とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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連載

番外編 ワンモアハロウィーンイベント

 本編の進行状況を丸っと無視しています、その点をご了承ください。


「アース、今時の時期はパンプキンだな!」

 久々にツヴァイ達のギルド、ブルーカラーのギルドエリアにお邪魔している自分。そして外に出ていたツヴァイが帰ってきたとたんそんな言葉を口走った。その言葉を理解できずに周囲のブルーカラー初期メンバー+カナさんに視線を向けるが、一様に首を振った。どうやら先程のツヴァイの言葉が理解できなかったのは自分一人じゃなかったようである。だがパンプキン……時期。ああ、もしかして。

「ツヴァイ、もしかしてハロウィーンの時期だって言いたかったのか?」

 自分の言葉に、一瞬で真っ赤になるツヴァイの顔。どうやら間違っていなかったらしいな。

「ツヴァイ、もうその年でボケが進行しているのか……ギルマスってのは過酷なんだなぁ」

 この自分のしみじみとした台詞に、他のブルーカラーメンバーも憐みの視線をツヴァイに向けだす。そんな視線を受けて、ツヴァイは一気に焦り出す。

「いやいやいや、ボケてないっての! ちょっと勢い余って間違っただけだっての! そうじゃなくって、ワンモアでもハロウィーンイベントをやるって話なんだよ! これ告知!」

 ツヴァイが持ってきた一枚の紙きれ。そこには『ギルドエリアハロウィーン化計画! 楽しいハロウィーン風の飾りつけにして楽しみましょう! イベント期間中経験値&獲得グロー倍増! さらにギルドエリアのハロウィーン化レベルによって更なる恩恵とイベント終了時に報酬が入ります! ぜひ挑戦してください!』なんて書いてあった。と言うか運営よ、何故公式HPで流す情報よりもこんな形で流す情報の方が細かいイベント内容が書いてあるんだよ。

「ハロウィーンも随分と浸透したよな。リアルで仮装する奴はそう多くないが、こういったゲームではイベントをするいい切っ掛けになってるな」

 なんて言葉をレイジが発する。

「後はカボチャを使った各種料理でしょうか。近くのケーキ屋でもパンプキンパイやパンプキンケーキなどをこの時期売り出しますからね。普段とは違った物を出すいい切っ掛けだと言うのは間違いないでしょう」

 こちらはカザミネ。そうそう、そう言う食べ物関連のお店にも影響が出てるよな。

「まあその辺は置いといて。その飾りつけってのはどうやるの? ちょっとその紙を見せてよ。ふんふん、ああー。専用のモンスターがフィールドに沸くようになってて、その子達が飾りつけに使えるアイテムを落とすっていうパターンなんだね。で、ギルドエリアをいかににぎやかにできるか、それっぽく見える雰囲気にできるかで評価が変わると」

 脱線しかかった男性陣を抑えて、ロナちゃんが紙をツヴァイから受け取って読んだ後に大まかなイベント内容を教えてくれた。

「んじゃ狩りに出ますか。ツヴァイ、ギルドマスターなんだしギルメンに集めてくれーって告知飛ばさなくていいのか?」

 この自分の言葉に、ツヴァイは「ああ、今早速ギルドメンバー専用掲示板にそう言った内容を書いた告知分を出したぜ。んじゃ俺達も狩りに出るか。この告知用紙によると、いろんな場所で専用モンスターがうろついているらしいからな。各自手分けして狩りに出るぞー!」

 こうして、ブルーカラーギルドエリア、ハロウィーン化計画はスタートした。


 そして一週間後。

「レイジ、そいつはそこら辺だ。アース、そのジャックランタンは大きい順に五段重ねで頼む! ミリー、そのコウモリオブジェクトは家の横にな!」

 ブルーカラーのメンバーと自分がかき集めてきた各種ハロウィーンにちなんだオブジェクトの飾りつけに追われていた。自分は自主的に協力しているのだが、このイベントはギルドに入っていない人もギルドに協力すればするだけ恩恵があると言う側面があった。ま、そんな物が無くったって協力はしたけどさ。

「よーし、そいつはその辺だ! あー、左のコウモリオブジェクトちょっとずれてる。時計回りですこーしだけ回してくれ!」

 そして今、ツヴァイが全体像を見ながら各種オブジェクトの配置を指示し、他のブルーカラーメンバーが総出でその指示に従って飾りつけを進めていた。今や大手ギルドになったブルーカラーではあるが、それでもかなり忙しい作業であり人ではあるだけあればいい。なので他のフリーのプレイヤーも一時的にお金を出して雇っている状況となっていた。ちなみに、この全体像を描いたのはエリザである。彼女はこういったインテリア配置には一定の知識を持っているようで、他の人が出した提案よりも優れていたために採用された。

「ギルマスー、これはこの辺で良いのー? ちょっと見てー!!」

 あちこちからそんな呼び声が掛かり、ツヴァイもあっちに行ったりこっちに行ったりと大忙しだ。見ているだけー何て言えない。

「エリザさーん、こっちの角度はこんな感じですかー!?」

 そして当然、案を出したエリザもオブジェクトの配置を確認する側である。図面を見ながら角度を確認し、修正する面を伝えて一つ一つ作り上げてゆく。この角度の具合などでも評価が大きく変わるらしいので、エリザの表情は真剣そのもの。このイベントも上位トップテンギルドは公式でSS付きでHP上で表彰されるうえ、それなりの副賞が付いてくる事も発表されたので力が入っている。

「そこはもう少し左に……そこです! それと、奥に配置してあるコウモリエフェクトはもう少し前に! もうすこし、そこ! この区画はこれで完成です! 次の区画に行きますわよ!」

 その姿は、まるで女帝。周囲に有無を言わさず、しかし間違いなど無く。カリスマ性すら漂わせ、きびきびと指示を出す。初期に自分にあれこれ言った来たエリザの面影は、そこには全くなかった。

「うんうん、エリザちゃんもなかなかいい子になってきましたねえ~。まあそうでないと、しっかり教育した意味がありませんからね~」

 ミリーさんや、独り言なんでしょうが近くで作業している自分には聞こえちゃうんですよ……それと、教育と言う言葉のルビに『ちょうきょう』って当てはめなきゃいけない気がする雰囲気も出さないでくれると助かるんですけどね。ほんと、ミリーもいろいろ謎が多い人なんだよな。掴み所がないと言うよりは、そう言う存在を演じているおっかない人って感じがするんだよな。まあ、藪を突いてとんでもない物を出したくはないから触らないけど。

「こういった飾りつけもやってみると楽しい物だな。リアルだと後かたずけの事も考えなければいけない分派手にやるのは難しいが、こちらの世界ならばそんな悩みは無い。何せこの飾りつけのオブジェクトもイベントが終われば全部食べられる物に変化する魔法がかかる、まさにゲームでしかできない事だ」

 レイジが一仕事を終えてそんな事を口にした。うん、それは全く持って同意。クラフト系とかのゲームが人気あるのはまさにそこだよな。リアルじゃ作れない物を作り上げる事が出来ると言う点に尽きる。特に材料費、敷地なんて物に左右されない。自分で材料をかき集めて自分の好きなように家を建て、物を作り、世界を作れるんだから。

「リアルで出来るのはせいぜいかぼちゃ系統の食べ物を食べるだけだものねー。こういう飾りつけを自分の体でやるように楽しめるこの世界はホント楽しい!」

 レイジの彼女であるコーンポタージュからもそんな言葉が飛び出す。うんうん、その気持ちも良く分かるよ。やってみると本当に楽しいもんな、VRの可能性を感じる。

「その飾りつけも、今日で九割九分終わりですね。後はギルドマスターとエリザさんの細かい調整を残すだけとなりますか。私の家では絶対にやらない事だっただけに、この一週間は特に楽しめました」

 こちらはカナさん。まあ、こういったカボチャの飾りつけなんてのはちょっと一般家庭じゃやりにくいよね。だからこそ、こういった仮想空間で楽しむってのは大いにアリだと思う。というか、VRってのはそういう事に関してはバンバン使うって方針で良いよな。日常に疲れたらVRの世界で非日常を楽しめばストレスも軽くなるって物だ。自分は体の問題があるから、その点は特に痛感している。

「後はこれでランキングに入れれば万々歳って所か。逆に入らないとエリザ辺りが荒れそうだけど」

 自分の発現に苦笑するブルーカラーメンバー。だがただ一人。

「そんな心配はありませんよ~、そうなる前に私が『お勉強』をしてあげますから~」

 とミリー。そのミリーの発現を聞いて、自分を含む他の面子の顔意をが蒼くなったことは否めないだろう。やっぱりミリーはこういった部分が怖いんだよ! 


 ──と、そんなこんなでイベントは終了して後日、公式HPにてハロウィーン化計画の順位結果発表が行われ……ブルーカラーは僅差で二位だった。トップこそ取れなかったが、その順位にまあまあ満足したエリザは来年に向けて闘志を燃やし、平穏な打ち上げで無事に終わった事を記しておく。



最初にも書きましたが、本編とのつながりはありません。ただ久しく季節イベントを書いていなかったなーと思いまして、久しぶりに書いた次第です。また、これは恐らく書籍には追加されないお遊び話です。
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