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母父サファラタ、母ウパニャース、父?
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《母父 サファラタ》
ヒンディー語で成功を意味するサファラタという馬がいた。
インドの馬主が輸入したサラブレッドで、ドバイのG1に勝利し、世界中から注目された。
『成功』という名前にふさわしい大活躍、圧倒的なスピードとパワーを見せつけて自身の強さをアピールした。堂々の種牡馬入りである。
米国ではあまり見られない血統だったため、米国のある牧場が大金を払い輸入することとなったが……『もう名前の分は十分仕事しただろう?』と言っているような結果になった。
サファラタが二年で病死したのだ。
そして残された産駒達が走り始める。
「はずれだったな……」
米国の老舗サラブレッド牧場、カストリオ牧場の主は苦々しい顔をしてそう語った。
サファラタにより、カストリオ牧場は大きな借金を抱える事となった。
新しい血統を残そうと大金を出したのに産駒はどれも小柄で、パワーが求められる厳しい米国の競馬界で活躍できる強さを持った馬は一頭も生まれなかった。
産駒の八割が未出走、二割が未勝利のまま終わる事になる。
サファラタ産駒は一度も新聞に乗らず、しばらくの間、競馬界から忘れられていく。
『成功の産駒は失敗ばかり』と新聞社がコラムを書かれたくらいである。
《母 ウパニャース》
カストリオ牧場持ちのその産駒はヒンディー語で『小説』と名付けられた。
父、サファラタにあやかってヒンディー語の名前を付けた。
「牡馬でサファラタの血統を受け継ぐ者は恐らく繁殖入りできないだろう。サファラタの仔は小柄で身体が弱い。父の遺志だ、ウパニャースは繁殖入りさせて血統を守ろう」
成績1戦0勝。
牝馬のウパニャースは新馬戦二着という成績で繁殖入りすることとなる。
勝ててもおかしくないタイムで新馬戦を競り負けたウパニャースを無理に走らせて悲劇が起こったら。カストリオ牧場のサファラタを買った父はただの愚か者になってしまう。
血としては悪くないはずだと、ウパニャース産駒に期待をする事になる。
《父……米国エクリプス賞(年度代表馬、リーディングサイアー) ヘイルストーム予定》
ヘイルストームはサファラタのより一歳年下の競走馬だ。サファラタと違い産駒はどれも米国競馬界に適応したパワーを持ったタフな産駒が生まれる。
「ヘイルストームは予約が埋まってるんだよ」
「そんな、前々から約束していた事じゃないですか!」
借金まみれのカストリオ牧場がなぜこんな名馬をつけられるか。
ヘイルストームは牧場交流の際にサファラタの種付権と交換していたのだ。
サファラタの産駒が繁殖入りした後に、ヘイルストームをつける、と。
「しかし、サファラタ産駒はどれも小柄で非力だと聞く。ヘイルストームをつけても走らないんじゃないか?」
「だが、約束は守っていただきたい」
産駒が悪ければそのままヘイルストームの悪評にも繋がる。そう考えたヘイルストームの牧場主はある提案をした。
「エクリプス賞にこだわるなら、こっちをつけてはどうだ?気性難はあるが、初年度産駒だし、こいつの予定は空いている」
「ナイスマークスか」
ナイスマークス自身は勝ったレースも低人気からのまぐれ勝ちという評価。
それが数回続き、なぜか三冠馬となった。
年度代表馬には選ばれたものの、その年は不作の年だと揶揄されていた。
大手新聞社は「ツキがあっただけ」だと言う。
一年から三年早く生まれていれば勝てなかったし、一年から三年遅く生まれていても勝てなかっただろう。
また、その年でもその距離のスペシャリストがちょうどG1前に故障すると言う強運で選ばれた三冠馬の年度代表馬だった。
「不運な成功の産駒もコイツのまぐれ勝ち、強運で良くなるかもしれんよ?こいつの最初の種付になる。成功の牝馬ならこいつのゲン担ぎにもなるだろう」
バカにされるように、笑いながら言われる。
「お前さんとこの息子、騎手になったらしいじゃないか。三年目なのになかなかいい騎乗をするって聞いてるよ。うちのお得意様にお前の所の息子を宣伝しといてやるから、今回はこれで泣いてくれ」
種付はどこも予約で埋まっている。
空胎で年をあけるよりは……とカストリオ牧場の主は初年度の交配にナイスマークスを選んだ。
《父 米国エクリプス賞(年度代表馬) ナイスマークス》
この頃はまだ無名の種牡馬に過ぎないナイスマークス。
だが、フロックといわれたナイスマークスはその強運からか。
はたまた最初の種付が成功の牝馬だったからか。
気性に難はあるものの、ナイスマークス産駒はいくつものG1を勝つ事になる。
ナイスマークスは以降十数年に渡ってリーディングサイアーを取り続け、ナイスマークス産駒の種牡馬は、二十年後に二十頭を超える。
もしナイスマークスの産駒能力が解っていれば、こういう提案は出なかっただろう。
産駒の仔馬が産声をあげた。
《父ナイスマークス、母ウパニャス》
そのやや小柄な仔馬は米国競馬で競走馬となり、《ノイジーナイス》と名付けられる事になる。
ヒンディー語で成功を意味するサファラタという馬がいた。
インドの馬主が輸入したサラブレッドで、ドバイのG1に勝利し、世界中から注目された。
『成功』という名前にふさわしい大活躍、圧倒的なスピードとパワーを見せつけて自身の強さをアピールした。堂々の種牡馬入りである。
米国ではあまり見られない血統だったため、米国のある牧場が大金を払い輸入することとなったが……『もう名前の分は十分仕事しただろう?』と言っているような結果になった。
サファラタが二年で病死したのだ。
そして残された産駒達が走り始める。
「はずれだったな……」
米国の老舗サラブレッド牧場、カストリオ牧場の主は苦々しい顔をしてそう語った。
サファラタにより、カストリオ牧場は大きな借金を抱える事となった。
新しい血統を残そうと大金を出したのに産駒はどれも小柄で、パワーが求められる厳しい米国の競馬界で活躍できる強さを持った馬は一頭も生まれなかった。
産駒の八割が未出走、二割が未勝利のまま終わる事になる。
サファラタ産駒は一度も新聞に乗らず、しばらくの間、競馬界から忘れられていく。
『成功の産駒は失敗ばかり』と新聞社がコラムを書かれたくらいである。
《母 ウパニャース》
カストリオ牧場持ちのその産駒はヒンディー語で『小説』と名付けられた。
父、サファラタにあやかってヒンディー語の名前を付けた。
「牡馬でサファラタの血統を受け継ぐ者は恐らく繁殖入りできないだろう。サファラタの仔は小柄で身体が弱い。父の遺志だ、ウパニャースは繁殖入りさせて血統を守ろう」
成績1戦0勝。
牝馬のウパニャースは新馬戦二着という成績で繁殖入りすることとなる。
勝ててもおかしくないタイムで新馬戦を競り負けたウパニャースを無理に走らせて悲劇が起こったら。カストリオ牧場のサファラタを買った父はただの愚か者になってしまう。
血としては悪くないはずだと、ウパニャース産駒に期待をする事になる。
《父……米国エクリプス賞(年度代表馬、リーディングサイアー) ヘイルストーム予定》
ヘイルストームはサファラタのより一歳年下の競走馬だ。サファラタと違い産駒はどれも米国競馬界に適応したパワーを持ったタフな産駒が生まれる。
「ヘイルストームは予約が埋まってるんだよ」
「そんな、前々から約束していた事じゃないですか!」
借金まみれのカストリオ牧場がなぜこんな名馬をつけられるか。
ヘイルストームは牧場交流の際にサファラタの種付権と交換していたのだ。
サファラタの産駒が繁殖入りした後に、ヘイルストームをつける、と。
「しかし、サファラタ産駒はどれも小柄で非力だと聞く。ヘイルストームをつけても走らないんじゃないか?」
「だが、約束は守っていただきたい」
産駒が悪ければそのままヘイルストームの悪評にも繋がる。そう考えたヘイルストームの牧場主はある提案をした。
「エクリプス賞にこだわるなら、こっちをつけてはどうだ?気性難はあるが、初年度産駒だし、こいつの予定は空いている」
「ナイスマークスか」
ナイスマークス自身は勝ったレースも低人気からのまぐれ勝ちという評価。
それが数回続き、なぜか三冠馬となった。
年度代表馬には選ばれたものの、その年は不作の年だと揶揄されていた。
大手新聞社は「ツキがあっただけ」だと言う。
一年から三年早く生まれていれば勝てなかったし、一年から三年遅く生まれていても勝てなかっただろう。
また、その年でもその距離のスペシャリストがちょうどG1前に故障すると言う強運で選ばれた三冠馬の年度代表馬だった。
「不運な成功の産駒もコイツのまぐれ勝ち、強運で良くなるかもしれんよ?こいつの最初の種付になる。成功の牝馬ならこいつのゲン担ぎにもなるだろう」
バカにされるように、笑いながら言われる。
「お前さんとこの息子、騎手になったらしいじゃないか。三年目なのになかなかいい騎乗をするって聞いてるよ。うちのお得意様にお前の所の息子を宣伝しといてやるから、今回はこれで泣いてくれ」
種付はどこも予約で埋まっている。
空胎で年をあけるよりは……とカストリオ牧場の主は初年度の交配にナイスマークスを選んだ。
《父 米国エクリプス賞(年度代表馬) ナイスマークス》
この頃はまだ無名の種牡馬に過ぎないナイスマークス。
だが、フロックといわれたナイスマークスはその強運からか。
はたまた最初の種付が成功の牝馬だったからか。
気性に難はあるものの、ナイスマークス産駒はいくつものG1を勝つ事になる。
ナイスマークスは以降十数年に渡ってリーディングサイアーを取り続け、ナイスマークス産駒の種牡馬は、二十年後に二十頭を超える。
もしナイスマークスの産駒能力が解っていれば、こういう提案は出なかっただろう。
産駒の仔馬が産声をあげた。
《父ナイスマークス、母ウパニャス》
そのやや小柄な仔馬は米国競馬で競走馬となり、《ノイジーナイス》と名付けられる事になる。
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