転生した最強の死霊使いは平凡な日々を求めるが……

カルマ

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来訪者

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 入学式を迎えて早半年が経った。この学園の生活にも慣れ、正直かなり楽しくやっていた。授業も、クラスメイトとも最初こそ色々あったが上手くやれている。十傑のメンバーとも行動を共にすることが多くあったため、それなりに交友関係も上々だ。


 そんな中でも俺はあの四人と更に親しくしていた。時折、よくわからないことで喧嘩したり、時にはその中にルミナスも加わり女子四人で言い争いが起きることも多々あった。その言い争いをしているといつもナグモが「お前は罪な男だよ」とか要領の得ないことを言ってくる。


 今日はこの学園に入学して初めての野外実習の日だった。各々制服ではなく、自前の服に着替え、学園を後にした。



 学園から徒歩で二時間ほど歩き、辿り着いた場所は小さな洞窟だった。これは、まさか。


 俺がその洞窟を見て思い当たるのと同時に引率の先生が口を開いた。


「今日はこのダンジョンで授業を行う」


 やはりダンジョンであったか、先生に先導してもらい洞窟の中に入ると、入り口の小ささからは想像もできないほどに大きな空間が広がっていた。


 先生がこのダンジョンについて説明をしていた。どうやらこのダンジョンは学園で管理している物であって、危険度もかなり低くしているらしい。このダンジョンは地下第五層までの構造になっているらしく、今回の授業はその第五層を目的地として皆に行動して欲しいとのことだった。


 俺はすかさず、スキル透視化(エコー)を使いこのダンジョン全体を調べた。結果として、本当にこのダンジョンは危険性が低いように思えた。人の手が加わり多量のトラップが隠されていたが脅威と言えばその程度だろう。


 このダンジョン探索も授業の一環ということで、この程度であれば陣形は要らないだろうと思っていたが、どうやら組まなければいけないらしい。


 だがそんな時は俺なんかよりシャルルの方が一枚上手だ。シャルルも自身の役割を把握していて、授業開始と共に陣形と役割分担を完璧にこなしていた。皆もシャルルの手腕は知っているので、誰一人疑う者すらいなかった。


 道中、低レベルの魔獣に遭遇するもトップクラスに属する俺たちは誰一人慌てることなく余裕を残し対処していた。これまで皆に任せっきりの俺に皆からの視線が集まっていた。今居る階層は第四層、そこにはわざとらしい大きな扉が一枚聳え立っていた。どうやらボス戦みたいな感じかな? と思いつつ、その扉に手をかけこじ開けた。


 先程透視化を使っていた俺にはこの先に待つ魔獣が何なのかを知っている。扉を開け、そこに仁王立ちしていたのは、赤黒い肌に胴体は人間、頭部と脚部は牛のような形相をしたミノタウロスだった。確かにこのダンジョンの中では猛者になるだろうが、今の俺にとっては只の雑魚でしかない存在だった。


「ちょ、君たち! いくら主席とはいえ彼一人にこの魔獣の相手は……」

「あー、先生。こいつはそういう次元の奴じゃないから安心していいよ」


 先生の言葉を最後まで聞かずにナグモが言葉を遮り、口にした。全く、俺に丸投げの癖に、よくもまあそんなことをぬけぬけと。


 皆のお前も仕事をしろみたいな視線に押されて、一人ミノタウロスに向かい合った。


 はぁと溜め息吐きながら、創造で弓を顕現させ、更に創造で光の矢を創り出した。


「弓技・星屑の矢(スターダスト・ショット)」


 俺が放った光の矢は音速を超え、ミノタウロスの頭部を貫通して一撃で倒した。その姿に皆はドン引き手前の引きつった顔をしていた。えー……、お前らがやれって言ったんだろうが。


 門番的存在のミノタウロスを撃破して、俺たちは目的地の第五階層に辿り着いた。


 第五階層は、先程の洞窟のような作りではなく、緑豊かな草原のような階層になっていた。上を見上げれば、人工的だが太陽が昇り、草原の中には川が流れていた。


「第五階層到達おめでとう! 時間的にもかなり余裕があるし、少しここでのんびりしていこうか」


 先生が皆に告げる。その言葉を聞いた皆は大喜びで、自由時間を過ごすこととなった。


 俺はそんな皆を横目に一人木陰の下で外の時間では夕方くらいなのだろうが、いかんせんこの陽気溢れるお日様に当てられては、ついつい眠気が誘ってくるものだ。その眠気に逆らわずに一人昼寝をしていた。


 昼寝をするために盲目していると、ふとサボン系の良い匂いが俺の鼻腔をくすぐった。


「お隣いいかしら?」


 この透き通った綺麗で凛とした声音はルミナスのものだと理解した俺は目を開いて、上体を起こしながら確認するのと同時にルミナスに肯定の意志を伝える。


「あぁ、構わない。いいのか? こんなところでせっかくの自由時間なのに」

「あなたもそうじゃない。それに私はこういった静かな時間が好きなの。とても気分が落ち着くわ、なんだか私も眠くなってきた……」


 そう口にしたルミナスは突然俺の肩に頭を乗せ、眠りに就いてしまった。まじですか、ちょっと無防備すぎじゃありませんかね?


 草原に時折吹きつく風がルミナスの綺麗な髪を揺らし、それが俺の鼻に触れてむず痒さと、シャンプーの良い香りが更に俺の鼻腔をくすぐってくる。ルミナスの吐息が耳に触れ体温ですら直に感じることができる。流石の俺もドキドキが止まりません。


 そんな心中穏やかではない時間を過ごしていると、何やら不穏な殺意に似た感覚を感じ恐る恐る振り向くと、そこにはシャルルとワカツキとルイネがこちらを妬ましく睨みつけていた。……これは詰んだのでは?


 俺がその状況にあたふたしていると、それがルミナスにも通じたのか、乗せている頭をどかし、周囲を見渡して現状を理解したのか、何故かルミナスは三人に向けて不敵な笑みを作っていた。


「ルミナス! 約束が違うじゃん!」

「そうです、今回は公平にいこうと話したではありませんか!」

「貴様、抜け駆けとはいい度胸だな」


 ルミナスが起きたとみるや、三人は一斉にルミナスに何かを抗議していた。約束? 何の? と俺は思っていたが、そんな俺のことはお構いなしに四人はまたもや言い争っていた。はぁ、仲が良いんだか悪いんだか……。


 その言い争いが恐ろしく感じた俺はひっそりと、その場を後にして幻影魔法にて姿を隠し、今度こそ一人で木の上で眠りに就くことにした。


 涼やかな風にあたり、心地よく残りの時間を過ごしていると、本来見つかるはずの無い俺に声がかけられた。


「あら、クロムさん。ここでおやすみになっていたんですね」

「お前は……、そうか、その魔眼か」


 今声をかけてきたのは、同じ十傑のメンバーの一人、序列九位セシル・ルチアーノだ。


 彼女は、綺麗な青い髪で大きな赤い瞳が特徴的で、性格は物凄いお淑やかな感じだ。あまり話す機会はないが、彼女のお淑やかで落ち着かせてくれる声音が俺はかなり好きだった。そして、彼女は生まれながらにして魔眼の所持者だった。俺の姿を見破ったのも魔眼の力によるものなのだろう。


「クロムさん、かなり大変そうですね。人気者は苦労が付き物と言いますから」

「いや、全然嬉しくないんだが……。それに俺は人気者じゃない」

「時に謙遜は皮肉に聞こえてしまいますよ?」

「本当だって、お前まで俺をイジメないでくれよ……。お前が最後の心の拠り所なんだから」

「……え? クロムさん、それ本気で言ってます?」


 何故か俺の言葉を聞いたセシルはほのかに顔を赤らめていた。何だ? 女は男と言葉を交わすと赤くなる呪いでもかけられているのか?


「ん? 本当だぞ? お前と話していると心が安らぐんだよなー」

「成程、そういうことですか……。これはかなり危険ですね」

「危険? 何が?」

「あなたがですよ」

「は?」


 俺の言葉にセシルは朗らかな笑みで答えて、それきり会話が終わった。また静かな時間に戻り、一人感慨に耽っていた。


 転生してから前の人生とは比べ物にならないほど有意義な時間を過ごしている。ちょっと抜けてはいるが、素敵な両親に恵まれ、試験を通してできた戦友ともなる友達。学園生活を通して色んな人と関わり合い、俺は転生して本当に良かったと心から思っている。もう今はあの時の孤独を感じることは無いのだと思うと無性にこの時間が永遠に続けばいいと思っていた。


 残り時間も終わり、学園に帰還するという指示が先生から出された俺たちは帰りも同じ陣形を組み第五層を後にしようとした時、突如俺の魔力探知にかなり大きい魔力が反応した。その魔力の出所を探っていると、カイルが上空に指して何かを訴えかけている。


「おい! あれはなんだ? 空間にひびみたいなものが入っているぞ!」


 皆がカイルの示した上空に視線を向けると、そこには突如ひびが入り、その中から一人の人間なのか疑わしい形相をした男が出てきた。ん? あのゲートの感じはまさか……。
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