542 / 787
三章
531話
休憩にした場所は草原が広がってるところで、大きめな日傘のようなテントを出してくれてた。
『いやぁ、かなりの移動距離ですよ。噂には聞いていましたがグレーデンの馬は素晴らしいです』
ガルフ侯爵が王都から乗って来た馬車本体は王家から、《浮上》《重量軽減》のプレートを貸与されているそうで、行きも従来より早く来れたけど、魔馬の馬力が王都産の魔馬とアッガス(グレーデン)産の魔馬では違いが桁違いなんだそう。
ガルフ侯爵たちが王都から連れて来た馬車の馬は、途中の領で三回交代して来て、最終的に馬車を引いてきた馬たちは、アッガスやグレーデンからの荷物が増えるので別隊でゆっくり進んで、乗り換えた領で元の馬に交代して、王都に向かうことになってるそう。
アッガスからの魔馬は交代予定はない。それだけでも馬力の違いがあるよね。
改造馬車になる前も交代なしだったので元々強い魔馬たちなんだ。
今はさらに余裕で、わんこが散歩を喜ぶが如く、魔馬たち的に「いくぜいくぜ」的に嬉しい仕事らしい。
長距離散歩。長距離が過ぎるよね。
『すごく早い脚ですねぇ』
普通の馬の二倍近くあるから怖がりそうなのに、ナギの人たちは馬の品評会みたいな空気でじっくり見てる。
魔馬たちも鼻高々に凛々しい顔して見せてるよ。
『『あやつらは騎獣に目がないからな』』
ナギの馬は脚が太めの背が低い種だそうで、馬は農耕用で、二足歩行のオオトカゲで馬車、トカゲ車?を引くそう。
聞くと小さい恐竜のような生き物な感じ。この国にはいないっぽい。
『オオトカゲに近しい速さを出せるとは不思議です』
二足歩行で早いトカゲの方が不思議な気がする。
魔馬たちのことは騎士さんたちが嬉しそうに話をしてるので、遠慮なく休憩をする。
『はい、どうぞ』
ルルゥがピタパンもどきを出してくれた。
横でニーナがお茶をセットをしてくれる。
『『食べやすいな』』
パンが薄くて、野菜とお肉を楽しめるので重すぎず食べれて良い。
男性陣には軽過ぎるかもと思ったら、ちゃんと携帯食のシリアルバーも配られてた。
宣伝のためらしい。
『我が国ではパンにあたるのは穀物を練って蒸すか揚げるかしたものですが焼くのも良いですね』
ユエさまが言うのは中華のマントウや花巻かな。あれも美味しいから好き。食べたいな。
『『パンもケーキも焼き菓子もみんな美味であった』』
アッガスでの食事やデザートはまだ控えめだったんだけど、ルルゥが本気を出したら飛ぶぞ!
王宮もコックさんたちかなり腕を上げてるはずなので、王都で飛んでもらおう。
ルルゥがナギに連れて行かれたら大変だもの。
ちょっと遠くの方でザワっとして、すぐ収まったと思ったら、騎士さんたちが走って来た。
『バッタが出たので退治しました。喰いますか?』
え、バッタは要らないけど?食べる感じ??
『『素揚げがうまいな』』
え、好きなの!?
でもデーンと出されたバッタはデカかった。大鍋で揚げる?
『『バッタ?』』
思ってたのと違うみたい。お二人も引いてる。一メートルのバッタはもう違う種類だよね。
『あー、これは畑を襲うのでちょっと報告が要るやつです』
セリウスさまが嫌そうに言う。
『こちらの休憩中に出来るだけ狩ってくれ』
『『「「「応!!!」」」』』
騎士さんたちに指示すると、ガルフ侯爵が王国騎士さんたちに、ユエさまがナギの騎士さんたちにも手伝うように伝えた。
『ありがとう存じます』
ユエさまとガルフ侯爵にお礼を言うと、
『放っておけば他の領地にも被害が広がるので当然のことだ』
とガルフ侯爵が言い、
『あのサイズですと後ろから襲われても大変ですし、バッタは栄養素が高いので粉末にして薬に使うのも良いですから向こうから現れてくれてラッキーですよ。ちょっと種が違うようですが』
とユエさまが口元を微笑ませて言う。
やっぱ食べたい感じ?
セリウスさまは近隣領とここの領主に魔法鳥で報告を飛ばした。
ガルフ侯爵は王様と農産部の担当に。
『出て来たものは狩るが調査は領主の仕事だ』
それはサボられると被害が出そうだな。
『皆様は素揚げで食べたいので?』
ルルゥのどこか間延びした声で、デーンと置かれたバッタに視線が集まる。
なんて言うか硬そう。
『揚げても歯が通る気がしない』
『これの羽は初級冒険者が防具に使う』
どう考えても顔が凶悪で怖いし、脚がぶっとくてトゲトゲしいし、素揚げでは食べれないと思う。
『中身はナッツのようで美味しいんですよ』
力説するナギの方々。
普通にナッツ食べないかな?
『じゃ揚げるは揚げて中身食べる感じね?』
『脚のこの部分も良いですぞ』
羽はムシって素材に身は素揚げに決定しちゃった。
美味しいもの他にあるのに。
ドンドン討伐されてくるバッタが積み上がって、みんなが嬉々として羽をムシって頭を外す。
これは魔獣なら魔石がないかなぁ。
可愛い王女さまたちとキャッキャうふふな旅ができると思っていたのにねぇ。
ルルゥがキッチン馬車出して、油の準備を始めた。
ルルゥの料理への貪欲さはこんな時でも出るのね。
仕方ない。ピーナッツ(もどき)味を食べる覚悟をした。
『『この脚が一番カリカリで良いぞ』』
王女さまたちに良い笑顔でもトゲトゲの脚を差し出された私は、覚悟を決めて齧ったよ。
あなたにおすすめの小説
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます
青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。
藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。
溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。
その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。
目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。
前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。
リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。
アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。
当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。
そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。
ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。
彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。
やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。
これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
【完結】病弱な妹に魔力を分け続け死ぬ寸前の私を、宮廷魔術師になった旧友が攫ってくれました。家族を捨てて幸せになっていいんですか?
未知香
恋愛
「あなたはもう十分楽しんだでしょう? 今度はミアーラの番よ」
膨大な魔力と知識を持ち、聖女候補とまで言われた、天才魔術師エリアーナ。
彼女は、病弱な妹ミアーラの為、家族に言われるまま自らの膨大な魔力を差し出すことにした。
「そうだ。私は健康で、今まで十分に楽しんできた。だから、あげるのは当然だ」
魔力を与え続けた結果、彼女は魔力を失い、容姿も衰え、社交界から姿を消してしまう事となった。
一方、妹ミアーラは姉から与えられた魔力を使い、聖女候補として称賛されるように。
家族の呪縛に縛られ、「今まで多くを貰いすぎていたのだ」と信じ、利用され続けるエリアーナ。
そんな彼女の前に現れたのは、かつての旧友であり宮廷魔術師となった青年だった。
ハッピーエンドです!
忘れられた幼な妻は泣くことを止めました
帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。
そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。
もちろん返済する目処もない。
「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」
フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。
嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。
「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」
そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。
厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。
それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。
「お幸せですか?」
アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。
世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。
古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。
ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。
※小説家になろう様にも投稿させていただいております。