563 / 767
連載
ヘイロクさんの目覚め、そして決着
再び始まったヘイロクさんとの戦い。そして数回打ち合っただけで気が付いた、確かに『変わった』と。
(先ほどまでは鋭いが、直線的な動きも多かった。が、今は明確に曲線を描く動きが増えた。が、それは無駄が増えたという意味ではない……滑らかになったと表現すべきか。受け流し一つとっても、先ほどよりもこちらの力をより削ぎながら薙ぐような形に変わっている)
剛のやり方をある程度抑え、柔の動きを取り入れた感じがする。無論剛のやり方を捨てたわけではなく、必要な時には直線的に素早い剛の力を振るってくる。まるで川の流れのように、緩やかかと思えば早く、そして早くなったかと思えば緩やかになると言う変化を取り入れたおかげで、はるかに先ほどよりも戦いにくい立ち回りになった。
更にするりとこちらの懐に入ろうとする動きも増えた。自分のレガリオンの振るい方を参考にしたのか、刃だけでなく剣の柄部分での打撃攻撃も取り入れてきている。ヘイロクさんの流派の動きに、こちらの動きの中で使えそうなもの、取り入れる価値があるものを選別して吸収し、立ち回りを変えてきたという事なのだろうか?
「これだ、これが今の今まで碌に使えず、最後まで超えられなかった祖父が見せていた流派の動き! 現実ではどれだけ真似をしようとしてもしっくりこず、体得できなかった動きが、この世界でついに動き方を、体捌きを掴めたぞ!」
ヘイロクさんが吠える。なるほど、今の動きに至る為の下地はあったのか。それが自分との戦いで攻撃を受け続けながらも学び、そしてその祖父の動きの意味、体の使い方などをついに理解し、そして動けるようになったと。
なるほど、直線と曲線の動きを不規則に変え、剛の剣と柔の剣を変幻自在に繰り出して相手を責め立てる。これは確かに厄介だ……熟達していれば。
(目覚めたばかりと言う事もあってか、粗がいくつも見えるな。容赦なく突かせてもらおう……その方が、ヘイロクさんの為になる)
剛と柔の切り替えがまだぎこちないのだ。切り替えるときに、まだ不慣れなためか頭で考えてしまうのか動きが明確に鈍る。そこを遠慮なく、自分は突く。ヘイロクさんの動きにやや劣勢気味な動きを演じ、切り替えようとして動きが明確に鈍った瞬間──レガリオンでヘイロクさんの腹部を一閃した。切り裂かれた腹部からは血が噴き出し、更に吐血するヘイロクさん。
「が、はっ!?」
まさか、と言う表情に変わるヘイロクさん。現実世界では師範である彼も、新しい動きを手に入れた事に夢中になってしまっていたのだろう。切り替えるときに自分に明確な隙が生まれている事に気が付けなかった──それは、戦いにおいて致命的すぎる。自分の攻撃が相当に効いたようで、先ほどまで生き生きと攻撃していた姿から一転してヘイロクさんの動きが止まる。当然自分はそこに畳みかける。
「ぐ、おっ!?」
腹部からの出血、さらに吐血で大量の血を失ってしまったためか何とか直撃を避けるので手いっぱいになるヘイロクさん。もうこれ以上やっての嬲るだけになると自分は判断し、ヘイロクさんの防御を八岐の月に付いている爪ですくい上げるような形で大きく崩して──空いた胴体の心臓部分にレガリオンの刃を深々と突き刺した。
これがとどめとなって決着がついた。PvPが終わり元の場所に戻ってくるとそこには地面を殴りつけたのであろう姿で顔を地面に向けたまま動かないヘイロクさんがいた。それを見ていたオサカゲさんがため息をついていた。
「悔しがるのは分かるがな、ヘイロク。アース殿はこの世界においては儂らよりも遥かに先達だぞ? 負ける事は恥ではない」
しかし、このオサカゲさんの言葉に、ヘイロクさんは腹を立てているのはそこではないと首を振る。
「そうかもしれん。だが! 祖父に出来て今まで己が出来なかったあの動きが出来るようになって浮かれ、そこを完全に突かれた! あんな楽しい時間が、己が心の未熟さで台無しになった! 負けた事は良い、だがそこが口惜しくてならん!」
どうやら、先ほどの戦いにおける敗因を自分自身で理解したようだ。ここは流石師範という所か……それ故に、浮かれた自分が許せないのだろう。浮かれて油断し、そしてそこを疲れての敗北と言いう結果は、屈辱だという心境が、ひしひしと伝わってくる。
「だが、掴んだのだろう? ならあとはこちらの世界と現実の世界両方で磨けばよいではないか。それとな……悔しがっているお前には悪いが、アース殿は全然本気を出していなかったぞ」
このオサカゲさんの言葉に、オサカゲさんの顔が自分に向かって上げられた。そしてオサカゲさんも自分を見る……なんて答えればいいのよ、少し考えたがどれも間違っているような気がしてならない。
「オサカゲ、それはどういう意味だ」「アース殿が使っていたあの特徴的な双刃剣と言うのか? あれはまだ先があったと言う事よ。アース殿、済まぬが軽い演武のような物をしてもらえぬか? それを見れば、オサカゲも納得すると思うのだ」
様は、スネークソードモードも見せろと言う事か。確かに先ほどの戦いではソードモードだけで戦っていて、一切見ていなかったな。盾の中に仕込んだ暗器役を務めるスネークソードなどを見せろと言う訳でないのであれば、いいか。周囲に人がいないことを確認し、レガリオンと八岐の月を持ついつもの戦闘スタイルを取る。そして……
「はっ!」
まずはソードモードのまま八岐の月との二刀流の演武を見せる。動いているうちに、何人ものプレイヤーが気が付いてやってくる。何か面白い事が始まった、みたいな感じなんだろうか……まあいい。そして途中から、レガリオンをスネークモードに変更してより大きく動くようにして盛り上げていく。が……
「な、なんっ……」「あれがあの剣のもう一つの姿よ。変幻自在、間合いの変化……それを一切使われていなかったのだ。加減されていたと分かるだろう?」
そんなヘイロクさんとオサカゲさんの言葉を耳が拾った。ちらりと二人がいた方に目をやると、驚いて面白い顔をしているため折角の浪人の雰囲気がぶち壊しになっているヘイロクさんとそれを楽しそうに見ているオサカゲさんの姿が目に入った。その後は再び視線を外し、五分ぐらいの演武を終える。するとたくさんの拍手を頂いてしまった。
「見ごたえあったぞ!」「楽しかったよ!」
そんな声とともに、いくつものおひねりが飛んできた。いや、その、それを狙っていたわけではないのだけれど……とも言いだしずらかったし、極端な大金を投げた人もいなかったのでありがたく頂戴させていただいた。そしてヘイロクさんとオサカゲさんの所に戻ると……ヘイロクさんが頭を下げてきた。
「わが師になっていただけませぬか?」
いや、それはちょっと……まだ塔も登り切っていないし、登り切った後にも何があるか分からない。なのでお断りするしかないんだよね。塔を登り切った後ならば、受ける受けないを決められたんだけど……なので申し訳ないが、その話は受けられないとちゃんと断った。ヘイロクさんは残念そうな表情を浮かべていたが、仕方がない。
「仕方があるまい、アース殿にも都合という物がある。ただ、空いた時間に今回のような手合わせをしてもらうぐらいが精いっぱいだろう。それまでに腕を磨くしかないぞ?」
とオサカゲさんの言葉に、ヘイロクさんはしぶしぶと言った感じで頷いた。その後は別れて宿屋に入り、ログアウトして就寝。しかし、師になって欲しいと言われるとはね……
(先ほどまでは鋭いが、直線的な動きも多かった。が、今は明確に曲線を描く動きが増えた。が、それは無駄が増えたという意味ではない……滑らかになったと表現すべきか。受け流し一つとっても、先ほどよりもこちらの力をより削ぎながら薙ぐような形に変わっている)
剛のやり方をある程度抑え、柔の動きを取り入れた感じがする。無論剛のやり方を捨てたわけではなく、必要な時には直線的に素早い剛の力を振るってくる。まるで川の流れのように、緩やかかと思えば早く、そして早くなったかと思えば緩やかになると言う変化を取り入れたおかげで、はるかに先ほどよりも戦いにくい立ち回りになった。
更にするりとこちらの懐に入ろうとする動きも増えた。自分のレガリオンの振るい方を参考にしたのか、刃だけでなく剣の柄部分での打撃攻撃も取り入れてきている。ヘイロクさんの流派の動きに、こちらの動きの中で使えそうなもの、取り入れる価値があるものを選別して吸収し、立ち回りを変えてきたという事なのだろうか?
「これだ、これが今の今まで碌に使えず、最後まで超えられなかった祖父が見せていた流派の動き! 現実ではどれだけ真似をしようとしてもしっくりこず、体得できなかった動きが、この世界でついに動き方を、体捌きを掴めたぞ!」
ヘイロクさんが吠える。なるほど、今の動きに至る為の下地はあったのか。それが自分との戦いで攻撃を受け続けながらも学び、そしてその祖父の動きの意味、体の使い方などをついに理解し、そして動けるようになったと。
なるほど、直線と曲線の動きを不規則に変え、剛の剣と柔の剣を変幻自在に繰り出して相手を責め立てる。これは確かに厄介だ……熟達していれば。
(目覚めたばかりと言う事もあってか、粗がいくつも見えるな。容赦なく突かせてもらおう……その方が、ヘイロクさんの為になる)
剛と柔の切り替えがまだぎこちないのだ。切り替えるときに、まだ不慣れなためか頭で考えてしまうのか動きが明確に鈍る。そこを遠慮なく、自分は突く。ヘイロクさんの動きにやや劣勢気味な動きを演じ、切り替えようとして動きが明確に鈍った瞬間──レガリオンでヘイロクさんの腹部を一閃した。切り裂かれた腹部からは血が噴き出し、更に吐血するヘイロクさん。
「が、はっ!?」
まさか、と言う表情に変わるヘイロクさん。現実世界では師範である彼も、新しい動きを手に入れた事に夢中になってしまっていたのだろう。切り替えるときに自分に明確な隙が生まれている事に気が付けなかった──それは、戦いにおいて致命的すぎる。自分の攻撃が相当に効いたようで、先ほどまで生き生きと攻撃していた姿から一転してヘイロクさんの動きが止まる。当然自分はそこに畳みかける。
「ぐ、おっ!?」
腹部からの出血、さらに吐血で大量の血を失ってしまったためか何とか直撃を避けるので手いっぱいになるヘイロクさん。もうこれ以上やっての嬲るだけになると自分は判断し、ヘイロクさんの防御を八岐の月に付いている爪ですくい上げるような形で大きく崩して──空いた胴体の心臓部分にレガリオンの刃を深々と突き刺した。
これがとどめとなって決着がついた。PvPが終わり元の場所に戻ってくるとそこには地面を殴りつけたのであろう姿で顔を地面に向けたまま動かないヘイロクさんがいた。それを見ていたオサカゲさんがため息をついていた。
「悔しがるのは分かるがな、ヘイロク。アース殿はこの世界においては儂らよりも遥かに先達だぞ? 負ける事は恥ではない」
しかし、このオサカゲさんの言葉に、ヘイロクさんは腹を立てているのはそこではないと首を振る。
「そうかもしれん。だが! 祖父に出来て今まで己が出来なかったあの動きが出来るようになって浮かれ、そこを完全に突かれた! あんな楽しい時間が、己が心の未熟さで台無しになった! 負けた事は良い、だがそこが口惜しくてならん!」
どうやら、先ほどの戦いにおける敗因を自分自身で理解したようだ。ここは流石師範という所か……それ故に、浮かれた自分が許せないのだろう。浮かれて油断し、そしてそこを疲れての敗北と言いう結果は、屈辱だという心境が、ひしひしと伝わってくる。
「だが、掴んだのだろう? ならあとはこちらの世界と現実の世界両方で磨けばよいではないか。それとな……悔しがっているお前には悪いが、アース殿は全然本気を出していなかったぞ」
このオサカゲさんの言葉に、オサカゲさんの顔が自分に向かって上げられた。そしてオサカゲさんも自分を見る……なんて答えればいいのよ、少し考えたがどれも間違っているような気がしてならない。
「オサカゲ、それはどういう意味だ」「アース殿が使っていたあの特徴的な双刃剣と言うのか? あれはまだ先があったと言う事よ。アース殿、済まぬが軽い演武のような物をしてもらえぬか? それを見れば、オサカゲも納得すると思うのだ」
様は、スネークソードモードも見せろと言う事か。確かに先ほどの戦いではソードモードだけで戦っていて、一切見ていなかったな。盾の中に仕込んだ暗器役を務めるスネークソードなどを見せろと言う訳でないのであれば、いいか。周囲に人がいないことを確認し、レガリオンと八岐の月を持ついつもの戦闘スタイルを取る。そして……
「はっ!」
まずはソードモードのまま八岐の月との二刀流の演武を見せる。動いているうちに、何人ものプレイヤーが気が付いてやってくる。何か面白い事が始まった、みたいな感じなんだろうか……まあいい。そして途中から、レガリオンをスネークモードに変更してより大きく動くようにして盛り上げていく。が……
「な、なんっ……」「あれがあの剣のもう一つの姿よ。変幻自在、間合いの変化……それを一切使われていなかったのだ。加減されていたと分かるだろう?」
そんなヘイロクさんとオサカゲさんの言葉を耳が拾った。ちらりと二人がいた方に目をやると、驚いて面白い顔をしているため折角の浪人の雰囲気がぶち壊しになっているヘイロクさんとそれを楽しそうに見ているオサカゲさんの姿が目に入った。その後は再び視線を外し、五分ぐらいの演武を終える。するとたくさんの拍手を頂いてしまった。
「見ごたえあったぞ!」「楽しかったよ!」
そんな声とともに、いくつものおひねりが飛んできた。いや、その、それを狙っていたわけではないのだけれど……とも言いだしずらかったし、極端な大金を投げた人もいなかったのでありがたく頂戴させていただいた。そしてヘイロクさんとオサカゲさんの所に戻ると……ヘイロクさんが頭を下げてきた。
「わが師になっていただけませぬか?」
いや、それはちょっと……まだ塔も登り切っていないし、登り切った後にも何があるか分からない。なのでお断りするしかないんだよね。塔を登り切った後ならば、受ける受けないを決められたんだけど……なので申し訳ないが、その話は受けられないとちゃんと断った。ヘイロクさんは残念そうな表情を浮かべていたが、仕方がない。
「仕方があるまい、アース殿にも都合という物がある。ただ、空いた時間に今回のような手合わせをしてもらうぐらいが精いっぱいだろう。それまでに腕を磨くしかないぞ?」
とオサカゲさんの言葉に、ヘイロクさんはしぶしぶと言った感じで頷いた。その後は別れて宿屋に入り、ログアウトして就寝。しかし、師になって欲しいと言われるとはね……
あなたにおすすめの小説
『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?
シエル
恋愛
「彼を解放してください!」
友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。
「どなたかしら?」
なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう?
まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ?
どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。
「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが?
※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界
※ ご都合主義です。
※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまうリリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、悪役令嬢として断罪された少女が、「誰かの物語の脇役」ではなく、自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
試験でカンニング犯にされた平民ですが、帝国文官試験で首席合格しました
あきくん☆ひろくん
恋愛
魔法学園の卒業試験で、私はカンニング犯に仕立て上げられた。
断罪してきたのは、かつて好意を寄せてくれていた高位貴族の子息。そしてその隣には、私を嫌う貴族令嬢が立っていた。
平民の私には弁明の余地もない。私は試験の順位を辞退し、その場を去ることになった。
――だが。
私にはもう一つの試験がある。
それは、帝国でも屈指の難関といわれる帝国文官試験。
そして数日後。
その結果は――首席合格だった。
冤罪で断罪された平民が、帝国の文官として身を立てる物語。