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ヤキモチ
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和樹さんが部屋を出て行ってからもう三時間近く経っている。スマフォを確認しても、和樹さんからのメッセージはなくて、とりあえずシャワーを浴びて、着替えをして、様子を見に行ってみることにした。
プール際のテラスで水着の女性たちに囲まれている和樹さんを発見した。よく見て見れば、ものすごくボディタッチしている。
「水成先生~、まだ帰っちゃだめ~」
なんて猫撫で声でおねだりする女に私はなんだかいらだちを覚えてしまった。そうしてると、とんとんと肩をつつかれて、振り返るとそこには和樹さんと同期である白石さんが立っていた。
「みんな、奥さんいるって知らないから許してやって」
スマフォを確認すると、『しばらく戻れそうにないから、夕食は好きにルームサービス頼んでいいよ』とメッセージが来ていた。顔を上げて、目の前を見れば、酔っぱらって和樹さんに寄りかかる女性がいた。きょとんとしている私を白石さんはなぜかにやつきながら見ていた。
「せんせっ、今度一緒にでかけましょーよ」
「えー、ずるい。わたしも~」
白石さんに部屋に戻りますと言って、部屋に戻ろうとすると「あいつ、帰り遅いかもね。夜は飲み会だから」という意地悪な声が聞こえた。
白石さんが言っていた通り、和樹さんの帰りは日付が変わることだった。モヤモヤして一緒のベッドで寝たくないから、もう一つのベッドルームにあるクィーンサイズのベッドで寝ていると「乃愛ー?」という私を探す声が聞こえた。こっちにいるのに気づいたのか、部屋に入ってこようとしたが私が内鍵をかけたから外からは入ることはできない。諦めたのか、ドアノブ無理に動かすのはやめたみたいだ。しかし、スマホを見ればメッセージが来ていた。既読をつけずに内容だけ確認する。
『起きてたら、おいで』
プールサイドでの光景を思い出してしまうとなんだか、悲しくなってきて思わず涙が流れてしまう。このまま、出ていったら、出ていったでまずい。それに出て行かないのもまずい。けど、どちらかと言ったら、出ていったほうがまだいい。
意を決して、別のベッドルームに向かえば、ベッドルーム備え付けのシャワールームに影がちらちらと動いていた。きゅっと元栓を閉める音がして、和樹さんが腰にバスローブを羽織って、タオルで髪の毛を乾かしながら出てきた。
ちょうど私がベッドで横になってうとうとしている最中で、和樹さんはベッドに腰かけてミネラルウォーターを飲みつつ、指で私の髪の毛を絡み取って、くるくると弄び始めた。
「もう寝ちゃいそうだな…………」
「んっ……………きらい……」
「乃愛?」
「きらい」
もう一度言えば、ぴたりと和樹さんの動作がすべて止まった。そして、眠そうな私の顔を覗き込んで、優しく頭を撫でた。「さいてー」と言えば、ぴくりと和樹さんの眉間が動いた。そして、なぜか彼からため息が聞こえた。
「最低な男で悪かったな」
声が少し掠れていた。額にそっと口づけを落とせば、彼は私の隣に横になって、後ろから私を抱きしめた。とくんとくんという彼の心音がやけに心地よく頭の中に響いた。そんな彼の心音が子守歌のように聞こえて、瞼が重みを増していく。ぎゅっと和樹さんの手を握れば、またため息が聞こえてきた。
しばらくすると、するりと和樹さんはベッドから抜け出してどこかに行ってしまった。
私は眠い目を擦りながら、あたりを見回すが和樹さんの姿は見当たらなかった。
どのくらい時間が過ぎたかわからないけれど、ベッドの中にうずくまっていたら、急にベッドが軋んだ。
「悪りぃ、起こしたか……?」
重たい瞼をゆっくりと動かして、首をゆっくり横に振る。そうかとだけかえってきたので、抱きついてみると少し彼は驚いた表情をしていた。
「どうした?」
「す………き」
「お前、そういうの可愛すぎ」
ふっと和樹さんの唇に自分のを押しつけてみたら、鼻で笑われた。そして、耳元で「襲うぞ?」と囁かれて、強く抱きつくと、冗談だよと笑い声が聞こえてきた。
プール際のテラスで水着の女性たちに囲まれている和樹さんを発見した。よく見て見れば、ものすごくボディタッチしている。
「水成先生~、まだ帰っちゃだめ~」
なんて猫撫で声でおねだりする女に私はなんだかいらだちを覚えてしまった。そうしてると、とんとんと肩をつつかれて、振り返るとそこには和樹さんと同期である白石さんが立っていた。
「みんな、奥さんいるって知らないから許してやって」
スマフォを確認すると、『しばらく戻れそうにないから、夕食は好きにルームサービス頼んでいいよ』とメッセージが来ていた。顔を上げて、目の前を見れば、酔っぱらって和樹さんに寄りかかる女性がいた。きょとんとしている私を白石さんはなぜかにやつきながら見ていた。
「せんせっ、今度一緒にでかけましょーよ」
「えー、ずるい。わたしも~」
白石さんに部屋に戻りますと言って、部屋に戻ろうとすると「あいつ、帰り遅いかもね。夜は飲み会だから」という意地悪な声が聞こえた。
白石さんが言っていた通り、和樹さんの帰りは日付が変わることだった。モヤモヤして一緒のベッドで寝たくないから、もう一つのベッドルームにあるクィーンサイズのベッドで寝ていると「乃愛ー?」という私を探す声が聞こえた。こっちにいるのに気づいたのか、部屋に入ってこようとしたが私が内鍵をかけたから外からは入ることはできない。諦めたのか、ドアノブ無理に動かすのはやめたみたいだ。しかし、スマホを見ればメッセージが来ていた。既読をつけずに内容だけ確認する。
『起きてたら、おいで』
プールサイドでの光景を思い出してしまうとなんだか、悲しくなってきて思わず涙が流れてしまう。このまま、出ていったら、出ていったでまずい。それに出て行かないのもまずい。けど、どちらかと言ったら、出ていったほうがまだいい。
意を決して、別のベッドルームに向かえば、ベッドルーム備え付けのシャワールームに影がちらちらと動いていた。きゅっと元栓を閉める音がして、和樹さんが腰にバスローブを羽織って、タオルで髪の毛を乾かしながら出てきた。
ちょうど私がベッドで横になってうとうとしている最中で、和樹さんはベッドに腰かけてミネラルウォーターを飲みつつ、指で私の髪の毛を絡み取って、くるくると弄び始めた。
「もう寝ちゃいそうだな…………」
「んっ……………きらい……」
「乃愛?」
「きらい」
もう一度言えば、ぴたりと和樹さんの動作がすべて止まった。そして、眠そうな私の顔を覗き込んで、優しく頭を撫でた。「さいてー」と言えば、ぴくりと和樹さんの眉間が動いた。そして、なぜか彼からため息が聞こえた。
「最低な男で悪かったな」
声が少し掠れていた。額にそっと口づけを落とせば、彼は私の隣に横になって、後ろから私を抱きしめた。とくんとくんという彼の心音がやけに心地よく頭の中に響いた。そんな彼の心音が子守歌のように聞こえて、瞼が重みを増していく。ぎゅっと和樹さんの手を握れば、またため息が聞こえてきた。
しばらくすると、するりと和樹さんはベッドから抜け出してどこかに行ってしまった。
私は眠い目を擦りながら、あたりを見回すが和樹さんの姿は見当たらなかった。
どのくらい時間が過ぎたかわからないけれど、ベッドの中にうずくまっていたら、急にベッドが軋んだ。
「悪りぃ、起こしたか……?」
重たい瞼をゆっくりと動かして、首をゆっくり横に振る。そうかとだけかえってきたので、抱きついてみると少し彼は驚いた表情をしていた。
「どうした?」
「す………き」
「お前、そういうの可愛すぎ」
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