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連載
おまけ話、大みそか
「いよいよ今年も終わりだねー、今年もいろいろあったよー」
ギルドエリアにて、そんなロナの言葉がでてくる。今日は大みそかの午後九時、大掃除を始めとしたやるべき事を全て済ませていつものようにログインしているブルーカラーの面子。ただし全員はそろっておらず……
「カザミネのログインは、深夜になると連絡が来た。あいつもいろいろ忙しいらしい。年越しカウントダウンには間に合わせると言っていた」「ミリーさんは急きょ仕事が入ったそうで、大みそかお正月も無いって話だったよ」「ミリーも大変だな……何をやってるかってのは教えてくれないんだけどよ」「エリザもログインできないって話ね、なんでも新年の挨拶に行かなきゃいけない所があるとかで今はもう二本にはいないって言ってたわ」
とまあ、数名欠けているのだが。
「そして毎年アースも居ない、と。まあアースは年末の二九日あたりから三が日までは地元に帰っているからこっちはログインできなくて当然って話だけどな。チラッと聞いてみたけど、親がVRを含めたゲーム関連に時代錯誤な考えをしているらしくって、VRヘルメットを持ち帰れないってのも理由だそうだが」
ツヴァイの報告に、レイジやコーンポタージュもそりゃ面倒なとか、大変ですねそう言うのも。何て感想がちらほらと飛び交う。
「今年の年越しは、かなり豪華なだけにログインできないメンバーや知り合いがいるのは残念よね。何せ龍の国のトップが住んでいる龍城が一部を除いて開放されてるし、普段は立ち入りできない神社にもお参りできるように取り計らってくれてるじゃない。みんなで一緒に年越ししたかったわよね。此処にいる面子が全員年末にリアルで揃うとなると、距離的な問題で無理があるし」
なんて言葉がノーラから出る。北は東北に南は沖縄とかなりの物理的距離がある為、ブルーカラーの中核メンバーがリアルで勢ぞろいするためには、かなりの計画性をもって日にちと場所を決める必要があった。だからこそ、ネットのゲームで一緒に年越しをすると言うのが一番簡単だったりする。VRなので、実際に一緒に行ったのとそう大差ない感覚を共有できると言うのも大きい。
「そうだな。いつかはオフ会で全員と顔を突き合わせてみたいが、当分は無理だな。社会人は仕事優先が当たり前だ。しかし、あまり時間をかけているとこちらも社会人になってしまってますます難しくもなる……機会がなかなか巡ってこないのは分かる分、チャンスがあればその時は集まろう」
レイジの言葉に、賛成意見がいくつも出る。このオフ会は後々、彼らが予想していなかったスケールで叶う事になるのだが、詳しい話はいつかやってくるエピローグに譲ろう。
「そう言えばお風呂入りました? 広いお風呂がいくつも有るってのが贅沢ですよねこのお城。リアルじゃ滅多にできない体験でしたー」
コーンポタージュのこの言葉に、ツヴァイが反応する。
「むしろ、数回入り直したぜ。家の風呂は狭いからなー……それに以前この国の宿屋で広い風呂に入った事があるから、密かに楽しみにしてたんだがやっぱり城は違うな。風呂のデカさだけじゃなくって景色の良さも最高だった。リアルでも住みたいぜ」
こんな会話をしていたブルーカラーだったが、そこに乱入者が。
「いやいや、たまにだからよいのだぞ? 毎回入っていれば、何とも思わなくなってくるわ」
その声にブルーカラーのメンバーが振り向くと、そこには龍姫こと龍ちゃんが。いつもよりも何十に重ねて着飾った服は、かなり重そうである。その姿は、平安時代の十二単を連想させる。
「そう言う物なのですか?」「うむ、そう言う物じゃ。だから逆に、その方達が毎日やっている事がこちらにとっては新鮮味にあふれていると言う事もあるからの」
普段は使わないツヴァイが丁寧な言葉使いをしたことにやや違和感を覚えながらも、龍姫の言葉にそう言う一面は確かにあるかと納得するブルーカラーメンバー。
「と、龍姫様はここに居ても良いの? 確かこの後新年を迎える為に、お正月だけ開放される神社で何かやるって話だったよね?」
ロナの問いかけに、龍姫はうむ、と頷く。
「信念が良い年になるように、一種の願掛けを兼ねて龍神さまに祈る儀式を行う事になっておるな。ま、そちらの方はまだ時間はある。そこに、一部顔を知っている者達が話をしておったからな。少し混ぜて貰ったのじゃよ。後、今は公式の場ではないからの。堅苦しい言葉使いは無用じゃぞ」
この言葉に、ホッとしたブルーカラーの面子。もっとも、ロナはいきなり言葉がくだけていたが。
「それならお言葉に甘えて。あの、その服重くないの? かなり重ね着してるわよね? それに装飾もすごいし」
このノーラの質問に、やや苦笑気味に答える龍姫。
「うむ、この服の重量を試しに計ってみたころ八四キロほどあったぞ。まあ、我にとっては別段重くも無いが人族やエルフ達にはかなり堪えそうだの。しかし、これは正装だからの。服の一枚、装飾の一つと手外す訳にはいかぬ。後ほど神社の儀式で我の父の姿も見れるであろうが、そちらもかなりの重量じゃ」
下手な鎧より重い数字が出て来たので、反応は様々。平然としている事に感心する、素直に驚く、動きにくそうだなーなんて考えるなどいろいろだ。
「滅多にない機会故、今日は楽しんでいって欲しい。我もそろそろ準備に向かわねばならぬ。──一番見せたい者が此処にはおらぬようじゃが、気は抜けぬからの。では、またな」
そう言い残し、龍姫は立ち去って行った。そして当然話に上がるのは龍姫の最後の一言。
「一番見せたい人、かぁ」
ノーラのそんなつぶやきに、ああいう所が可愛いよねなんて女性陣から声が上がる。そのままそのネタで話が続きそうだが、そこにツヴァイが待ったをかけた。
「話をしながらでもいいから、そろそろ神社に移動しておこうぜ? そろそろ移動しておかないと良い場所が取れなくなっちまうぞ? あんな話を聞いた後だ、良く見える所で儀式を見てみたいんだが、いいか?」
ツヴァイの言葉に同意した他のメンバーは早速移動を開始。そのかいあって、特上の席で龍稀と龍姫の儀式をじっくりと見る事が出来たのであった……ログインが遅れていたカザミネを除いて、だが。
*****
皆様、良いお年を。
ギルドエリアにて、そんなロナの言葉がでてくる。今日は大みそかの午後九時、大掃除を始めとしたやるべき事を全て済ませていつものようにログインしているブルーカラーの面子。ただし全員はそろっておらず……
「カザミネのログインは、深夜になると連絡が来た。あいつもいろいろ忙しいらしい。年越しカウントダウンには間に合わせると言っていた」「ミリーさんは急きょ仕事が入ったそうで、大みそかお正月も無いって話だったよ」「ミリーも大変だな……何をやってるかってのは教えてくれないんだけどよ」「エリザもログインできないって話ね、なんでも新年の挨拶に行かなきゃいけない所があるとかで今はもう二本にはいないって言ってたわ」
とまあ、数名欠けているのだが。
「そして毎年アースも居ない、と。まあアースは年末の二九日あたりから三が日までは地元に帰っているからこっちはログインできなくて当然って話だけどな。チラッと聞いてみたけど、親がVRを含めたゲーム関連に時代錯誤な考えをしているらしくって、VRヘルメットを持ち帰れないってのも理由だそうだが」
ツヴァイの報告に、レイジやコーンポタージュもそりゃ面倒なとか、大変ですねそう言うのも。何て感想がちらほらと飛び交う。
「今年の年越しは、かなり豪華なだけにログインできないメンバーや知り合いがいるのは残念よね。何せ龍の国のトップが住んでいる龍城が一部を除いて開放されてるし、普段は立ち入りできない神社にもお参りできるように取り計らってくれてるじゃない。みんなで一緒に年越ししたかったわよね。此処にいる面子が全員年末にリアルで揃うとなると、距離的な問題で無理があるし」
なんて言葉がノーラから出る。北は東北に南は沖縄とかなりの物理的距離がある為、ブルーカラーの中核メンバーがリアルで勢ぞろいするためには、かなりの計画性をもって日にちと場所を決める必要があった。だからこそ、ネットのゲームで一緒に年越しをすると言うのが一番簡単だったりする。VRなので、実際に一緒に行ったのとそう大差ない感覚を共有できると言うのも大きい。
「そうだな。いつかはオフ会で全員と顔を突き合わせてみたいが、当分は無理だな。社会人は仕事優先が当たり前だ。しかし、あまり時間をかけているとこちらも社会人になってしまってますます難しくもなる……機会がなかなか巡ってこないのは分かる分、チャンスがあればその時は集まろう」
レイジの言葉に、賛成意見がいくつも出る。このオフ会は後々、彼らが予想していなかったスケールで叶う事になるのだが、詳しい話はいつかやってくるエピローグに譲ろう。
「そう言えばお風呂入りました? 広いお風呂がいくつも有るってのが贅沢ですよねこのお城。リアルじゃ滅多にできない体験でしたー」
コーンポタージュのこの言葉に、ツヴァイが反応する。
「むしろ、数回入り直したぜ。家の風呂は狭いからなー……それに以前この国の宿屋で広い風呂に入った事があるから、密かに楽しみにしてたんだがやっぱり城は違うな。風呂のデカさだけじゃなくって景色の良さも最高だった。リアルでも住みたいぜ」
こんな会話をしていたブルーカラーだったが、そこに乱入者が。
「いやいや、たまにだからよいのだぞ? 毎回入っていれば、何とも思わなくなってくるわ」
その声にブルーカラーのメンバーが振り向くと、そこには龍姫こと龍ちゃんが。いつもよりも何十に重ねて着飾った服は、かなり重そうである。その姿は、平安時代の十二単を連想させる。
「そう言う物なのですか?」「うむ、そう言う物じゃ。だから逆に、その方達が毎日やっている事がこちらにとっては新鮮味にあふれていると言う事もあるからの」
普段は使わないツヴァイが丁寧な言葉使いをしたことにやや違和感を覚えながらも、龍姫の言葉にそう言う一面は確かにあるかと納得するブルーカラーメンバー。
「と、龍姫様はここに居ても良いの? 確かこの後新年を迎える為に、お正月だけ開放される神社で何かやるって話だったよね?」
ロナの問いかけに、龍姫はうむ、と頷く。
「信念が良い年になるように、一種の願掛けを兼ねて龍神さまに祈る儀式を行う事になっておるな。ま、そちらの方はまだ時間はある。そこに、一部顔を知っている者達が話をしておったからな。少し混ぜて貰ったのじゃよ。後、今は公式の場ではないからの。堅苦しい言葉使いは無用じゃぞ」
この言葉に、ホッとしたブルーカラーの面子。もっとも、ロナはいきなり言葉がくだけていたが。
「それならお言葉に甘えて。あの、その服重くないの? かなり重ね着してるわよね? それに装飾もすごいし」
このノーラの質問に、やや苦笑気味に答える龍姫。
「うむ、この服の重量を試しに計ってみたころ八四キロほどあったぞ。まあ、我にとっては別段重くも無いが人族やエルフ達にはかなり堪えそうだの。しかし、これは正装だからの。服の一枚、装飾の一つと手外す訳にはいかぬ。後ほど神社の儀式で我の父の姿も見れるであろうが、そちらもかなりの重量じゃ」
下手な鎧より重い数字が出て来たので、反応は様々。平然としている事に感心する、素直に驚く、動きにくそうだなーなんて考えるなどいろいろだ。
「滅多にない機会故、今日は楽しんでいって欲しい。我もそろそろ準備に向かわねばならぬ。──一番見せたい者が此処にはおらぬようじゃが、気は抜けぬからの。では、またな」
そう言い残し、龍姫は立ち去って行った。そして当然話に上がるのは龍姫の最後の一言。
「一番見せたい人、かぁ」
ノーラのそんなつぶやきに、ああいう所が可愛いよねなんて女性陣から声が上がる。そのままそのネタで話が続きそうだが、そこにツヴァイが待ったをかけた。
「話をしながらでもいいから、そろそろ神社に移動しておこうぜ? そろそろ移動しておかないと良い場所が取れなくなっちまうぞ? あんな話を聞いた後だ、良く見える所で儀式を見てみたいんだが、いいか?」
ツヴァイの言葉に同意した他のメンバーは早速移動を開始。そのかいあって、特上の席で龍稀と龍姫の儀式をじっくりと見る事が出来たのであった……ログインが遅れていたカザミネを除いて、だが。
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皆様、良いお年を。
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