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意気込みが空振りに
心して進めなければいけない、とかなり意気込んでいたはずだったんだけどなぁ……状況は自分の想定していなかった方向に進んでいた。
「二七番もってきて! あれなら行けそう!」「ハサミの防護に使う材料は四二番辺りがよさそうだ!」「盾の形は……これが良いか?」
お弟子さん達があれやこれやと動き回っており、自分の出番は一切無し! もちろんどういう形で進めているかは見ているのだが、手を出すところがない……下手に手を出そうものなら邪魔になるだけという状況になっている。それに、一つ一つのパーツが正直自分の作った奴より出来が良いんだよね。これは専門職との差って奴なので気にしていないが。
で、肝心の仕組みの方なのだが基本的な形の変更は無いようだ。でも一部は結構変わっており……まず最初にボウガンの言に当たる部分が細長いベルトになった。これは戻ってきたハサミの衝撃吸収も兼ねているそうで、実際試射を見せて貰った所──戻ってきたハサミの衝撃をかなりふんわりと受け止めていた。
次にハサミ自体も使用する金属が変わっていた。厳密に言うとストラスが作った合金にさらに金属を組み合わせる事でより頑丈かつ刃にすれば切れ味が上がったらしい。合金にさらに金属をぶち込んで大丈夫なのか? まともな物が出来るのか? 正直自分はそう思ったのだが出来てしまったらしい……正直に言って、自分の理解の範疇を越えている。なお、製作者は……
「金属の合金作成、合成方法なら親方にも負けるつもりはありません!」
そう言って胸を張っていた。なんにせよ、これで単純にハサミの耐久力と攻撃力も上昇した。こちらも試射を見せてもらったんだが、正直相手にしたくない。腕も足も首も挟まれたらお終いだとだけ言っておく……何あの切れ味。お弟子さんが本気で作った合金製ミスリルプレートメイルがすっぱり斬れてるって。
あの合金ミスリルが耐えられないんじゃ、今存在している装備のほとんどが耐えられないんですけど!? もはや暗器とかじゃなく、真剣にやべえ一品となって行っているんですが!? だが、親方とお弟子さん達の魔改造は終わらない。どうせ作るのなら、徹底的に! という合言葉と共に凶悪さが増すばかり……
(初見殺しも良い所だよあれ。ハサミが斬れる大きさなら、ほぼ問答無用で真っ二つな状況になっちゃってるよ……)
正直、内心ではかなり怯えている自分がいる。自分が今まで作ってきた武具もかなりあれだったけど、今回のハサミはやばすぎる。親方もノリノリで最高の切れ味を目指すぞ! と意気込みまくっているしストッパーがいない! これはもう、見守るしかない……自分が口を出したところで聞いてくれる空気でもないし。
「うーん、二七番だと思ったけどこうしてみると二六番の方が良かったか?」「そうだね、この感じだと二六番がよさそうだ。取ってくるわ」
素材を番号で言い合っているのもらしいと言えばらしいのか? なお、三〇番までが革系素材で三一番から六〇番までが金属のナンバーらしい。ナンバー付きの物はすでに合成だとか強化とかが行われている物らしく、量産体制も整っているんだとか。だからこそ、大量受注を受けても捌けるとの事で……
そんな教えてもらった事を思い出しつつ、出来上がっていく光景を眺めるだけの自分。まあ、確かに自分が土台を作って形を親方達に覚えてもらい、そこからは親方達が専門職の知識と経験を活かして製品をより良い物にしていくってのは理に適ってはいるのだ。それは分かっているんだけど──昨日意気込んでから寝ただけに、色々と感情が沸いてきてしまう。特に気恥しさが。
(こうなるなら、あんなに昨日意気込むんじゃなかった。なんかすごく恥ずかしい)
誰からも責められている訳ではない。訳ではないんだけどどうにもこうにも恥ずかしさを感じてしまう。見事に空回りしてるなぁ。しかし、親方達はそんな自分の内心など気が付く訳もなく製作を進めている訳なんだけど……なんかこう、さっきから妙にテンションが高いような?
「ふはははは、これならば俺達が作った一流の鎧以外は真っ二つだぜ! 流石にサイズ的に胴体は無理だが!」「胴体真っ二つサイズも作らないか? 趣味の範疇になるけどさ、アースさんが作ってくれた基礎は応用は聞くし、やっちゃわねーか?」「良いなそれ! 今作っているこいつが完成したら取り掛かろーぜ!」
テンションが高いだけでなく物騒な言葉も出てきてるなぁ……こんなテンション高い人の集団だったっけ? 親方の仕事を見た事は過去に何度もあるが、ここまでテンション高めになった所は見た事なかったんだけど。
「ようし、なら次はそいつを作るぞ。だがその前に今は目の前の作品の仕上げだ! こいつをドジるようじゃ駄目だぞ!」「「「「はい!」」」」
親方も一切止めないし。だが、そんな会話をしながらもハサミを仕込んだ盾の完成が見えてきている。盾の形は何て言えばいいんだろう? 雫型? 涙の様な形をしている。この雫型の膨らんでいる部分にボウガンを模した仕組みが丸々入っている。ボウガンの弦の役割を果たすベルトを引く仕組みは雫の上というか細い方に存在しており、ワイヤーのような物に繋がっている指二本ぐらいが入るリングを引くと引けるようになっている。
そして、ここで自分が呼ばれた。この盾を使ってみて欲しいと言う事なので引き受けていつもの試射室へと移動。盾を右腕につけてから、最初に試したのは最初にそんな仕組みで本当に引けるのか? と思っていたリングを引っ張ってみる。これが予想以上に簡単に引けた。特に訓練をしていない人であっても引けるんじゃないか? と思うぐらいに軽い。なお、引っ張る方向は横。右手につけたら左に、左手につける場合は右に引っ張るように調整できるとの事。
そして打ち出すときは盾を水平に構えて打つ形になる。そして肝心のトリガーなのだが……盾の下部にあるスイッチを押してからその先にあるナックルガードのような物の中にある仕掛けを掴んで降ろすという物になっていた。右手や左手を手首から上に上げると押せるスイッチが仕込まれていて、これを押す事で安全装置が解除される。
その次にナックルガードを兼ねた手を守る装甲の裏部分に指を入れられる部分があって、そこに指を引っ掛けて下に引き下ろすような感じで動かすと一部だけが動かせる。これがトリガーとなっているようで、ハサミが打ち出される。
その形式上、手に持つ盾ではなく腕に装着するタイプとなる。自分にとってはいつものスタイルで使えるので何の問題もないけど。一通りの動きを試した後、親方達に盾を返却する。
「よし、九割は出来たな。だが、まだ詰められる部分があるな」「もう少しハサミの弾道を安定させたいっすね。ハサミ自体にもうちょっと手を加えてみますわ」「盾の装甲部分ももうちょっといじりたいかな。あと少しの手直しでぐっと良くなると思う」
確かに、試射してみてハサミの弾道がちょっと安定していないなと自分も思っていた。飛ぶ方向はまっすぐなのだが、ハサミが多少傾く事が何度もあったのだ。これだと上手く狙った物を斬れない。武器の形式上、きちんとターゲットを挟み込めなければ効果を発揮できない。確かにこれは無視できない問題点だろう。
それと、盾の装甲部分の調整はバランスだろう。なんというか、ちょっと装備していてもバランスが少し宜しくなくて打ち出すときなどに狙いが付けづらかったりした所が確かにあった。そういう時露はきちんと見ていたのだろうな。
その一方で、戻ってきたハサミが盾に回収され損ねてしまうと言った事は一回も起きなかった。更に回収されたハサミが盾の奥で激しく他の部品とぶつかるような音を立てる事もなかった。自分が問題としていた部分や不安だった部分は完全に潰されていたことは素直に素晴らしい。後は確かに微調整を行って完成という段階だろうな、たった一日で……
(腕の立つ技術者が、人数までそろえてごり押したんだもんなぁ……このペースで作り上げる事が出来てもおかしくはない、って事なんだろうか)
しかもただ腕が立つんじゃなくて、長く一緒に仕事をしたことによる連携も見事だった。一つの部品を作るにしても各個人の得意分野を生かして作り上げていた。その流れに無駄は見受けられず、流れるように動いていたと思う。だからこそ、ここまで早く作る事が可能となったのだ。
「アース、多分明日には完成品を見せられるだろう。楽しみに待っていてくれ」
自分がこれ以上できることはない、か。ならば今日は失礼させてもらっていいだろう。親方の言葉通り明日を楽しみに待たせてもらおう。そうして頭を下げて工房を後にしたわけだが……ログアウトするには早すぎたのでぶらぶらと歩いていると、久々にツヴァイ達を見かけた。声をかけてみるか。
「二七番もってきて! あれなら行けそう!」「ハサミの防護に使う材料は四二番辺りがよさそうだ!」「盾の形は……これが良いか?」
お弟子さん達があれやこれやと動き回っており、自分の出番は一切無し! もちろんどういう形で進めているかは見ているのだが、手を出すところがない……下手に手を出そうものなら邪魔になるだけという状況になっている。それに、一つ一つのパーツが正直自分の作った奴より出来が良いんだよね。これは専門職との差って奴なので気にしていないが。
で、肝心の仕組みの方なのだが基本的な形の変更は無いようだ。でも一部は結構変わっており……まず最初にボウガンの言に当たる部分が細長いベルトになった。これは戻ってきたハサミの衝撃吸収も兼ねているそうで、実際試射を見せて貰った所──戻ってきたハサミの衝撃をかなりふんわりと受け止めていた。
次にハサミ自体も使用する金属が変わっていた。厳密に言うとストラスが作った合金にさらに金属を組み合わせる事でより頑丈かつ刃にすれば切れ味が上がったらしい。合金にさらに金属をぶち込んで大丈夫なのか? まともな物が出来るのか? 正直自分はそう思ったのだが出来てしまったらしい……正直に言って、自分の理解の範疇を越えている。なお、製作者は……
「金属の合金作成、合成方法なら親方にも負けるつもりはありません!」
そう言って胸を張っていた。なんにせよ、これで単純にハサミの耐久力と攻撃力も上昇した。こちらも試射を見せてもらったんだが、正直相手にしたくない。腕も足も首も挟まれたらお終いだとだけ言っておく……何あの切れ味。お弟子さんが本気で作った合金製ミスリルプレートメイルがすっぱり斬れてるって。
あの合金ミスリルが耐えられないんじゃ、今存在している装備のほとんどが耐えられないんですけど!? もはや暗器とかじゃなく、真剣にやべえ一品となって行っているんですが!? だが、親方とお弟子さん達の魔改造は終わらない。どうせ作るのなら、徹底的に! という合言葉と共に凶悪さが増すばかり……
(初見殺しも良い所だよあれ。ハサミが斬れる大きさなら、ほぼ問答無用で真っ二つな状況になっちゃってるよ……)
正直、内心ではかなり怯えている自分がいる。自分が今まで作ってきた武具もかなりあれだったけど、今回のハサミはやばすぎる。親方もノリノリで最高の切れ味を目指すぞ! と意気込みまくっているしストッパーがいない! これはもう、見守るしかない……自分が口を出したところで聞いてくれる空気でもないし。
「うーん、二七番だと思ったけどこうしてみると二六番の方が良かったか?」「そうだね、この感じだと二六番がよさそうだ。取ってくるわ」
素材を番号で言い合っているのもらしいと言えばらしいのか? なお、三〇番までが革系素材で三一番から六〇番までが金属のナンバーらしい。ナンバー付きの物はすでに合成だとか強化とかが行われている物らしく、量産体制も整っているんだとか。だからこそ、大量受注を受けても捌けるとの事で……
そんな教えてもらった事を思い出しつつ、出来上がっていく光景を眺めるだけの自分。まあ、確かに自分が土台を作って形を親方達に覚えてもらい、そこからは親方達が専門職の知識と経験を活かして製品をより良い物にしていくってのは理に適ってはいるのだ。それは分かっているんだけど──昨日意気込んでから寝ただけに、色々と感情が沸いてきてしまう。特に気恥しさが。
(こうなるなら、あんなに昨日意気込むんじゃなかった。なんかすごく恥ずかしい)
誰からも責められている訳ではない。訳ではないんだけどどうにもこうにも恥ずかしさを感じてしまう。見事に空回りしてるなぁ。しかし、親方達はそんな自分の内心など気が付く訳もなく製作を進めている訳なんだけど……なんかこう、さっきから妙にテンションが高いような?
「ふはははは、これならば俺達が作った一流の鎧以外は真っ二つだぜ! 流石にサイズ的に胴体は無理だが!」「胴体真っ二つサイズも作らないか? 趣味の範疇になるけどさ、アースさんが作ってくれた基礎は応用は聞くし、やっちゃわねーか?」「良いなそれ! 今作っているこいつが完成したら取り掛かろーぜ!」
テンションが高いだけでなく物騒な言葉も出てきてるなぁ……こんなテンション高い人の集団だったっけ? 親方の仕事を見た事は過去に何度もあるが、ここまでテンション高めになった所は見た事なかったんだけど。
「ようし、なら次はそいつを作るぞ。だがその前に今は目の前の作品の仕上げだ! こいつをドジるようじゃ駄目だぞ!」「「「「はい!」」」」
親方も一切止めないし。だが、そんな会話をしながらもハサミを仕込んだ盾の完成が見えてきている。盾の形は何て言えばいいんだろう? 雫型? 涙の様な形をしている。この雫型の膨らんでいる部分にボウガンを模した仕組みが丸々入っている。ボウガンの弦の役割を果たすベルトを引く仕組みは雫の上というか細い方に存在しており、ワイヤーのような物に繋がっている指二本ぐらいが入るリングを引くと引けるようになっている。
そして、ここで自分が呼ばれた。この盾を使ってみて欲しいと言う事なので引き受けていつもの試射室へと移動。盾を右腕につけてから、最初に試したのは最初にそんな仕組みで本当に引けるのか? と思っていたリングを引っ張ってみる。これが予想以上に簡単に引けた。特に訓練をしていない人であっても引けるんじゃないか? と思うぐらいに軽い。なお、引っ張る方向は横。右手につけたら左に、左手につける場合は右に引っ張るように調整できるとの事。
そして打ち出すときは盾を水平に構えて打つ形になる。そして肝心のトリガーなのだが……盾の下部にあるスイッチを押してからその先にあるナックルガードのような物の中にある仕掛けを掴んで降ろすという物になっていた。右手や左手を手首から上に上げると押せるスイッチが仕込まれていて、これを押す事で安全装置が解除される。
その次にナックルガードを兼ねた手を守る装甲の裏部分に指を入れられる部分があって、そこに指を引っ掛けて下に引き下ろすような感じで動かすと一部だけが動かせる。これがトリガーとなっているようで、ハサミが打ち出される。
その形式上、手に持つ盾ではなく腕に装着するタイプとなる。自分にとってはいつものスタイルで使えるので何の問題もないけど。一通りの動きを試した後、親方達に盾を返却する。
「よし、九割は出来たな。だが、まだ詰められる部分があるな」「もう少しハサミの弾道を安定させたいっすね。ハサミ自体にもうちょっと手を加えてみますわ」「盾の装甲部分ももうちょっといじりたいかな。あと少しの手直しでぐっと良くなると思う」
確かに、試射してみてハサミの弾道がちょっと安定していないなと自分も思っていた。飛ぶ方向はまっすぐなのだが、ハサミが多少傾く事が何度もあったのだ。これだと上手く狙った物を斬れない。武器の形式上、きちんとターゲットを挟み込めなければ効果を発揮できない。確かにこれは無視できない問題点だろう。
それと、盾の装甲部分の調整はバランスだろう。なんというか、ちょっと装備していてもバランスが少し宜しくなくて打ち出すときなどに狙いが付けづらかったりした所が確かにあった。そういう時露はきちんと見ていたのだろうな。
その一方で、戻ってきたハサミが盾に回収され損ねてしまうと言った事は一回も起きなかった。更に回収されたハサミが盾の奥で激しく他の部品とぶつかるような音を立てる事もなかった。自分が問題としていた部分や不安だった部分は完全に潰されていたことは素直に素晴らしい。後は確かに微調整を行って完成という段階だろうな、たった一日で……
(腕の立つ技術者が、人数までそろえてごり押したんだもんなぁ……このペースで作り上げる事が出来てもおかしくはない、って事なんだろうか)
しかもただ腕が立つんじゃなくて、長く一緒に仕事をしたことによる連携も見事だった。一つの部品を作るにしても各個人の得意分野を生かして作り上げていた。その流れに無駄は見受けられず、流れるように動いていたと思う。だからこそ、ここまで早く作る事が可能となったのだ。
「アース、多分明日には完成品を見せられるだろう。楽しみに待っていてくれ」
自分がこれ以上できることはない、か。ならば今日は失礼させてもらっていいだろう。親方の言葉通り明日を楽しみに待たせてもらおう。そうして頭を下げて工房を後にしたわけだが……ログアウトするには早すぎたのでぶらぶらと歩いていると、久々にツヴァイ達を見かけた。声をかけてみるか。
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