モブです。静止画の隅っこの1人なので傍観でいいよね?

紫楼

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 ちょっとゲンナリしつつ、森の入口を仕切っているおっちゃんに声を掛ける。

「一応、終わったと思う。調査隊と回収の担当が合流したらまた中に入る」

 ルカが説明するとおっちゃんがホッとした。この辺りの冒険者だと森の中に長時間留まって、こんなに大量の魔物を相手にするような、討伐依頼はほぼ経験がないはずだ。飛ぶ系の魔獣がいなかったけど、ほぼスタンピード級だったと思う。

 ジュリーことジュリエッタ嬢が未だに騒いでる。学園の卒業式で見た彼女は凛としてカッコよかったんだけどな。
 理不尽な婚約破棄で心が振り切っちゃったのかな?

 彼女の話している内容は「なぜ国から救援が来なかった」「なぜこんなに大きな集落が出来るまで放置されていたのか」と、ギルドの担当者に言っても答えられそうにない事だ。

 私たちが戻ったのを見て、「最初から高ランクがいたらこんなに怪我人や死者が出ずに済んだ」と怒ってきた。
 調査隊の詳しい情報を待たずに出てきてパーティたちを崩壊させたのは誰だよ⁉
「おい!良い加減にしてくれ。準備も情報もおざなりに参加したことのほうが悪いだろうがよ?」
 ジャック達が注意を入れてくれる。
 怪我をしている他の冒険者たちも良い顔はしていない。

「全滅していてもおかしくなかったんだぞ」
 そう言われてジュリーんは顔をぐしゃっとさせて泣き出した。
 どうもマグナムさんが大怪我をしてるらしい。救護テントで治療を受けてるのだとか。それは不安になるだろうね。
 ポーション足りてないのかな?

「ゴブリンだろうが集落がある可能性があったら数や他の種がいないか、地形まで全部詳しく情報を仕入れないと高位ランクでも危ないんだぞ!」
 何が出てくるかわかんないしね。ジャックたちみたいにBランクだったらゴブリンくらい集落が複数あっても、初動を間違えなかったら楽勝だろうけど、今回はサーペントやオーガロードとか想定外の魔獣が多かった。
 私たちが楽に討伐出来たのは魔獣の体力がだいぶ削られてたから。

 ハヤった連中を助けるために追ってくれたおっちゃん達は面倒見が良すぎだ。
 命を落としたのはハヤった連中の中で若手だそう。経験が少ないならオーガやウルフが急に出て来たら無理だったろう。
「でも村や民に被害が出たら……」
 ジュリーさんはどうしても納得がいかないらしい。
「近場に村落はないから高位ランクを持ってたんだと言ってるだろう」
 これ私たちが森の中に入ってからさっき出てくるまでずっとループだったのかな?

 矛先が私たちに来たら面倒だから、ギルドの物資から食料を出してごった煮スープと雑穀リゾットを作る。
 おっちゃん達はちかっちこちの糧食で済ましがちだからね。先に戻るにしても体力付けて帰さないと。
 救護テントの中を覗いたらかなり辛そうな様子なのでスープにお手製ポーションをこっそり入れておく。
 ルカが物言いたげだけど、ここから帰るのだってちょっとばかり遠くてしんどいんだからサービスだよ。

「良い匂いだな~」
「怪我人に先に配ってあげて」
「了解っす」
 ああー、早く蒲焼き食べたい。
 流石にかば焼きを全員分は作ってられないわ。

 みんなが食べ終わって多少動ける人が出て来たところでギルドから増員が来た。
 討伐は終わったけど魔物の回収や処理も大変なんだ。
「お疲れ様です。重症者は馬車に。動ける人は申し訳ないが徒歩で戻ってくれ。事後調査、回収に付き合える者は残って欲しい」
 残ったのは《爆炎の翼》、私たち入れて計30人余り。

 流石に一週間近くここで頑張ったおっちゃん達は無理だよね。
 マグナムさんも怪我人なのでジュリーさんを一人残すのは絶対にダメだと無理やり連れ帰ってくれた。良かった。みんな口には出さないけどホッとしていたよ。

 もうじき暗くなるので今夜は森の中に入らずに明日の朝からの調査になった。

 残った冒険者に女性はいなかったのでちょっと寂し。
「リンク~飯食わして~」
 ジャック達がおねだりに来た。マジでか。約30人だぞ!
 食材をどどんと用意されて、その中にサーペントやワイルドボアを出されたら食欲に負けるよね。

 食材のカットと仕込みの手伝いをしてもらって作り始めた。休んでたおっちゃん達もワラワラ集まって来て場所を作ってくれる。
 みんなちょっと荒んだ気持ちだったろうにあっと言う間に宴会準備のような賑やかさになった。
 酒は物資にも無かったしジャック達も出してないから宴会っていうより食事会?

 森がちょっとざわざわしてて嫌な感じがしたけど魔獣の気配ではないし、今は食事楽しむことにする。
 ボア肉は普通にステーキと煮込みを作って。野菜は炒めた。
 サーペントは石を組んでバーベキューコンロ風にして自前の網を出して炙り焼き。

 これまた自前の自家製タレで味付け。
 醤油もどきは微妙に味が違うんだけど、遠征で行った街で醤油っぽい味の料理を見つけて、めっちゃお願いして素材の実を教えてもらって大量買いしたの。
 試行錯誤して串焼き向きのタレを仕上げたんだよ。
 ルカは私の作業中は独特の匂いに引いてたけど色々アレンジして食べさせた結果今では好物。
 タレの焼けた匂いが漂い始めておっちゃん達が興奮し始めた。

「エール飲みテェ!!」
「ドライボー欲しい!」
 ドライボーはターキーっぽい地酒みたいなやつ。アルコール強め。
「はぁぁー疲れたな。経験ボーナスタイムっつってもあれはキツかったわ」

 食事も睡眠もままならず延々とゴブリンとか悪夢だわね。
 交代はしていたにしても気が休まらない。
 人工的な発生だとしたら何がしたかったのか?気になるところだ。
 でもジュリーさんがここに来たこととか考えるとゲームのイベントとかあるのか?
 
 学園の婚約シーンからのその後なんてヒロインのエンドを見て終わりで、追加とかショートストーリーとかまで知らん。
 マジで続編とかあったの?

 勘弁して欲しい。

 この件からはギルドに報告したら手を引こう。
 兄さんの話が終わったら少し隣国の依頼とか受けようかな?

 逃亡一択。

 傍観者希望。




 
 

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