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初めて迎える朝
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朝、目を覚ませば、美しき女がヴァイスの傍らに横たわってすやすやと寝息を立てていた。生娘なのにも関わらず、己を制御することができずに無理をさせてしまったと彼は頭を抱えてうなだれた。女を抱くのはいつぶりかなどわからぬほどだ。だから、あまりにも美しいロザリアの肢体を見て、ヴァイスの中に眠っていた男が雄叫びをあげてしまったのだ。
そっとロザリアの長く美しい黒い髪を指に絡めると、彼女はんっという声をあげた。そして、少ししたのちに、ゆっくりと眠そうにその花びらのような睫毛を震わせた。
「起きたか……?」
彼女はヴァイスの声を聞くなり、はっとした様子で慌ててシーツを引き寄せた。そして、「洋服をください」とか細い声で言った。
「いや……そのお前には悪いが……この国の習わしで夫婦は初めて結ばれてから3日間、夫婦の営みをするというのがあってだな……花嫁のほうは服は着てはいけないのだ。意味はわかるか、ロザリア?」
ヴァイスは困惑しつつ、ジキルの習わしについてロザリアにわかりやすいように説明すると彼女はしょんぼりしたような表情をして、こくりと頷いた。これについては変な習わしだと俺は思うとヴァイスはそっとフォローをいれた。しかし、ロザリアの憂いの表情は変わらなかった。
「そ、その、ロザリア……昨日のお前はあまりにも美しくて、優しくできなかった。すまない」
「将軍様、いいのです……謝らないでください」
「将軍様ではないだろう、ロザリア」
ヴァイスの悲しげな声にロザリアは彼を見上げて見せた。
「もう私たちは夫婦なんだ。それに。俺は同情してお前を牢屋にいれなかったわけではない。お、お前があまりにも美しくて……つい……だな。俺のものにしたくなったんだ。だから、お前は俺の妻であって、奴隷ではないのだぞ。だから、そういう呼び方はよくないんだ」
「わかりました、旦那様」
と先ほどとは違った和らいだ声が彼女から聞こえた。
ヴァイスはそっと壊れ物を扱うように彼女を抱きしめて、額に口づけを落とした。
愛しい彼の薔薇姫に。
そっと口づけを。
そして、そんな薔薇を手に入れた彼と白騎士の花となった薔薇の物語はまだ始まったばかりだ。
そっとロザリアの長く美しい黒い髪を指に絡めると、彼女はんっという声をあげた。そして、少ししたのちに、ゆっくりと眠そうにその花びらのような睫毛を震わせた。
「起きたか……?」
彼女はヴァイスの声を聞くなり、はっとした様子で慌ててシーツを引き寄せた。そして、「洋服をください」とか細い声で言った。
「いや……そのお前には悪いが……この国の習わしで夫婦は初めて結ばれてから3日間、夫婦の営みをするというのがあってだな……花嫁のほうは服は着てはいけないのだ。意味はわかるか、ロザリア?」
ヴァイスは困惑しつつ、ジキルの習わしについてロザリアにわかりやすいように説明すると彼女はしょんぼりしたような表情をして、こくりと頷いた。これについては変な習わしだと俺は思うとヴァイスはそっとフォローをいれた。しかし、ロザリアの憂いの表情は変わらなかった。
「そ、その、ロザリア……昨日のお前はあまりにも美しくて、優しくできなかった。すまない」
「将軍様、いいのです……謝らないでください」
「将軍様ではないだろう、ロザリア」
ヴァイスの悲しげな声にロザリアは彼を見上げて見せた。
「もう私たちは夫婦なんだ。それに。俺は同情してお前を牢屋にいれなかったわけではない。お、お前があまりにも美しくて……つい……だな。俺のものにしたくなったんだ。だから、お前は俺の妻であって、奴隷ではないのだぞ。だから、そういう呼び方はよくないんだ」
「わかりました、旦那様」
と先ほどとは違った和らいだ声が彼女から聞こえた。
ヴァイスはそっと壊れ物を扱うように彼女を抱きしめて、額に口づけを落とした。
愛しい彼の薔薇姫に。
そっと口づけを。
そして、そんな薔薇を手に入れた彼と白騎士の花となった薔薇の物語はまだ始まったばかりだ。
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