〈蓮~ロータス~〉夜譚

紫楼

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第8話 友人たちとのひと時

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 今日は私の高校の時の同級生が来てくれることになっている。
「若い子が来ても楽しくはないだろうけどねぇ」
 予約のお願いをしたとき、ママはそう言いつつ、予約を受け入れてくれた。

 カランカランカラン

 ここに来るお客様ではめったに出さないような、賑やかなベルの音が響く。

「ユリカ、来たよー」
「おひさ~」
「ちょ~、ユリカ!いたぁ!マジウケる!!」
 ワイワイと入ってきたのは高校の部活仲間のユカとハナとアミ。みんな就職してからなかなか会えてなかったのでうれしい。
「何がウケるの」
 私はみんなの上着を預かってハンガーにかけていく。
「だってレトロじゃん~」
 相変わらずなノリのアミは、ハナに「やめな」って肩を叩かれた。

「何を飲むんだい」
 ママはいつもどおりにつきだしを出して、飲み物を聞く。
「「ハイボールで」」
「生ビールお願いします」
 ユカとアミがハイボールでハナが生ビール。
「ユリカとママも乾杯しよう」
 私とママは焼酎の水割りで乾杯した。 

 ユカがママお手製の出し巻き卵を嬉しそうに頬張って、すぐになくなってしまったお皿を悲しそうに見つめる。
「お代わりならあるよ。ほら」
「あ、ずるい。私も肉じゃがください」
 確かユミのお母さんは料理が苦手でアミのお母さんは和食を作らない人。おうちで出ない味に飢えていたのかな。でもデパ地下のデリとかよく食べてたよね。っていうか、
「いいよ、好きなだけ食べて」
 飲みに来たのに食べ物のほうが進む。なぜかチャーハンまで作ってもらって。

 お腹が満たされて、酔いも良い感じになってきたら、近況とか話し始めた。
「もうねぇ、お局さんがいちいちいちいちいちいち!!チクチクしてくるの」
 さっきまで一番静かだったハナがいきなりスイッチが入っちゃった。
 ハナは一般事務なので、データの扱いや電話対応、何から何まで理不尽に怒られるらしい。
「でも外部から苦情が来てるのってだいたいお局の方よ」
 顧客にも高圧的なんだって。よくクビにならないね……
「うちだって、先輩が意味わかんないよ」
 アミは服飾の販売。二人とも正社員で頑張っている。 
 ちなみにユカは結婚して旦那さんの家業のお手伝いをしている。
「あんたたちは辞めたら逃げれるけど、私は離婚でもしないと無理だからね」

 あれ?みんな鬱憤が溜まっているみたい。悪いお酒になりそう。

 ユカは大学の時に知り合った先輩と卒業後すぐに結婚した。同居なんてありえないと言っていたけど、好きが先走っちゃって。
 そしてお姑さんは「年寄りは口を出さない」なんて言いつつ、態度で出したり、ふと出る言葉で傷つけられることがあるって。世代のギャップもあるし難しいよね。

「みんな大変だね」
「あんたみたいにスパッと決断できたらいいんだけどね」
 私はホテルの受付として入った会社で、研修中にあちこちの部署体験で回ったことで環境と勤務時間がバラバラ過ぎて馴染めず、リタイヤした。一通り終わって受付に固定されたのだけど、いろいろ……ね。

「私は辞めても次やりたいことなんてないし、就職活動も嫌だから耐えてる」
「んー、私はもうちょっとお金貯まったらやめるかな。最近お局がやばくて」
 ハナが唐突に、怖い顔をした。
「何がやばいのよ」
「なんかねぇ、うちの課長、ジジィなんだけど昔はモテていただろうなって感じの……なんて言うのかな、イケオジ?私から見たらただのセクハラスレスレなオジなんだけどね。まぁお局以外もジジィが好きみたいな人いるのよ」
 ジジィだけどイケオジ??

「ジジィ以外にも結構セクハラジジィ多いんだけどさ、その課長はとにかくお局たちに好かれてて」
 セクハラが多い時点でやめたい会社だよ……

「で、ほとんどのオッサンたちは新人を軽く喰える対象に見てるっていうか。三十代後半って若いつもりらしいけど、私たちにしたらオッサンだからね」
 まぁ、イケている人もいるにはいるけど、仮にお付き合いしているとかならともかく、関係のないオッサンは、ただのセクハラしてくるオッサンだよ。
「課長も何かといえばしれっと触ってくるし、頻繁に話しかけてくるの。それをお局たちがさ……嫉妬っていうの?あのジジィもわかっててやってるフシがあるよ」
「それはやだぁ……」
 巻き込まずに勝手にやっててほしいよね。

「でね、同期でめっちゃ清楚で可愛い、八田さんって子がいるんだけどさ、いじめが苛烈すぎて最近すごくやつれてきちゃって、髪もパサパサになっててかわいそうなんだよ」
 ストレスかな。
「この前なんか彼女がロッカー開けたときに急に後ろにに倒れこんで、『いやぁ目がぁ!!ああぁ髪の毛がぁ!!』って泣き叫んだのよ」
 え、怖い。いじめどころじゃないヤバい嫌がらせじゃん。
「でもね、私たちがロッカー確認したら髪の毛も目も出てこないのよ」
「何それぇ……」 
 ハナがその時のことを思い出したのか肩を竦める。

「昨日、彼女から社内メールが来たんだけど、家の外から監視されてるって……ストレスで大変なのかなって思うじゃない?でも最近お局たちもなんか肌が荒れて萎びてるの」

 なんだろう。急にいじめの怖い話から違う怖い話になったみたい?

                      続く


 
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