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連載
PvP決着
やるべきことが定まったので、自分は前に向かって歩き出す。当然相手の男性プレイヤーか糸を通じて振るう刃が次々と襲い掛かってくるが、それらをすべてはじき返す。参考にしたのは相殺ムービーと呼ばれるものだ。
格闘ゲームの話になって申し訳ないのだが、ゲームによってはお互いの攻撃がぶつかり合うと相殺が発生し互いの攻撃を無効とする物がある。で、相殺ムービーというのは演武のように対峙しあっているキャラ同士が次々と技を繰り出しつつ、それらすべてを相殺し合う見ごたえのある動画の事だ。互いの突きや蹴りがことごとく相殺し合っている姿は実に様になる。
で、ワンモアにも相殺システムが存在している。お互いの威力が同じぐらいの威力ならば双方の攻撃を無効化する、シンプルな物だ。だが、それを連続で成功し続ければ見ごたえがあるのではないだろうか? 力任せに相手の攻撃を押し切って無力化するのではなく、相手の攻撃に合わせた威力で適切に無力化する。それを連続でやられれば流石に相手も認めざるを得ないだろう。
(もう少し、抑え気味か? このぐらい、かな?)
振るわれる刃の威力と自分の攻撃力のつり合いが取れる所を見極めると、今までとは違ったSEが出始めた。相殺に成功している時に出る音は、キィーン……と言った澄んだ音が出る様最近変更されたので分かりやすい。この音しか出来ないようにしていく事に集中する。
もちろん相手だって馬鹿じゃない、攻撃の速度、威力の強弱に変化をつけてくる。それらを見切って全て相殺しながらゆっくりと接近するという事をやらねばならない。相手の表情、腕の動き、呼吸、そう言った物から威力を想像して合わせていく。もちろん最初から上手くはいかないが、それでも今までに自分の体と心に蓄積したワンモア世界での戦闘経験の蓄積は伊達じゃない。徐々に合わせられるようになっていく。
「……!! そう言うつもりかよ!」
向こうもこちらの狙いに気が付いたようだ。そのためか、より攻撃がタイミングをずらす様な動きを増やし始めた。左右のタイミングをずらすのはもちろん、時には連撃のような感じで刃の雨を降らせてくる。こういうことが出来る以上、彼は強いプレイヤーだ。でも、そんな彼の上を行かなければ、彼も周囲の見ているプレイヤーも納得しない。
こちらが前に出るたび、彼は後ろに下がる。だが、スペースは限られている。故にとうとう彼はフィールドの端っこまで追いやられた。もう、下がる場所はない。無論左右には動けるが、動けばその方向に自分が歩を進めて追い詰めていくだけだ。当然向こうもそんな事は分かっている、だから攻撃の方を苛烈にすることを選択した。
一対しかないはずの剣の切っ先は、まるで無数にあるかのように自分に向かって降り注いでる……ように見える。が、それらをすべて自分は相殺しながら距離を詰める。いくら相殺の音が澄んだ音がすると言ってもこうも連続で防げばまあやかましい。でもそれだけに弾に失敗するとその音が妙に目立つ。
より集中力を高め、相殺を続けながら前に歩き続ける。刃を無力化し続け、ついにこちらの近接攻撃の間合いに入った。当然向こうも剣を手元に戻して普通に持つ。示し合わせたわけではないのだが、お互いの動きが止まった。そして、自分も相手もゆっくりと全力の一太刀を振るうべく構えを取る。
それから数秒ぐらいあっただろうか。お互いほぼ同時に一気に前に出て相手に向かって互いの刃を振るった。自分は八岐の月についている爪を先に振るい、直後にレガリオンによる双刃による二連撃。相手は一対の剣をクロスさせるように振り下ろした。お互い攻撃を振り切った状態から──自分は八岐の月とレガリオンを仕舞った。
「マジかよ……」
そんな対戦相手の男性プレイヤーの言葉の後に、何かが地面に落ちる音、その後に体が倒れる音が後ろから聞こえた。自分は先ほどの激突で、クロスさせるように振る降ろされた刃を勢いが乗り切る前に八岐の月の爪で弾き、レガリオンの片方の刃で腹部を切り付けた後に横を駆け抜けつつもう片方の刃で首を切り落としたのだ。
そして自分の勝利表示が行われ、PvPエリアから元の世界へと戻ってきた。待っていたのは豊めく多くのプレイヤーとジャグドの笑み。
「アース、随分と遊んだな? 矢も道具も使わず近接だけとはな……お前の動きの良さが四分の一も出てねえだろあれじゃ」
ジャグドからはこんな言葉が。ま、ジャグドじゃなくても自分の手の内をポンポン大勢の人前で晒すのはやりたくないんだよね。出来るだけ切り札は切らず、やむなく切ったとしてもそれ以上の切り札がある様に匂わせるようにしておきたい……義賊頭をやっていた影響もあるのかな、そんな考えがどうしても離れないのは。真の切り札を切った相手は世界から退場させる、みたいな。
「うーん、遊んだというよりジャグドと対戦する事を周囲に認めさせるって事が目的にあったからね。ならばそれ相応の事をしないと、見ている人はもちろん直接戦った彼が納得しないでしょ」
周囲が認めなくったって自由にやればいいだろ、という意見はあるだろうし自分もその意見には反論する気は全くない。だが、世の中そうも行っていられない事は案外多い。なので面倒ないざこざが発生して長引く前に、それなりの事をしてある程度認めさせるって行為も必要な時がある。時にこう言ったネット上では、ある事ない事書かれやすいからね。
「なるほどな。だからこそのあれか。特に後半の相殺連続は良かったぜ、あれをされてなお認めねえってのは流石にねえだろ」
と、ジャグドはとても楽しそうな笑みを浮かべた。と、そこに対戦したプレイヤーが近づいてきた。
「完敗だ、負けを認めるしかねえ……首を落とされて負けるなんて、何時ぶりだか思い出せねえ。だからこそ頼む、最後どういう動きで俺の首を落としたんだ?」
なるほど、最後の流れを知りたいと。それぐらいならまあいいだろう。なので鞘に収まったままの武器をお互いに構えて、あの一瞬で行った動きをゆっくりと行う事で説明した。特にレガリオンによる両刃で腹部を攻撃された後に側面を抜けながら首を切り落とす動きには周囲からも色々な声が上がった。
「色物武器と思ってたけど……使い方次第って事なんだな」「両刃だからこそできる攻撃だな。普通の武器じゃ打撃にしかならないから首は落とせない」「見た目でかっこいいから使っているのかと思いきや、おっそろしい使い方をしやがるな」「むー、もっと早く存在を知りたかった! 私も使ってみたいけどもう一か月弱しかないからまともに使えなさそうだし」
まとめると、かっこいい、色物武器ってだけと言う感じだった武器が実はおっかない側面を持っていた事を理解できた事と、存在をもう少し早く知りたかった、自分でも使ってみたいって意見が半々って感じだ。ま、これで相棒がおもちゃじゃないれっきとした武器だって事は理解してもらえただろう。
「アース、軽く演武でもしてやれよ。まだその武器をここにいる連中は半分も理解できてねえ。もっとおっそろしい武器だって事の一端を知らしめたほうがいいぜ」
なんて事を、ジャグドが提案してきた。様はスネークモードを見せろって事か……ま、たまにはそう言うのもいいか。なので円状にある程度離れてもらってからレガリオンを鞘から抜く。そして最初はソードモードで軽く動いてから途中でスネークモードに変化させた。そのときにおおっ!? と言った感じの驚きの声が上がった。
その声を聴きつつ、スネークモードでの演武を行う。明確に伸びたリーチ、それを活かした立ち回り、そして舞い方。最後にソードモードに戻してから決めポーズを取って演武を終えると拍手があがった。
「あれ、剣じゃなくってスネークソードだったのか!」「マジかよ、スネークソードってかなり扱いが難しいって聞いてたが」「知り合いのスネークソードによる攻めは厄介だってのに、あの両刃は両方がスネークソードとか……マジでジャグドの言う通り恐ろしさの半分も理解できてなかったわけだ」「あの間合いで台風みたいに切り刻む事とかできるのね。うわ、戦いたくないわね」
どうやら、演武の方も満足してもらえたみたいだ。今まではあまりこういった感じの目立つことは避けてきたけどたまにはいいな。一方で見ていた人達の感想の話し合いは終わらなそうだ。使ってみたいとか、欲しいって声も一定数あるがこれは譲れないぞ。師匠の魂が籠った大事な一品なのだから。
「さて、これで文句が上がる事もねえだろう。やろうぜ」「了解です」
さて、ここからが本番のジャグドとのPvPだ。流石にジャグド相手には先ほどのようなやり方は出来ない。状況によってはパイルバンカーやシザーズも使うつもりだ。全力でやらないと、一瞬で負けるのがジャグドとやるPvPだ。その分得る物も多いのでやる価値は十二分にある。だからこそ張り切って挑ませてもらうよ、ジャグド。
*****
筋トレ初めて一周年。この調子で少しづつ肉体改造を今年も行っていきたいです。
格闘ゲームの話になって申し訳ないのだが、ゲームによってはお互いの攻撃がぶつかり合うと相殺が発生し互いの攻撃を無効とする物がある。で、相殺ムービーというのは演武のように対峙しあっているキャラ同士が次々と技を繰り出しつつ、それらすべてを相殺し合う見ごたえのある動画の事だ。互いの突きや蹴りがことごとく相殺し合っている姿は実に様になる。
で、ワンモアにも相殺システムが存在している。お互いの威力が同じぐらいの威力ならば双方の攻撃を無効化する、シンプルな物だ。だが、それを連続で成功し続ければ見ごたえがあるのではないだろうか? 力任せに相手の攻撃を押し切って無力化するのではなく、相手の攻撃に合わせた威力で適切に無力化する。それを連続でやられれば流石に相手も認めざるを得ないだろう。
(もう少し、抑え気味か? このぐらい、かな?)
振るわれる刃の威力と自分の攻撃力のつり合いが取れる所を見極めると、今までとは違ったSEが出始めた。相殺に成功している時に出る音は、キィーン……と言った澄んだ音が出る様最近変更されたので分かりやすい。この音しか出来ないようにしていく事に集中する。
もちろん相手だって馬鹿じゃない、攻撃の速度、威力の強弱に変化をつけてくる。それらを見切って全て相殺しながらゆっくりと接近するという事をやらねばならない。相手の表情、腕の動き、呼吸、そう言った物から威力を想像して合わせていく。もちろん最初から上手くはいかないが、それでも今までに自分の体と心に蓄積したワンモア世界での戦闘経験の蓄積は伊達じゃない。徐々に合わせられるようになっていく。
「……!! そう言うつもりかよ!」
向こうもこちらの狙いに気が付いたようだ。そのためか、より攻撃がタイミングをずらす様な動きを増やし始めた。左右のタイミングをずらすのはもちろん、時には連撃のような感じで刃の雨を降らせてくる。こういうことが出来る以上、彼は強いプレイヤーだ。でも、そんな彼の上を行かなければ、彼も周囲の見ているプレイヤーも納得しない。
こちらが前に出るたび、彼は後ろに下がる。だが、スペースは限られている。故にとうとう彼はフィールドの端っこまで追いやられた。もう、下がる場所はない。無論左右には動けるが、動けばその方向に自分が歩を進めて追い詰めていくだけだ。当然向こうもそんな事は分かっている、だから攻撃の方を苛烈にすることを選択した。
一対しかないはずの剣の切っ先は、まるで無数にあるかのように自分に向かって降り注いでる……ように見える。が、それらをすべて自分は相殺しながら距離を詰める。いくら相殺の音が澄んだ音がすると言ってもこうも連続で防げばまあやかましい。でもそれだけに弾に失敗するとその音が妙に目立つ。
より集中力を高め、相殺を続けながら前に歩き続ける。刃を無力化し続け、ついにこちらの近接攻撃の間合いに入った。当然向こうも剣を手元に戻して普通に持つ。示し合わせたわけではないのだが、お互いの動きが止まった。そして、自分も相手もゆっくりと全力の一太刀を振るうべく構えを取る。
それから数秒ぐらいあっただろうか。お互いほぼ同時に一気に前に出て相手に向かって互いの刃を振るった。自分は八岐の月についている爪を先に振るい、直後にレガリオンによる双刃による二連撃。相手は一対の剣をクロスさせるように振り下ろした。お互い攻撃を振り切った状態から──自分は八岐の月とレガリオンを仕舞った。
「マジかよ……」
そんな対戦相手の男性プレイヤーの言葉の後に、何かが地面に落ちる音、その後に体が倒れる音が後ろから聞こえた。自分は先ほどの激突で、クロスさせるように振る降ろされた刃を勢いが乗り切る前に八岐の月の爪で弾き、レガリオンの片方の刃で腹部を切り付けた後に横を駆け抜けつつもう片方の刃で首を切り落としたのだ。
そして自分の勝利表示が行われ、PvPエリアから元の世界へと戻ってきた。待っていたのは豊めく多くのプレイヤーとジャグドの笑み。
「アース、随分と遊んだな? 矢も道具も使わず近接だけとはな……お前の動きの良さが四分の一も出てねえだろあれじゃ」
ジャグドからはこんな言葉が。ま、ジャグドじゃなくても自分の手の内をポンポン大勢の人前で晒すのはやりたくないんだよね。出来るだけ切り札は切らず、やむなく切ったとしてもそれ以上の切り札がある様に匂わせるようにしておきたい……義賊頭をやっていた影響もあるのかな、そんな考えがどうしても離れないのは。真の切り札を切った相手は世界から退場させる、みたいな。
「うーん、遊んだというよりジャグドと対戦する事を周囲に認めさせるって事が目的にあったからね。ならばそれ相応の事をしないと、見ている人はもちろん直接戦った彼が納得しないでしょ」
周囲が認めなくったって自由にやればいいだろ、という意見はあるだろうし自分もその意見には反論する気は全くない。だが、世の中そうも行っていられない事は案外多い。なので面倒ないざこざが発生して長引く前に、それなりの事をしてある程度認めさせるって行為も必要な時がある。時にこう言ったネット上では、ある事ない事書かれやすいからね。
「なるほどな。だからこそのあれか。特に後半の相殺連続は良かったぜ、あれをされてなお認めねえってのは流石にねえだろ」
と、ジャグドはとても楽しそうな笑みを浮かべた。と、そこに対戦したプレイヤーが近づいてきた。
「完敗だ、負けを認めるしかねえ……首を落とされて負けるなんて、何時ぶりだか思い出せねえ。だからこそ頼む、最後どういう動きで俺の首を落としたんだ?」
なるほど、最後の流れを知りたいと。それぐらいならまあいいだろう。なので鞘に収まったままの武器をお互いに構えて、あの一瞬で行った動きをゆっくりと行う事で説明した。特にレガリオンによる両刃で腹部を攻撃された後に側面を抜けながら首を切り落とす動きには周囲からも色々な声が上がった。
「色物武器と思ってたけど……使い方次第って事なんだな」「両刃だからこそできる攻撃だな。普通の武器じゃ打撃にしかならないから首は落とせない」「見た目でかっこいいから使っているのかと思いきや、おっそろしい使い方をしやがるな」「むー、もっと早く存在を知りたかった! 私も使ってみたいけどもう一か月弱しかないからまともに使えなさそうだし」
まとめると、かっこいい、色物武器ってだけと言う感じだった武器が実はおっかない側面を持っていた事を理解できた事と、存在をもう少し早く知りたかった、自分でも使ってみたいって意見が半々って感じだ。ま、これで相棒がおもちゃじゃないれっきとした武器だって事は理解してもらえただろう。
「アース、軽く演武でもしてやれよ。まだその武器をここにいる連中は半分も理解できてねえ。もっとおっそろしい武器だって事の一端を知らしめたほうがいいぜ」
なんて事を、ジャグドが提案してきた。様はスネークモードを見せろって事か……ま、たまにはそう言うのもいいか。なので円状にある程度離れてもらってからレガリオンを鞘から抜く。そして最初はソードモードで軽く動いてから途中でスネークモードに変化させた。そのときにおおっ!? と言った感じの驚きの声が上がった。
その声を聴きつつ、スネークモードでの演武を行う。明確に伸びたリーチ、それを活かした立ち回り、そして舞い方。最後にソードモードに戻してから決めポーズを取って演武を終えると拍手があがった。
「あれ、剣じゃなくってスネークソードだったのか!」「マジかよ、スネークソードってかなり扱いが難しいって聞いてたが」「知り合いのスネークソードによる攻めは厄介だってのに、あの両刃は両方がスネークソードとか……マジでジャグドの言う通り恐ろしさの半分も理解できてなかったわけだ」「あの間合いで台風みたいに切り刻む事とかできるのね。うわ、戦いたくないわね」
どうやら、演武の方も満足してもらえたみたいだ。今まではあまりこういった感じの目立つことは避けてきたけどたまにはいいな。一方で見ていた人達の感想の話し合いは終わらなそうだ。使ってみたいとか、欲しいって声も一定数あるがこれは譲れないぞ。師匠の魂が籠った大事な一品なのだから。
「さて、これで文句が上がる事もねえだろう。やろうぜ」「了解です」
さて、ここからが本番のジャグドとのPvPだ。流石にジャグド相手には先ほどのようなやり方は出来ない。状況によってはパイルバンカーやシザーズも使うつもりだ。全力でやらないと、一瞬で負けるのがジャグドとやるPvPだ。その分得る物も多いのでやる価値は十二分にある。だからこそ張り切って挑ませてもらうよ、ジャグド。
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