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ようこそワンダーランドへ…
しおりを挟む目を覚ますと、部屋一面薄いピンクの壁が目に入ってきた。
確認しようと身体を起こそうとした瞬間に脇腹に激痛が走る。
そうだ…あの時襲われて…それで…
ゆっくり記憶を手繰り寄せる。
白うさぎ…そうだわ!あの時にあの子が私を助けてくれてそれから無我夢中で逃げて……
それで……穴に落ちた……。
そこまで思い出して血の気が引いた。
下も見えないような深いな穴の中…生きていられるはずがない。だとするとここは…天国?
だとすると随分とメルヘンチックね。
部屋を見渡すとどこもフリルやリボンのデザインだらけ、よく見ると着ているものもたっぷりとフリルがあしらわれたシルクのワンピースだった。
コンコンッ
「おや、目が覚めたようだね。良かったよ。」
部屋に入ってきたのは20代前半くらいの青年だった。
スラリ長い手足にシャープな輪郭と赤いの瞳。
そして頭には……………うさぎの耳?
奇想天外のこの状況にまだ夢の続きなのかと目を擦るが視界は何も変わらず、メルヘンな部屋のなかでうさぎ耳の青年がこちらを見つめたままだった。
「アリス、僕だよ。君が手当てしてくれたうさぎだよ。」
そんなはずがない、私が助けたのは動物のうさぎ…
人間を助けた覚えはないわ…
だけど、見覚えがあるその美しい白うさぎと目の前の彼の特徴があまりにも類似している。
「その…耳はどうやってついてるんですか…?」
「これ…?」
ぴょこぴょこと小刻みに動きとてもリアル
「触ってみる?」
そう言うと彼はつかつかと此方に向かってきた。
その瞬間、リチャードとの事が頭を過ぎり反射的に身構えていまう。どんなに抵抗しても無駄だった…力の差を思い知らされたあの恐怖が押し寄せてくる。
「いやっ!」
逃げようと後退るも背後は壁。
布団を胸元でぎゅっと握りしめ身を硬くした。
「大丈夫。何もしないよ。」
視線を戻すとベッドの隅に座っていた。
「アリスが良いと言うまでこれ以上近づかないから、今は安心してここに居てほしい」
その表情からは私に対する労り伝わってくる。
その瞬間、張り詰めていた糸がプツリと切れて涙が溢れてくる。
怖かった…とても、怖かった……
アリスはわんわん子供の頃のように声を上げて泣いた。
泣き止むまで彼は何も言わずそばに居てくれた。
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