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第四部 また追放されました!?
第23話『薬師、ヒントを得る』
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歌の練習をする皆からこっそりと離れたわたしは、ニグラード工房へと戻る。
そのまま調合室へ飛び込むと、用意しておいた薬を一口飲んだ。
「はぁぁ」
思わず深い息が出る。
これは体力回復に特化した薬材を使ったもので、いわゆる『元気の出る薬』だ。
エリン工房の皆が会いに来てくれたことはすごく嬉しいのだけど、元々人が苦手な性格もあって、朝からどっと疲れが出ている。
昨夜もクロエさんとマイラさんが部屋に乱入してきて、ほとんど眠れなかったし。
だからといって、皆の前で疲れた表情をするわけにはいかない。頑張れエリン。負けるなエリン。
頭の中で励ましの言葉を呟いて、残っていた薬を一気にあおる。
「いつも以上に疲れた顔をしているな」
「ぶふっ!?」
その時、背後からミラベルさんの声がした。ふいを突かれたわたしは、思いっきりむせこむ。
「げ、げほごほ……ミラベルさん、どうしてここに」
「私が合唱に参加するタイプに見えるか?」
「み、見えないですね」
「そうだろう。ちょうど居心地が悪くなってきた時、お前がどこかに行くのが見えた。これは追わない手はないだろう」
からからと笑いながら、ミラベルさんは言う。
そこまで見ていたのなら、そっとしておいてくれればいいのに。
「それで、大きなため息をついていたが、何か悩みごとか?」
「え?」
……どうしよう。まさか、皆のせいで気疲れしているなんて言えないし。
「えっと、実は……ロヴェル君の指導方法について、悩んでいまして」
少し考えて、わたしはそう口にした。
ロヴェル君が村の大人たちとイマイチ打ち解けないことは事実だし、大人のミラベルさんなら、いいアドバイスをくれるかもしれない。
「ああ……あの子とは親睦会の席でも少し話をしたが、強い警戒心をひしひしと感じたな」
「あ、やっぱりそうですか」
「うむ。うわべを取り繕ってはいたが、悪い意味で子どもらしくない。何か理由があるのかもしれないが」
「じ、実はですね……」
わたしはミラベルさんに、ロヴェル君の身の上を話して聞かせた。
「……なるほど、捨て子か。そういうことなら、大人に対して壁を作ってしまうのも無理はないな」
「そ、そうなんです。わたしに対しては、なんとか心を開いてくれたんですが。できたら、村の他の大人たちとも打ち解けてほしいんです」
「難しい問題だな……こういうのは、村人たちと接する時間を多くするしかない。多少、強引にでもな」
口元に手を当てながら、ミラベルさんはそう言葉を紡ぐ。
「わ、わたしも、ロヴェル君が村人たちと交流できないか、色々と考えたのですが……人見知りのわたしでは、何も思いつかなくて」
そんな言葉を吐き出しつつ、わたしはがっくりとうなだれる。
「……そうだ。いい考えがあるぞ」
その時、頭上からミラベルさんの自信に満ちた声が降ってきた。わたしは頭を上げる。
「かつて旅をしていた時、薬草を使った蒸し風呂というものを体験したことがある」
「蒸し風呂……ですか?」
「ああ。毛布で体を覆って、穴の空いた椅子に座るんだが、椅子の下に置かれた土瓶では薬草が煮られていた。上がってきた蒸気を全身で受けると汗が吹き出て、体から悪いものが体から出ていく……施術してくれた薬師からは、そう言われたよ」
ミラベルさんは目をつぶり、思い出すように言う。
……そういえば、水が貴重な国では湯浴みの代わりに蒸し風呂をすると何かの本で読んだ。
具体的なやり方まで乗っていなくて諦めていたけど、まさか体験者がここにいたなんて。
「あのロヴェルという少年も薬師だろう。仕事の一環とでも理由をつけて、村民のために蒸し風呂をさせろ。そうすれば、おのずと交流も増えるだろう」
「そのやり方、いいですね。頑張ってみます。ミラベルさん、ありがとうございます」
「急にいい顔になったな。頑張れよ。エリン先生」
そうお礼を言うと、ミラベルさんはわたしの肩をポンと叩き、工房から去っていった。
その背を見送ったあと、わたしはすぐに行動を起こす。
ミラベルさんが体験した蒸し風呂で使われていた薬材は何かわからないけど、血行促進の効果がある薬材は数多くある。
まずはその中から、わたし独自の配合を見つけ出す。
しっかりと効能が確認できないと、村の皆に勧めることなんてできないし。
今日は日が暮れるまで調合室に籠もろうと決め、わたしは気合を入れて薬研を手にしたのだった。
そのまま調合室へ飛び込むと、用意しておいた薬を一口飲んだ。
「はぁぁ」
思わず深い息が出る。
これは体力回復に特化した薬材を使ったもので、いわゆる『元気の出る薬』だ。
エリン工房の皆が会いに来てくれたことはすごく嬉しいのだけど、元々人が苦手な性格もあって、朝からどっと疲れが出ている。
昨夜もクロエさんとマイラさんが部屋に乱入してきて、ほとんど眠れなかったし。
だからといって、皆の前で疲れた表情をするわけにはいかない。頑張れエリン。負けるなエリン。
頭の中で励ましの言葉を呟いて、残っていた薬を一気にあおる。
「いつも以上に疲れた顔をしているな」
「ぶふっ!?」
その時、背後からミラベルさんの声がした。ふいを突かれたわたしは、思いっきりむせこむ。
「げ、げほごほ……ミラベルさん、どうしてここに」
「私が合唱に参加するタイプに見えるか?」
「み、見えないですね」
「そうだろう。ちょうど居心地が悪くなってきた時、お前がどこかに行くのが見えた。これは追わない手はないだろう」
からからと笑いながら、ミラベルさんは言う。
そこまで見ていたのなら、そっとしておいてくれればいいのに。
「それで、大きなため息をついていたが、何か悩みごとか?」
「え?」
……どうしよう。まさか、皆のせいで気疲れしているなんて言えないし。
「えっと、実は……ロヴェル君の指導方法について、悩んでいまして」
少し考えて、わたしはそう口にした。
ロヴェル君が村の大人たちとイマイチ打ち解けないことは事実だし、大人のミラベルさんなら、いいアドバイスをくれるかもしれない。
「ああ……あの子とは親睦会の席でも少し話をしたが、強い警戒心をひしひしと感じたな」
「あ、やっぱりそうですか」
「うむ。うわべを取り繕ってはいたが、悪い意味で子どもらしくない。何か理由があるのかもしれないが」
「じ、実はですね……」
わたしはミラベルさんに、ロヴェル君の身の上を話して聞かせた。
「……なるほど、捨て子か。そういうことなら、大人に対して壁を作ってしまうのも無理はないな」
「そ、そうなんです。わたしに対しては、なんとか心を開いてくれたんですが。できたら、村の他の大人たちとも打ち解けてほしいんです」
「難しい問題だな……こういうのは、村人たちと接する時間を多くするしかない。多少、強引にでもな」
口元に手を当てながら、ミラベルさんはそう言葉を紡ぐ。
「わ、わたしも、ロヴェル君が村人たちと交流できないか、色々と考えたのですが……人見知りのわたしでは、何も思いつかなくて」
そんな言葉を吐き出しつつ、わたしはがっくりとうなだれる。
「……そうだ。いい考えがあるぞ」
その時、頭上からミラベルさんの自信に満ちた声が降ってきた。わたしは頭を上げる。
「かつて旅をしていた時、薬草を使った蒸し風呂というものを体験したことがある」
「蒸し風呂……ですか?」
「ああ。毛布で体を覆って、穴の空いた椅子に座るんだが、椅子の下に置かれた土瓶では薬草が煮られていた。上がってきた蒸気を全身で受けると汗が吹き出て、体から悪いものが体から出ていく……施術してくれた薬師からは、そう言われたよ」
ミラベルさんは目をつぶり、思い出すように言う。
……そういえば、水が貴重な国では湯浴みの代わりに蒸し風呂をすると何かの本で読んだ。
具体的なやり方まで乗っていなくて諦めていたけど、まさか体験者がここにいたなんて。
「あのロヴェルという少年も薬師だろう。仕事の一環とでも理由をつけて、村民のために蒸し風呂をさせろ。そうすれば、おのずと交流も増えるだろう」
「そのやり方、いいですね。頑張ってみます。ミラベルさん、ありがとうございます」
「急にいい顔になったな。頑張れよ。エリン先生」
そうお礼を言うと、ミラベルさんはわたしの肩をポンと叩き、工房から去っていった。
その背を見送ったあと、わたしはすぐに行動を起こす。
ミラベルさんが体験した蒸し風呂で使われていた薬材は何かわからないけど、血行促進の効果がある薬材は数多くある。
まずはその中から、わたし独自の配合を見つけ出す。
しっかりと効能が確認できないと、村の皆に勧めることなんてできないし。
今日は日が暮れるまで調合室に籠もろうと決め、わたしは気合を入れて薬研を手にしたのだった。
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