たいまぶ!

司条 圭

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第二章 樫木・ランバ・千里 ~ユニコーン討伐録

第34話 共同作業

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「いざ行かん。我らの戦地へ。我らの宿業の地へ。そして魔の潜む地へ。
 受け入れよう、我らが魂に課せられし運命を」

 まだ暗唱出来ないながら、たどたどしく言葉を連ねた後、
 私は幽体離脱することに成功する。
 そして、これで3度目となるゲートを目の前に見据える。
 何度見ても、巨大で開きそうもない扉。
 そのゲートを基準として、さっき露草先輩が描いた作戦の場所へと移動する。

 私も、暗黙の了解のように、愛さんと京さんがその場所へ集合した。
 今回は、京さんはラフなジャージ、
 愛さんは何故かOLさんのようなスーツを着ている。
 私はというと、相変わらず制服だった。

「さて、いっちゃん。初めての共同作業だよ。気分はどうだい?」

「と、とにかく、練習の成果を発揮するだけです」

「こらこら、それじゃさっきと同じじゃーん」

「こら、京ちゃん。京ちゃんはもっと緊張感を持ちなさい」

「そんなこと言ったって、緊張する意味のほうが分かんないじゃん。
 愛ちゃんなんて、いっつも緊張して手が震えて、失敗してるよ?」

「そ、それは緊張しすぎてて……」

「緊張は火事の元~!」

「こ、こら! そんな昔のことー!」

 姉妹喧嘩……というか漫才を繰り広げ始め、
 昔話と思われる愛さんの放火未遂?まで暴露されている。
 それを見てると、不思議と肩の力が抜けてきていた。

 その一方で、後ろからでも分かるほど緊張した、
 ガチガチの格好でいる千里に目が行く。
 その千里の、今回の服装……いや、今回は服装ではなく「武装」だった。

 ファンタジーの世界で見たことのある鎧。
 部分鎧という、胸から胴、肩しか無い鎧。
 手は、金属の小手を纏い、スカート状の鎧をつけている。

(あれ……?)

 そこまで見て、今更ながらに気づいた。

 似ている。

 何にって、森川先輩の姿に。

 まぁ、全く一緒っていうわけじゃないし、
 髪なんかもいつも通りの金髪のツインテールだし、
 やっぱり似ているっていうだけなんだけど。
 それでも、遠くからだと、姉妹のように佇んでいるように見える。

 どんな話しをしているか分からないけど、コチコチになっている千里に、
 森川先輩がいくつか話しを投げかけているようだった。
 その後、森川先輩の右手が千里の頭に乗っかると、千里が先輩の方を向いて、
 いつもの笑顔を向けていた。


「お出ましよっ!」

 露草先輩の声が響く。
 重厚な扉が開く音。
 少しずつ扉は開き、全開まで行くと。

「護方結界!」

 飛び出してくる悪魔。
 それにぴったりタイミングを合わせて結界を展開する露草先輩。
 怒涛の勢いで飛び出してくる悪魔は、結界に当たって消滅していく。

 しかし、勢いよく当たる悪魔は、さながら滝のごとく。
 受け止める結界は和紙のごとく。
 私の想像以上に、容易すく貫通していってしまう。
 それでも、懸命に張り直しては、悪魔たちの勢いを殺していく。

「よっしゃっ! いくぜいっちゃんっ!」

「はいっ!」

 気合一閃。

 私と京さんで、巨大な手を作り上げ、扉を掴む。
 まだ力は入れない。
 別々に力を入れないように。
 お互いの力を同時に入れるように。
 私は、京さんの合図を待つ。

「よし、練習通り、3で押すよ! せーの……1、2の3!」

「はいっ!」

 2組の巨大な手。
 その一方である私の手に、精一杯力を込める。
 すると、あの巨大な扉が、今まで以上の速さで閉じられていく。

「うにょっし……! やっぱ、上手く行ってる!
 この調子で行くぜ、いっちゃんっ!」

「はい!」

 京さんのかけ声で、力を込める。
 その都度、扉は音を立てて少しずつ閉じられていく。

「あはは、すごいっ! これは予想外だね。時間も力も、半分以下で済むかも」

「そ、そうですか?」

「あぁ、すごい助かるっ! この調子でいくよ。1、2の3!」

 確かに、言われてみれば、たったこれだけの時間で、
 既に3分の1は閉めている。
 出口が小さくなり、出てくる悪魔の数も減ってきたのか、
 露草先輩にも少し余裕が出来ているように見えた。

「愛ちゃん、よろしくね!」

「うんっ」

 大量の数が漏れている悪魔。
 その悪魔たちが、愛さんが張った障壁にびっしり張り付いている。

 最初は狼狽して、願いを持って行かれてしまった私。
 でも今は、全く冷静でいられた。
 あの状況を一度経験したせいだろうか。

 どれだけ囁かれようとも、一切耳に入らなかった。
 そして、今、やるべきことに集中する。
 
 閉めるんだ。

 ユニコーンだけは通さない。
 1秒でも早く、この忌々しい扉を閉める。
 それが、今、私のやるべきことだ!



 刹那。
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