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10巻
10-1
しおりを挟むプロローグ
(さて、あの子はいるかしら……)
ふとした縁でアースという人間の冒険者とパーティを組み、久々に故郷であるエルフの森に帰ってきたエルは、決定力不足を痛感していた。
アースには言わなかったが、自分が森を飛び出す前は、森に出現するハンティング・グラスホッパーはあんなに強くなかったと記憶していた。自分やアースの弓による攻撃なら、二回も当たれば倒せる程度だったはずだ。なので、二人で森に入ったわけなのだが。
にもかかわらず、今日戦ったグラスホッパーは攻撃を数回受けてもなお襲い掛かってきた。
(それに加えて、森に掛けられたあの幻惑……遠距離から射て倒すという私の得意戦法が封じられた今のエルフの森の中では、接近戦に長けた人が絶対に必要だわ。アース君はある程度近接攻撃ができるようだけど、私は回避するしかない。このまま二人だけで戦い続けたら、私達は間違いなく近いうちに死ぬ)
あんなかわいい子はそうそういないから、できれば独り占めしたかったけれど――とエルは呟く。この場合の「かわいい」とは内面の話である。
(アース君がキーン族の美人を連れてきたときは、面食いなのかと思ってつい詰め寄っちゃったけど……そういうわけではなかったようだから、あの子を紹介しても多分大丈夫なはず。それに戦力の増強は必須だしね)
そう考えながら村の中をしばらく歩き続けたエルは、ある一軒家の前に到着した。エルはその家の扉を軽くコンコンコン、とノックする。
「ごめんください。ルイ、いるかしらー?」
「はーい、今出ますよー」
ノックに応えて扉を開けたのは、ややロリっぽい銀髪エルフの女性だった。人間で言うならば一五歳ぐらいの外見だが、実際の歳はエルと大差ない。彼女の本名はルーナ・フォレスティといい、普段はルイという愛称で呼ばれている。
「あら、エルじゃない。こんなに早く再び私のところに現われるなんて、何かあったの?」
エルはエルフの村に帰ってきたと挨拶回りをした際、このルイの元も訪れていた。
「うん、ちょっと話があるの。中に入らせてもらってもいいかしら?」
ルイは笑顔で頷いて、エルを家に招き入れた。
「はい、お茶が入ったよ」
「ありがとう、ルイ」
エルはエルフの森特産のグリーン・ティを堪能する。ちなみにこのグリーン・ティをプレイヤーが飲んだら、「これは抹茶じゃないか!」と言うだろう。
「それで、お話ってのは何かしら? まずは話してみて」
カップを置いたエルは、ここを訪れた理由をストレートに話すことにした。
「そうね、親友の貴方だからシンプルに言うわ。しばらく、私と外の世界から来た人とで組んでいるPTに加入してもらえないかしら?」
エルからの申し入れに、ルイはうーん、と考えるそぶりを見せる。それから、ぽつぽつと確認を始めた。
「その子は、極端なわがままを言う子?」「無意識に差別とかしてこない?」「無茶をする子?」
エルも一つ一つ質問に答えを返していく。
「全然欲のない子ね」「ちゃんと相手を気遣えるわ」「むしろ慎重かしら」
エルの返答を聞いて、ルイはふむふむ、とまた長考に入る。
そうして数分考えた後、最後にこう質問した。
「私が短弓しか使えないのは知っているでしょう? 何で他のエルフを誘わないの?」
短弓、狩弓、長弓の全てを得意とするのが普通のエルフにあって、なぜかルイは短弓しか上手く扱うことができず、村の中で孤立した時期があった。
「むしろ、貴方の才は短弓に全て注がれたんじゃないかしらと私は思うけどね。その才を私達に貸してほしいのよ」
エルの言う通り、ルイの短弓の腕は他を圧倒していた。それを面白く思わなかった者が色々と邪険にしたことも、彼女の孤立の原因の一つである。
そして、その時期にルイを支えたのがエルであった。
それはさておき、エルは先ほどのエルフの森の中での活動について、ルイに話し始めた。特に、森の魔物の中では比較的弱い部類に入るはずのハンティング・グラスホッパーが、かなりの強敵になっていたことを念入りに。
「なるほどね。エルの感じた通り、ここ十数年で妙に魔物が強くなったのは事実よ。全体的に数が減った分、一匹一匹の強さが洗練されたんじゃないかって見方が大半だわ……確かに浅い場所ならいいけど、森の奥に進むなら二人じゃ無謀過ぎるわね」
グリーン・ティを再びカップに注ぎながらのルイの言葉に、エルも頷き返す。
「幸いアース君が……ああ、アース君というのが私とPTを組んでいる子の名前なんだけどね、一回戦った後ですぐ引き返す決断をしたのよ。慎重でしょ? 大抵はもう少し進もうと考えそうなものなのに」
戦力的に進むのは危険ってことを素直に認められるのはいいことよね――エルはアースの判断をそう評価した。
「確かに慎重みたいね。不慣れな場所なんだからそれぐらい慎重で正解よ。私もその子を臆病だとは思わないわ」
エルの評価に概ね同意の様子を示したルイは、椅子に座ったまま両目を伏せてPTに入るか否かをしばらく考え……
「うん、その子なら馬鹿馬鹿しい行動を取って無駄死にすることはなさそうね……いいわ、私も貴方達のPTに入りましょう。どうせそのうちまた魔物の討伐をしなきゃいけない時期が来るから、早めに打ち解けておく方がよさそうだし……」
そう言ってエルに微笑んだ。
それから家の奥に姿を消したルイは、一五分ほど経過してから、戦闘用の装備一式を身に着けて戻ってきた。
「そのアース君って子に会うなら、相応の装備をしていないとちゃんと戦えるか疑問視されそうだからね……」
確かに先ほどの軽装より今の格好の方がアース君も不安に思わないか、とエルもルイの行動に納得する。
「ところでエル、貴方達は普段どこにいるの?」
「うん、今は隠れ一番人気の宿屋に泊まってるわ」
エルの言葉を聞いたルイは、うーんと考えてからこう持ちかけた。
「あそこは比較的安いけど、それでも長期滞在となればかなりお金が掛かるでしょ? アース君って子次第だけど、よければ私の家に泊まらない? それでかなり資金が浮くと思うわよ。私の家は無駄に大きいのに、一人で住んでいるから少々寂しいのよね」
エルと長く一緒にPTを組んでいる子なら、邪なこともしないでしょうし、とルイは最後に付け足す。
「そうね、それも含めて話し合いましょうか。とりあえずアース君も呼び出さないと」
そうして二人はアースと合流するべく、ルイの家を出ていった。
1
現実世界では田中大地、そしてこの「ワンモア・フリーライフ・オンライン」の世界ではアースであるところの自分は、調味料や矢の補充をするため、あちこちのお店に足を運んでいた。
その最中、エルからのPTチャットが届いた。
【アース君、今大丈夫かしら? PTメンバーになってくれるって人がいるから早速顔合わせをしたいのだけれど、今からではどう?】
そうか、エルが言っていた知人の勧誘は上手くいったらしい。これで三人PTになるな。
【了解、じゃあどこで会おうか?】
そうとくれば少しでも早い方がいいだろう。自分はすぐに了解の意思をエルに返した。
【合流場所は、私達が泊まっている宿屋の部屋にしましょう。あそこなら間違いもないし】
自分がここエルフの村の施設でチェックしたのは食材店や鍛冶屋、木工所といった特定の場所だけだったから、宿屋なら分かりやすくて助かる。
【了解、じゃあ今すぐ引き揚げるよ。こちらが遅くなったら、申し訳ないけど部屋の中で待っていてほしい】
エル達の方が近かったら、少し待たせてしまうかもしれない。幸い補充も終わったし、急ぎの用事もない。早足で帰ることにするか。
【じゃ、また後でね】
さて急ごうか。待つ側は一分が一〇分に感じられることもあるからな……
それから六分ほどで、宿屋に帰還できた。部屋の扉をノックすると、中から「アース君かしら?」とエルの声がする。
「ああ、今帰ったよ。扉を開けてもいいかな?」
ちょうど着替え中でした、なんてのは非常に気まずい。キャーエッチー! で済むのは漫画の世界だけであって、実際にやった場合は変態だの覗き魔などと散々罵られた上で長く汚名を着せられることになる。精神衛生上、それだけはなんとしても回避せねば……
「大丈夫よ、入って頂戴」
どうやら無用の心配だったらしく、すぐに許可が出たので扉を開ける。
部屋の中には、エルと、やや幼い感じの銀髪エルフ女性がいた。
「さて、アース君。この子が新しいメンバーになるルイよ。私の友人でもあるわ」
ルイさんね。エルの友人ということは、幼いのは見た目だけなのだろう。エルフの歳は本当に分からないな。
「ルイさんですか、私はアースと申します。今回、PTを組んで一緒にエルフの森の探索をして頂けるということで、間違いはありませんか?」
ある程度はエルから話が行っていると思うので、そう切り出してみた。
「ええ、そのつもりですよ。ちなみに私が使える弓は短弓限定ですが、そこはよろしいのでしょうか?」
このルイさんからの言葉に、自分は首をひねる。短弓限定の何が悪いのだろう? 短弓、狩弓、長弓それぞれに長所と短所があるのだから、長所を生かすように戦えばいいだけだ。ましてや、エルフの森では地形上接近戦になりがちだし、むしろ弓に限れば短弓が一番有効である。だから自分は……
「特に問題になることではないかと。短弓の長所を生かして戦って頂ければ、それでよいと思われますが」
とルイさんに伝える。
するとルイさんはほっとしたようで、胸に手を当てて小さく息を吐いた。
「では、これからよろしくお願いしますね」
そう言って頭を下げてくるルイさん。自分も、こちらこそ、と返答しながら一礼する。
「話がすんなり纏まって何よりね。それでアース君にはもう一つ提案があるのだけど、いいかしら?」
ルイさんと話をしている間はずっと黙っていたエルが、そんな風に話しかけてきた。提案か、なんだろう?
「ルイの家に拠点を移さない? ほら、ずっと宿屋に泊まっていたら結構出費がかさむでしょ? ルイは自分の家を持っているから、そっちのお世話になれば安く済むわ。もちろんルイからの提案であって、私が強要したわけじゃないからね」
む、確かにここに泊まり続ければ、宿代はそれなりのものになるが……だからといって女性の家に上がり込むのはなぁ。
「ちょっと確認。そのルイさんの家は、他に誰か一緒に住んでいるのかな?」
自分の質問にルイさんは、
「ううん、私一人で住んでいるの。家がちょっと大きいから、それだと寂しくてね。だから誘ってみたんだけど」
とご返答。
うーん、そんな家に男が出入りしたら、どう転んでもろくなことになりそうにないぞ。
「エルはルイさんの家にお世話になりなよ。自分はここでいいから」
自分は頬杖をついて、そう答えた。幸い色々と稼いできたので、宿に泊まり続けても問題ないだけの資金は十分にあるし、森で手に入る素材を売れば、多少なりともお金は入ってくるだろう。もちろんその儲けはPTで分けるけど。
「どうして?」
自分の返事を聞いて、頭上に疑問符を浮かべるルイさん。分からないんじゃ仕方がないので、女性の家に突如親戚でもない男性が上がり込むと色々周りから勘ぐられてよろしくないだろう、と伝える。
「あーうん、なるほどね。確かにそういう考えもあるわね」
すぐに納得したのはエルだった。
「そんなに気にすることでもないと思うけど……そういうなら、無理強いはしないわ」
こちらはルイさん。納得するのにエルより少し時間をかけた。やはりエルは今まで外の世界を旅してきた分、こういったニュアンスにも理解があるのだろう。
ルイさんが言うように一般的かどうかはさておいて、女性の家に出入りするのは個人的に避けたい。どこに地雷ゾーンがあるか分かったものではないからな……いくらPTメンバーといえども、そこだけは譲りたくない。
この件の話し合いは自分がログアウトする寸前まで行われ……結局、自分はこのまま宿屋に、エルは今夜からルイさんの家にお世話になるということで纏まった。
ルイさんは「気にし過ぎだと思うけどね?」とあまりすっきりした感じではなかったが、エルが「男の子には色々と言い出しにくい事情があるのよ」のひと言で丸め込んだ。この言葉に思うところがないわけではないが、話が纏まったならもう掘り返すまいと割り切った。予想外に疲れたな……
◆ ◆ ◆
翌日。ログインしてエルとルイさんと合流し、エルフの森へ。
ハムスターに似た姿のキーン族、とらちゃんの案内で、浅い場所の散策を始めたところまでは、初日とまったく変わらない。
ただ今回は枯れた老木もなかったし(老木自体はいくつもあったが、まだまだ元気なのは素人目にも分かった)、動物達にもあんまり出会わない。そして後者の理由は、頻繁にモンスターと遭遇するためなのだが……
「なあ、エルさんや。ちょっといいかね?」
隣に立っているエルに、小声で話しかける。
「どうしました、アースさんや?」
エルもなぜか、落語に出てくるおばあちゃんのような喋り方で返答してくる。
今もモンスターと戦闘中にもかかわらず、何でのんびりこんな話をしているのかというと……
「もう、全部ルイさん一人でいいんじゃないかな?」
「それをあまり否定できないのが困るわね」
そう、たまに漫画とかである無双シチュエーションがぴったり当てはまるほどに、ルイさんは強かった。
最初に出遭ったハンティング・グラスホッパーをさっくりと瞬殺したのを皮切りに、カブトムシみたいなハンティング・ホーンも、ノコギリクワガタのようなツインブレイド・ホーンも、短弓であっという間に倒してしまう。そのため中衛の自分と後衛のエルの出番は、ここまで見事なほどにまったくなし!
例えるならば、初心者が新しいフィールドを観光するためにトッププレイヤーが引率してくれているような感じと思って頂きたい。戦わないので自分のスキルは上がらないが、モンスターがどういう攻撃をしてくるのか、落ち着いて観察できるのは大きい。
「今日は結構魔物がいますね。これは近いうちに、大掛かりな討伐隊が組まれるかもしれないですね」
再びハンティング・ホーンをあっさり倒して、何事もなかったかのように淡々とそんな感想を口にするルイさん。
彼女は自分のように多種多様な攻撃手段を持つわけではなく、短弓といくつかの魔法を併用して戦うバトルスタイルのようだ。魔法は基本的に補助魔法主体で、メインは短弓による攻撃。アクロバティックな動きから容赦なくモンスターに矢が降り注ぐ。宿泊場所のこと以外で彼女に逆らうのはやめておこう。
「お、お疲れ様です」
自分とエルも周りの警戒はしているから、一応完全な役立たずというわけではない。だが戦闘の大半がルイさん無双に終始したことに自分はちょっと引き気味であり、それが声にも少し出てしまった。
「ルイ、貴女、ちょっと強くなり過ぎたんじゃ……私の記憶にある貴女の数倍は強くなってるんだけど」
エルもそう言っている。やっぱりエルフの中でも別格の強さなのは間違いないな。だが当のルイさんは……
「そうね、森の魔物達に対抗するためにはどうしても強くなる必要があったし。でも、ハイエルフの人達はもっとすごいんだけどね……何度も稽古をつけてもらったけれど、結局一回も勝てなかった。かなり手加減されてもまったく歯が立たないのが悔しくて、ついつい訓練に熱が入って数百年が経ったらこうなってただけよ」
と、淡々と喋る。
しかし、ロリっぽい外見のルイさんの口から「数百年の訓練」という言葉が出ると、自分の中で色々混乱しそうで頭が痛くなってくる。何せルイさんの身長は大体一五〇センチメートルあるかないかだ。そんな子が、出てくるモンスターを圧倒しているんだから恐ろしい。まるで小学生に守られているような錯覚を起こすんだよ、これが……
外見なんて本当に当てにならない。エルフという特殊な補正がなかったら、色々と落ち込んでしまうところだ。
それからもしばらく三人で森を散策した。まだ浅い場所というのが原因なのか、出てくるモンスターは大半が単体であり、たまに二匹のことがあったぐらいだ。
単体ならばルイさん一人で、二匹のときは片方をルイさんが、もう片方を自分とエルが受け持って戦った。モンスター側の攻撃パターンをある程度把握できていたから、自分が蹴りとスネークソードで立ち回ってモンスターの注意をひきつけ、その隙にエルが長弓で射抜くという戦い方で、危なげなく勝つことができた。
「蹴りに変わった剣、そして弓か……そこまで攻撃力はないみたいだけど、複数の武器を扱える器用さは素晴らしいわね」
自分の闘いを見たルイさんが下した評価がこうだった。引き出しの多さが自分の売りだから、真っ当な褒め言葉だろう。
その後も何回かモンスターと戦いながら森を進み続けると少々開けた場所に出たので、そこで休息を取る。周りが見渡せる分、不意打ちを受けにくいと考えられるからだ。
そして食事もしておこうという話になり、ルイさんが取り出したのは味も素っ気もない長細いクッキーみたいな、エルフの村で売っている携帯食料だった。水分としてはお茶を用意しているようだが……
「ルイ、そんなので足りるの?」
それを見たエルがつい声を上げた。確かに戦士の食事としては心もとない。数週間にわたって旅をしなければいけない冒険者が持ち運ぶものとしてなら、まだ分かるのだが。
「でも私が料理をすると、なぜかみんな紫色のスライムみたいなものになるから……」
ギャグマンガの世界ですか……あんまりにも切ないので、自分はアイテムボックスに眠らせておいた【ドラゴン丼】を取り出して、ルイさんに押し付ける。この世界のエルフがお肉を食べることは何度も確認しているから、嗜好的な問題はないはずだ。
「え? 食べていいの?」
そう聞いてくるルイさんに、戦闘で貢献してもらったんだから、と理由を添える。
それならば、と言って丼の蓋を開けたルイさんは、ふわっと漂うお肉の香りに「わあ……」と声を漏らした。そしてルイさんが食べ始めたところを見計らってエルに手招きして、自分の近くに来てもらう。ちょっと聞いておきたいことができたからだ。
(なあ、ルイさんの家では晩御飯とかはどうしたの?)
「ワンモア」の世界は昼が三時間、夜が二時間で過ぎるから、自分がログアウト中にこっちでは数日経っている計算になる。自分の質問にエルは……
(食事は私が全部作ってた。宿泊費の代わりって言ったらとっても喜んでたけど、まさかルイは料理が壊滅的だったとはね……お茶とかを入れるのは上手かったから、てっきり料理もできるものとばかり思い込んでたわ。休憩時の食べ物を私が用意しておくか、聞いておくべきだったかもしれないわね)
そうか、家事はエルが担当していたのか。ルイさんにとっても、エルが家に泊まるのはいいことなんだな。
やがて食事休憩を終えて、あと少し探索したら村に帰ろうという話になった。いくらルイさんが強いといっても、彼女だけを頼って森の奥まで突き進むのはよろしくない。自分とエルがこの森に慣れるまで、もう少し時間をもらいたい。
「ねえ、アース君。やっぱり私の家に泊まりに来ない?」
帰り道、ルイさんが自分にそう言ってきた。
「いやいや、昨日も言いましたけど、女性の家に男性が出入りするのは好ましくないですよ」
昨日と同じ反論で断ろうとしたが、ルイさんは自分の外套をがしっと掴んでくる。
「休憩のときにくれたあのご飯、本当に美味しかった。毎回は無理でも、できるだけちょくちょく作ってほしい。その代金として、私の家に泊まっていいから」
Oh……また料理が原因ですか。
でも今までのパターンで、間違いなくこれがフラグだってことは分かっている。称号「人災の相」のパワーアップは回避したいし、何が何でもルイさんの家に泊まるわけにはいかない。結局、今日の昼の分についてはお金で支払うという形で落ち着いた。
ちなみに、倒したモンスターから手に入れた素材をお店で売って三分割すると、一人頭二一〇〇〇グローになり、ルイさんはその中から代金を支払ってくれた。
うーむ、こうなったら、中断していた肉まんとかの作り方を本腰入れて考えるか……
【スキル一覧】
〈風迅狩弓〉Lv14 〈剛蹴〉Lv24(←1UP) 〈百里眼〉Lv24 〈技量の指〉Lv7 〈小盾〉Lv23
〈隠蔽・改〉Lv3 〈武術身体能力強化〉Lv40 〈スネークソード〉Lv43(←2UP)
〈義賊頭〉Lv19(←1UP) 〈妖精招来〉Lv5(強制習得・昇格・控えスキルへの移動不可能)
追加能力スキル
〈黄龍変身〉Lv4
控えスキル
〈上級木工〉Lv32 〈上級薬剤〉Lv21 〈釣り〉Lv2 〈料理の経験者〉Lv9
〈鍛冶の経験者〉Lv21 〈人魚泳法〉Lv12
ExP30
称号:妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 ドラゴンと龍に関わった者
妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相
託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊
人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル
プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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