とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ

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大会開催直前

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 一夜明け、いよいよ最強ギルド決定戦が執り行われる日を迎えた。そのため普段よりも早めにログインし、遅刻しないように会場入りしておく。結局四五分ほど早く来てしまったが、まあ良しとする。後はツヴァイ達が来るのを待つだけ──だったのだけれど、妙に多くのプレイヤーから話しかけられる。

「よう、アンタも参加者か」「ええ、ブルーカラーの助っ人役として参加する事になっています」「あそこの助っ人か……これは手ごわそうだな」「はは、お手柔らかにお願いしますよ」「むしろそれはこっちのセリフなんだが」

 何故か一〇人以上に囲まれている。威圧感は出してこないのだが、他にも大勢人はいるのになぜ自分に集まってくるんだろう? そう聞いたところ……

「見覚えがあるんだよな、どこだったかなぁ」「俺もあるから話しかけたんだよ、どうにも引っかかるから」「同じく。何処かで間違いなく見てるんだよ。それが思い出せない」
 
 なんて返答が返ってくる。なお、自分からしてみれば集まってきた人は誰もが初対面の筈だ。話をした記憶がないのでその旨は伝えておく。と、そんな話をしていると集まった中の一人がポンと手を叩いた。

「思い出した! なあアンタ、有翼人の最終決戦で戦いの舞台にいただろ? そのぼろい黒ローブが印象に残ってたんだが、恐らくみんなそこで見たから引っかかったんじゃないか?」

 この言葉に、確かにそうだ! そこで見たんだ! とか言われて明確に思い出した、そこだよ! なんて言葉が飛び交う。公式がダイジェストで残した動画に自分も映っていたから、そこで見たんだろう。

「はい、確かにあのくそったれな有翼人のボスとの戦いに自分はいました。あの戦いにおける記憶はまだまだ頭の中にこびり付いたままですよ」

 自分の言葉にそりゃそうだろうなぁと同意する人、戦いぶりを褒めてくれる人、これは厄介な相手が現れたなどと様々な言葉が飛び交う。ダイジェストで見ただけでも激しい戦いであったことは嫌でもわかる内容になっているから、反論する人はいない。

「ブルーカラーの助っ人に入ったのは、その時の縁か?」「ああいえ、ブルーカラーの皆さんとは正式サービスが始まってから付き合いがありまして。ギルドメンバーにはならなかったんですが、ずっと仲良くさせてもらってきたので今回の話を受けました」

 助っ人に入った理由も聞かれたので、ここは素直に答えておく。隠す事でもないからね。

「あの動画にあった技の数々は今でも使えるのか?」「さあ? どうでしょうね。それは流石に手札を伏せさせていただけます」

 こんな質問に対しては適当に濁しておく。馬鹿正直に使える、使えないを伝える理由はどこにもない。もしかしたら使ってくるかもしれない、という警戒心が相手の手を止める切っ掛けを生む可能性がある。だから明白にしないのも作戦だ。せこい? 知った事じゃないね。

「まあ、アーツとかを抜きにしてもあの戦いの舞台に立って戦い抜けた時点で並の強さじゃねえことは間違いないからな……ただでさえ優勝候補なブルーカラーにとんでもねえ援軍が来ちまったことになるな」

 なんて言葉を発しながら苦い表情を浮かべる人もいる。あの戦いの動画の影響は、かなり出そうだな。こっちが手を見せないだけで勝手に必要以上の警戒をしてくれるかもしれない。それを決勝まで上手く使えるかも大事になるかもな……特に盾に仕込んだスネークソードの方は見られているが、シザーズとパイルバンカーはまだ知られていないはずだから使いどころを考えよう。

「なあ、まだ時間はあるし軽く手合わせを願えねえかな? 無理にとは言わねえけど」

 遂にこの言葉が飛んできた。次巻は──まだ開会式の始まりの時間まで三〇分弱あるから一回か二回なら大丈夫だろう。なので受ける旨を伝えて、PvPの申し込みを受ける。ただし時間制限は一〇分にしてもらった。長引くと困るし。もちろん観戦は無制限、近くにいる人ならだれでも見れるようにした。そうしたら観戦者の数が一気に増える増える。皆さん興味津々でしたか。

「はは、周囲に一定の間隔を保って話を聞いている奴も多かったからな。観戦できると知ったら我慢できなかった感じがするぜ、無理もねえが……英雄の戦いって奴を見たいんだろうし」「英雄? それは一体どういうことですか?」

 なんでもあの有翼人との戦いにおいて最終決戦に残ったプレイヤー側の人物、ブルーカラーにグラッドパーティ、ヒーローチーム、そして黒ローブの自分を刺して一部では英雄と言われているんだそうだ。なんてはた迷惑な称号だ、自分は英雄何て呼ばれるほどの強さを持ち合わせていないと思う。名前が勝ち過ぎているよ。

「滅茶苦茶恥ずかしい」「はは、気持ちはわかるぜ。でもまあそう呼ばれちまうぐらいの戦いをアンタらはやっちまったんだから仕方がない。ついでにグラッドの奴もそう呼ばれると下らねえと不機嫌そうな面をしてるって聞いたぜ」

 グラッドも自分の要望を聞いてくれただけだし、強くなる事が第一目標な彼等にとってそんな称号なんか重い飾りに過ぎないだろうからね。彼等にとってあの戦いは有翼人に操られなかった事と、強くなるために必要な戦いが出来た事が喜びだと思う。

「じゃ、そろそろやろうぜ。観戦者も大体集まり切ったようだしな」「分かりました、では始めましょうか」

 両腕はどちらもスネークソードを仕込んだ盾にしてある。新しい盾は準決勝、出来れば決勝まで隠しておきたいからここで見せるという選択肢は絶対にない。カウントダウンが始まり、意識を切り替える。向こうも同じく意識を切り替えて戦闘態勢に入っていく。そして始まった訳なんだが。

(むう、うーん?)

 向こうの二刀流の剣さばきは悪くない。いや、むしろすごいはずなんだけどね? 師匠との訓練に始まり、今まで駆け抜けてきたの激戦の数々でやっぱり自分の頭のねじはどこかぶっ壊れているらしい。全然恐怖も圧も感じないのよ、これが。レガリオンだけで弾き続ける事が可能で、八岐の月まで使うとオーバーキルみたいな戦いになりそうなので引っ込めている。

「マジかよ、その手の武器をそこまで十全に扱えるって技量やべえな!?」

 なんて言われてしまうけど、もはやレガリオンは馴染んで自分の腕の延長でしかない感覚なんだよね。ソードモードもスネークモードも含めて自分の腕、みたいな感じ。だからモードをめちゃくちゃ頻繁に切り替えてもそういう物、みたいにしか思わなくなってしまっている。更に師匠によって鍛えられた相手の動きの見切りによって、大体相手が攻撃してくる軌跡が予想できるから余裕がある。

「双剣が全く通らねえ!? 右腕の武器一本なのになんて手数だよ! 双刃って、使いこなせばこんなレベルになるのかよ……くそ、もっと早く知ってりゃ!」

 相手の双剣をすべて弾き、合間合間に反撃を入れていく。二つの刃を交互に入れ替えて相手を素早く切り刻むのが双刃の強みだろう。両手を使って回転させれば刃の乱舞をお見舞いできるけど、そこまではやらない。そうして一〇分間、優勢を維持する形で戦い終えた。

「英雄の名前に偽りなしじゃねえか……全然本気出してなかっただろ?」「どうでしょうね?」

 戦いが終わり、戻ってくると対戦相手にそう言われてしまった。ま、本気を出してないのはそちらも同じでしょう? まだまだギアをあげられる感じがするんだよな、相手の人。それを意図的に抑えていたって感じがする。本番前に手札を画するのは当たり前のことだし、当然だとしか思わないけど。

 そして観戦していた人に取り囲まれる。とくに双刃の扱い方について熱心に聞かれた。残り一ヶ月を切っているというのに、今からやるつもりなんだろうか? でも、挑戦すいる人はいそうだな。なので出来るだけ丁寧に使い方や注意点などを教えていく。そんな事をしていると、ツヴァイが姿を見せた。

「開会式前から盛況だな、アース。でもそろそろ集まってくれ、開会式まで残り五分だからな」

 おっと、もうそんな時間か。なので話を終わりにし、頭を下げて失礼させてもらう。向こうも感謝を伝えつつそれぞれの場所に向かっていった。いよいよ開催だ、ブルーカラーの優勝のために頑張らなければ。
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