魔王たまの伝説

星馴染

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魔王たま、魔王の仕事?をする

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ヴァンが『たま』をそっと地面に置くと、鼻をフスフス鳴らしながら地面を嗅ぎ、再びヴァンに目をやった。
「にゃふぅーー」
 なにもないよ?ってガッカリしたような声に、ヴァンは耐えるように口を抑えて身悶えする。

「それではポイントを確認する。使用するものは並ぶがいい」
 ヴァンがそう言うと、仲の悪かった種族同士でも揉めることなく綺麗な列を作る。

「魔王さま、私は五人を戦闘不能にしました」
「にゃぁ?」
 たまが首を傾げる。
「魔王様、五ポイントですのでこの者にねぎらいを与えるのです」
 そう言って、ヴァンがたまをそっと抱き、その魔族の頭付近に持っていく。
「にゃん!」
 ポンッ
「う、うぉぉぉ!!!たま様から肉球スタンプを頭に貰ったぞ!」
「にゃん!?フシャーー!!」
いきなりのテンションにたまが威嚇する。

「ちょっと、早くどきなさいよ!」
「あ、ああ。すまんな!!」
 普通ならどけと言われれば殴り合いが始まる魔族コミュニケーションも、たまの前では喧嘩はご法度。
 破るものは、ポイントをマイナス三千まで落とされてしまう。

「たま様、私は前回の攻城戦も合わせて15ポイントです」
「たま様、よろしいでしょうか?」
「にゃーん」

 そしてヴァンはそっと魔王をその魔族の娘に手渡す。
「たま様、いきます!」
 ズボッ
 15ポイントはたま様のお腹に五秒顔をうずめる権利だ。
「スーハー、スーハー。あぁ、この微妙なケモ臭に柔らかなお腹の毛が顔をくすぐって……あぁぁ」
「フシャーー!!」
「魔王様はもう五秒たっただろうと仰せだ。離れるが良い!」
「そんな、たま様!!……またポイントためてきます、待っててくださいね!」

次のもの、抱っこ三十秒。
次のもの、肉球ふにふに
次のもの……百ポイントか。

「ふへへ、百ポイントたまるまで我慢してたんだよ」
「……でだ?」
百ポイントは選択肢がある。

一つはたま様とオモチャで遊ぶ5分間
そしてもう一つは……わずかひとなで。

「一撫で、お願いします」
 あたりがザワつく。
「マジかよ……5分間の方が絶対にいいだろ」
 そして、魔族の男はたまを抱っこし、そっと……お尻から頭に向けて撫でた。
「にゃっ!?」
 毛を逆立てられて気持ち悪いのか、ブスッとした顔になり顔を洗い、そのまま毛づくろいをはじめる。

「ま、魔王様!」
「不機嫌な魔王様かわいい!」
「あぁ、逆撫でされてボサボサだった毛を整えていらっしゃる!」

「フニーー」
「申し訳ありません、魔王様。これも魔王のお仕事ですから。今日は頑張ったご褒美に極上のモンプッティをあけますから」
「なぁぁう」

魔王たまのお仕事はその後半日続いた。
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