魔王たまの伝説

星馴染

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魔王たま、最前線に到着する

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「王よ、この度の敗戦により我が国が五十年かけて削り取ってきた魔王軍の領土を全て失ったのだぞ?」
「ここまででも業腹だが、ここから先は建国時代からの土地。侵略されることは許しませんぞ」
 何を適当な事を!と王は公爵と大公を睨んだ。ウチの土地は奪わせるなよ、と言っているだけだ。
「そもそもお主らがきちんと求めた兵を出せば結果は変わったかもしれぬのだぞ」
「王よ、此度の敗戦が我らにも非があると言うのか?」
「王は無能の責を我らに押し付けるつもりか?」

 話にならない、と王は黙る。
「黙っていては解りませぬ、この度の敗戦により我が国が五十年かけて削り取ってきた
魔王軍の領土を全て失ったのですぞ」
「然り。ここまででも業腹だが、ここから先は建国時代からの土地。侵略されることは耐えられぬ」

 同じ話が繰り返される。
 元々、大公は父の弟、公爵は母の兄なのだ。
 本流から跡を継いだとはいえ、よく言えば年上……悪く言えば老害の二人に、ひたすら説教を受ける。

「すまなかったな、これからは気をつける」
「これからは気をつけるといっても、この度の敗戦により我が国が五十年かけて削り取ってきた魔王軍の領土を全て失ったのだ!」
「ここまででも業腹だが、ここから先は建国時代からの土地になるのだ。まさか奪われまいな?」
 だからその対策を立てるための時間をよこせ!話す事十四時間。戻った王は何もできないまま説教を聞くという無為な時間を取っていた。
 仕事の債務は滞り、明日でその債務を捌いたとして対策会議を開き二日で良策を出させたとしても、動けるのはさらに二日後になる。

「王様、マーデルの街が落とされました」
「ヒィィィ、わ、儂の街が。王よ、この度の敗戦により我が国が五十年かけて削り取ってきた魔王軍の領土を全て失ったばかりか、建国時の土地をも奪われたのですぞ」
「ここまででも業腹だったが、まさか建国時代からの土地をも奪われるとは。奪還計画や対策はできておるのか?」
 お前らがいるから何もできてないのだ!
 そう叫びたいのをぐっとこらえる。

 そして王は宰相に助けを求めるように目をやる。
 宰相は将軍に目をやると。首を横に振る。
「申し訳ありません、対策はたてられておりません」
「王様、大公様、公爵様。もはや降伏するしかありますまい、今ならまだ建国時から一つ街が減っただけ。賠償金によっては……戦時責任者の将軍の首は覚悟しなければなりませぬが、賠償を約束し不可侵条約を結び、年間の税から割合でいくらかを納めるとすれば向こうも頷くかと」
「「「それではまるで敗戦ではないか!」」」
 敗戦だろうに、と宰相は罵りたかったが、その言葉を飲み込み、申し訳ありません、と続けた。
 血縁だけあって三人共性格が似ておられる、と。

 王国で身のない話を続けているその頃、戦争が終わり、新魔王を肩に乗せたヴァンが最前線に到着する。
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