35 / 767
3巻
3-2
「──自分がついさっき製作した弓を見せようか。種類は一応、狩弓となっている」
先ほど作り上げた【複合X式狩弓ライトメタルコート】をアヤメさんに[レンタル]する。
「ええ!? このAtkの値……火力が長弓より落ちるはずの狩弓で、私の長弓よりこんなに強いの!?」
大きな声を上げたアヤメさんは、ノアさんにもX弓を見せる。
「これは……形状が特殊ゆえ本人しか扱えないのでしょうが、破格の性能ですね……」
ノアさんも興味しんしんで観察している。
「自分への話というのは、弓の製作依頼ということで良いのですかね?」
頷くお二人……だが。
「問題が多過ぎる……時間はまあいいとして、お二人は資源を用意することはできますか?」
そこで二人は言葉に詰まってしまう。
「──正直厳しいですね。資源が枯渇している状況は、こちらも理解しています。貴方とフェアリークィーンとの戦いの後、弓使いが一気に増えたのです、これはご存知ですね」
アヤメさんがそう言った後、ノアさんも続ける。
「しかし、すぐに店売りの弓では多くの人が物足りなくなり、木工職人に弓の製作依頼を持ちかけ始めました。しかしそれまで木工といえば杖製作といわれる状況だったため、弓の製作は下地すらなく、その上、アースさんも捕まりませんでした」
色々目立ち過ぎたんでしばらく逃げてたからなぁ。
「もちろん職人の方でもいくつか弓を開発し、それが出回るようにはなりました。アヤメの弓が、現時点で出回っている最高級品だと思ってください。そして現在、弓矢の生産のために大量の木材が消費されています」
あー、そりゃいくら腕利きでも、あまり経験の無いジャンルで良い物は作れない。自分だって杖を作るとなったら、ぼろぼろのみすぼらしい物にしかならないだろう。
そして試作を重ねれば大量の木材が消費されてしまうし、矢だって基本の素材は木だ。
「そのような状況の中、昨日ピカーシャと一緒にアースさんが現れたとの話を伺いました。そこでもしかしたら会えるかもしれないと思い、鍛冶場にお邪魔してみたのです」
ノアさんがそう締めくくる。自分は今メールもウィスパーチャットも閉じているからな……実は一度開放してみたのだが、その瞬間にメールとウィスパーチャットの申し込みが殺到したため、すぐさま再び閉じるハメになったのだった。質問メールの内容はやっぱりピカーシャ関連、次いで妖精とPTを組む方法についてが多かった。
「それにしても、既にここまでの弓をお作りになっていたとは……資源が厳しいことは理解しています。しかし、せめて一張だけでもお願いできないでしょうか? 裏のダンジョンに挑むために、少しでも良い弓が欲しいのです」
こうアヤメさんに懇願されたが、うーむ、素材的にはぎりぎりだし、長弓は作ったことがないな……
「時間を貰いたい、数日ほど。それから、Atkが30後半までいったら四万、40台に乗ったら八万グロー戴きたい。吹っかけていると思われるかもしれないが、資源の状況を考えると、これぐらいは出していただかないといけないのだが、宜しいだろうか?」
かなり厳しい条件を突きつけざるを得なかった。まず一日かけて安い木材で試作品を作り、その後複数の素材で作った本番の弓をライトメタルで補強する方法を取るため、安くはできない。
「──はい、それでお願いします」
アヤメさんはかなり悩んだようだったが、最終的に首を縦に振った。
一方のノアさんは「さすがに高過ぎるわ、貴方の今使っている弓は八〇〇〇グローだったのよ!?」と言っていたが――
「ノア、分かっているはずよ。武器が限定されている以上、少しでも性能の良い弓を誰か一人が持てば、その一撃に賭けられるって。その可能性のためなら、相応のお金がかかるのは止むを得ないでしょう?」
アヤメさんのこのひと言でノアさんは押し黙る。そうだな、そういう旗があるだけで士気が保てるということは十分にありえる。この世界はゲームではあるが、その中で戦うのは人間なのだ。
「それではよろしくお願いします、完成したらメールを下さいね」
アヤメさんに「了承しました」と返答し、自分はギルドエリアから立ち去った。これはまた想像していたのとは別の意味で面倒になったが、受けたからにはしっかりと依頼を果たさないとな。
まずは長弓製作の練習をしないといけない。この種類を作ったことはないが、弓であるのに違いないし、アヤメさんの弓を直接持って形状を学べたのはとても大きい。杖の製作よりは、速く習得できるはずだ。
◆ ◆ ◆
翌日、とりあえずファストの一番近くにある林エリアから数本、一番質が悪い木を採ってきて練習用にする。ネクシア近辺に生えている本番用の木材は数が少な過ぎて採りにいけないので、手持ちのものでの一発勝負となってしまう。練習をしながら、本番用の設計図を引く必要があった。
木材加工場で、最初は大雑把にでも完成させる。当然、製作評価は1とか2であるが、今はとにかく長弓の大きさと形を覚えることが最優先だ。その習得に、今日のログイン時間を全部潰すつもりである。
三〇分ほど作り続けたところ、評価4、たまに5が出始めた。こうして評価が良くなってきたところで、昨日のアヤメさんの長弓を撮影しておいたスクリーンショットと比べ、形とバランスを整えていく。
さらに三〇分後、何とか評価7の長弓が一張、仕上がった。
【長弓】
効果:Atk+18
製作評価:7
さすが長弓系、素材は最低レベルのものしか使っていないというのに、もう火力がそこそこある。代わりに大型で取り回し難くはあるのだが。
それは置いておいて、今の感触を忘れないようにもう数張製作してみようか――そう考えた時だった。
「あの、その弓、売ってもらえませんか?」
声をかけられて振り返ると、そこには弓を持った一人の男性プレイヤーが居た。
「すまないが、これは練習のために作った長弓でね、Atkも18しかない。出回っている長弓を買いに行った方が良いぞ」
こう答えると、そのプレイヤーは「そうですか、失礼しました」と立ち去っていった。直接工房に来て買おうとする人も居るのか……露店などに並ぶ前なら値引き交渉もできるからか……?
まあそんなことはどうでもいいかと頭を二、三回振って思考を切り替え、また製作に取り掛かる。
次は、軟らかい木材で作った弓の左右に森エリアの固い木を配置する、過去に作った【試作型木材結合弓】のイメージで作ってみることにした。弓系統である以上、こういった構造は流用できるはずだ。
弓の形を三つ削り出して、それぞれを磨いてから結合し、形を整える。過去に苦労したおかげで、耐久力などを維持するためのバランス感覚は、頭と手にしっかりとインプットされている。
【試作型木材結合長弓】
効果:Atk+26
製作評価:6
ふむ、長弓製作の経験不足による修正で評価は落ちるな。が、これを詰めて評価8にもっていけば、おそらくAtk+30台に乗るだろう。
とはいえ、今日はそろそろ寝よう。続きは明日だ。
◆ ◆ ◆
そして翌日。まずは森に出向いて数本分ほど木を入手する。それから木材加工場に行き、昨日作った【試作型木材結合長弓】の評価を高めるため、細かい詰めの作業を念入りに行うところからスタート。結合部分の補強、バランスの見直し、弓全体の形などを何度も練り直す。
【試作型木材結合長弓】
効果:Atk+30
製作評価:8
よし! とついつい小さくガッツポーズをとってしまった。これでようやく次の段階に進める。
お次は半楕円状の溝を二本、弓の前側に彫っていく。この溝に円形を縦半分にしたような形のライトメタルを二本埋め込んで結合させることで、外をすっぽり包まなくてもライトメタルのしなりを利用できる。
もちろん包み込んだときより金属量が少ないから効果も落ちるだろうが、手持ちのライトメタルの量ではこれで精一杯なのだ。
溝を刻んだ後で鍛冶場に向かい、その溝の深さと長さに合うようにライトメタルを加工していく。
手持ち最後のライトメタルインゴットを炉に入れて軟らかくしてから型に流し込み、半円の形をした長細い棒を二本作る。失敗は許されない。在庫がもうないのだから。
冷えるのをしばらく待って、ある程度固まったことを確認。型から取り出し、結合長弓の二つの溝にそれぞれはめ込む。
多少のずれがあったので叩いて馴染ませ、はめ込み直し、棒の上下を鋼鉄の留め具で支える。それから等間隔に鋼鉄の留め具を配置して補強し、細い鋼鉄の糸できっちりと巻いてから、その上に持ち手を付けた。
【試作型木材結合長弓・ライトメタルライン補強】
効果:Atk+38 耐久減少
製作評価:7
これでAtkが38まで上昇した。耐久が減ったのは木の質が粗悪だからで、多数の改造に耐えられなかったのだろう。
だが本番用の木なら、X弓という無茶な改造のときも「耐久減少」の文字は付かなかったから問題はないはずだ。
弓本体の左右には薄い黒い木が使われ、中央には白い木の木材が。その白い木材には二本の青いライトメタルのラインが縦に二本入り、それを押さえるための鋼鉄の留め具が上下の端に一つずつ。弦を張る部分にも、鋼鉄製の留め具が配置されている。
肝心の重量も、自分のX弓に比べればはるかに軽い。これなら十分使いものになるだろう。
仕上げとなる本番は明日だ。
◆ ◆ ◆
いよいよ今日は、売り物となる完成品を仕上げる。昨日までの試行錯誤で設計図も完成している。ただメインの木材部分は、ライトメタルの棒を埋めるため、これまでよりやや厚く切り出すことにした。
取っておいたネクシア周辺木材の良い部分からパーツを切り出して、組み立てていく。
完成した木材部分から、変な音がしないか、ずれがないか、ライトメタルをはめ込む溝に問題がないかを確認し、品質劣化を抑えるための薬を全体に塗ってゆく。この薬は最近売り出されたものである。
土台の弓が完成したので、次はライトメタルや鋼鉄を配置していく。
薬が乾いてからライトメタルを嵌めこみ、補強具を配置し、弓の上下には留め具と弦を張るための機能を兼任する鋼鉄のパーツをセット。留め具は銀メッキを施して美しく仕上げ、無骨さを少しでも消すようにした。
持ち手部分は試作品と同じく鋼鉄の糸をしっかりと巻きつけて補強し、その上に直接手で持つ部分を取り付けた。
製作時間は長かったが、これでようやく完成だ。
【木材結合式長弓・ライトメタルライン】
金属補強を施した弓。耐久性や威力が上がっているが、代償として重量が増している。
効果:Atk+47
製作評価:7
攻撃力が40台後半に届いた。当分使うのにも十分なレベルのはずだ。
しかし、これで本当にライトメタルと良質の木材を使い切ってしまった。八万どころか一五万ぐらい代金を取りたい気分だが、約束を違える訳にもいくまい。
売るのは明日だ。さすがに精神的に疲れたので、今日はもう寝よう……
【スキル一覧】
〈風塵狩弓〉Lv16 〈蹴撃〉Lv22 〈遠視〉Lv53 〈製作の指先〉Lv56(←1UP) 〈小盾〉Lv6
〈隠蔽〉Lv41 〈身体能力強化〉Lv32 〈義賊〉Lv25 〈鞭術〉Lv37
〈妖精言語〉Lv99(強制習得・控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
〈木工〉Lv39(←3UP) 〈鍛冶〉Lv40 〈薬剤〉Lv43 〈上級料理〉Lv11
ExP9
称号:妖精女王すら魅了した者 一人で強者を討伐した者 解放者 ???
プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人
3
「──やれやれ、すごい勢いだったな」
弓が完成したので指定の場所に来てほしいとアヤメさんに伝えたところ、驚くほど早く食いついてきた。どうも裏ダンジョンの攻略がかなり行き詰まっているらしく、相当苦戦している様子が窺えた。
裏ダンジョン専用の掲示板スレッドにも、きついだの、クリアへの道筋が見えないなどのコメントが溢れ、どの武器も苦労している感があった。さすがに自分はこのダンジョンに手を出すつもりはない……今は、だが。
「お、お待たせしました!」
待ち合わせ場所に選んだ人気のない家に、連絡してすぐアヤメさんが到着した。走ってきたのだろう。そしてその隣にはノアさんも居る。
「出来上がったとの話で……ぜひ完成した弓を見せてもらいたく」
ノアさんもやや興奮気味のようだ。なので、さっさと[レンタル]で見せることにした。
そして性能を見た瞬間、二人は固まってしまった。そりゃそうだろうな、これまでより二回りぐらい性能が上がっているんだから。
「──よ、よんじゅうなな……!?」
やがてアヤメさんがフリーズから再起動し、ボソッと声が漏れる。その後、「「な、なにこれ~!?」」と女性二人の甲高い絶叫が響き渡った……お陰で耳が痛い。
「やかましい! 二人とも落ち着け!」
そう、怒鳴らざるを得なかった。
それから一〇分ほど経過。
「落ち着いたか? 全く、よくあんな絶叫をしてくれましたね……」
そう言って二人を睨む。アヤメさんはばつが悪そうで、落ち着きがない。
「そ、そう言われても、僅か数日でアヤメの弓の能力をこれほど上回るものができるとは、予想できませんよ!」
ノアさんはやや逆切れぎみである。ま、それはそうだろうがな。
「まあいい。で、買いますか? 買わないのですか?」
自分のひと言で二人は一気にクールダウンし、ごにょごにょと相談を始めた。
「ノア、悪いけど今、手持ちいくらある……?」
「アヤメ、まさかお金が足りないとか言い出すんじゃないでしょうね?」
「ううん、ちゃんとあるけど……あの性能の弓の値段が八万ってことを受け入れちゃったら、さすがに作ってくれたアースさんに申し訳ないよ……」
「ああ、それはそうね……五〇万と言われても納得しちゃう性能よね。まさかあそこまで強い弓を作るなんて……口先だけならいくらでも言えるから、どんなによく出来ても八万は高いと思ってたけど……」
「うん、私もここまでの物とはさすがに予想してなくて……」
「今私が出せるのは一〇万グローが限界よ、アヤメ?」
「うん、じゃそれ貸して。できるだけ早めに何とかするから」
「ううん、たまに[レンタル]で使わせて。正直あの弓を逃すと、二ギルド合同で進めている攻略が……」
「買えば、裏ダンジョン攻略に光が見えてくるよね……じゃあ、お互いのギルドの共同購入で……」
ごにょごにょごにょごにょ……
ずいぶんと相談が長いな、と思っていると、二人がようやくこちらを向いた。
「分かりました、買わせていただきます。ですが、予想以上の性能ですので、その製作技術に敬意を表し、三〇万グローを出させていただきます。万が一、八万グローで買ったなどという話が漏れたら、お互い危険ですから」
そう、アヤメさんは申し出てきたが、その前に肝心な追加条件を呑んでもらわないとならない。
「それに加えて、いくつかお願いがあります。一つ目は、この弓を作ったのが自分であると、お二人からは他人に言わないこと。他の人が想像するのを止めろとは言いませんが、肯定するのはお止めいただきたい」
これに、二人は首を縦に振る。
「二つ目は、弓の製作依頼を当分こちらに振らないでいただきたい。これは、材料がもう手元にない、というのが理由です」
これにも二人は納得した様子を見せる。
「そして最後は、今の裏ダンジョンに自分を誘わないこと、です。今のメンバーでぜひやり通してほしい、といったところです。その弓があればきっと可能性は開けるはずです」
以上ですが宜しいですか? という確認にも、即座に「「了解しました」」と返ってきた。なので、早速三〇万グローを受け取り、弓を渡す。
「うん、この弓ならきっと……」
弓の具合を確かめているアヤメさん。それを羨ましそうに見ているノアさん。さて、敬意には敬意で返さねばならないかな。
「さて、ではこちらもお持ちください。敬意を払っていただいた分を、多少なりともお返しすることにしましょうか」
そう言って、作っておいた【ツイスターアロー】を取り出す。
「この矢は、貫くことを最優先の目的として生み出した鏃をつけた矢です。関節や首などのもろい部分を狙って撃てば、裏ダンジョンに出るタンカータイプの鎧といえど、撃ち貫けるかもしれません。現に、妖精国に居たウォーゴブリンズのタンカータイプの鎧なら貫けました」
「そんな矢まで生産していたの!?」
この説明に反応したノアさん。自分もそれに答える。
「製作が手間なので、市場に流せないのが最大の欠点ですけどね。初期の弓スキル、《アローツイスター》と組み合わせて使えば、かなりの貫通力を生み出します。これは自分の実体験から言っています。これを五〇〇本ほどお譲りしましょう」
そう告げて、一束一〇〇本の矢束を五つ取り出す。
「これは……鏃が竜巻みたいに捻ってあるのですね……回転を生み出すことで貫通しやすいようにする工夫ですか」
アヤメさんがため息混じりに感想を漏らす。作るのには苦労したからなぁ。
「三〇万グローという高値を自主的につけてくださったそちらの敬意に対し、多少なりとも協力させていただこうと思ったまで。今回に限り無料でお譲りしますので、遠慮なく」
効果を知ればもっと欲しくなるだろうからな。そのときにそれなりの値段をつければいい。
「ありがとうございます。アヤメ、この後、作戦会議よ! ダンジョン突破の作戦を練り直すわよ!」
「ええ! これなら可能性が大いに上がるわ! どうも、ありがとうございました!」
こう言うが早いか、興奮した様子で二人は立ち去っていった。
面倒な依頼だったが、何とか無事に終わってよかった。活躍できるかどうか、後は二人次第である。これ以上は自分の手を貸しようがない。あとできることは、上手くいくように祈るぐらいだな。
祈る先は神じゃなく、あの二人の諦めない意思に対してだが。
◆ ◆ ◆
先ほど作り上げた【複合X式狩弓ライトメタルコート】をアヤメさんに[レンタル]する。
「ええ!? このAtkの値……火力が長弓より落ちるはずの狩弓で、私の長弓よりこんなに強いの!?」
大きな声を上げたアヤメさんは、ノアさんにもX弓を見せる。
「これは……形状が特殊ゆえ本人しか扱えないのでしょうが、破格の性能ですね……」
ノアさんも興味しんしんで観察している。
「自分への話というのは、弓の製作依頼ということで良いのですかね?」
頷くお二人……だが。
「問題が多過ぎる……時間はまあいいとして、お二人は資源を用意することはできますか?」
そこで二人は言葉に詰まってしまう。
「──正直厳しいですね。資源が枯渇している状況は、こちらも理解しています。貴方とフェアリークィーンとの戦いの後、弓使いが一気に増えたのです、これはご存知ですね」
アヤメさんがそう言った後、ノアさんも続ける。
「しかし、すぐに店売りの弓では多くの人が物足りなくなり、木工職人に弓の製作依頼を持ちかけ始めました。しかしそれまで木工といえば杖製作といわれる状況だったため、弓の製作は下地すらなく、その上、アースさんも捕まりませんでした」
色々目立ち過ぎたんでしばらく逃げてたからなぁ。
「もちろん職人の方でもいくつか弓を開発し、それが出回るようにはなりました。アヤメの弓が、現時点で出回っている最高級品だと思ってください。そして現在、弓矢の生産のために大量の木材が消費されています」
あー、そりゃいくら腕利きでも、あまり経験の無いジャンルで良い物は作れない。自分だって杖を作るとなったら、ぼろぼろのみすぼらしい物にしかならないだろう。
そして試作を重ねれば大量の木材が消費されてしまうし、矢だって基本の素材は木だ。
「そのような状況の中、昨日ピカーシャと一緒にアースさんが現れたとの話を伺いました。そこでもしかしたら会えるかもしれないと思い、鍛冶場にお邪魔してみたのです」
ノアさんがそう締めくくる。自分は今メールもウィスパーチャットも閉じているからな……実は一度開放してみたのだが、その瞬間にメールとウィスパーチャットの申し込みが殺到したため、すぐさま再び閉じるハメになったのだった。質問メールの内容はやっぱりピカーシャ関連、次いで妖精とPTを組む方法についてが多かった。
「それにしても、既にここまでの弓をお作りになっていたとは……資源が厳しいことは理解しています。しかし、せめて一張だけでもお願いできないでしょうか? 裏のダンジョンに挑むために、少しでも良い弓が欲しいのです」
こうアヤメさんに懇願されたが、うーむ、素材的にはぎりぎりだし、長弓は作ったことがないな……
「時間を貰いたい、数日ほど。それから、Atkが30後半までいったら四万、40台に乗ったら八万グロー戴きたい。吹っかけていると思われるかもしれないが、資源の状況を考えると、これぐらいは出していただかないといけないのだが、宜しいだろうか?」
かなり厳しい条件を突きつけざるを得なかった。まず一日かけて安い木材で試作品を作り、その後複数の素材で作った本番の弓をライトメタルで補強する方法を取るため、安くはできない。
「──はい、それでお願いします」
アヤメさんはかなり悩んだようだったが、最終的に首を縦に振った。
一方のノアさんは「さすがに高過ぎるわ、貴方の今使っている弓は八〇〇〇グローだったのよ!?」と言っていたが――
「ノア、分かっているはずよ。武器が限定されている以上、少しでも性能の良い弓を誰か一人が持てば、その一撃に賭けられるって。その可能性のためなら、相応のお金がかかるのは止むを得ないでしょう?」
アヤメさんのこのひと言でノアさんは押し黙る。そうだな、そういう旗があるだけで士気が保てるということは十分にありえる。この世界はゲームではあるが、その中で戦うのは人間なのだ。
「それではよろしくお願いします、完成したらメールを下さいね」
アヤメさんに「了承しました」と返答し、自分はギルドエリアから立ち去った。これはまた想像していたのとは別の意味で面倒になったが、受けたからにはしっかりと依頼を果たさないとな。
まずは長弓製作の練習をしないといけない。この種類を作ったことはないが、弓であるのに違いないし、アヤメさんの弓を直接持って形状を学べたのはとても大きい。杖の製作よりは、速く習得できるはずだ。
◆ ◆ ◆
翌日、とりあえずファストの一番近くにある林エリアから数本、一番質が悪い木を採ってきて練習用にする。ネクシア近辺に生えている本番用の木材は数が少な過ぎて採りにいけないので、手持ちのものでの一発勝負となってしまう。練習をしながら、本番用の設計図を引く必要があった。
木材加工場で、最初は大雑把にでも完成させる。当然、製作評価は1とか2であるが、今はとにかく長弓の大きさと形を覚えることが最優先だ。その習得に、今日のログイン時間を全部潰すつもりである。
三〇分ほど作り続けたところ、評価4、たまに5が出始めた。こうして評価が良くなってきたところで、昨日のアヤメさんの長弓を撮影しておいたスクリーンショットと比べ、形とバランスを整えていく。
さらに三〇分後、何とか評価7の長弓が一張、仕上がった。
【長弓】
効果:Atk+18
製作評価:7
さすが長弓系、素材は最低レベルのものしか使っていないというのに、もう火力がそこそこある。代わりに大型で取り回し難くはあるのだが。
それは置いておいて、今の感触を忘れないようにもう数張製作してみようか――そう考えた時だった。
「あの、その弓、売ってもらえませんか?」
声をかけられて振り返ると、そこには弓を持った一人の男性プレイヤーが居た。
「すまないが、これは練習のために作った長弓でね、Atkも18しかない。出回っている長弓を買いに行った方が良いぞ」
こう答えると、そのプレイヤーは「そうですか、失礼しました」と立ち去っていった。直接工房に来て買おうとする人も居るのか……露店などに並ぶ前なら値引き交渉もできるからか……?
まあそんなことはどうでもいいかと頭を二、三回振って思考を切り替え、また製作に取り掛かる。
次は、軟らかい木材で作った弓の左右に森エリアの固い木を配置する、過去に作った【試作型木材結合弓】のイメージで作ってみることにした。弓系統である以上、こういった構造は流用できるはずだ。
弓の形を三つ削り出して、それぞれを磨いてから結合し、形を整える。過去に苦労したおかげで、耐久力などを維持するためのバランス感覚は、頭と手にしっかりとインプットされている。
【試作型木材結合長弓】
効果:Atk+26
製作評価:6
ふむ、長弓製作の経験不足による修正で評価は落ちるな。が、これを詰めて評価8にもっていけば、おそらくAtk+30台に乗るだろう。
とはいえ、今日はそろそろ寝よう。続きは明日だ。
◆ ◆ ◆
そして翌日。まずは森に出向いて数本分ほど木を入手する。それから木材加工場に行き、昨日作った【試作型木材結合長弓】の評価を高めるため、細かい詰めの作業を念入りに行うところからスタート。結合部分の補強、バランスの見直し、弓全体の形などを何度も練り直す。
【試作型木材結合長弓】
効果:Atk+30
製作評価:8
よし! とついつい小さくガッツポーズをとってしまった。これでようやく次の段階に進める。
お次は半楕円状の溝を二本、弓の前側に彫っていく。この溝に円形を縦半分にしたような形のライトメタルを二本埋め込んで結合させることで、外をすっぽり包まなくてもライトメタルのしなりを利用できる。
もちろん包み込んだときより金属量が少ないから効果も落ちるだろうが、手持ちのライトメタルの量ではこれで精一杯なのだ。
溝を刻んだ後で鍛冶場に向かい、その溝の深さと長さに合うようにライトメタルを加工していく。
手持ち最後のライトメタルインゴットを炉に入れて軟らかくしてから型に流し込み、半円の形をした長細い棒を二本作る。失敗は許されない。在庫がもうないのだから。
冷えるのをしばらく待って、ある程度固まったことを確認。型から取り出し、結合長弓の二つの溝にそれぞれはめ込む。
多少のずれがあったので叩いて馴染ませ、はめ込み直し、棒の上下を鋼鉄の留め具で支える。それから等間隔に鋼鉄の留め具を配置して補強し、細い鋼鉄の糸できっちりと巻いてから、その上に持ち手を付けた。
【試作型木材結合長弓・ライトメタルライン補強】
効果:Atk+38 耐久減少
製作評価:7
これでAtkが38まで上昇した。耐久が減ったのは木の質が粗悪だからで、多数の改造に耐えられなかったのだろう。
だが本番用の木なら、X弓という無茶な改造のときも「耐久減少」の文字は付かなかったから問題はないはずだ。
弓本体の左右には薄い黒い木が使われ、中央には白い木の木材が。その白い木材には二本の青いライトメタルのラインが縦に二本入り、それを押さえるための鋼鉄の留め具が上下の端に一つずつ。弦を張る部分にも、鋼鉄製の留め具が配置されている。
肝心の重量も、自分のX弓に比べればはるかに軽い。これなら十分使いものになるだろう。
仕上げとなる本番は明日だ。
◆ ◆ ◆
いよいよ今日は、売り物となる完成品を仕上げる。昨日までの試行錯誤で設計図も完成している。ただメインの木材部分は、ライトメタルの棒を埋めるため、これまでよりやや厚く切り出すことにした。
取っておいたネクシア周辺木材の良い部分からパーツを切り出して、組み立てていく。
完成した木材部分から、変な音がしないか、ずれがないか、ライトメタルをはめ込む溝に問題がないかを確認し、品質劣化を抑えるための薬を全体に塗ってゆく。この薬は最近売り出されたものである。
土台の弓が完成したので、次はライトメタルや鋼鉄を配置していく。
薬が乾いてからライトメタルを嵌めこみ、補強具を配置し、弓の上下には留め具と弦を張るための機能を兼任する鋼鉄のパーツをセット。留め具は銀メッキを施して美しく仕上げ、無骨さを少しでも消すようにした。
持ち手部分は試作品と同じく鋼鉄の糸をしっかりと巻きつけて補強し、その上に直接手で持つ部分を取り付けた。
製作時間は長かったが、これでようやく完成だ。
【木材結合式長弓・ライトメタルライン】
金属補強を施した弓。耐久性や威力が上がっているが、代償として重量が増している。
効果:Atk+47
製作評価:7
攻撃力が40台後半に届いた。当分使うのにも十分なレベルのはずだ。
しかし、これで本当にライトメタルと良質の木材を使い切ってしまった。八万どころか一五万ぐらい代金を取りたい気分だが、約束を違える訳にもいくまい。
売るのは明日だ。さすがに精神的に疲れたので、今日はもう寝よう……
【スキル一覧】
〈風塵狩弓〉Lv16 〈蹴撃〉Lv22 〈遠視〉Lv53 〈製作の指先〉Lv56(←1UP) 〈小盾〉Lv6
〈隠蔽〉Lv41 〈身体能力強化〉Lv32 〈義賊〉Lv25 〈鞭術〉Lv37
〈妖精言語〉Lv99(強制習得・控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
〈木工〉Lv39(←3UP) 〈鍛冶〉Lv40 〈薬剤〉Lv43 〈上級料理〉Lv11
ExP9
称号:妖精女王すら魅了した者 一人で強者を討伐した者 解放者 ???
プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人
3
「──やれやれ、すごい勢いだったな」
弓が完成したので指定の場所に来てほしいとアヤメさんに伝えたところ、驚くほど早く食いついてきた。どうも裏ダンジョンの攻略がかなり行き詰まっているらしく、相当苦戦している様子が窺えた。
裏ダンジョン専用の掲示板スレッドにも、きついだの、クリアへの道筋が見えないなどのコメントが溢れ、どの武器も苦労している感があった。さすがに自分はこのダンジョンに手を出すつもりはない……今は、だが。
「お、お待たせしました!」
待ち合わせ場所に選んだ人気のない家に、連絡してすぐアヤメさんが到着した。走ってきたのだろう。そしてその隣にはノアさんも居る。
「出来上がったとの話で……ぜひ完成した弓を見せてもらいたく」
ノアさんもやや興奮気味のようだ。なので、さっさと[レンタル]で見せることにした。
そして性能を見た瞬間、二人は固まってしまった。そりゃそうだろうな、これまでより二回りぐらい性能が上がっているんだから。
「──よ、よんじゅうなな……!?」
やがてアヤメさんがフリーズから再起動し、ボソッと声が漏れる。その後、「「な、なにこれ~!?」」と女性二人の甲高い絶叫が響き渡った……お陰で耳が痛い。
「やかましい! 二人とも落ち着け!」
そう、怒鳴らざるを得なかった。
それから一〇分ほど経過。
「落ち着いたか? 全く、よくあんな絶叫をしてくれましたね……」
そう言って二人を睨む。アヤメさんはばつが悪そうで、落ち着きがない。
「そ、そう言われても、僅か数日でアヤメの弓の能力をこれほど上回るものができるとは、予想できませんよ!」
ノアさんはやや逆切れぎみである。ま、それはそうだろうがな。
「まあいい。で、買いますか? 買わないのですか?」
自分のひと言で二人は一気にクールダウンし、ごにょごにょと相談を始めた。
「ノア、悪いけど今、手持ちいくらある……?」
「アヤメ、まさかお金が足りないとか言い出すんじゃないでしょうね?」
「ううん、ちゃんとあるけど……あの性能の弓の値段が八万ってことを受け入れちゃったら、さすがに作ってくれたアースさんに申し訳ないよ……」
「ああ、それはそうね……五〇万と言われても納得しちゃう性能よね。まさかあそこまで強い弓を作るなんて……口先だけならいくらでも言えるから、どんなによく出来ても八万は高いと思ってたけど……」
「うん、私もここまでの物とはさすがに予想してなくて……」
「今私が出せるのは一〇万グローが限界よ、アヤメ?」
「うん、じゃそれ貸して。できるだけ早めに何とかするから」
「ううん、たまに[レンタル]で使わせて。正直あの弓を逃すと、二ギルド合同で進めている攻略が……」
「買えば、裏ダンジョン攻略に光が見えてくるよね……じゃあ、お互いのギルドの共同購入で……」
ごにょごにょごにょごにょ……
ずいぶんと相談が長いな、と思っていると、二人がようやくこちらを向いた。
「分かりました、買わせていただきます。ですが、予想以上の性能ですので、その製作技術に敬意を表し、三〇万グローを出させていただきます。万が一、八万グローで買ったなどという話が漏れたら、お互い危険ですから」
そう、アヤメさんは申し出てきたが、その前に肝心な追加条件を呑んでもらわないとならない。
「それに加えて、いくつかお願いがあります。一つ目は、この弓を作ったのが自分であると、お二人からは他人に言わないこと。他の人が想像するのを止めろとは言いませんが、肯定するのはお止めいただきたい」
これに、二人は首を縦に振る。
「二つ目は、弓の製作依頼を当分こちらに振らないでいただきたい。これは、材料がもう手元にない、というのが理由です」
これにも二人は納得した様子を見せる。
「そして最後は、今の裏ダンジョンに自分を誘わないこと、です。今のメンバーでぜひやり通してほしい、といったところです。その弓があればきっと可能性は開けるはずです」
以上ですが宜しいですか? という確認にも、即座に「「了解しました」」と返ってきた。なので、早速三〇万グローを受け取り、弓を渡す。
「うん、この弓ならきっと……」
弓の具合を確かめているアヤメさん。それを羨ましそうに見ているノアさん。さて、敬意には敬意で返さねばならないかな。
「さて、ではこちらもお持ちください。敬意を払っていただいた分を、多少なりともお返しすることにしましょうか」
そう言って、作っておいた【ツイスターアロー】を取り出す。
「この矢は、貫くことを最優先の目的として生み出した鏃をつけた矢です。関節や首などのもろい部分を狙って撃てば、裏ダンジョンに出るタンカータイプの鎧といえど、撃ち貫けるかもしれません。現に、妖精国に居たウォーゴブリンズのタンカータイプの鎧なら貫けました」
「そんな矢まで生産していたの!?」
この説明に反応したノアさん。自分もそれに答える。
「製作が手間なので、市場に流せないのが最大の欠点ですけどね。初期の弓スキル、《アローツイスター》と組み合わせて使えば、かなりの貫通力を生み出します。これは自分の実体験から言っています。これを五〇〇本ほどお譲りしましょう」
そう告げて、一束一〇〇本の矢束を五つ取り出す。
「これは……鏃が竜巻みたいに捻ってあるのですね……回転を生み出すことで貫通しやすいようにする工夫ですか」
アヤメさんがため息混じりに感想を漏らす。作るのには苦労したからなぁ。
「三〇万グローという高値を自主的につけてくださったそちらの敬意に対し、多少なりとも協力させていただこうと思ったまで。今回に限り無料でお譲りしますので、遠慮なく」
効果を知ればもっと欲しくなるだろうからな。そのときにそれなりの値段をつければいい。
「ありがとうございます。アヤメ、この後、作戦会議よ! ダンジョン突破の作戦を練り直すわよ!」
「ええ! これなら可能性が大いに上がるわ! どうも、ありがとうございました!」
こう言うが早いか、興奮した様子で二人は立ち去っていった。
面倒な依頼だったが、何とか無事に終わってよかった。活躍できるかどうか、後は二人次第である。これ以上は自分の手を貸しようがない。あとできることは、上手くいくように祈るぐらいだな。
祈る先は神じゃなく、あの二人の諦めない意思に対してだが。
◆ ◆ ◆
あなたにおすすめの小説
『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?
シエル
恋愛
「彼を解放してください!」
友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。
「どなたかしら?」
なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう?
まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ?
どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。
「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが?
※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界
※ ご都合主義です。
※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまうリリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、悪役令嬢として断罪された少女が、「誰かの物語の脇役」ではなく、自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
試験でカンニング犯にされた平民ですが、帝国文官試験で首席合格しました
あきくん☆ひろくん
恋愛
魔法学園の卒業試験で、私はカンニング犯に仕立て上げられた。
断罪してきたのは、かつて好意を寄せてくれていた高位貴族の子息。そしてその隣には、私を嫌う貴族令嬢が立っていた。
平民の私には弁明の余地もない。私は試験の順位を辞退し、その場を去ることになった。
――だが。
私にはもう一つの試験がある。
それは、帝国でも屈指の難関といわれる帝国文官試験。
そして数日後。
その結果は――首席合格だった。
冤罪で断罪された平民が、帝国の文官として身を立てる物語。
