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⑥ー魔石ー
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扉の向こうの空間は、先程までの大回廊とは違い通路が枝分かれして入り組んでいた。
カイルは白いローブの男の後を気配を隠しながらひたすら付いて行く。男は迷うこと無く、その入り組んだ道を進む。
カイルはこの道に見覚えがある。
昔、一度だけ通った。決して良い記憶ではない。できればここにはもう二度と来たくはなかった。
昔の記憶を振り払うようにカイルは頭を振った。
この通路の奥一帯は、一応は魔力の実験棟と言われているが、本当はそんなに生易しいものではなく、魔力の監獄とも言った方が合っているとカイルは思った。
何度目か通路の角を曲がったとき、白いローブの男の足が止まる。
目の前が急に開け、薄暗いながらも広大な空間が広がっている。
カイルから数メートル離れた先に透明の青白く光る壁が立ちふさがっていた。
その壁は結界の壁で、簡単には何も行き来できないようにするため、特に中の『モノ』が逃げ出さないためにその結界はある。
カイルはその結界の向こう側から目に飛び込んできた景色に驚愕した。
空間の中央に人影。
その人影に向かって四方八方から何本もの細い針金のような物が鈍く光りながら延びており、それによって人影はまるで張り付けのように吊るされていた。
ドクンッ!!
カイルの心臓が大きく波打つ。
その目の前にあるその情景にカイルの全身が固まる。
「シ・・っ!」
思わず出そうになったその名を無理に飲み込む。
その人影とは、シン自身だった。
シンの身体に無数の細長い針金が皮膚に食い込むように絡み付いている。
そして、その針金を伝うように赤い閃光がパリッパリッとシンの身体から何かを吸い上げる様に走り出ている。その赤い閃光が向かう先には砂時計のような形をした透明の物体。
無数の針金は四方八方から伸びているように見えるが、全てはその透明の物体に繋がっていた。
赤い閃光は針金を流れるように伝い、その透明の物体の中に入り、その中央で小さくクルクル円を描きながら凝縮していく。赤く光る閃光は1cmほどの大きさまで凝縮すると、コロンッと固まりになって透明の物体の底に落ちた。
その様子をカイルの目の前にいる白いローブの男と同じ格好をした人間が数人取り囲んで見守っている。
1cmほどの塊になった赤い閃光は、まるで宝石のように鮮やかに赤く光っている。これが魔石だ。魔石の色は人それぞれ違い、赤い色はカイルも初めて見た。大概は青や緑などの深い色が多い。
そして、この大規模な物体が魔石の生成機。こうやって、奪った魔力を物質化し形にする事ができる。
先ほど物体の底に落ちた赤い魔石を一人の男がうやうやしく拾い上げ、魔法陣が描かれた小さな箱に納めた。その中には他にも同じ赤い色の魔石がすでに数個納められていた。
魔石一つを生成するにもかなりの魔力が必要とされる。いったいどれだけの魔力をシンは持っているのか?いや、こんなに魔石を作らされてシン自身は大丈夫なのか?
目の前で繰り広げられている事にカイルは唖然として固まってしまっていた。
と、その隙に白いローブの男は結界の一部を解いてその中に入ってしまった。
「あっ!!」
慌てて男の後を追おうとしたが後の祭り。男の侵入を許した結界はすでに閉じられてしまっていた。
ダンッ!!
カイルが結界の壁を力任せに叩く。壁はパリリッと青い光をわずかに放っただけで、びくともしない。
ガッ!!
その刹那、カイルは背後から強い力で押さえつけられ、地面に屈伏した。
「バカかお前は!」
半分イラつき半分呆れた口調の聞き慣れた声が、頭の上から降ってきた。
「・・ジェド?」
「バカかお前は、結界を叩くやつがいるか!自分が居ることを教えているようなもんだ!」
小声でジェドがさらに畳み掛ける。
「二度もバカって言うな!」
自分を押さえつけていたジェドの腕を払い除けながらカイルは立ち上がる。
ジェドの姿は見えない。ジェドも認識無効化のスプレーをかけているようだ。
「魔具の効果ももう少しで切れるぞ。姿勢を低くしてろ」
声を圧し殺してジェドが言う。
見ると、かすかにカイル自身の手の輪郭がわずかに分かるようになってきている。
「お前、関わらないって?」
「・・・どっかのうっかり者がへましそうだったからな」
カイルはムッとしたが、反論はしなかった。何だかんだとジェドが隣にいることが少なくとも嬉しく思えた。
「姿が見えるようになる前に中に入るぞ!」
ジェドの声がする方の結界の壁が小さくブンッと唸る。壁がジェドが手に持っている刻印の刻まれたカード状の物に反応して人が一人通れるくらいの空間が空いた。
「それ・・?」
何でそんな便利なものを?とカイルが不思議がる。
「ちょっと、裏ルートでな」
ジェドは情報操作にも精通している。何をやったのかは考えないでおこうとカイルは思った。
「そんなことより、こっから先はお前メインで行けよ。僕はここにはいない存在だからな!」
小声で念を押すようにジェドが言う。
「分かってる」
カイルは今は独り身。ちょっと前までは兄がいたが、死んでしまった。
反面、ジェドには母親がいる。もし、こんな反逆者まがいなことが国にバレたら、その家族まで事は及ぶ事になる。
カイルは白いローブの男の後を気配を隠しながらひたすら付いて行く。男は迷うこと無く、その入り組んだ道を進む。
カイルはこの道に見覚えがある。
昔、一度だけ通った。決して良い記憶ではない。できればここにはもう二度と来たくはなかった。
昔の記憶を振り払うようにカイルは頭を振った。
この通路の奥一帯は、一応は魔力の実験棟と言われているが、本当はそんなに生易しいものではなく、魔力の監獄とも言った方が合っているとカイルは思った。
何度目か通路の角を曲がったとき、白いローブの男の足が止まる。
目の前が急に開け、薄暗いながらも広大な空間が広がっている。
カイルから数メートル離れた先に透明の青白く光る壁が立ちふさがっていた。
その壁は結界の壁で、簡単には何も行き来できないようにするため、特に中の『モノ』が逃げ出さないためにその結界はある。
カイルはその結界の向こう側から目に飛び込んできた景色に驚愕した。
空間の中央に人影。
その人影に向かって四方八方から何本もの細い針金のような物が鈍く光りながら延びており、それによって人影はまるで張り付けのように吊るされていた。
ドクンッ!!
カイルの心臓が大きく波打つ。
その目の前にあるその情景にカイルの全身が固まる。
「シ・・っ!」
思わず出そうになったその名を無理に飲み込む。
その人影とは、シン自身だった。
シンの身体に無数の細長い針金が皮膚に食い込むように絡み付いている。
そして、その針金を伝うように赤い閃光がパリッパリッとシンの身体から何かを吸い上げる様に走り出ている。その赤い閃光が向かう先には砂時計のような形をした透明の物体。
無数の針金は四方八方から伸びているように見えるが、全てはその透明の物体に繋がっていた。
赤い閃光は針金を流れるように伝い、その透明の物体の中に入り、その中央で小さくクルクル円を描きながら凝縮していく。赤く光る閃光は1cmほどの大きさまで凝縮すると、コロンッと固まりになって透明の物体の底に落ちた。
その様子をカイルの目の前にいる白いローブの男と同じ格好をした人間が数人取り囲んで見守っている。
1cmほどの塊になった赤い閃光は、まるで宝石のように鮮やかに赤く光っている。これが魔石だ。魔石の色は人それぞれ違い、赤い色はカイルも初めて見た。大概は青や緑などの深い色が多い。
そして、この大規模な物体が魔石の生成機。こうやって、奪った魔力を物質化し形にする事ができる。
先ほど物体の底に落ちた赤い魔石を一人の男がうやうやしく拾い上げ、魔法陣が描かれた小さな箱に納めた。その中には他にも同じ赤い色の魔石がすでに数個納められていた。
魔石一つを生成するにもかなりの魔力が必要とされる。いったいどれだけの魔力をシンは持っているのか?いや、こんなに魔石を作らされてシン自身は大丈夫なのか?
目の前で繰り広げられている事にカイルは唖然として固まってしまっていた。
と、その隙に白いローブの男は結界の一部を解いてその中に入ってしまった。
「あっ!!」
慌てて男の後を追おうとしたが後の祭り。男の侵入を許した結界はすでに閉じられてしまっていた。
ダンッ!!
カイルが結界の壁を力任せに叩く。壁はパリリッと青い光をわずかに放っただけで、びくともしない。
ガッ!!
その刹那、カイルは背後から強い力で押さえつけられ、地面に屈伏した。
「バカかお前は!」
半分イラつき半分呆れた口調の聞き慣れた声が、頭の上から降ってきた。
「・・ジェド?」
「バカかお前は、結界を叩くやつがいるか!自分が居ることを教えているようなもんだ!」
小声でジェドがさらに畳み掛ける。
「二度もバカって言うな!」
自分を押さえつけていたジェドの腕を払い除けながらカイルは立ち上がる。
ジェドの姿は見えない。ジェドも認識無効化のスプレーをかけているようだ。
「魔具の効果ももう少しで切れるぞ。姿勢を低くしてろ」
声を圧し殺してジェドが言う。
見ると、かすかにカイル自身の手の輪郭がわずかに分かるようになってきている。
「お前、関わらないって?」
「・・・どっかのうっかり者がへましそうだったからな」
カイルはムッとしたが、反論はしなかった。何だかんだとジェドが隣にいることが少なくとも嬉しく思えた。
「姿が見えるようになる前に中に入るぞ!」
ジェドの声がする方の結界の壁が小さくブンッと唸る。壁がジェドが手に持っている刻印の刻まれたカード状の物に反応して人が一人通れるくらいの空間が空いた。
「それ・・?」
何でそんな便利なものを?とカイルが不思議がる。
「ちょっと、裏ルートでな」
ジェドは情報操作にも精通している。何をやったのかは考えないでおこうとカイルは思った。
「そんなことより、こっから先はお前メインで行けよ。僕はここにはいない存在だからな!」
小声で念を押すようにジェドが言う。
「分かってる」
カイルは今は独り身。ちょっと前までは兄がいたが、死んでしまった。
反面、ジェドには母親がいる。もし、こんな反逆者まがいなことが国にバレたら、その家族まで事は及ぶ事になる。
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