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本編
見せない執着 レイナードside
「坊っちゃまってほんと運が強いですよねー」
執事のノワールが資料を片付けながらぼやく。
「無害な男を演じきってちょっとしたタイミングを掴んじゃうんですもんねー」
手際よく動きつつも無駄口が多いな。
「無欲の勝利ってやつだな」
「無欲!!何しれっと言ってるんですか!」
納得のいかない顔で唇を突き出しながらもどんどん資料を束ねては箱に積む。
「実際はここまで簡単にイケるとは思っていなかったぞ?」
「ほーん。全部計算のうちだと思ってましたよ」
ノワールは口調は宜しくないが有能執事だ。まだ確定していない引越しに向けてハイスピードで準備している。
学園時代も教室の隅に控え極力目立たない様に過ごして、王家や王子のつまらない話や他家貴族の細かな悪事などあらゆる情報を拾ってきてくれた。
サファイアの御付きどもがべったり張り付いている所を付かず離れず、サファイアとの関係の向上にも尽力してくれた主人思いの幼なじみでもある。
父やアーバン公爵、サファイアの企みも早い段階で掴んでいたが気の長い計画だなと参加はしないことにした。
国を潰すのも興すのも面倒だから王を引き摺り下ろすまではなぁと思っていたが、父達は支配階層としての誇りと責任感が強すぎてサファイアの婚約誓約書を有効利用することに成功してしまった。
正直なところどう転んでもサファイアが王子との婚姻式を上げる前に王子には退場してもらうつもりだったしな。
カーマインの存在は気に入らなかったがアイツは絶対にサファイアに手を出さないだろうと踏んでいた。
サファイアが振られたあとどう行動するかは未知数だったが、長年気楽な悪友という立場でいた結果一番に知らせてくれたのは僥倖だった。
「サファイアがあんなあっさり受け入れるっていうのは想定外だぞ?」
「そうっすか?貴族の結婚っていざとなると最終的に利害で割り切っちゃう人のが多い印象っすけどね」
本当にノワールはスレてるね。確かに貴族は恋愛結婚は少ないけども。
サファイアは自力で道を切り開こうとしていた。
商売を始めるって言った時は突飛なことをするなぁと思っていたが、発想力、行動力と思い切りの良さ、そしてアーバン家の後ろ盾。全部がサファイアの味方で、有能な御付きどもがまた良い具合に補佐をして失敗なしだった。そこにサファイアの見つけた古い文献や手法をルージュ達に頼んで名前を伏せている私の研究で再現して後押し。
おかげで権利や特許の一部が手元に来て実はちょっとした子金持ちだ。
サファイアと出会ったのは子供の頃。
元王都の王宮庭園で小さな彼女に遭遇した。ふわふわした金髪にサファイアブルーの瞳が印象的な小さな女の子。
あれ以来気になって仕方ない女の子だったが気がついた時には王子の婚約者候補で。
公爵家の生まれとはいえ、ただの三男である私には高嶺の花かと思っていた。
学園に入って専門教科が一緒になったことで少しずつ距離が縮んだ頃、王子の女癖の悪さと出来の悪さを知った。こんなヤツが次期王で彼女の夫になるのかと思ったら腹立たしかった。
そして婚約誓約書のことを知った。
何の権力もない自分はとにかく彼女の信頼とずっと近くに居られる方法を考えて行動していた。
多少小狡いこともやったし父や兄達をよく観察して貴族としての力の使い方も覚えた。
思わぬ時期に賽が転がって来てしまったが手遅れになるより全然良い。
「まぁ執念の勝ちっすか?良かったっすよ。主人が犯罪者に成らずに済んで~」
酷いことを言う執事の元にメイドから文書が渡された。何か耳打ちもされている。
「あー、レイ様、あの砂糖女、逃亡したっすね。有金って言うか宝石とかめぼしいもん持って消えたっす。で、王家は民衆のクーデターで王と王子は投獄ですってよー」
近所の主婦が井戸でやってる噂話のノリで報告してくる。
思ったより持ったんじゃないか?
あの女はブレないな。完全に地位と金目当てだったしな。
今貴金属持って出て行っても買取できる業者は少ないだろう。
「あとですね~アーバン家からシルヴィオさまとサファイアさまが近く婚姻の申し込みに来るって先触れが来てて~お父上殿とお母上殿がレイ様を~お呼びですって~」
「っ!!そっちを先に言え!!!」
私は大慌てで研究室を飛び出した。
ノワールは爆笑しつつ付いてきている。
給金下げたら凹むのか!?
執事のノワールが資料を片付けながらぼやく。
「無害な男を演じきってちょっとしたタイミングを掴んじゃうんですもんねー」
手際よく動きつつも無駄口が多いな。
「無欲の勝利ってやつだな」
「無欲!!何しれっと言ってるんですか!」
納得のいかない顔で唇を突き出しながらもどんどん資料を束ねては箱に積む。
「実際はここまで簡単にイケるとは思っていなかったぞ?」
「ほーん。全部計算のうちだと思ってましたよ」
ノワールは口調は宜しくないが有能執事だ。まだ確定していない引越しに向けてハイスピードで準備している。
学園時代も教室の隅に控え極力目立たない様に過ごして、王家や王子のつまらない話や他家貴族の細かな悪事などあらゆる情報を拾ってきてくれた。
サファイアの御付きどもがべったり張り付いている所を付かず離れず、サファイアとの関係の向上にも尽力してくれた主人思いの幼なじみでもある。
父やアーバン公爵、サファイアの企みも早い段階で掴んでいたが気の長い計画だなと参加はしないことにした。
国を潰すのも興すのも面倒だから王を引き摺り下ろすまではなぁと思っていたが、父達は支配階層としての誇りと責任感が強すぎてサファイアの婚約誓約書を有効利用することに成功してしまった。
正直なところどう転んでもサファイアが王子との婚姻式を上げる前に王子には退場してもらうつもりだったしな。
カーマインの存在は気に入らなかったがアイツは絶対にサファイアに手を出さないだろうと踏んでいた。
サファイアが振られたあとどう行動するかは未知数だったが、長年気楽な悪友という立場でいた結果一番に知らせてくれたのは僥倖だった。
「サファイアがあんなあっさり受け入れるっていうのは想定外だぞ?」
「そうっすか?貴族の結婚っていざとなると最終的に利害で割り切っちゃう人のが多い印象っすけどね」
本当にノワールはスレてるね。確かに貴族は恋愛結婚は少ないけども。
サファイアは自力で道を切り開こうとしていた。
商売を始めるって言った時は突飛なことをするなぁと思っていたが、発想力、行動力と思い切りの良さ、そしてアーバン家の後ろ盾。全部がサファイアの味方で、有能な御付きどもがまた良い具合に補佐をして失敗なしだった。そこにサファイアの見つけた古い文献や手法をルージュ達に頼んで名前を伏せている私の研究で再現して後押し。
おかげで権利や特許の一部が手元に来て実はちょっとした子金持ちだ。
サファイアと出会ったのは子供の頃。
元王都の王宮庭園で小さな彼女に遭遇した。ふわふわした金髪にサファイアブルーの瞳が印象的な小さな女の子。
あれ以来気になって仕方ない女の子だったが気がついた時には王子の婚約者候補で。
公爵家の生まれとはいえ、ただの三男である私には高嶺の花かと思っていた。
学園に入って専門教科が一緒になったことで少しずつ距離が縮んだ頃、王子の女癖の悪さと出来の悪さを知った。こんなヤツが次期王で彼女の夫になるのかと思ったら腹立たしかった。
そして婚約誓約書のことを知った。
何の権力もない自分はとにかく彼女の信頼とずっと近くに居られる方法を考えて行動していた。
多少小狡いこともやったし父や兄達をよく観察して貴族としての力の使い方も覚えた。
思わぬ時期に賽が転がって来てしまったが手遅れになるより全然良い。
「まぁ執念の勝ちっすか?良かったっすよ。主人が犯罪者に成らずに済んで~」
酷いことを言う執事の元にメイドから文書が渡された。何か耳打ちもされている。
「あー、レイ様、あの砂糖女、逃亡したっすね。有金って言うか宝石とかめぼしいもん持って消えたっす。で、王家は民衆のクーデターで王と王子は投獄ですってよー」
近所の主婦が井戸でやってる噂話のノリで報告してくる。
思ったより持ったんじゃないか?
あの女はブレないな。完全に地位と金目当てだったしな。
今貴金属持って出て行っても買取できる業者は少ないだろう。
「あとですね~アーバン家からシルヴィオさまとサファイアさまが近く婚姻の申し込みに来るって先触れが来てて~お父上殿とお母上殿がレイ様を~お呼びですって~」
「っ!!そっちを先に言え!!!」
私は大慌てで研究室を飛び出した。
ノワールは爆笑しつつ付いてきている。
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