とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

文字の大きさ
642 / 767
連載

決着と感想

 呼吸を整えようとしているが、整えられないままツヴァイとロナちゃんの両者が動いた。ツヴァイは大剣を構えて横薙ぎに振るう構えを取りながら間合いを詰める。ロナちゃんも間合いを詰めるが、これといった構えを取っていない。これがどう決着に響くか……間合いが詰まり、ツヴァイの持つ大剣が届く間合いに入る──が、ツヴァイは大剣を構えたままさらに距離を詰めている。

(ツヴァイ、何か策を練ったな?)

 普通なら大剣を振らない理由のない間合いとなったにもかかわらずさらに突っ込むツヴァイ。これに驚いたのはロナちゃんだ。表情が明確に変わる、だがそれでも自分の間合いに入ったのなら攻撃するだけとばかりに拳を握ってツヴァイに対し攻撃を仕掛けた。この攻撃をツヴァイは、大剣の柄頭で迎撃した。

 大剣の柄頭とナックルがぶつかり合って火花が散った。が、どうやらツヴァイの攻撃の方が重かったようでロナちゃんはパンチを跳ね返されて明確に体が泳ぐ、ツヴァイの狙いはまさにこの形を生み出す事だったのだろう。普段の間合いよりも詰める事で相手の動揺を誘い、本来の形での攻撃をさせずにはじき返して体勢を崩す。当然そうなれば待っているのは大剣による重い一撃。

「うおおおおらぁっ!!」

 気合一閃、ツヴァイの大剣がロナちゃんの体目がけて振るわれる。ロナちゃんはこれを回避できずにまともに食らい──当然KOされた。これで残るはカザミネのみだ。カザミネはすでにダメージを多大に負っており、本調子ではない。一方のツヴァイもこれまでの疲労とダメージの蓄積がある。

 一応ツヴァイ側はレイジがまだ生き残っているが、正直まともに戦える状態まで回復できてはいない。なので、実質この二人の戦いが勝敗を分ける形となるだろう。当然、向かい合っているツヴァイとカザミネの方がそんな事は重々理解しているだろうが。

「お互いにぼろぼろですね」「ああ、この形のPvPは始めてやったが、すごく難しいぜ……いつどこで乱入や交代するか、その判断が凄まじく難しい」

 お互いに息を整える間、そんな事を息も絶え絶えに話していた。正直、もう息を整えること自体が無理だと分かっているのかもしれない。最後の力を振り絞るための準備をするのが精いっぱい、かな。

「大会が始まるまでは、はあはあ、ひたすらこれをやって覚えなければなりませんね」「正直、チームメンバーの、組み合わせで、色々変わってくるからな。研究するには時間が、足りないぜ」

 などと言葉を発しながら互いに武器を構えてゆっくりと口を閉じる。お互い一回武器を振るうだけのスタミナが戻ってきたのだろう。後は仕掛けるタイミング。スピードで言えばカザミネの振るう大太刀が、攻撃の重さで言えばツヴァイの大剣に軍配が上がる。後は己の獲物を最大限に生かす攻撃を相手に当てるだけ──

 先ほどのツヴァイとロナちゃんとの戦いとは違い、じりじりと間合いをお互いに詰めていく。動いた後は一瞬だった──ツヴァイの大剣がカザミネに対して大上段の構えで打ち込まれ、カザミネの袈裟懸けの一刀がツヴァイに対して叩き込まれる。そして剣を相手に届かせたのは──ツヴァイだった。

 ツヴァイの大上段の一撃はカザミネの大太刀の一刀を無理やり叩き落す形で軌跡を捻じ曲げ、そしてカザミネの脳天に見事その切っ先を叩きこんで見せたのだ。当然カザミネはKOされ、ツヴァイチームの勝利というアナウンスが流れたのちにPvPのフィールドから戻ってくる形となった。


「じゃ、さっそく感じた事を話し合おうな? まず俺からだが、まず今までのPvPとはあまりにも勝手が違った。武舞台の下で休んでいる時の回復速度ははっきり言って遅い。しかも普段のPvPより戦う時間が長いって事もあって、精神的な疲労も半端ない。最後は大剣を振るう事すらきついって感じだったな。恐らくHPが減る事によって普段以上に疲れるようになる仕組みが組み込まれていると思うぜこれは」

 と、ツヴァイが実際に経験したことから各々が感じた事を話し合う場に移行して最初の言葉がこれだった。確かにPvPとしては長く戦う事になったが、今までの冒険で連戦を避けられない状況をツヴァイは何度も経験している。それを考慮するとあまりにもスタミナ切れが不自然に速かった。ツヴァイの予想は外れてはいないだろう。

「交代のタイミングや、いつ乱入して相手の攻撃を止めるかの判断も難しかったわね……三回しか乱入できないけど、乱入すべき時に惜しんで仲間が落とされたらその後の戦いが辛くなる。この乱入をいかに効果的に使えるかは一つの肝だと思ったわ」

 これがノーラの言葉。プロレスのタッグとかなら、仲間が関節技を受けたりフォールされた時に乱入して止めに行く事は何度も出来るが今回のPvPでは三回だけだ。が、だからと言って使うのを惜しんで仲間が落とされたら行けないから決断のタイミングが難しいというのは分かる話だ。

「如何にダメージを受けずに乗り切れるか、これがまず大事ですね。HPが半分以下になるとかなり体の動きが鈍りました。そして体を動かすときに感じる負担が明確に上がっています。更に四分の一以下になるとよりひどくなりました。半分を切る前に交代して回復するようにしないと、その後の戦いは動く事すらままならなくなりそうですよ」

 カザミネはこういう言葉を口にした。ツヴァイの感じた事を補足する感じだな。

「HPだけでなくMPの方にもそう言った補正が入っていると思うぞ。俺の魔盾による技を今回お披露目したが、エリザの魔法が想定以上に厳しかったために予想以上のMPを使ってしまった。そしてMPが残り四分の一を切ったら、明確に体がうまく動かせなくなった。大技を使い過ぎてMPが減ってしまうとペナルティがある様だ」

 これがレイジの発言。随分とペナルティ要素が多いPvPだな。普段の奴ならMPがそこまで減ってもそんなペナルティは一切ない。むしろ、だからこそこの対人方式を大会運営者は採用したのかな?

「交代も五秒ぐらいかかると言うのが嫌らしいですわね。そのため交代するために乱入の回数を削られるパターンも多いでしょう。相手の動きを短時間で良いので封じる手段を持っていないと、相手が交代するタイミングに合わせてこちらも交代するか乱入で止めてもらってその隙にやるかとしないと無傷での交代は望めないと思いましたわ」

 エリザは交代についての意見を口にした。時にはやむを得ずダメージを受けながらでも交代するしかない時があるかもしれないな。

「ボクが感じた事は大体みんなが口にしたかな。とにかく強い人でも仕組みをうまく使われると本領を発揮できずに落とされる感じだね。特に危険な人相手には乱入を全部使いきっても確実に落とすって判断も必要になりそう。とにかくいかに交代させずに倒して、こちらは交代していかにHPやMPを回復できるかにかかってきそう」

 と、最後にロナちゃんが発言した。今回の仕組みをいかに味方に付けられるかって事だな。強い人相手には乱入でペースを乱すなりなんなりして交代させずに潰せるときは潰しに行くという判断は確かに大切だろう。戦いつつ、常に考えていかないといけないPvPだ。実力はあっても判断を誤ったせいで負けるという試合も多数出てきそうだ。

「そう言った事を念頭において、次行ってみようぜ。次はアースとカナは絶対に出てもらうぞ。後の四人はくじ引きだな」

 そして、この日はひたすらこのPvPを繰り返し行う事でルールを頭と体に叩き込んでいった。イベントまで数日しかない以上、スパルタ気味になるのは仕方がないよね。
感想 4,971

あなたにおすすめの小説

『彼を解放して!』とおっしゃいましたが、何から解放されたいのですか?

シエル
恋愛
「彼を解放してください!」 友人たちと教室に戻ろうとしていると、突如、知らない令嬢に呼び止められました。 「どなたかしら?」 なぜ、先ほどから私が問いかける度に驚いているのでしょう? まるで「え!?私のこと知らないの!?」と言わんばかりですけれど、知りませんよ? どうやら、『彼』とは私の婚約者のことのようです。 「解放して」とおっしゃっいましたが、私の目には何かに囚われているようには見えないのですが? ※ 中世ヨーロッパモデルの架空の世界 ※ ご都合主義です。 ※ 誤字、脱字、文章がおかしい箇所は気付いた際に修正しております。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています

由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、 悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。 王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。 だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。 再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。 広場で語られる真実。 そして、無自覚に人を惹きつけてしまうリリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。 これは、悪役令嬢として断罪された少女が、「誰かの物語の脇役」ではなく、自分自身の人生を取り戻す物語。 過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

試験でカンニング犯にされた平民ですが、帝国文官試験で首席合格しました

あきくん☆ひろくん
恋愛
魔法学園の卒業試験で、私はカンニング犯に仕立て上げられた。 断罪してきたのは、かつて好意を寄せてくれていた高位貴族の子息。そしてその隣には、私を嫌う貴族令嬢が立っていた。 平民の私には弁明の余地もない。私は試験の順位を辞退し、その場を去ることになった。 ――だが。 私にはもう一つの試験がある。 それは、帝国でも屈指の難関といわれる帝国文官試験。 そして数日後。 その結果は――首席合格だった。 冤罪で断罪された平民が、帝国の文官として身を立てる物語。