とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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エリザの魔法、レイジの新しい奥義

 レイジが取った対応は……盾をしっかりと構えて受け切るという何ともタンクらしい行動だった。逆に言えば、それしかできないとも言える。装備が重装甲であるが上に咄嗟の瞬発力は求めるのは無茶だし、魔法も習得していないから《フライ》の様な上空に逃れると言うのも難しい。

 だからこそしっかりと耐えられる体制を取って耐えるという選択になる。一番悪いのは何も選択できず慌ててしまい、何も行動に移せない事だ。咄嗟に出来る事を選択し、そこに全てを注ぐという行為は慣れていないとまずできない。そしてレイジは、それが出来るプレイヤーだ。だからこそ、躊躇せず行動に移れたのだ。

 しかし、それをそのまま良しとするエリザじゃない。彼女は《フライ》を発動して大波から逃れつつ次の魔法を詠唱している。レイジが大波に耐えていて動けない事を確認した彼女は、遠慮することなく雷系魔法である《ライトニング・ストーム》を発動。複数の雷が次々とレイジに降り注ぐ──しかし、レイジはそれを待ってましたとばかりにある大盾アーツで反撃に出た。

「《フルリベンジ・ランス》! 魔法で一方的に嬲るやり方は、もはや通じん!」

 レイジの言葉が事実であると示さんとばかりに、大盾に魔法から生み出された水や雷が吸収されていく。それを見たエリザはさらに光魔法の《シャインレイ》を発動し、光のレーザーでレイジのアーツを阻止しようと試みるがそのレーザーすらもレイジの大盾は吸収してしまった。そして、レイズの頭上に現れるは水と雷と光が融合した大きなランス。

「それは流石にまずいですわよ!?」「魔盾の世界で訓練に明け暮れて、ついに習得した対魔法アーツのお披露目だ、遠慮なくやらせてもらう!」

 焦りを隠せないエリザに対し、レイジの生み出したランスはエリザを貫かんと高速で飛翔を始める。直撃寸前にエリザは魔法による障壁《ウォーターウォール》をなんとか発動に成功し、必死でランスを受け止めるべく抵抗する。そのエリザの行動を確認したレイジは、片手斧を大きく振り上げて、エリザに向かって投擲した。

 レイジの斧投擲に気が付く事が遅れたエリザは回避も出来ず、腹部にもろに斧の一撃を貰う形となった。同時に《ウォーターウォール》を維持する事に失敗したようで、抑え込まれていたランスがエリザに襲い掛かった。このランスもエリザの体を遠慮することなく貫き、多大なダメージを受けたエリザは武舞台の端まで吹き飛ばされた後にその姿を消失した。

 直後、ロナちゃんが強制的に武舞台に上げられ、ダウンしたエリザは少し離れた場所に出現した。ただ、エリザの頭上には天使の輪っか──よくあるし病した人に対する表現がされていた。なるほど、戦闘不能者を明確に表現するためにやっているんだろうな。

「レイジさん、いつの間にあんな大技を……魔法使いにとっては地獄の様な技ですね」「が、使い勝手はちょっと悪いのかも。よく見て欲しい、レイジがかなり呼吸を乱しているぞ」

 レイジがあそこまで呼吸を乱している姿はちょっと記憶にない。その呼吸の乱れの影響が出ているのか動きも悪くなっており、ロナちゃんの攻撃に対応しきれていない。あれだけの魔法を吸収して反撃する力に変えられる分、相応の消耗は強いられているとみるべきか。それを考慮しても魔法使いに対してはえげつない反撃手段なのだが。

「ロナさんの攻撃が次々に命中していますね、確かに普段のレイジさんの動きではありません」「お披露目で見せたは良いが、本人にとっても想定以上の消耗をしたせいで明確に動きが悪くなってしまったんだろう。これじゃ交代することができるかどうか」

 あれだけの大きな魔法を吸収してしまった以上、MPだけでなくHPを消費、更には何らかのバッドステータスが付与されているのかもしれない。確かにロナちゃんの機敏な動きは大盾だと防ぎづらい所はある。だが、それにしても貰い過ぎだ。強力な分デメリットも相応にあると言う事を証明してしまっているな。

「レイジ、交代を!」「く、そうしたいのはやまやまなんだが……ぐっ!?」

 ノーラがレイジに交代して欲しいと促すが、そうはさせないとばかりにロナちゃんの攻撃がレイジに対して行われ続ける。打撃だけでなく側面に回ってからの投げ技も行われており、この投げ技がレイジにかなりのダメージを与えているようだ。このままではレイジが落とされる、そう判断したのだろう。最後の乱入をツヴァイが行う。

「やっぱり来たね!」「来るしかないからな!」

 ロナちゃんはこの乱入を計算に入れていたようで、慌てる事なく割り込んできたツヴァイの攻撃をガントレットではじき返す。そしてまたレイジに攻撃を仕掛けようと動き出すが、ツヴァイがロナちゃんの軽鎧の隙間に大剣の切っ先を引っ掛けて大きく投げ飛ばす。ロナちゃんはきちんと受け身を取ってダメージは受けなかったようだが、ロナちゃんとレイジの距離が大きく開いた。

「レイジ!」「頼む!」

 当然その機会を使って交代が行われる。しかし、これでツヴァイ側は三回の乱入を使い切った。もうこういった手助け行為は出来ない。それでもここでレイジが落ちるのを嫌ったが故に行った行動。これが今後どう生きるかな。

「さ、続けましょ?」「あちゃー、ここでレイジを落とせれば二対二に出来たのになぁ。でも、もう乱入はされないしじっくり行かせてもらうよ!」

 武舞台に上がったノーラとロナちゃんの戦いは、この会話が終わった後にインファイトで双方遣り合う形となった。ノーラのメインウェポンは短剣だし、ロナちゃんもナックルだ。当然そう言う流れになる。ただ両者ともに中距離攻撃は持っているので距離を取れば相手の攻撃が飛んでこないという事もないが。

 ノーラは水魔法が使えるし、ロナちゃんもナックル系は闘気を飛ばすという理屈の中距離技がいくつもある。とはいえ回転が良い訳ではないので基本的にはインファイト。その中でノーラははいかに背後に回って《バックスタブ》を始めとした短剣の奇襲系アーツを決められるか。ロナちゃんはそれらをいかにさせないかにかかってくる。

「一転してスピード勝負ですね。ノーラさんは短剣ですから、いかに短剣の不意打ちからの高いダメージを入れられるかですね。ロナさんはそれをいかに阻止するかがこの勝負の分かれ目となるでしょう」

 カナさんも当然そう見るよな。短剣のアーツの大半が背後や気が付いていない相手に対しての一撃必殺となりうる攻撃がメインだ。それ以外の攻撃系アーツもあるが、数は少ない。後は背後に回る事を補助するアーツ系か。煙玉や瞬間的な高速移動を行うものなどがある。これをさらに突き詰めていくと忍者系へ至れる派生が存在しているらしい。ノーラはそっちを選ばなかったようだが。

 お互い基本的には相手の攻撃を回避するが、時々短剣とナックルがぶつかって火花が散る。フェイントも多用されており、どちらが相手を騙して先に重い一撃を叩き込めるかの主導権争いとなってきている。全く先が読めないな、この戦いの流れを掴むのはどっちなのだろうか。
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