文字の大きさ
大
中
小
567 / 783
連載
エンカウントに次ぐエンカウント
荒野エリアを自分は駆けていた。が、目に入ってくるのは開封されてしまっている宝箱と変わり映えのない風景のみ。《危険察知》にも反応はない……時々見つかる洞窟はちゃんと中に入ってチェックしているが、残念ながらターゲットを見つけることが出来ていない。洞窟の中にあった宝箱は、開いている物もあったが開いていない物もあった。
(それにしても、全く見つからんなぁここのエリアにいると思われるグラッドパーティの人……もしかすると、ここの宝箱の開封率から考えて鍵が見つかったのってこのエリア? で、もう他のエリアに移動してしまっている?)
可能性はかなり高いだろう……洞窟の中以外の宝箱はほとんど開封されていた。この見通しのよさで目でも《危険察知》でも見つけられないとなれば、ここにはもういないと考えてもいいかもしれない。あまり一つの場所の固執してしまうと、全体を取り逃がす事になる。なので次のエリアに向かうべく、移動を始めようとしたまさにその瞬間だった。
『ジャングルエリアにて、捕まっていたプレイヤーが解放されました』
と言うインフォが耳に届いたのは。当然自分はジャングルに取って返す。今ならジャングルに捕まえたゼッドと解放した誰かがいる事は確定している。上手く行けば、二人一気に捕まえられるかもしれない。なので荒野から再びジャングルエリアに突入。全力で走っていると、《危険察知》に待ちかねていた反応が。反応は二つある、ここからそう遠くない場所にゼッドと誰かがいる。
そうして反応がある場所に駆け寄ると、かなり近くに来た所で《危険察知》に映っていた反応が消えた。だが、今回はかなり近づ行けているので場所のあたりは付いている。《危険察知のレーダーから身を隠せる手段がある事は初回のゼッドとのやり取りで分かっていたので、どの付近で反応が消えたのかをちゃんと記憶しておいたのだ。
そのまま現場に走り寄り、付近にある木や転がっている大きめの石などに対して八岐の月で矢を乱れ討った。ここら辺りで反応が消失した以上、瞬間的に移動できるアイテムを拾っていないのなら必ずいる。逆に居なければそう言うレアアイテムを使うという手札を切ったと言う事が分かる為、他のエリアに向かって走るだけだ。そして今回は──
「無茶苦茶しやがる!」「おわっと!? やっぱり隠れるのが遅かったかなー?」
どうやらゼッドを助けに来たのは魔法使いのガルだったようだ。自分の放った矢を二人とも避けたが、回避のため大きく動いたために偽装が解けた。が、二人ともすぐさま戦闘態勢を取った。どうやら、二人いると言う事で自分と戦う様だ。これはおそらく前もって話を決めていたのだろう。
それを証明するかのように、ガルから自分に向けて火、氷、雷、光のランス系魔法が自分に向かって飛んできた。さらにそれらの魔法を盾としてゼッドが槍を構えて突っ込んでくるのも見えた。その攻撃に対して自分の答えは……魔法もその後に突っ込んできたゼッドも前方に《大跳躍》を使う事で飛び越えて魔法を放った後のガルを八岐の月で狙い撃つという行動だった。
「なに!?」「わぁ!?」
頭上を越えられたゼッドの驚きの声と狙われたガルの慌てた声がほぼ同時に耳に届く。しかしガルもさすがと言った所で……慌てながらも複数の魔法の盾を一瞬で生成、矢の勢いを殺された。そして矢の勢いが殺された為にガルの回避が間に合ってしまった──のは読み通り。グラッドパーティの一員をたった一本の矢で射殺せるなんてお気楽な考えはもっていない。再び自分は矢を番えて──
「《ツインファングアロー》!」
アーツのツインファングアローをガルの回避行動先に向けて放つ。その二本の矢はガルの体を喰い破るように飛び──だが、回避された。ガルが《ウィンドブースター》よりも数倍速い速度で横っ飛びしたのだ。が、体勢が整っていない状態でそんな急激な速度を出したものだから、ガルは上手く着地できずに地面を転がる。今度こそ好機、だが当然自分の動きを阻止しようとゼッドが動く。
「おおおおおおおりゃあ!」
自分の背後から大きな声をあげながら突撃してきたのは、恐らく地面を転がって回避行動がとりにくい状態にあるガルから少しでも自分に対して気を引くつもりでやったのだろう。攻撃を当てるためではなく、ガルへの攻撃を中断させる事を最優先した行為と言える。だが、これもこっちにとっては予想の範疇と言うか、むしろそうなるように仕向けた所がある。
《危険察知》と気配からどのあたりに突っ込んでくるかを予測。そして姿勢を低くして突撃してきたゼッドに対して遠慮なしの足払い。ゼッドは反応できず宙に舞った後に顔面から地面にダイブする形となった。すかさず腰に戻していたレパードを抜き、ゼッドの首を飛ばすべく駆けだした瞬間、目の前に黄色の煙が漂う……とっさに息を止めようとしたが間に合わなかった。体がマヒして動かなくなる。これ、恐らくガルが自分に向かってアイテムを投げたんだなと理解する。
「今のうちに逃げるよ!」「攻撃のチャンスじゃねえのか?」「一回でもこのアイテムだと一回でもこっちが攻撃を当てたら、その瞬間麻痺が解けちゃうんだよ! 今のルール上一撃でアースを倒すなんて絶対無理なんだから、ここは逃げの一手だよ!」「分ったよ畜生! 逃げるしかねえなんて屈辱だ!」
そんなやり取りをしながら、ガルとゼッドが走り出していくのを麻痺のせいで全く動けない自分は見送る事しかできなかった。麻痺は大体三〇秒ぐらいで自然に解けたが、当然ガルもゼッドも《危険察知》の範囲外まで逃亡する事に成功してしまっている。最後で読み違えたか……あそこはゼッドではなくガルを先に落とすべきったんだな。こちらを一瞬で麻痺させてくるアイテムを持っていたのは完全に誤算だった。
(が、相手の札をまた一枚知れたから良しとしよう。ならばここからどう動くか……自分がジャングルで麻痺してたのは当然他の面子にも伝えられていただろうし……ならば、ここは草原を突っ切って反対側にある市街地を攻めてみるか)
そう決めて、再び自分は駆けだした。草原を突っ切って市街地に向かう──予定だったのだがここで予想外のエンカウント。理由は分からないが何故か草原エリアに……グラッドがいた。当然自分はグラッドを捕まえるべく急接近した。ある程度距離が詰まったところでグラッドもこちらに気が付いた。
「みぃつけたああああ!」「ハア!? 何でアースがここに居やがるんだよ!?」
あいさつ代わりの飛び蹴りを放ったが、グラッドは盾でこの飛び蹴りを受け流した。その直後、グラッドが変身する。獣人連合で見せた、ありとあらゆる武器を使うエルフの姿になった。変身したと言う事は、真っ向勝負をするつもりかな? なんにせよ、こちらにとってもグラッドの変身時の力を知れるいい機会だ。乗らない理由がない。
「ち、また戦うタイミングじゃねえんだがそうも言ってられねえ。アース、付き合ってもらうぞ!」
もちろん付き合うさ。繰り返すがこの練習で重要なのはルールの把握と相手の札を知る事だ。その大きな手札の一つを見せてくれるというのだから、付き合わないという選択肢は存在しない。
「もちろん、背を向けるような事はしない。いくぞ!」
こうして、突如草原エリアで自分とグラッドの戦いが勃発した。グラッドの手札を、たっぷりと味わういい機会だ……こちらも遠慮なしで行かせてもらうことにしよう。
(それにしても、全く見つからんなぁここのエリアにいると思われるグラッドパーティの人……もしかすると、ここの宝箱の開封率から考えて鍵が見つかったのってこのエリア? で、もう他のエリアに移動してしまっている?)
可能性はかなり高いだろう……洞窟の中以外の宝箱はほとんど開封されていた。この見通しのよさで目でも《危険察知》でも見つけられないとなれば、ここにはもういないと考えてもいいかもしれない。あまり一つの場所の固執してしまうと、全体を取り逃がす事になる。なので次のエリアに向かうべく、移動を始めようとしたまさにその瞬間だった。
『ジャングルエリアにて、捕まっていたプレイヤーが解放されました』
と言うインフォが耳に届いたのは。当然自分はジャングルに取って返す。今ならジャングルに捕まえたゼッドと解放した誰かがいる事は確定している。上手く行けば、二人一気に捕まえられるかもしれない。なので荒野から再びジャングルエリアに突入。全力で走っていると、《危険察知》に待ちかねていた反応が。反応は二つある、ここからそう遠くない場所にゼッドと誰かがいる。
そうして反応がある場所に駆け寄ると、かなり近くに来た所で《危険察知》に映っていた反応が消えた。だが、今回はかなり近づ行けているので場所のあたりは付いている。《危険察知のレーダーから身を隠せる手段がある事は初回のゼッドとのやり取りで分かっていたので、どの付近で反応が消えたのかをちゃんと記憶しておいたのだ。
そのまま現場に走り寄り、付近にある木や転がっている大きめの石などに対して八岐の月で矢を乱れ討った。ここら辺りで反応が消失した以上、瞬間的に移動できるアイテムを拾っていないのなら必ずいる。逆に居なければそう言うレアアイテムを使うという手札を切ったと言う事が分かる為、他のエリアに向かって走るだけだ。そして今回は──
「無茶苦茶しやがる!」「おわっと!? やっぱり隠れるのが遅かったかなー?」
どうやらゼッドを助けに来たのは魔法使いのガルだったようだ。自分の放った矢を二人とも避けたが、回避のため大きく動いたために偽装が解けた。が、二人ともすぐさま戦闘態勢を取った。どうやら、二人いると言う事で自分と戦う様だ。これはおそらく前もって話を決めていたのだろう。
それを証明するかのように、ガルから自分に向けて火、氷、雷、光のランス系魔法が自分に向かって飛んできた。さらにそれらの魔法を盾としてゼッドが槍を構えて突っ込んでくるのも見えた。その攻撃に対して自分の答えは……魔法もその後に突っ込んできたゼッドも前方に《大跳躍》を使う事で飛び越えて魔法を放った後のガルを八岐の月で狙い撃つという行動だった。
「なに!?」「わぁ!?」
頭上を越えられたゼッドの驚きの声と狙われたガルの慌てた声がほぼ同時に耳に届く。しかしガルもさすがと言った所で……慌てながらも複数の魔法の盾を一瞬で生成、矢の勢いを殺された。そして矢の勢いが殺された為にガルの回避が間に合ってしまった──のは読み通り。グラッドパーティの一員をたった一本の矢で射殺せるなんてお気楽な考えはもっていない。再び自分は矢を番えて──
「《ツインファングアロー》!」
アーツのツインファングアローをガルの回避行動先に向けて放つ。その二本の矢はガルの体を喰い破るように飛び──だが、回避された。ガルが《ウィンドブースター》よりも数倍速い速度で横っ飛びしたのだ。が、体勢が整っていない状態でそんな急激な速度を出したものだから、ガルは上手く着地できずに地面を転がる。今度こそ好機、だが当然自分の動きを阻止しようとゼッドが動く。
「おおおおおおおりゃあ!」
自分の背後から大きな声をあげながら突撃してきたのは、恐らく地面を転がって回避行動がとりにくい状態にあるガルから少しでも自分に対して気を引くつもりでやったのだろう。攻撃を当てるためではなく、ガルへの攻撃を中断させる事を最優先した行為と言える。だが、これもこっちにとっては予想の範疇と言うか、むしろそうなるように仕向けた所がある。
《危険察知》と気配からどのあたりに突っ込んでくるかを予測。そして姿勢を低くして突撃してきたゼッドに対して遠慮なしの足払い。ゼッドは反応できず宙に舞った後に顔面から地面にダイブする形となった。すかさず腰に戻していたレパードを抜き、ゼッドの首を飛ばすべく駆けだした瞬間、目の前に黄色の煙が漂う……とっさに息を止めようとしたが間に合わなかった。体がマヒして動かなくなる。これ、恐らくガルが自分に向かってアイテムを投げたんだなと理解する。
「今のうちに逃げるよ!」「攻撃のチャンスじゃねえのか?」「一回でもこのアイテムだと一回でもこっちが攻撃を当てたら、その瞬間麻痺が解けちゃうんだよ! 今のルール上一撃でアースを倒すなんて絶対無理なんだから、ここは逃げの一手だよ!」「分ったよ畜生! 逃げるしかねえなんて屈辱だ!」
そんなやり取りをしながら、ガルとゼッドが走り出していくのを麻痺のせいで全く動けない自分は見送る事しかできなかった。麻痺は大体三〇秒ぐらいで自然に解けたが、当然ガルもゼッドも《危険察知》の範囲外まで逃亡する事に成功してしまっている。最後で読み違えたか……あそこはゼッドではなくガルを先に落とすべきったんだな。こちらを一瞬で麻痺させてくるアイテムを持っていたのは完全に誤算だった。
(が、相手の札をまた一枚知れたから良しとしよう。ならばここからどう動くか……自分がジャングルで麻痺してたのは当然他の面子にも伝えられていただろうし……ならば、ここは草原を突っ切って反対側にある市街地を攻めてみるか)
そう決めて、再び自分は駆けだした。草原を突っ切って市街地に向かう──予定だったのだがここで予想外のエンカウント。理由は分からないが何故か草原エリアに……グラッドがいた。当然自分はグラッドを捕まえるべく急接近した。ある程度距離が詰まったところでグラッドもこちらに気が付いた。
「みぃつけたああああ!」「ハア!? 何でアースがここに居やがるんだよ!?」
あいさつ代わりの飛び蹴りを放ったが、グラッドは盾でこの飛び蹴りを受け流した。その直後、グラッドが変身する。獣人連合で見せた、ありとあらゆる武器を使うエルフの姿になった。変身したと言う事は、真っ向勝負をするつもりかな? なんにせよ、こちらにとってもグラッドの変身時の力を知れるいい機会だ。乗らない理由がない。
「ち、また戦うタイミングじゃねえんだがそうも言ってられねえ。アース、付き合ってもらうぞ!」
もちろん付き合うさ。繰り返すがこの練習で重要なのはルールの把握と相手の札を知る事だ。その大きな手札の一つを見せてくれるというのだから、付き合わないという選択肢は存在しない。
「もちろん、背を向けるような事はしない。いくぞ!」
こうして、突如草原エリアで自分とグラッドの戦いが勃発した。グラッドの手札を、たっぷりと味わういい機会だ……こちらも遠慮なしで行かせてもらうことにしよう。
感想 5,013
あなたにおすすめの小説
名門御曹司の婚約者を奪ったあざといルームメイトが、三日後「助けて」と泣きついてきた
熾星 午前一時、大学近くの女性専用シェアハウスは、エアコンの低い音だけが響いていた。森下莉香から一枚の写真が送られてきた。ホテルのスイートルームらしいベッドの上で、彼女は片方の肩を露わにし、鎖骨のあたりには生々しい赤い痕が残っていた。
背後の男の顔は写っていなかった。けれど、画面の端に映った手首だけで、私は十分だった。そこに巻かれていた白檀の腕輪念珠を、私は知っていた。
あれは、私が神宮寺怜央に贈ったものだった。
東京・港区の旧財閥系一族、神宮寺家の後継者。神宮寺家は老舗の不動産開発会社を中核に、近年は医療・介護施設への投資も広げていた。怜央はその跡取りとして、著名な卒業生であり、大学の有力なスポンサーでもある人物として、たびたび私たちの大学に顔を出していた。
『嘘の病気で同情を買うな』と私を死に追いやった婚約者、私の墓標の前で額を叩きつけ、血の涙を流して号泣する大破滅!
熾星婚姻届を出す前日、久世景人はようやく、十年遅れの婚約指輪を私の指にはめた。
銀色の輪が薬指に滑り込んだ瞬間、私は照明の下で光るダイヤをぼんやり見つめた。長く続いた待ち時間が、やっと終わったような気がした。けれど次の瞬間、彼は私の手を見下ろし、まるで似合わない品物を評するように静かな声で言った。
「正直、澪の手ってあまりきれいじゃないよな」
私は言葉を失った。
景人はそのまま私の指先を取ると、さっきはめたばかりの指輪を抜き取った。十年待ち続けた指輪は、彼の手のひらの上で冷たく光っていた。
「この指輪、瑠奈の手にあったほうが似合うと思う」
私は手を引き戻し、信じられない思いで彼を見た。
「どういう意味? 瑠奈と結婚するつもりなの?」
景人は目を伏せ、指輪の縁を指先でなぞった。まるで、たいしたことではない問いを少し考えているだけのようだった。
「そこまでじゃない。ただ、会えない時間が長くなると、どうしても瑠奈のことを考えるんだ」
その瞬間、私は自分がどうやってあのタワーマンションを出たのかさえ覚えていない。
「もやし炒めかぁ」——切り忘れた本音が、世界中のお姉さんを落とした件。
冬野 結流行りのイケメンボイスが出せず、事務所の同期やマネージャーから「才能がない」とバカにされ契約解除された底辺個人VTuber。絶望しながら最後の個人配信を終えた後、マイクの切り忘れに気づかず「お姉さん達に美味しいご飯作ってあげたいな」と素朴な本音を愚痴ってしまう。その不器用なギャップがSNSで世界中に大拡散。配信画面に戻ると、赤スパチャの嵐。元事務所が泣きついてくるが、すでに億万長者になった彼は完全無視する。
「お姉様の刺繍は素人ね」と笑った義妹の婚礼衣装——裏地を見た女官十二人が、一斉に針を置いた
歩人(あゆと)「お姉様の刺繍は、素人の手習いに見えますわね」――王太子妃となる異母妹アデリーナは、王宮女官たちの前で姉ローゼを笑った。翌週の婚礼の朝。式典装の最終確認のため、十二人の女官が衣装の裏地を検めた瞬間――一人、また一人と、針を置いた。裏地に縫い込まれていたのは、女官たちが十二年間ずっと探していた一筆の銀糸。即位式の絹外套、二人の王女の婚礼ドレス、亡き王太后の弔意の喪服。王家儀礼衣装のすべての裏地に、同じ手で、同じ糸で、同じ銀の花が縫い込まれていた。「アデリーナ様、これは――あなた様の手では、ございません」縫い手は、ずっと一人だった。それを十二年間、誰の名でも呼べなかっただけのこと。
夫が私の移植用心臓を運ぶヘリを愛人の犬に回したので、目覚めた私は彼を知らないふりをした
熾星 宗一郎がシャツの三つ目のボタンを留めたときには、私はもうスマートフォンで銀行アプリを開いていた。
ベッドの脇には女物のワンピースと彼のベルトが散らばっている。神崎美月はホテルのバスローブをまとい、浴室の入り口に立っていた。鎖骨には意味ありげな赤い痕。まるで私に見せつけるために、そこに立っているようだった。
カーテンは完全には閉じられていない。朝の光が絨毯に差し込み、部屋の惨状を残酷なほど鮮明に照らしていた。
初めてこんな場面に出くわしたとき、私は部屋のグラスを叩き割り、宗一郎の胸ぐらをつかんで理由を問い詰めた。
あのときの彼はベッドヘッドにもたれて煙草を吸い、ズボンすらまともに穿かないまま、淡々と言った。
「部屋が暗くて、お前と間違えた」
その後、同じような「人違い」は二度起きた。
それをきっかけに、私たちは書面で取り決めを交わした。不貞行為が一度発覚するたび、離婚成立前の解決金として、彼は私に五百万円を支払う。
「振り込んで」
「愛していない」って言われましても
小鳥遊 れいら結婚式前夜に「お前など愛していない」と言ったフォーエル侯爵家嫡男のルーカスに嫁ぐことになったスターリング伯爵家長女のべリーチェは、驚きながらも冷静だった。所詮は、貴族同士の政略結婚なのだから愛してほしいなど願ったこともなかった。べリーチェの反応に驚きながらも恋人との時間を優先していくルーカス。
ルーカスが本当に大切なものに気づいた時には時すでに遅かった・・・
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。