転生した最強の死霊使いは平凡な日々を求めるが……

カルマ

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来訪者(2)

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 ひびの中から出てきた男は、赤黒い肌に、人間にはあるはずの無い角が二本生えていて、背中には大きな翼が生えていた。この魔力の感じ的におそらく、いや間違いなく魔族の中でも上位の存在、魔人だ。


 魔人の出現に皆動揺を露わにしていた。それを見兼ねてか先生が代表で魔人に声をかけていた。


「君は一体何者だ! 何が目的だ」


 先生の言葉を受けた魔人は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて先生に向けて人差し指を向けた。


「先生! 危ない!」


 俺が危機を予感して叫んだのだが、その叫びも虚しく、魔人の指先から放たれた光線が先生の心臓を貫いていた。


「きゃーーー」


 一人の女子生徒が叫んだ。その叫び声を聞き周囲も恐怖で顔を染めていた。


「十傑の皆さん前へ!」


 周囲のどよめきを一掃するかのようにシャルルが声を上げていた。その声により、俺たち十傑が魔人と相対する形になっていた。


「次は貴様たちを殺せばいいのか? 意外と魔力がでかい奴が何人か居るな」


 魔人が俺たちに狙いを付けた。そこまでは良いのだが、この魔人はおそらくだがスノウと同等以上の力を有していると判断できるほどの魔力の持ち主だった。それを考慮すると今の十傑では俺を覗いて誰一人太刀打ちができないと判断した俺は、十傑のメンバーに手を横に出して制止を促した。


「俺がやる。みんなは周りのフォローを頼む」


 そう口にした俺はすぐさま臨戦態勢に入り、モード七つの大罪に変わった。その姿を見た十傑のメンバーは俺の指示に従い、他の生徒たちを守る姿勢になっていた。


 周囲の被害も想定して、防御結界を皆の周りに四層ほど施した。そして、戦いの合図を待たずに俺は創造で弓を創り出し、転移して魔人の頭上零距離から全力の一撃を放った。


「弓技・魔槍の砲撃(ゲイ・ジャベリン)」


 完全に俺を舐めていた魔人の頭部に弓矢が命中して、地面に叩きつけられていた。その衝撃は凄まじく、先程までの穏やかな空気を放っていた草原が一瞬にして形を失くしていた。


 砂埃が舞う中、その中から動く影が見えた。どうやら仕留めきれなかったらしい。だが、かなりのダメージを負っている様子で、右腕を失い、翼はボロボロになっていた。


「ぐっ、き、貴様―! 許さんぞ、下等な人間風情がこの俺様に恥をかかせやがって」

「ふっ、その人間風情に随分とかっこいい姿になったものだな」


 先の攻防で俺はこの魔人相手に勝利を確信していた。それは後ろから見ていた十傑たちも同様な感想を抱いたのか、安堵しきった表情をしていた。


 瀕死に追い込んだ魔人に止めを刺すべく、弓をもう一度構え、放とうとしたその時突如感じたことの無い悪寒に晒された。


「ほぅ? 人間にしてはかなりの魔力量だな、こいつがやられているのも頷ける」


 悪寒を感じ声のする方に視線を向けると、そこにはもう一人の魔人が居た。


 その魔人がひびから出てくるのと同時に俺が張り巡らせていた防御結界が全て壊されてしまった。


 防御結界が解かれ、皆はこいつから放たれている周りがぼやけて見えるほどの濃縮された魔力に当てられ、十傑を含む全員が膝を付き恐怖に怯えていた。この魔力の総量はまず間違いなく爵位持ちだな。


 魔人の中にも序列がある、その序列こそが人間と同じ爵位だ。爵位が高ければ高いほどその魔人の強さがわかるというものだ。


「中々骨があるじゃないか、貴様がこの馬鹿を追い詰めたのか?」

「貴様、公爵か、伯爵か? どっちだ」

「我々の序列を知っているとは、博識だな。褒美に教えてやろう。私は伯爵の爵位を頂いている」


 俺の予想通り、爵位持ちの魔人だった。これはかなりまずい、この強さ、これはどうやっても今の俺では勝てそうにない。そんな不安を抱いていると、意外にもルイネが俺の横に歩み寄っていた。


「ルイネ、大丈夫なのか?」

「何とかね、こういう訓練も受けていたのが幸いしたかな。貴様、勝てるか?」

「……まず無理だろうな。レベルが違う」

「なら、どうするんだ?」

「今考えてる」


 爵位持ちとの戦闘を思考しながら、俺はまずは皆の状態を回復することを選んだ。


 光魔法・天使の羽衣(ホーリーベール)を使い、この圧し潰されそうになっている状態を回復させた。その効果で皆の顔色は良くなっていたが、現状はあまり芳しくない。


「クロム、助かりました。単刀直入にお伺いします。あれに勝てますか?」

「無理だ。とてもじゃないが、勝てそうにない」


 シャルルからの通信が入り、その質問に素直に答えるとシャルルは驚きの表情をしていた。まあ、無理もないか。今まで俺は強敵相手に尽く勝利を収めていたのだから。


 だが、そんなことを言ってもこいつと渡り合える可能性があるのは俺しかいない。早々に覚悟を決めて、インベントリから黒刀・八咫烏と青炎剣・燐火を取り出し、魔人に向けて構えた。


 先程と同様、戦いの間を測らずに転移して奴の背後に回り込み、八咫烏で斬りこんだ。


 魔人は転移に瞬時に反応して、八咫烏を危険と察知したのか、自身の長い爪で防いできた。っち、初見から転移に反応してくるか。


 今の攻防が終わっても爵位持ちの魔人は余裕の表情を出していた。どうやら俺をギリギリまで追い込んで殺そうとしているらしい。


「今のは中々鋭い一撃だったぞ」


 今の俺がこの魔人相手にどこまで通じるのか試すべく、俺は一度普通の状態に戻り相対した。


 俺が普通の状態に戻ったことを懸念したのか周囲がざわついていたが、ナグモが俺の考えている意図を理解したのか皆に向けて説明していた。


「クロムはあの魔人に自分の力を全て見せた上で、あの魔人と本気でやり合おうとしているんだ」


 ナグモの言葉通り、俺は自身の力がこの魔人にどこまで通じるのか測るべく普通の状態になったのだ。


 じりじりと緊迫した空気が流れる。今も魔人から溢れ出る計り知れない魔力に晒されながら、戦いの合図を窺っていた。


 俺から出た汗が額から顎に移り、地面に零れ落ちた時戦いが始まった。
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