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俺の奥さん
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白石からまた今日もプールを貸し切って病院のやつらで休暇を楽しむから顔を出せと言われて、朝から電話先で怒りそうになった。しかし、白石が「もちろん、奥さんも一緒に」と言ってきて、気が変わった。
―――……もういい。周りに見せつけてやろう。
乃愛が雑誌で着ていた水着がホテル内にある水着ショップの在庫にあったのでそれを持ってこさせた。淡いピンク色の立体的な花びらが重なったようなビキニを選んで、乃愛に渡して着替えさせる。ただし、ほかの男にかわいい乃愛の水着姿なんて見せたくないから上にパーカーを着させた。俺も水着に着替えると、乃愛を連れて屋外プールへと向かう。
プールに着くなり周りの反応が聞こえてくる。
『見て、あれ。モデルの朝比奈乃愛よ』
『すげーかわいい。人形みたい』
『隣にいるの水成先生よ』
『あの二人、どういう関係なの?』
周りをちらちら見ながら乃愛は不安げな表情をしていた。カメラを向ければ、いろんな表情をするのに、普段は他人の目を気にしがちだ。白石がやってきて、テーブルまで案内してくれた。椅子に座ろうとした乃愛を捕まえて、俺の膝の上に乗せると顔を真っ赤にさせながら、「お、おろして」とうろたえていた。白石はそれを見て、苦笑いしつつ「飲み物何にする?」と聞いてきたので、適当に伝えると、店員に頼んでくれた。
「ねえ、恥ずかしいからおろして? それに、さっきからみんなこっちチラチラ見てるから」
「乃愛ちゃんがいたらみんな見ちゃうよね。なあ、水成?」
さすがに病院関連の催しに知名度が高いモデルが来ていたら誰だってちらちら見るだろう。それに、まさか俺が「朝比奈乃愛」といちゃついてるなんて、ありえない光景だ。そんなありえない光景がどうして起こっているのか確かめに来た女たちがいた。
「水成先生、白石先生こんにちはー。私たちもご一緒してもいいですかあ?」
白石が空いていた椅子を彼女たちに渡すと、同じテーブルに混ざってきた。確か、昨日も俺のところに来ていた女たちだ。やけに化粧が濃い上に、水着も外人向けのような大胆なものを着ている。わざと見せつけるように乃愛の耳元で「挨拶しなきゃだめだろ」と囁いた。
「いつも夫がお世話になってます……妻の乃愛です……」
乃愛がそういうと女たちは目を丸く見開いて、ぱちぱちをさせていた。隣にいた白石のほうはおかしいものを見たように口元をにっと吊り上げた。
しかし、後ろからにこやかにあの女がやってきた。
「あら、水成先生。こんにちは」
「雨宮さんか」
「元カノに対してそれはないんじゃないの、水成先生?」
そうだ、目の前にいる雨宮玲子は俺の元恋人だ。ほぼ金目当てに近い女で、俺も適当に欲を満たしたくてそんな女を選んでしまったのだ。今思えば失態だといえる。
雨宮は乃愛を一瞥して、「水成先生もずいぶんと変わった趣味しているのね。飽きたらいつでも戻ってきていいのよ」と小馬鹿にするような言い方をした。玲子はきれい目の見た目をしている。しかし、30代の女だ、体にもそれが出ている。乃愛のパーカーに手をかけて脱がせると、乃愛が「きゃ」という小さな悲鳴をあげた。そして、恥ずかしがりながら両手で胸を隠そうとしている。
「まあ、昔の話を持ち出すのはどうかと思うが、お前みたいな浮気性の女は俺は嫌いだ。そんな女よりも奥さんみたいな純粋な子のほうが俺のタイプだ」
「っ………」
玲子は口元を歪めて、どっかに行ってしまった。それを追いかけるように二人の女も席を離れていった。再び、白石と俺たちだけになると、白石が「あの女、よくやるよ」と笑っていた。
「乃愛ちゃんに一目惚れしたからって、雨宮のことこっぴどく振ったお前も悪いけどさ」
乃愛に一目惚れしてから、どうにかこうにか乃愛との接点を持とうと必死で俺の友人であり、乃愛の兄である絢也に頼み込んで、わざと場をセッティングしてもらったりした。それに、乃愛を傷つけないように女関係をすべて清算したのだ。もちろん、しつこい雨宮もこっぴどく振ってやった。
「まあ、俺は乃愛ちゃんみたいな若い子に夢中になっちゃったロリコン水成くんはどうかと思ったんだけどね。しかも、高校の卒業式のあとに入籍しちゃうし。まあ結婚でもしなきゃ、乃愛ちゃんみたいなかわいい子は逃げちゃいそうだよね」
「うるせえぞ、白石」
乃愛のことを抱きしめてやるが、胸を隠したてを離そうとしないのでわざとらしく耳元で「その隠し方、いやらしい」と囁くと、さっと手を離した。
「あーあー、乃愛ちゃんこんなのでいいの?」
「はい」
「こんなのとかいうんじゃねえ」
乃愛がふふっと笑って、俺を見上げてきた。その笑顔があまりにもかわいすぎて、ほっぺに口づけを落とした。
―――……もういい。周りに見せつけてやろう。
乃愛が雑誌で着ていた水着がホテル内にある水着ショップの在庫にあったのでそれを持ってこさせた。淡いピンク色の立体的な花びらが重なったようなビキニを選んで、乃愛に渡して着替えさせる。ただし、ほかの男にかわいい乃愛の水着姿なんて見せたくないから上にパーカーを着させた。俺も水着に着替えると、乃愛を連れて屋外プールへと向かう。
プールに着くなり周りの反応が聞こえてくる。
『見て、あれ。モデルの朝比奈乃愛よ』
『すげーかわいい。人形みたい』
『隣にいるの水成先生よ』
『あの二人、どういう関係なの?』
周りをちらちら見ながら乃愛は不安げな表情をしていた。カメラを向ければ、いろんな表情をするのに、普段は他人の目を気にしがちだ。白石がやってきて、テーブルまで案内してくれた。椅子に座ろうとした乃愛を捕まえて、俺の膝の上に乗せると顔を真っ赤にさせながら、「お、おろして」とうろたえていた。白石はそれを見て、苦笑いしつつ「飲み物何にする?」と聞いてきたので、適当に伝えると、店員に頼んでくれた。
「ねえ、恥ずかしいからおろして? それに、さっきからみんなこっちチラチラ見てるから」
「乃愛ちゃんがいたらみんな見ちゃうよね。なあ、水成?」
さすがに病院関連の催しに知名度が高いモデルが来ていたら誰だってちらちら見るだろう。それに、まさか俺が「朝比奈乃愛」といちゃついてるなんて、ありえない光景だ。そんなありえない光景がどうして起こっているのか確かめに来た女たちがいた。
「水成先生、白石先生こんにちはー。私たちもご一緒してもいいですかあ?」
白石が空いていた椅子を彼女たちに渡すと、同じテーブルに混ざってきた。確か、昨日も俺のところに来ていた女たちだ。やけに化粧が濃い上に、水着も外人向けのような大胆なものを着ている。わざと見せつけるように乃愛の耳元で「挨拶しなきゃだめだろ」と囁いた。
「いつも夫がお世話になってます……妻の乃愛です……」
乃愛がそういうと女たちは目を丸く見開いて、ぱちぱちをさせていた。隣にいた白石のほうはおかしいものを見たように口元をにっと吊り上げた。
しかし、後ろからにこやかにあの女がやってきた。
「あら、水成先生。こんにちは」
「雨宮さんか」
「元カノに対してそれはないんじゃないの、水成先生?」
そうだ、目の前にいる雨宮玲子は俺の元恋人だ。ほぼ金目当てに近い女で、俺も適当に欲を満たしたくてそんな女を選んでしまったのだ。今思えば失態だといえる。
雨宮は乃愛を一瞥して、「水成先生もずいぶんと変わった趣味しているのね。飽きたらいつでも戻ってきていいのよ」と小馬鹿にするような言い方をした。玲子はきれい目の見た目をしている。しかし、30代の女だ、体にもそれが出ている。乃愛のパーカーに手をかけて脱がせると、乃愛が「きゃ」という小さな悲鳴をあげた。そして、恥ずかしがりながら両手で胸を隠そうとしている。
「まあ、昔の話を持ち出すのはどうかと思うが、お前みたいな浮気性の女は俺は嫌いだ。そんな女よりも奥さんみたいな純粋な子のほうが俺のタイプだ」
「っ………」
玲子は口元を歪めて、どっかに行ってしまった。それを追いかけるように二人の女も席を離れていった。再び、白石と俺たちだけになると、白石が「あの女、よくやるよ」と笑っていた。
「乃愛ちゃんに一目惚れしたからって、雨宮のことこっぴどく振ったお前も悪いけどさ」
乃愛に一目惚れしてから、どうにかこうにか乃愛との接点を持とうと必死で俺の友人であり、乃愛の兄である絢也に頼み込んで、わざと場をセッティングしてもらったりした。それに、乃愛を傷つけないように女関係をすべて清算したのだ。もちろん、しつこい雨宮もこっぴどく振ってやった。
「まあ、俺は乃愛ちゃんみたいな若い子に夢中になっちゃったロリコン水成くんはどうかと思ったんだけどね。しかも、高校の卒業式のあとに入籍しちゃうし。まあ結婚でもしなきゃ、乃愛ちゃんみたいなかわいい子は逃げちゃいそうだよね」
「うるせえぞ、白石」
乃愛のことを抱きしめてやるが、胸を隠したてを離そうとしないのでわざとらしく耳元で「その隠し方、いやらしい」と囁くと、さっと手を離した。
「あーあー、乃愛ちゃんこんなのでいいの?」
「はい」
「こんなのとかいうんじゃねえ」
乃愛がふふっと笑って、俺を見上げてきた。その笑顔があまりにもかわいすぎて、ほっぺに口づけを落とした。
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