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第四部 また追放されました!?
第13話『薬師、温泉に入る 前編』
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それからすっかり素直になったロヴェル君は、わたしの指導のもと、調合技術や薬材の知識をどんどんつけていった。
この調子だと、半年後には三級……いや、二級薬師の試験に挑めるかもしれない。
薬師の試験は王都で行われることを彼に伝えると、今から楽しみだと目を輝かせていた。
……その頃には、わたしも王都に戻れるようになるのかな。
◇
充実した日々が続いたある日。わたしはふと気づく。
この村の人たち、お風呂はどうしているんだろう。
王都にいた頃は、工房にもお風呂があった。
大量にお湯を沸かす必要があるから、毎日……というわけにはいかなかったけど、わたしも定期的にお風呂に入っていた。
この村に来てからは……まだ一度も入っていない。
というか、この村でお風呂を見た記憶がなかった。
「……へ? お風呂?」
その日の昼下がり。双子ちゃんたちにお風呂について尋ねてみるも、揃って首を傾げられた。
「そんなの、この村にはないよー」
「うんうん。村長さんの家にもないよね」
二人はからからと笑い合う。
やっぱりそうなんだ。お風呂好きのわたしとしては、そろそろ限界に近いのだけど。
「確かに最近は体洗ってないし、そろそろ温泉に行く?」
「そうだねー。メアリーの体も洗ってあげたいし」
「え、この近くに、温泉があるんですか?」
思いもしなかった単語に、わたしの胸は高鳴る。
ちなみに温泉というのは、地面に染み込んだ雨水が大地の力によって温められ、地上に溢れ出したものだ。
水を温めただけのお風呂と違って、様々な効能がある……と、本で読んだ。わたしも実際に入ったことはない。
「うん。あるよー。時々入りに行くけど、気持ちいいよねー」
「い、いいですね。温泉。入ってみたいです」
「じゃー、久しぶりに皆で行こうかー。しっかりと準備しないとね」
「そうだねー。熊よけの鈴は必須だし、あとは食料と水と……」
勇気を出して提案してみると、双子ちゃんたちは乗り気だった。
……それにしても、準備物が多いような。
「あの、ちょっと待ってください。温泉って、近くにあるんじゃないんですか?」
「温泉はね、森のずっと奥にあるの。熊が出ることもあるよ」
あっけらかんと言って、ミーナちゃんは手にしたパンにリクの実ジャムをつける。
「そ、それはさすがに危ないのでは……?」
「えー、エリンさん、温泉入りたいって言ったよね?」
「い、言いましたが、まさか熊が出るとは……」
「大丈夫だってー。この鈴のおかげで、今まで出会ったことないし」
ニコニコ顔のニーナちゃんが、古ぼけた鈴を見せながら言う。
本当に大丈夫なのかな。温泉に入る前に、熊の胃袋に入ることになったら目も当てられないんだけど。
「えー、俺はいいよ。往復するだけで、半日くらいかかるし」
その時、話を聞いていたロヴェル君が心底めんどくさそうな顔をした。
「そう言わないのー。ロヴェル、最近くさいよ? アンナも言わないだけで、きっと臭いを気にしてるはず……」
「そっ、そんなわけ……!」
ミーナちゃんに言われ、ロヴェル君は自身の匂いを嗅いでいた。直後に、なんともいえない顔をする。
「おふろ、はいりたーい!」
そんな中、メアリーちゃんはすっかりその気だった。
この調子だと、温泉行きの流れは止められそうになかった。何があってもいいように、しっかりと準備しておかないと。
◇
準備を終えたわたしたちは、森へと足を踏み入れる。
「先生、そんな大荷物抱えてどうしたんだ?」
「まるで夜逃げでもするみたいだよー?」
ロヴェル君とミーナちゃんが不思議そうな顔をする。わたしはパンパンに膨れたリュックを背負ったまま、言葉を紡ぐ。
「ま、魔物よけの薬とか、威嚇用の花火、それに、傷薬とかも入っています」
「傷薬って、さっき作ってた軟膏みたいなやつか?」
「そ、そうです。もしかしたら、木の根につまずいて怪我をするかもしれませんし。持っておくに越したことはありません」
そう説明するも、ロヴェル君たちは顔を見合わせていた。
たかが温泉に入りに行くだけなのに、わたしは心配し過ぎなのかな。
……それから森の中を歩くことしばし。時折休憩を挟みながらも、わたしたちは何事もなく温泉へ到着した。
「到着だよー! ほら、何もなかったでしょ?」
ニコニコ顔のニーナちゃんが示す先には、開けた空間が広がっていた。
そこには大きな泉があり、その水は湯気を立てていた。
「わー、すごーい! もわもわー!」
辺り一面に湯気が立ち込める光景が珍しいのか、メアリーちゃんは周囲を駆け回る。
「メアリー、あまりはしゃぐと転ぶぞー。怪我したら、温泉はしみるんだからなー」
そんな彼女を、ロヴェル君がやんわりと注意していた。
周囲の植物は大量の湿気を含んで滑りやすいし、見ているこっちがハラハラする。
「早く入ろうよー!」
「もー、慌てない慌てない」
言うが早いか、メアリーちゃんは服を脱ぎ始める。姉妹はそれを止めることなく、自分たちも同じように脱いでいく。
「わわわーー! ちょっと、ちょっと待ってください!」
次の瞬間、わたしはそんな三人を慌てて止める。
「え? エリンさんどうかしたの?」
「いや、どうかしますよ。ロヴェル君がいるのに、いきなり脱いじゃダメですって」
「あたしたち、気にしないけどなぁ」
髪をまとめながら、姉妹はなんともないように言う。
ずっと一緒に暮らしてるから、普段から見慣れてるとか?
そんなことを考えながら、ロヴェル君を見る。いつしか背中を向けていた。
あれー。ロヴェル君は思いっきり気にしているような。微妙なお年頃だし、当然と言えば当然なのかな。
「エリンお姉ちゃんも、脱いでー」
「そうそう! 見張りはロヴェルに任せて、温泉入ろうよ!」
「ひー! 引っ張らないでくださいー!」
双子姉妹とメアリーちゃんに左右から抱きつかれ、服を引っ張られる。
このままだと服を破かれかねないし、わたしはロヴェル君のほうを気にしながら、いそいそと服を脱いだのだった。
この調子だと、半年後には三級……いや、二級薬師の試験に挑めるかもしれない。
薬師の試験は王都で行われることを彼に伝えると、今から楽しみだと目を輝かせていた。
……その頃には、わたしも王都に戻れるようになるのかな。
◇
充実した日々が続いたある日。わたしはふと気づく。
この村の人たち、お風呂はどうしているんだろう。
王都にいた頃は、工房にもお風呂があった。
大量にお湯を沸かす必要があるから、毎日……というわけにはいかなかったけど、わたしも定期的にお風呂に入っていた。
この村に来てからは……まだ一度も入っていない。
というか、この村でお風呂を見た記憶がなかった。
「……へ? お風呂?」
その日の昼下がり。双子ちゃんたちにお風呂について尋ねてみるも、揃って首を傾げられた。
「そんなの、この村にはないよー」
「うんうん。村長さんの家にもないよね」
二人はからからと笑い合う。
やっぱりそうなんだ。お風呂好きのわたしとしては、そろそろ限界に近いのだけど。
「確かに最近は体洗ってないし、そろそろ温泉に行く?」
「そうだねー。メアリーの体も洗ってあげたいし」
「え、この近くに、温泉があるんですか?」
思いもしなかった単語に、わたしの胸は高鳴る。
ちなみに温泉というのは、地面に染み込んだ雨水が大地の力によって温められ、地上に溢れ出したものだ。
水を温めただけのお風呂と違って、様々な効能がある……と、本で読んだ。わたしも実際に入ったことはない。
「うん。あるよー。時々入りに行くけど、気持ちいいよねー」
「い、いいですね。温泉。入ってみたいです」
「じゃー、久しぶりに皆で行こうかー。しっかりと準備しないとね」
「そうだねー。熊よけの鈴は必須だし、あとは食料と水と……」
勇気を出して提案してみると、双子ちゃんたちは乗り気だった。
……それにしても、準備物が多いような。
「あの、ちょっと待ってください。温泉って、近くにあるんじゃないんですか?」
「温泉はね、森のずっと奥にあるの。熊が出ることもあるよ」
あっけらかんと言って、ミーナちゃんは手にしたパンにリクの実ジャムをつける。
「そ、それはさすがに危ないのでは……?」
「えー、エリンさん、温泉入りたいって言ったよね?」
「い、言いましたが、まさか熊が出るとは……」
「大丈夫だってー。この鈴のおかげで、今まで出会ったことないし」
ニコニコ顔のニーナちゃんが、古ぼけた鈴を見せながら言う。
本当に大丈夫なのかな。温泉に入る前に、熊の胃袋に入ることになったら目も当てられないんだけど。
「えー、俺はいいよ。往復するだけで、半日くらいかかるし」
その時、話を聞いていたロヴェル君が心底めんどくさそうな顔をした。
「そう言わないのー。ロヴェル、最近くさいよ? アンナも言わないだけで、きっと臭いを気にしてるはず……」
「そっ、そんなわけ……!」
ミーナちゃんに言われ、ロヴェル君は自身の匂いを嗅いでいた。直後に、なんともいえない顔をする。
「おふろ、はいりたーい!」
そんな中、メアリーちゃんはすっかりその気だった。
この調子だと、温泉行きの流れは止められそうになかった。何があってもいいように、しっかりと準備しておかないと。
◇
準備を終えたわたしたちは、森へと足を踏み入れる。
「先生、そんな大荷物抱えてどうしたんだ?」
「まるで夜逃げでもするみたいだよー?」
ロヴェル君とミーナちゃんが不思議そうな顔をする。わたしはパンパンに膨れたリュックを背負ったまま、言葉を紡ぐ。
「ま、魔物よけの薬とか、威嚇用の花火、それに、傷薬とかも入っています」
「傷薬って、さっき作ってた軟膏みたいなやつか?」
「そ、そうです。もしかしたら、木の根につまずいて怪我をするかもしれませんし。持っておくに越したことはありません」
そう説明するも、ロヴェル君たちは顔を見合わせていた。
たかが温泉に入りに行くだけなのに、わたしは心配し過ぎなのかな。
……それから森の中を歩くことしばし。時折休憩を挟みながらも、わたしたちは何事もなく温泉へ到着した。
「到着だよー! ほら、何もなかったでしょ?」
ニコニコ顔のニーナちゃんが示す先には、開けた空間が広がっていた。
そこには大きな泉があり、その水は湯気を立てていた。
「わー、すごーい! もわもわー!」
辺り一面に湯気が立ち込める光景が珍しいのか、メアリーちゃんは周囲を駆け回る。
「メアリー、あまりはしゃぐと転ぶぞー。怪我したら、温泉はしみるんだからなー」
そんな彼女を、ロヴェル君がやんわりと注意していた。
周囲の植物は大量の湿気を含んで滑りやすいし、見ているこっちがハラハラする。
「早く入ろうよー!」
「もー、慌てない慌てない」
言うが早いか、メアリーちゃんは服を脱ぎ始める。姉妹はそれを止めることなく、自分たちも同じように脱いでいく。
「わわわーー! ちょっと、ちょっと待ってください!」
次の瞬間、わたしはそんな三人を慌てて止める。
「え? エリンさんどうかしたの?」
「いや、どうかしますよ。ロヴェル君がいるのに、いきなり脱いじゃダメですって」
「あたしたち、気にしないけどなぁ」
髪をまとめながら、姉妹はなんともないように言う。
ずっと一緒に暮らしてるから、普段から見慣れてるとか?
そんなことを考えながら、ロヴェル君を見る。いつしか背中を向けていた。
あれー。ロヴェル君は思いっきり気にしているような。微妙なお年頃だし、当然と言えば当然なのかな。
「エリンお姉ちゃんも、脱いでー」
「そうそう! 見張りはロヴェルに任せて、温泉入ろうよ!」
「ひー! 引っ張らないでくださいー!」
双子姉妹とメアリーちゃんに左右から抱きつかれ、服を引っ張られる。
このままだと服を破かれかねないし、わたしはロヴェル君のほうを気にしながら、いそいそと服を脱いだのだった。
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