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今更知る、魔剣の相性
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親方の腕を改めて再確認させてもらう形となった。あのような剣は、自分には決して生み出せない。とことん鍛冶作業に没頭し、ひたすら鉱物と関わってきた親方だからこそなせる業だ。あのような名剣を、プレイヤー、ワンモの世界の住人両方が用いているところを見た記憶がない。やはり流通している数は非常に少ないのだろう。
「良い物を見せてもらいました」「そう言えば、アースには会心の一振りが出来上がるところを見せたのは初めてだったか。狙って作れる物じゃないんでな、今までは見せる機会がなかっただけだが」
親方の言葉を疑うつもりは一切ない。あれだけの剣がポンポン作れるのなら、もっと世間に普及しているはずだからね。
「その言葉を疑うつもりはありませんよ。あんな素晴らしい剣を量産出来たら、それこそ鍛冶世界の化け物でしょう」「そうだな、その点は同意見だ。ドワーフ達にも一振り見せてみたんだがな、彼等も褒めてくれたよ。これだけの一振りをよくぞ打ち上げたと」
ドワーフの皆さんも認めるのか……そりゃ、凄いな。
「欲しいという注文も入るんだが……狙って生み出せる一品じゃないから渡せるか分からんので基本的には断ってるんだが──今回の依頼主はすさまじい運の持ち主だったらしいな」
そう口にした後、親方は笑った。確かに、親方が会心の一振りを打ち上げた時が自分の注文の品の時だったというのは運だな。
「あれだけの一振り、魔剣を凌ぐ一品かも知れませんね」「まあ、魔剣には相性もあるからな。相性に左右されない剣というのは大事だ」
自分の話に親方から帰ってきた言葉に自分は首を捻った。魔剣には相性もある? え、そんな情報あったっけ? そんな疑問が顔に出てしまっていたようで、親方が口を開いた。
「アース、もしかして魔剣はプレイヤーとの相性によって能力が左右されるという話を知らなかったのか?」「初耳なんですが。Wikiの魔剣のページにそんな情報あったかな……」
Wikiの内容を記憶から引っ張り出すが……該当する情報には覚えがない。もちろん自分が見逃していただけという可能性も十分ある。とにかく、魔剣についての話し合いは掲示板などでも見てきたが、魔剣にプレイヤーとの相性があるという話は覚えがない。
「そうか、まあ魔剣関連について詳しく調べた鍛冶集団の話を耳にしていなければ知らなくてもおかしくはないか。魔剣を打つことに特化した鍛冶屋集団ギルドがいたんだがな……そこの集団が色々な実験をした結果、相性がある事はほぼ間違いないと結論を出してんだ」
親方曰く、その魔剣専門鍛冶屋集団は各種魔剣を各属性別々に打ち上げた上で、様々なプレイヤーの協力の元、膨大なデータを集めたらしい。その結果わかった事は……魔剣は使う人間との相性によって、基本的な威力や魔剣に付与された専用スキルの効果の差が大きく出るという事実。
相性のいい組み合わせとなると大幅な能力向上が図られたのに対し、相性が悪いと性能を十全に引き出せなかったらしい。これはプレイヤーの技量とは完全に別の話であり、プレイヤー側の責任ではないとの事。
「そうなると、契約した妖精の属性の魔剣が相性が良いと言う事だったんですか?」「いや、そうとは限らなかったらしい。闇妖精と契約した奴が魔剣は光の方が向いていたとか、風の妖精と契約していたが、魔剣は火が一番良かったとかの話は多数あってな。なぜそう言う事が起きるのか、皆で首を捻ったそうだ」
契約妖精の属性とは別のパターンも多かったと言う事か。何故そんな差が生まれたのだろうか? その鍛冶屋集団は、その謎を解き明かそうと動いたのだろうか?」
「そんな差がなぜ出るのかって謎をそのまま放置するのは気持ちが悪いって事でな……調査が続行されたらしい。そうすると……そのプレイヤーのワンモアでの生き方、活動内容がかなり関わっているとされた。一例としてモンスターを積極的に狩り、ガンガン攻撃する事が好きなやつは火の魔剣と相性が良くなりやすいという話が出たな」
と言った話を始めとして……魔剣との相性は、活発的や勢いのあるプレイヤーは火。戦いの最中でも冷静に立ち回る、落ち着きがあるプレイヤーは氷、移動が多く、様々な立ち回りをするプレイヤーは風、逆にどっしりと構えて最小限の動きに抑えるプレイヤーは土。こういう傾向が多いと言う事だったらしい。あくまで戦闘スタイルだけをみればだが。
(そう考えると、ツヴァイの魔剣が火でカザミネの魔剣が氷というのは納得が行く、か。あの二人は魔剣の力を十全に出せていたと思うし、ツヴァイの魔剣は大技も覚えていた。相性が悪いと言う事はあり得ないと考えて良い)
ブルーカラーの面々の事も考えると、データは大体間違ってはいないように感じられる。もちろん例外はあるだろうが、そう言った傾向が多いと言う事自体は正しいだろう。そうなると──光と闇は?
「親方、光と闇はどうだったんです?」「それなんだがな……まず、理解しておかなきゃいけねえことがある。よく光と闇は使われる題材で、光が正義、正しい方向。闇が悪党、間違った行為として取り扱われる事は結構多い。が、ワンモアに関してはそれは当てはまらねえ。あくまで属性の一つであって、善悪だとか正しいとか間違ってるとかの話は一切関係ない」
親方の念押しに頷いた。そりゃそうだ、正しいとか間違ってるとかの考えで行ったら闇妖精と契約したプレイヤーは悪党と言う事になってしまう。だが実際はもちろんそんな事はない。
「それを踏まえた上での話だが……光は治療行為などが得意だと出やすい傾向がある。あと、明るい時間帯は活発に動くが夜の時間は街にいる事が多いプレイヤーも光に対する相性が良くなりやすいらしい。一方で闇は、搦め手が得意だったり、昼夜問わずに外で活動的だったり、特殊な一部スキルを持っていると適性が高くなる傾向があると相性が良くなりやすいって話だ」
ふむ、〈義賊頭〉を持っている上に、搦め手を交えての戦いは自分の取る戦闘スタイルの一つだ。夜であっても視界の悪化はないし、闇との相性が良くなる要素は確かに多いか。だからこそ真同化をあそこまで振るえたのだろう。
「なるほど、言われてみると心当たりがありますね。特に反論したくなるような部分もないですし」「もちろん例外はあったが、大まかにはこういう傾向で間違いなかったそうだ。だが、魔剣も属性がある以上は相性が悪い敵ってのも当然いる。だからこそ、鍛冶屋が打つ魔剣ではない一般的な武器の需要が魔剣が出回っても減る事はなかったがな」
親方の言う通り、魔剣が一般的に存在を知られるようになり、多くのプレイヤーが握る事になっても鍛冶屋が打つ剣の需要が下がると言う事は無かった。属性がついていないと言う事は、どの相手に対しても一定の成果をあげられると言う事。もちろんリッチとかの魔法などの力が無いと有効打が与えられないモンスターもいる。つまり、活躍の場は両者にあると言う事だ。
そして、この相性だが……もしかしなくても、魔剣の世界と呼ばれる所に行けるか否かにこの相性は大きく関わっていたのだろう。行ける人、行けない人の差が掲示板で騒がれていたことがあったが、相性がいい魔剣を相棒に出来たか否かが明暗を開ける一つの分岐点になっていたと考えた方が筋が通りそうだ。
「知らなかった事実が次々と……」「はははは、まあ興味が無ければ知らずに終わっていた話だろうな。一方で俺としてもポーションやら料理などの他の分野の生産に関してはあまり知らなかったからな。旅をして、いろんな国を回って食って飲んで、その制作方法や材料に驚いたなんてことはしょっちゅうだったぞ。何気なく使っていた物や食っていた物に何度驚いたか」
ああ、確かに親方は鍛冶屋に特化しているから、その周囲の生産関連は分かっても縁があんまりない生産関連に関する知識が薄くてもおかしくはないか。プロフェッショナル故に、知識が狭く深いのだ。自分の様なゼネラリスト──いや、自分はゼネラリストじゃなくて節操なしか。とにかく、そう言う人の知識は基本的に浅く広い。もちろんどちらにも例外はいるけど、それを言い始めたらきりがない。
「でも、そう言う事を知ることが出来るのは旅の醍醐味だな。この世界が見て回ってきたのは正しかったと思えるし楽しかった。まあ、一方で今作っているような装備の注文まで舞い込んできてしまったがなぁ……名前が売れているというのは良い面もあるが面倒な所もあるもんだ。さて、そろそろ話しは終わりにして生産に戻るか」
親方はそう話を締めくくって再び生産に取り掛かった。自分もそれに倣って弓制作を再開する。この日はそのままログアウトするまで弓を作り続けた。
*****
連絡がございます、近況報告の方にて。
「良い物を見せてもらいました」「そう言えば、アースには会心の一振りが出来上がるところを見せたのは初めてだったか。狙って作れる物じゃないんでな、今までは見せる機会がなかっただけだが」
親方の言葉を疑うつもりは一切ない。あれだけの剣がポンポン作れるのなら、もっと世間に普及しているはずだからね。
「その言葉を疑うつもりはありませんよ。あんな素晴らしい剣を量産出来たら、それこそ鍛冶世界の化け物でしょう」「そうだな、その点は同意見だ。ドワーフ達にも一振り見せてみたんだがな、彼等も褒めてくれたよ。これだけの一振りをよくぞ打ち上げたと」
ドワーフの皆さんも認めるのか……そりゃ、凄いな。
「欲しいという注文も入るんだが……狙って生み出せる一品じゃないから渡せるか分からんので基本的には断ってるんだが──今回の依頼主はすさまじい運の持ち主だったらしいな」
そう口にした後、親方は笑った。確かに、親方が会心の一振りを打ち上げた時が自分の注文の品の時だったというのは運だな。
「あれだけの一振り、魔剣を凌ぐ一品かも知れませんね」「まあ、魔剣には相性もあるからな。相性に左右されない剣というのは大事だ」
自分の話に親方から帰ってきた言葉に自分は首を捻った。魔剣には相性もある? え、そんな情報あったっけ? そんな疑問が顔に出てしまっていたようで、親方が口を開いた。
「アース、もしかして魔剣はプレイヤーとの相性によって能力が左右されるという話を知らなかったのか?」「初耳なんですが。Wikiの魔剣のページにそんな情報あったかな……」
Wikiの内容を記憶から引っ張り出すが……該当する情報には覚えがない。もちろん自分が見逃していただけという可能性も十分ある。とにかく、魔剣についての話し合いは掲示板などでも見てきたが、魔剣にプレイヤーとの相性があるという話は覚えがない。
「そうか、まあ魔剣関連について詳しく調べた鍛冶集団の話を耳にしていなければ知らなくてもおかしくはないか。魔剣を打つことに特化した鍛冶屋集団ギルドがいたんだがな……そこの集団が色々な実験をした結果、相性がある事はほぼ間違いないと結論を出してんだ」
親方曰く、その魔剣専門鍛冶屋集団は各種魔剣を各属性別々に打ち上げた上で、様々なプレイヤーの協力の元、膨大なデータを集めたらしい。その結果わかった事は……魔剣は使う人間との相性によって、基本的な威力や魔剣に付与された専用スキルの効果の差が大きく出るという事実。
相性のいい組み合わせとなると大幅な能力向上が図られたのに対し、相性が悪いと性能を十全に引き出せなかったらしい。これはプレイヤーの技量とは完全に別の話であり、プレイヤー側の責任ではないとの事。
「そうなると、契約した妖精の属性の魔剣が相性が良いと言う事だったんですか?」「いや、そうとは限らなかったらしい。闇妖精と契約した奴が魔剣は光の方が向いていたとか、風の妖精と契約していたが、魔剣は火が一番良かったとかの話は多数あってな。なぜそう言う事が起きるのか、皆で首を捻ったそうだ」
契約妖精の属性とは別のパターンも多かったと言う事か。何故そんな差が生まれたのだろうか? その鍛冶屋集団は、その謎を解き明かそうと動いたのだろうか?」
「そんな差がなぜ出るのかって謎をそのまま放置するのは気持ちが悪いって事でな……調査が続行されたらしい。そうすると……そのプレイヤーのワンモアでの生き方、活動内容がかなり関わっているとされた。一例としてモンスターを積極的に狩り、ガンガン攻撃する事が好きなやつは火の魔剣と相性が良くなりやすいという話が出たな」
と言った話を始めとして……魔剣との相性は、活発的や勢いのあるプレイヤーは火。戦いの最中でも冷静に立ち回る、落ち着きがあるプレイヤーは氷、移動が多く、様々な立ち回りをするプレイヤーは風、逆にどっしりと構えて最小限の動きに抑えるプレイヤーは土。こういう傾向が多いと言う事だったらしい。あくまで戦闘スタイルだけをみればだが。
(そう考えると、ツヴァイの魔剣が火でカザミネの魔剣が氷というのは納得が行く、か。あの二人は魔剣の力を十全に出せていたと思うし、ツヴァイの魔剣は大技も覚えていた。相性が悪いと言う事はあり得ないと考えて良い)
ブルーカラーの面々の事も考えると、データは大体間違ってはいないように感じられる。もちろん例外はあるだろうが、そう言った傾向が多いと言う事自体は正しいだろう。そうなると──光と闇は?
「親方、光と闇はどうだったんです?」「それなんだがな……まず、理解しておかなきゃいけねえことがある。よく光と闇は使われる題材で、光が正義、正しい方向。闇が悪党、間違った行為として取り扱われる事は結構多い。が、ワンモアに関してはそれは当てはまらねえ。あくまで属性の一つであって、善悪だとか正しいとか間違ってるとかの話は一切関係ない」
親方の念押しに頷いた。そりゃそうだ、正しいとか間違ってるとかの考えで行ったら闇妖精と契約したプレイヤーは悪党と言う事になってしまう。だが実際はもちろんそんな事はない。
「それを踏まえた上での話だが……光は治療行為などが得意だと出やすい傾向がある。あと、明るい時間帯は活発に動くが夜の時間は街にいる事が多いプレイヤーも光に対する相性が良くなりやすいらしい。一方で闇は、搦め手が得意だったり、昼夜問わずに外で活動的だったり、特殊な一部スキルを持っていると適性が高くなる傾向があると相性が良くなりやすいって話だ」
ふむ、〈義賊頭〉を持っている上に、搦め手を交えての戦いは自分の取る戦闘スタイルの一つだ。夜であっても視界の悪化はないし、闇との相性が良くなる要素は確かに多いか。だからこそ真同化をあそこまで振るえたのだろう。
「なるほど、言われてみると心当たりがありますね。特に反論したくなるような部分もないですし」「もちろん例外はあったが、大まかにはこういう傾向で間違いなかったそうだ。だが、魔剣も属性がある以上は相性が悪い敵ってのも当然いる。だからこそ、鍛冶屋が打つ魔剣ではない一般的な武器の需要が魔剣が出回っても減る事はなかったがな」
親方の言う通り、魔剣が一般的に存在を知られるようになり、多くのプレイヤーが握る事になっても鍛冶屋が打つ剣の需要が下がると言う事は無かった。属性がついていないと言う事は、どの相手に対しても一定の成果をあげられると言う事。もちろんリッチとかの魔法などの力が無いと有効打が与えられないモンスターもいる。つまり、活躍の場は両者にあると言う事だ。
そして、この相性だが……もしかしなくても、魔剣の世界と呼ばれる所に行けるか否かにこの相性は大きく関わっていたのだろう。行ける人、行けない人の差が掲示板で騒がれていたことがあったが、相性がいい魔剣を相棒に出来たか否かが明暗を開ける一つの分岐点になっていたと考えた方が筋が通りそうだ。
「知らなかった事実が次々と……」「はははは、まあ興味が無ければ知らずに終わっていた話だろうな。一方で俺としてもポーションやら料理などの他の分野の生産に関してはあまり知らなかったからな。旅をして、いろんな国を回って食って飲んで、その制作方法や材料に驚いたなんてことはしょっちゅうだったぞ。何気なく使っていた物や食っていた物に何度驚いたか」
ああ、確かに親方は鍛冶屋に特化しているから、その周囲の生産関連は分かっても縁があんまりない生産関連に関する知識が薄くてもおかしくはないか。プロフェッショナル故に、知識が狭く深いのだ。自分の様なゼネラリスト──いや、自分はゼネラリストじゃなくて節操なしか。とにかく、そう言う人の知識は基本的に浅く広い。もちろんどちらにも例外はいるけど、それを言い始めたらきりがない。
「でも、そう言う事を知ることが出来るのは旅の醍醐味だな。この世界が見て回ってきたのは正しかったと思えるし楽しかった。まあ、一方で今作っているような装備の注文まで舞い込んできてしまったがなぁ……名前が売れているというのは良い面もあるが面倒な所もあるもんだ。さて、そろそろ話しは終わりにして生産に戻るか」
親方はそう話を締めくくって再び生産に取り掛かった。自分もそれに倣って弓制作を再開する。この日はそのままログアウトするまで弓を作り続けた。
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