼女に主導権を握られている気がする。わたし、一応最年長者なのに。
頭の片隅でそんなことを考えつつ、地面に落ちた枝を拾ってはかごに入れていく。
……道中、近くの茂みから飛び出してきた野ウサギに驚かされたりしたけど、それ以外は特に何の問題もなく、木の枝を集めることができた。
「これだけあれば、しばらく薪には困らないかなー。じゃあ、次は食材探しだね!」
来た道をゆっくりと戻りながら、姉妹は周囲に視線を向ける。
この辺りの植物にはまだ詳しくないけど、食べられるものが多いのかな。
「あっ、このキノコは食べられるやつだ!」
そんな矢先、ニーナちゃんが朽木に生えたキノコを手に取る。
「え、それって白メリルタケでは?」
「そうだよー。エリンさん、知ってるの?」
「し、知ってるも何も……それって高級食材じゃないですか。王都だと、貴族専用のレストランにしか卸さないと、クロエさん……お友だちが言っていました」
「そうなのー? そこら中に生えてるけど」
首を傾げたあと、ニーナちゃんは周囲を見渡す。彼女の言う通り、至るところに真っ白いキノコが生えていた。
「これは、晩ごはんはキノコ鍋だね! ニーナちゃん、調理よろしく!」
ぶちぶちと高級キノコを引き抜きながら、ミーナちゃんが何か言っていた。
貴族御用達の高級キノコでキノコ鍋とか、信じられない。
王都周辺で採取されないから高値がついているだけで、この村ではそこまでの価値がないのかも。あるいは、ただ単に価値を知らないだけかもしれないけど。
……そんなこんなで食料を探して森の中を歩いていると、真っ赤な実を大量に実らせた木を見つけた。
「あっ、リクの実だ! 懐かしい!」
その木を見た瞬間、ニーナちゃんが叫ぶ。
「この木の実、食べられるんですか?」
「うん! おばあちゃんがよく、この実を使ったジャムを作ってくれてたの!」
「そうそう! おいしかったよねぇ」
二人はその木を見つめながら、なんとも言えない表情をする。それは懐かしいものを見るようでもあり、寂しげでもあった。
「せっかくだし、エリンさんも食べてみてよ! そのままでもおいしいから!」
その時、ミーナちゃんがそう言ってリクの実をむしり取り、わたしに差し出してきた。
それを受け取ると、一口で食べてみる。
……少し硬い野イチゴのような食感のあと、かなり強い酸味が口の中に広がる。それに加えて、種が多かった。
「んー! んー! ぺっぺっ」
口の中の違和感に耐えきれず、わたしはリクの実を吐き出してしまう。
「あっははは! すっぱいでしょー?」
「もー、ミーナちゃん、意地悪しちゃダメだよー」
申し訳ない気持ちでいっぱいになっていると、彼女たちはそう言って笑った。
……どうやら、二人にしてやられたみたいだ。
「エリンさん、ごめんねぇ。でも、ジャムにしたらおいしいのは本当だよ」
「そ、そうなんですね……」
そこまで言われて、わたしはあることを思いついた。
もし、この子たちの言う『おばあちゃんのジャム』を再現することができたら、ロヴェル君も喜んでくれるかもしれない。
うまくことが運べば、彼と打ち解けるきっかけになるかもだし。
「あの、この木の実、持って帰ってもいいでしょうか。そのジャム、作ってみたくて」
わたしがそんな提案をすると、双子たちは顔を見あわせた。
「いいけど……ジャムのレシピとかあったかなぁ」
そう言われればそうだ。レシピが残っているのなら『懐かしい』なんて表現はしない。すでに失われている可能性が高い。
「もしかしたら、おばーちゃんの部屋にあるかもしれないけど……あそこは誰も入れるなって、ロヴェルにきつく言われてるしね」
「うん……さすがに入れないよ」
続いて彼女たちは、そう言って頷きあう。
言われてみれば、二階の廊下の突き当りに扉があった。あの部屋がそうなのかな。
「まぁ、レシピはロヴェルに聞いてみるとして、とりあえずリクの実を摘んで帰ろうよ」
「そうだね。ジャム以外にも、ソースとかに使えるし」
やがて二人は納得顔で言って、リクの実を採り始める。
わたしは慌てて、彼女たちに続いたのだった。
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