たいまぶ!

司条 圭

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第一章 狩野姉妹 ~ティターン討伐録~

第18話 死線その果てに

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「このっ……!」

 凄まじい早さで追いついたのは森川先輩。
 そのまま足の腱を斬ろうとするも。

「なにっ!?」

 突然、ティターンの甲冑が全て弾け飛んだ。
 突飛なことに、森川先輩も、
 飛んでくる鎧の破片への防御に専念するのが精一杯だった。
 だが、その一瞬は、ティターンが更にハデスゲートへ近づける時間となる。

 ハデスゲートはまだ閉じきっていない。

 あとは、狩野姉妹のみ。
 でも、あの2人には、あの巨人を止める術など無い。
 ついに、ティターンの足がハデスゲートを踏む。


 刹那。



「そぃやぁぁぁぁぁあああああああっ!」

 京さんが、突然振り向く。
 そして、巨大な手がティターンの突進を阻んだ。
 ティターンも、これほど巨大な手に止められると厳しいのか。
 身体を震わせて一歩も踏み出せずにいる。

「……ボクのせいなんだ。ボクのせいで、いっちゃんが危険な目に遭ってるんだ。
 絶対にやらせるかぁぁぁぁああああ!」

 京さんの叫びが木霊する。
 その気合いにも押されたのか。
 ティターンは巨大な手によって、ジリジリと後退していく。

「その意気だ。いいぞ、京っ!」

 その叫びに呼応するように、ティターンを縦横無尽に切り刻む森川先輩。
 その連続攻撃は、それこそ文字通りの、目にも止まらぬ早業。
 森川先輩の動く姿など見えず、
 何かが通った軌跡にティターンの傷が増えては身体が小さくなって行く。
 これほどの攻撃。
 さすがのティターンも効いているのか。
 脚を震わせ、今にも膝が地に着こうとしている。

 そのとき、樫儀さんも何かに気づき、大声を上げた。

「森川先輩っ! シングメシア、見つけたですよ!」

「なにっ、どこだっ?!」

 森川先輩も、斬りつけつつも探していたのだろう。
 だが、やはり見つかっていないことから、樫儀さんの言葉には疑問で応える。

「おケツです! ティターンのおケツの穴に刺さってるです!」

「なん……だと」

 一瞬言葉に詰まる森川先輩。
 それは無理もない。

 よく目を凝らせば、確かに見える剣の柄。
 ついでに、京さんの卒塔婆もはみ出ていて、
 場所が場所なだけに、とある何かを連想させる。
 
 悪魔は人間ではないとはいえ、ディアボロスの見た目はやはり人間に似ている。
 出来れば、あの穴に手を突っ込むようなことはしたくない。

 かと言って、そのままにしておくわけにもいかず……

「……千里、あとで覚えておけ!」

「えっ、私関係無いでーすっっ!!!」

 気合一閃、跳躍し、とある場所から剣を引き抜く森川先輩。

 同時に、光り輝くシングメシア。
 ティターンの横に位置取ると、そのまま大きく振りかぶる。

「よく耐えた、京。お前の為すべき事、この森川厘が見届けたぞ。あとは任せろ」

 眩い光が一層輝き始める。
 森川先輩の視線は、ティターンをピタリと捉えている。

「煌めけ、シングメシア!」

 光の波がティターンを飲み込む。
 しかし、その一撃は力を抑えていたのか。
 いつものような光が発することなく、すぐに視界が回復する。

 だが、それでも充分のようだ。
 ティターンの甲冑が無くなった故か。
 急場で放ったシングメシアであっても、身体は見違えるほど小さくなっていた。

 これは削りだ。

 京さんの負担を軽くするために撃った、弱めの攻撃。
 弱めといえども、これだけ効果が出ている。
 身体が小さくなったせいか、同じ力で押している様子の京さんの手は、
 グングン押し返し、ゲートからもずいぶんと遠ざけていた。

 次を当てれば。
 森川先輩の、いつものシングメシアを撃てば……

 ティターンは消滅する。

 それは、誰の目から見ても明らかだった。
 そして、森川先輩の力は、まだたっぷりと残っている。

「覚悟しろ、ティターン。今こそ、おまえを無に帰す……!」

 森川先輩が、八双の構えでティターンと対峙する。
 それと同時に、剣に帯びる光。

 その光は、先のものとは異なる壮絶なる光。
 あまりの眩さ故に直視することの出来ない……
 悪魔を討つ、聖なる光。

 ティターンが、断末魔を上げるかのごとく、この時初めて叫び声を上げた。
 だがそれも、この空間に響くのみだった。

「唸れ…………シングメシアァァァァアアアア!!」

 振り下ろされると同時に、ティターンは強大な光に飲み込まれていった。
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