Beyond the soul 最強に挑む者たち

Keitetsu003

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十章 アレンバシルの闇

十話 アレンバシルの闇 その五

「くそっ! フラッキーどもめ! この町ごと焼き払ってやる!」

 夜道に悪態をついていたのはガテンとレックだった。
 屯所とんしょで散々警備兵に怒鳴り散らした後、彼らはこの町の村長の下に押しかけようとしていた。
 宿屋はまだジャック達がいる可能性がある為、気まずくて立ち寄れない。夜もふけてモンスターが活発化している為、次の町まで移動することは困難だ。
 この町で一泊する必要があるのだが、宿屋に泊まれない以上、どこか別の場所で休む必要がある。
 この村の住人は、アレンバシルの支配者であるガテン達の命令には逆らえない。ガテン達に家に泊めろと言われたら笑顔で受け入れなければならない。
 しかし、平民の安っぽい家で泊まることは、ガテン達のプライドが許さない。だから、この町で一番豪華な家に住んでいる村長の家に、白羽の矢が立てられたわけだ。村長にとっては全くのとばっちりであり、犠牲者ともいえる。

「待っていろ、フラッキーども。血祭りに上げてやる。特にあのジャックと呼ばれていたヤツ。必ずだ……必ず八つ裂きにしてやる」
「俺はあの女だ。馬鹿にしやがって……馬鹿にしやがって……串刺しにしてやる……串刺しにしてやる」

 ガテンは公衆の面前でジャックに恥をかかされたこと、レックは腰抜け呼ばわりしたエリンにかなり腹を立てていた。何度、言葉でジャックやエリンを罵っても、全く気が晴れなかった。

 ガテンもレックも布教活動に命を賭けていることは事実だった。自分の使命に誇りを持っていた。
 大抵は、どの種族も自分達が信じる神がいる。その神を差し置いて、自分達の神が唯一神だと布教する者がいたら、ほぼ確実に揉め事が起こる。
 殺人や異端者として処刑されてもおかしくはないのだ。

 ガテンやレックがそんな危険な旅をしている理由として、上の役職につくには条件の一つとして、まだ信仰されていない未知の土地で布教しなければなれない。
 通過儀礼ともいえる試練に命を賭けて布教した者こそ、高潔な者として扱われ、信者の上に立てるのだ。

 明日、ガテンは本国に連絡し、ジャックとエリンを異端者として手配するつもりだ。そうなれば、本国から使徒が遣わされ、ジャックとエリンを捕らえることができるだろう。
 だが、本国から使徒が来るまでに、ジャックとエリンに逃げられる可能性がある。その為に、先ほどガテン達は屯所に行き、手を打っておいた。
 これでジャックとエリンを必ず捕まえることが出来る。

 捕まえてしまえば、こっちのものだ。
 ガテンはジャックを、レックはエリンを煮るなり焼くなり好きに扱える。文字通り、ジャックとエリンの命運をガテン達が握ることになるのだ。
 ジャック達を捕らえた後、この町も異端の町として火あぶりにするつもりだ。
 ガテン達を助けようともしなかったフラッキーなど、何の価値もない。全てを灰にしなければ、ガテンの胸の中に渦巻く怒りが収まらないだろう。

 邪魔者達を排除する瞬間を思い浮かべると、この煮え切った怒りも少しは収まる。ガテンはその日を思い浮かべ、大股で歩いていると一人の男が立ちはだかった。
 その人物は涅色くりいろのローブに身を包み、フードをかぶっている。明かりのない夜道では顔の確認がとれない。
 ガテンはいつまでたっても道をあけない者に対して、怒鳴り散らした。

「おい、貴様。さっさと道を空けろ! 私達を誰だと思って……」

 それは一瞬だった。
 フードの男がいきなりガテンとの距離を詰め、ガテンの腹にナイフを突き刺したのだ。
 ガテンは自分の腹にナイフが刺さっていることに気づき……。

「がはっぁ!」

 ガテンは膝をつき、そのまま倒れる。力が抜ける感覚と、体中が炎に焼かれたように熱くなり、汗が止まらない。むせると、口から真っ赤な血がこぼれる。
 ガテンの血が突き刺された箇所からどんどんこぼれ、血だまりがひろがっていく。
 意識が遠のいていく。

「お前! 自分が何をしたのか分かって……」

 レックはこの非常事態に相手を威嚇するように怒鳴ったが、途中で声が途切れる。
 レックの背中から突き抜ける激しい痛みと共に、胸からショートソードが突き抜けていた。
 レックは痙攣けいれんしながら、クビだけ後ろを振り返ると、黒いローブ姿の男が見えた。

 襲撃者は一人ではなかった。一人、また一人と黒いローブの男達がレック達を取り囲む。
 レックはうつ伏せに、ガテンは仰向けに倒れ、刺された痛みに耐えながら、襲撃者を見上げる。
 全員がフードをかぶり、顔が見えない。ただ、地球からの淡い光に、襲撃者の胸元にあったネックレスが光に反射して形が浮かび上がった。

 十字架を反対にした形、アンチクロス。
 その意味するものとは……。

「貴様ら……レジスタンスか?」
「……フリメステアの名において、罪人エラリドには粛正を。アレンバシルを清き世界へと還す為に」

 アンチクロスに祈りを捧げ、レジスタンスは武器をガテンとレックに向けて振り上げる。
 ガテンとレックは必死に地面を這いずり、逃げようとする。

「こんな……こんな場所で死ねるか……私は……私は司教になる……男だぞ……」
「イヤだ……死にたく……死にたくない……」

 全身が土にまみれ、汗と泥だらけになっても、必死に生にしがみつくガテンとレック。
 そんな彼らに、ローブの男達は何の慈悲もなく、容赦なく、彼らの背中に武器を振り下ろした。

「ぎゃあああああああああああああああああああ!」
「た、たすけぇえええええええええええええええ!」

 凶器が肉を切り裂く音と悲鳴が静寂な夜を引き裂く。凄惨な私刑リンチが闇の中で実行され、二人の男を肉片に変えようとしていた。
 彼らの血が近くに流れていた川に混ざり、赤く染めていく。肉が土にまみれ、混ざり、人の形が崩れても、振り下ろす凶器は止まらず、ただ、振り下ろされた。

 血の制裁はガテンとレックが死に絶えても、原型をとどめなくても続いていた。
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