文字の大きさ
大
中
小
619 / 783
連載
親方達が生み出した渾身の一品
翌日、仕事を終えてログインした自分は早速親方の工房へ。そんな自分を出迎えたのは、透明なケースに入れられて飾られている二つの小盾だった。一方は鈍く銀色に光る楕円形の盾。ただ、盾の先端部に一対の爪みたいなものがついている。そしてもう一方は艶のある黒い盾。こちらはアイロンの底みたいな形をしている。
(これは親方の作品だな。新作か? だがこの盾が光を受けて輝く柾は一種の芸術品のようにも見えてくるな)
そんな感想を胸に盾を見ていると声をかけられた。声の主は一緒にパイルバンカーを作るためにあれこれやったストラスだ。
「アースさん、お待たせしました。アースさんが見ているその二つの盾が完成品ですよ。銀色の盾の方がハサミを仕込んだもの、もう片方の黒い盾がパイルバンカーを仕込んだ盾です。今親方を呼んでくるんで、少しだけ待っててくださいよ」
そう言い残して、ストラスは工房の奥へと歩いて行ってしまった。まあ、彼が待っていてくれというのだから素直に待つことにしよう。それから数分後、親方がストラスと一緒に姿を見せた。
「よう、アース。今回は世話になったな」「親方、それはこちらのセリフですよ。色々と物作りが出来て楽しかったんですから」
親方の言葉に、自分はそう返事を返した。しかし、世話になったという言葉の真意が分からない。何に対してだろうか?
「アースのお陰で、注文を受けたハサミを仕込んだ盾という依頼をこなすことが出来た。で、だ。その礼と言っちゃなんだが……アース専用に調整した俺が作れる最高品質の物を用意させてもらった。それがそこに飾ってある盾だ。銀色の方はハサミを仕込んだ盾、黒い方がパイルバンカーを仕込んだ盾となっている。使い方はアースなら分かるよな」
そりゃまあ、設計にもろに関わったというか土台を作ったのは自分なのだから。しかし、ハサミを仕込んだ方の盾にはなぜあのような引っ掻くことが出来る爪を付けたんだろうか? と親方に問いかけてみるとカモフラージュのため、だそうだ。
「素直にトリガーとなる部分の前にガードを付けるだけでも良かったのかもしれんが、逆にそれを見ればあの盾は何かある、と勘が良い奴なら気が付くだろう。 だからそれをさらに隠すためととっさの反撃の手段を増やすという目的で爪を付けさせてもらった。あれならばガード部分が更に爪で隠されるので見切りにくくなるだろうからな」
なるほど、そう言った目的が。確かに理に適っているし、仕込まれているハサミが暗器としての役目を果たしやすくなる。
「後、アースが頭をひねって必死で土台を作ってくれたから伝えておくが……売りに出す奴はかなりデチューンしている。それでも相応の武器としての仕事はしてくれるはずだがな──正直、俺達が本気で作ったあのハサミを仕込んだ盾、俺達はハイドシザーズシールドと呼ぶことにしたが、正直能力が市場に流すのはためらわれた。剣とか大太刀はその見た目から武器だと分かるが、ハイドシザーズシールドはそうじゃない。暗殺に使われでもしたら大変だ」
それは、自分も思っていた事だ。注文した人がどう言う意図で頼んだかは分からないが、そう言った暗い事に使われるのは流石に制作者の一人として御免被りたい。
「ま、モンスターとの戦闘に使うのであれば十分な性能は持たせてあるから依頼主から文句を貰う事は無いだろう。なんにせよ、これで完成して売りに出せる。看板に傷が付かずにすんで助かった。だから、アースには俺達工房が全力を挙げて作ったこの一対の盾を受け取って欲しい。ドワーフが作った武具にだって、見劣りしない出来栄えになっている事は保証するぞ」
話し終えた親方は、静かにケースを外して盾を両方取り出し、自分に渡してきた。これは受け取ろう。報酬でもあり、親方達が自分になら渡していいと信用してくれた証でもある。受け取らなかったら失礼極まりないだろう。普段使っているクラネス師匠のシールドを外してアイテムボックスに仕舞い、銀色の盾を右腕に、黒い盾を左腕に装着した。さて、では詳細を見て行こう。
ハイドシザーズシールド・真打
ブラックス工房の全員が全てを込めて作り上げた世界にただ一つしかない小盾。射出できるハサミが仕込まれており、盾を平行に構えてから発射する事で少し離れた相手を容赦なく両断する事が出来る。
種類:小盾 制作評価 10+α ユニーク
DEF+50
特殊能力 無慈悲なハサミ 相手の防御力を完全に無視した切断攻撃、ハサミ自体のATKは1627あるとして計算される。ただし、挟み込めないほど大きなものに対しては無効。また、相手の首に対して特攻がかかる。
一対の爪 盾の前部に付けられている爪。切れ味が鋭く相手の防御力の30%を無視する。爪自体のATKは350あるとして計算される。
耐久力増加極大 耐久力自然回復 防御成功時ダメージ軽減大 重量軽減大 物理的な攻撃を除く攻撃に対しての拡散能力 強奪無効化 他者からの鑑定不可 トレード不可
ツインパイルバンカーシールド・真打
ブラックス工房の全員が全てを込めて作り上げた世界にただ一つしかない小盾。細めながらも相手の防御を貫いて爆発する杭を発射する機構が仕込まれている。
種類:小盾 制作評価 10+α ユニーク
DEF+50
特殊能力 一対パイルバンカー 相手の装甲を無視して突き刺さり、爆発する杭を2本同時に射出できる。ただし射程は短く、一度発動したら専用の杭を再び所定の場所に入れないと再使用できない。杭1本のATKは2682あるとして計算される。
耐久力増加極大 耐久力自然回復 防御成功時ダメージ軽減大 重量軽減中 物理的な攻撃を除く攻撃に対しての拡散能力 強奪無効化 他者からの鑑定不可 トレード不可
防御力こそ小盾の範疇だけど……仕込んである武器の火力は危険極まりない。これは確かにばらまく訳にはいかないな……シザースシールドの方は首刎ね能力をしれっと備えているし、パイルバンカーの方も更なる威力アップが図られている。普通に危険物だよ……で、強奪対策と鑑定、トレードも出来ないようになっている、と。これを見れば、欲しがる人は多数出るだろうしな。
(対人でもちょっと、使えないかも。ブルーカラーの面々に見せるのが精いっぱい、かな?)
最近のPvPでは、録画されている事がデフォとなっているので大勢の人の目に映る機会が増えている。そんな中こんな武器を使ってみろ……絶対騒がれる。入手先をしつこく聞き出そうとしてくるプレイヤーなんか山となって出てくる事は容易く予想できるし、そうなったら親方にも迷惑が掛かりかねない。そう考えていたんだが、親方から出た言葉は全く違った。
「大事にしまい込むなんて事はせずに、ガンガン使ってくれ。モンスター相手だろうが対人だろうが、そいつらの性能を引き出して暴れまわってやれ。そうしてくれた方が、俺達も嬉しい。しまい込むために、飾る為に作った訳じゃないん赤らよ」
むしろ使えと、そう言われてしまった。良いのだろうか? 親方の作品だと、見抜く人は出ないだろうか? そう自分は不安になって問いかけたのだが、親方は笑うだけだった。
「別にいいさ、バレたらバレたで。大半のプレイヤーは塔に上ったから俺達の事を追いかけられないんだからよ。残りの連中は、どうとでも撒く事が出来るさ。この工房みたいにこっちの手札はまだまだある」
との事だった。こちらの様子をうかがっているお弟子さん達も皆が頷いていたので、それは嘘でも強がりでも何でもないのだろう。
「それにな、アースに一度ぐらい俺達の作った武器を振るってもらいたかったってのもある。アースの作る武器は色々おかしい所もあったが、だからこそこっちも色々な刺激を受けて今まで向上心を失わずにやってこれたって部分があるのは確かだ。そんな奴に、最後ぐらい俺達が生み出せる最高の装備の一つを身に着けて戦ってみてほかったのさ」
そう言う思いも、この一対の盾には込められていたという訳だ。ならば、使わないという選択肢はないか。今後はクラネス師匠が作ってくれた盾も交えて、盾同士の相性や組み合わせを変えての戦闘スタイルの見直しや改善を図ってもいいかもしれない。
「それとな、俺達は仕事がすんだからここら辺で全員が地上に戻る。だから、アースとはしばらくさよならだ。明日ここに来ても何もないからな、忘れない様にしてくれ。まあ、勘のいい奴が気が付き始めてうろうろし始めたってのもあるが……な。で、最後にカーネリアン! 持ってこい」「はーい」
カーネリアンさんが親方の言葉に従って持ってきたのは、工具箱の様な金属製の箱だった。その中には、びっしりとツインパイルバンカーで使う杭が収められていた。
「限界まで詰め込んだから、たぶん持つと思うわ。残された日の中で一日一〇〇発打っても大丈夫! って計算だから。でももし万が一足りなくなったら、次こっちに上がってきた時に補充してあげる。だから気にせずバンバン使ってね」
との事だった。一日一〇〇発って、ずいぶんと豪快過ぎる計算をしたなぁ……が、残弾を気にせず使いまくってもいいというのは心強い。自分は親方達に向かって頭を下げた。
「素晴らしい物を、ありがとうございます。後一か月弱しかいられないこの世界ですが、遠慮なく使わせていただきます」
自分の言葉に、親方やお弟子さん達からは励ましの言葉を頂いた。その後親方やお弟子さん達の前で両方の盾の機能を使って問題なく動く事を皆で確認し合ってからお別れとなった。自分が工房を出たら、すぐに地上に戻って次の仕事にかかるのだそうだ。親方達も大変だな……そんな人たちが作ってくれたこの盾、大事にしつつもしっかりと使って行こう。内心でそう決意を固めつつ、工房を後にした。
(これは親方の作品だな。新作か? だがこの盾が光を受けて輝く柾は一種の芸術品のようにも見えてくるな)
そんな感想を胸に盾を見ていると声をかけられた。声の主は一緒にパイルバンカーを作るためにあれこれやったストラスだ。
「アースさん、お待たせしました。アースさんが見ているその二つの盾が完成品ですよ。銀色の盾の方がハサミを仕込んだもの、もう片方の黒い盾がパイルバンカーを仕込んだ盾です。今親方を呼んでくるんで、少しだけ待っててくださいよ」
そう言い残して、ストラスは工房の奥へと歩いて行ってしまった。まあ、彼が待っていてくれというのだから素直に待つことにしよう。それから数分後、親方がストラスと一緒に姿を見せた。
「よう、アース。今回は世話になったな」「親方、それはこちらのセリフですよ。色々と物作りが出来て楽しかったんですから」
親方の言葉に、自分はそう返事を返した。しかし、世話になったという言葉の真意が分からない。何に対してだろうか?
「アースのお陰で、注文を受けたハサミを仕込んだ盾という依頼をこなすことが出来た。で、だ。その礼と言っちゃなんだが……アース専用に調整した俺が作れる最高品質の物を用意させてもらった。それがそこに飾ってある盾だ。銀色の方はハサミを仕込んだ盾、黒い方がパイルバンカーを仕込んだ盾となっている。使い方はアースなら分かるよな」
そりゃまあ、設計にもろに関わったというか土台を作ったのは自分なのだから。しかし、ハサミを仕込んだ方の盾にはなぜあのような引っ掻くことが出来る爪を付けたんだろうか? と親方に問いかけてみるとカモフラージュのため、だそうだ。
「素直にトリガーとなる部分の前にガードを付けるだけでも良かったのかもしれんが、逆にそれを見ればあの盾は何かある、と勘が良い奴なら気が付くだろう。 だからそれをさらに隠すためととっさの反撃の手段を増やすという目的で爪を付けさせてもらった。あれならばガード部分が更に爪で隠されるので見切りにくくなるだろうからな」
なるほど、そう言った目的が。確かに理に適っているし、仕込まれているハサミが暗器としての役目を果たしやすくなる。
「後、アースが頭をひねって必死で土台を作ってくれたから伝えておくが……売りに出す奴はかなりデチューンしている。それでも相応の武器としての仕事はしてくれるはずだがな──正直、俺達が本気で作ったあのハサミを仕込んだ盾、俺達はハイドシザーズシールドと呼ぶことにしたが、正直能力が市場に流すのはためらわれた。剣とか大太刀はその見た目から武器だと分かるが、ハイドシザーズシールドはそうじゃない。暗殺に使われでもしたら大変だ」
それは、自分も思っていた事だ。注文した人がどう言う意図で頼んだかは分からないが、そう言った暗い事に使われるのは流石に制作者の一人として御免被りたい。
「ま、モンスターとの戦闘に使うのであれば十分な性能は持たせてあるから依頼主から文句を貰う事は無いだろう。なんにせよ、これで完成して売りに出せる。看板に傷が付かずにすんで助かった。だから、アースには俺達工房が全力を挙げて作ったこの一対の盾を受け取って欲しい。ドワーフが作った武具にだって、見劣りしない出来栄えになっている事は保証するぞ」
話し終えた親方は、静かにケースを外して盾を両方取り出し、自分に渡してきた。これは受け取ろう。報酬でもあり、親方達が自分になら渡していいと信用してくれた証でもある。受け取らなかったら失礼極まりないだろう。普段使っているクラネス師匠のシールドを外してアイテムボックスに仕舞い、銀色の盾を右腕に、黒い盾を左腕に装着した。さて、では詳細を見て行こう。
ハイドシザーズシールド・真打
ブラックス工房の全員が全てを込めて作り上げた世界にただ一つしかない小盾。射出できるハサミが仕込まれており、盾を平行に構えてから発射する事で少し離れた相手を容赦なく両断する事が出来る。
種類:小盾 制作評価 10+α ユニーク
DEF+50
特殊能力 無慈悲なハサミ 相手の防御力を完全に無視した切断攻撃、ハサミ自体のATKは1627あるとして計算される。ただし、挟み込めないほど大きなものに対しては無効。また、相手の首に対して特攻がかかる。
一対の爪 盾の前部に付けられている爪。切れ味が鋭く相手の防御力の30%を無視する。爪自体のATKは350あるとして計算される。
耐久力増加極大 耐久力自然回復 防御成功時ダメージ軽減大 重量軽減大 物理的な攻撃を除く攻撃に対しての拡散能力 強奪無効化 他者からの鑑定不可 トレード不可
ツインパイルバンカーシールド・真打
ブラックス工房の全員が全てを込めて作り上げた世界にただ一つしかない小盾。細めながらも相手の防御を貫いて爆発する杭を発射する機構が仕込まれている。
種類:小盾 制作評価 10+α ユニーク
DEF+50
特殊能力 一対パイルバンカー 相手の装甲を無視して突き刺さり、爆発する杭を2本同時に射出できる。ただし射程は短く、一度発動したら専用の杭を再び所定の場所に入れないと再使用できない。杭1本のATKは2682あるとして計算される。
耐久力増加極大 耐久力自然回復 防御成功時ダメージ軽減大 重量軽減中 物理的な攻撃を除く攻撃に対しての拡散能力 強奪無効化 他者からの鑑定不可 トレード不可
防御力こそ小盾の範疇だけど……仕込んである武器の火力は危険極まりない。これは確かにばらまく訳にはいかないな……シザースシールドの方は首刎ね能力をしれっと備えているし、パイルバンカーの方も更なる威力アップが図られている。普通に危険物だよ……で、強奪対策と鑑定、トレードも出来ないようになっている、と。これを見れば、欲しがる人は多数出るだろうしな。
(対人でもちょっと、使えないかも。ブルーカラーの面々に見せるのが精いっぱい、かな?)
最近のPvPでは、録画されている事がデフォとなっているので大勢の人の目に映る機会が増えている。そんな中こんな武器を使ってみろ……絶対騒がれる。入手先をしつこく聞き出そうとしてくるプレイヤーなんか山となって出てくる事は容易く予想できるし、そうなったら親方にも迷惑が掛かりかねない。そう考えていたんだが、親方から出た言葉は全く違った。
「大事にしまい込むなんて事はせずに、ガンガン使ってくれ。モンスター相手だろうが対人だろうが、そいつらの性能を引き出して暴れまわってやれ。そうしてくれた方が、俺達も嬉しい。しまい込むために、飾る為に作った訳じゃないん赤らよ」
むしろ使えと、そう言われてしまった。良いのだろうか? 親方の作品だと、見抜く人は出ないだろうか? そう自分は不安になって問いかけたのだが、親方は笑うだけだった。
「別にいいさ、バレたらバレたで。大半のプレイヤーは塔に上ったから俺達の事を追いかけられないんだからよ。残りの連中は、どうとでも撒く事が出来るさ。この工房みたいにこっちの手札はまだまだある」
との事だった。こちらの様子をうかがっているお弟子さん達も皆が頷いていたので、それは嘘でも強がりでも何でもないのだろう。
「それにな、アースに一度ぐらい俺達の作った武器を振るってもらいたかったってのもある。アースの作る武器は色々おかしい所もあったが、だからこそこっちも色々な刺激を受けて今まで向上心を失わずにやってこれたって部分があるのは確かだ。そんな奴に、最後ぐらい俺達が生み出せる最高の装備の一つを身に着けて戦ってみてほかったのさ」
そう言う思いも、この一対の盾には込められていたという訳だ。ならば、使わないという選択肢はないか。今後はクラネス師匠が作ってくれた盾も交えて、盾同士の相性や組み合わせを変えての戦闘スタイルの見直しや改善を図ってもいいかもしれない。
「それとな、俺達は仕事がすんだからここら辺で全員が地上に戻る。だから、アースとはしばらくさよならだ。明日ここに来ても何もないからな、忘れない様にしてくれ。まあ、勘のいい奴が気が付き始めてうろうろし始めたってのもあるが……な。で、最後にカーネリアン! 持ってこい」「はーい」
カーネリアンさんが親方の言葉に従って持ってきたのは、工具箱の様な金属製の箱だった。その中には、びっしりとツインパイルバンカーで使う杭が収められていた。
「限界まで詰め込んだから、たぶん持つと思うわ。残された日の中で一日一〇〇発打っても大丈夫! って計算だから。でももし万が一足りなくなったら、次こっちに上がってきた時に補充してあげる。だから気にせずバンバン使ってね」
との事だった。一日一〇〇発って、ずいぶんと豪快過ぎる計算をしたなぁ……が、残弾を気にせず使いまくってもいいというのは心強い。自分は親方達に向かって頭を下げた。
「素晴らしい物を、ありがとうございます。後一か月弱しかいられないこの世界ですが、遠慮なく使わせていただきます」
自分の言葉に、親方やお弟子さん達からは励ましの言葉を頂いた。その後親方やお弟子さん達の前で両方の盾の機能を使って問題なく動く事を皆で確認し合ってからお別れとなった。自分が工房を出たら、すぐに地上に戻って次の仕事にかかるのだそうだ。親方達も大変だな……そんな人たちが作ってくれたこの盾、大事にしつつもしっかりと使って行こう。内心でそう決意を固めつつ、工房を後にした。
感想 5,013
あなたにおすすめの小説
名門御曹司の婚約者を奪ったあざといルームメイトが、三日後「助けて」と泣きついてきた
熾星 午前一時、大学近くの女性専用シェアハウスは、エアコンの低い音だけが響いていた。森下莉香から一枚の写真が送られてきた。ホテルのスイートルームらしいベッドの上で、彼女は片方の肩を露わにし、鎖骨のあたりには生々しい赤い痕が残っていた。
背後の男の顔は写っていなかった。けれど、画面の端に映った手首だけで、私は十分だった。そこに巻かれていた白檀の腕輪念珠を、私は知っていた。
あれは、私が神宮寺怜央に贈ったものだった。
東京・港区の旧財閥系一族、神宮寺家の後継者。神宮寺家は老舗の不動産開発会社を中核に、近年は医療・介護施設への投資も広げていた。怜央はその跡取りとして、著名な卒業生であり、大学の有力なスポンサーでもある人物として、たびたび私たちの大学に顔を出していた。
『嘘の病気で同情を買うな』と私を死に追いやった婚約者、私の墓標の前で額を叩きつけ、血の涙を流して号泣する大破滅!
熾星婚姻届を出す前日、久世景人はようやく、十年遅れの婚約指輪を私の指にはめた。
銀色の輪が薬指に滑り込んだ瞬間、私は照明の下で光るダイヤをぼんやり見つめた。長く続いた待ち時間が、やっと終わったような気がした。けれど次の瞬間、彼は私の手を見下ろし、まるで似合わない品物を評するように静かな声で言った。
「正直、澪の手ってあまりきれいじゃないよな」
私は言葉を失った。
景人はそのまま私の指先を取ると、さっきはめたばかりの指輪を抜き取った。十年待ち続けた指輪は、彼の手のひらの上で冷たく光っていた。
「この指輪、瑠奈の手にあったほうが似合うと思う」
私は手を引き戻し、信じられない思いで彼を見た。
「どういう意味? 瑠奈と結婚するつもりなの?」
景人は目を伏せ、指輪の縁を指先でなぞった。まるで、たいしたことではない問いを少し考えているだけのようだった。
「そこまでじゃない。ただ、会えない時間が長くなると、どうしても瑠奈のことを考えるんだ」
その瞬間、私は自分がどうやってあのタワーマンションを出たのかさえ覚えていない。
「もやし炒めかぁ」——切り忘れた本音が、世界中のお姉さんを落とした件。
冬野 結流行りのイケメンボイスが出せず、事務所の同期やマネージャーから「才能がない」とバカにされ契約解除された底辺個人VTuber。絶望しながら最後の個人配信を終えた後、マイクの切り忘れに気づかず「お姉さん達に美味しいご飯作ってあげたいな」と素朴な本音を愚痴ってしまう。その不器用なギャップがSNSで世界中に大拡散。配信画面に戻ると、赤スパチャの嵐。元事務所が泣きついてくるが、すでに億万長者になった彼は完全無視する。
「お姉様の刺繍は素人ね」と笑った義妹の婚礼衣装——裏地を見た女官十二人が、一斉に針を置いた
歩人(あゆと)「お姉様の刺繍は、素人の手習いに見えますわね」――王太子妃となる異母妹アデリーナは、王宮女官たちの前で姉ローゼを笑った。翌週の婚礼の朝。式典装の最終確認のため、十二人の女官が衣装の裏地を検めた瞬間――一人、また一人と、針を置いた。裏地に縫い込まれていたのは、女官たちが十二年間ずっと探していた一筆の銀糸。即位式の絹外套、二人の王女の婚礼ドレス、亡き王太后の弔意の喪服。王家儀礼衣装のすべての裏地に、同じ手で、同じ糸で、同じ銀の花が縫い込まれていた。「アデリーナ様、これは――あなた様の手では、ございません」縫い手は、ずっと一人だった。それを十二年間、誰の名でも呼べなかっただけのこと。
夫が私の移植用心臓を運ぶヘリを愛人の犬に回したので、目覚めた私は彼を知らないふりをした
熾星 宗一郎がシャツの三つ目のボタンを留めたときには、私はもうスマートフォンで銀行アプリを開いていた。
ベッドの脇には女物のワンピースと彼のベルトが散らばっている。神崎美月はホテルのバスローブをまとい、浴室の入り口に立っていた。鎖骨には意味ありげな赤い痕。まるで私に見せつけるために、そこに立っているようだった。
カーテンは完全には閉じられていない。朝の光が絨毯に差し込み、部屋の惨状を残酷なほど鮮明に照らしていた。
初めてこんな場面に出くわしたとき、私は部屋のグラスを叩き割り、宗一郎の胸ぐらをつかんで理由を問い詰めた。
あのときの彼はベッドヘッドにもたれて煙草を吸い、ズボンすらまともに穿かないまま、淡々と言った。
「部屋が暗くて、お前と間違えた」
その後、同じような「人違い」は二度起きた。
それをきっかけに、私たちは書面で取り決めを交わした。不貞行為が一度発覚するたび、離婚成立前の解決金として、彼は私に五百万円を支払う。
「振り込んで」
「愛していない」って言われましても
小鳥遊 れいら結婚式前夜に「お前など愛していない」と言ったフォーエル侯爵家嫡男のルーカスに嫁ぐことになったスターリング伯爵家長女のべリーチェは、驚きながらも冷静だった。所詮は、貴族同士の政略結婚なのだから愛してほしいなど願ったこともなかった。べリーチェの反応に驚きながらも恋人との時間を優先していくルーカス。
ルーカスが本当に大切なものに気づいた時には時すでに遅かった・・・
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。