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2.継承
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カカは、10歳になった。
今ではここでのシャーマンとしての日々の生活が、もう当たり前のことになっていた。
ここの所、ちまたでは1~2年ほど前から嫌な噂が流れてきていた。
この地の果てにある海よりもさらに向こうの地から、異種族の人間がやって来た。
そして、その者達は見知らぬ武器を手に好き放題やっていると…。
ただ、カカのいるこの村はかなり内陸にあるためほとんど他の村(部族)との交流はなかった。
しかし、その時は来てしまった。
その日の前の夜までは変わらない日常だった。
そして、明け方に遠くから聞こえる嫌な音でカカは目を覚ました。
まだ、はっきりしない頭で目をこすりながら、その音に集中した。
「…人の声?」
その時、ラウアが突き破る勢いでカカの所に駆け込んできた!
「カカ!早く!シーマ様のところへ!」
シーマは、すでに外に出て村の方を厳しい表情で見ていた。
カカも同じように村の方を見る。
黒煙が上がっている!
「…悲鳴?」
嫌な音と思っていたその正体は、人々の悲鳴だった。
その時、一人の村の男が転がるように駆け込んできた!
「ここは、男子禁制ですよ!」
カリーがそう叫んだが、男はそれを無視して、シーマの前に来ると息を切らしながら言った。
「お逃げください!早く!」
シーマは、その男の肩に手をやり言った。
「私たちはこの村のシャーマンです。さあ、行きますよ」
カカたちが村の方へ行くと、そこはすでに今までに見たことがない景色へと変わっていた。
田畑は踏み潰され、火を付けられ倒壊している住居、逃げ惑う人々、倒れて動かない人々。
そして、馬にまたがった数名の見たこともない格好と容姿をした数名の男たち。
その手には槍とは全く形の違う武器らしき物を持っていた。
カカは後に、その武器はライフルという物で、その男たちが別の大陸から来た人間だと知る。
シーマがその馬に乗った男の一人の前に立ち塞がった。
「去れ!」
いつも穏やかなシーマの声とは思えない、地の底から響くような声でシーマが男たちに向かって叫んだ。
馬上の男たちは、ある者はニヤニヤ嫌な笑みを浮かべながら、ある者はライフルをおもちゃのように掲げながらシーマの方を見る。
「去れ!」
今一度、シーマが叫ぶ。
男たちは面倒くさそうにシーマに近づいて来た。
その時、数名の村人が槍を持って、馬上の男たちに向かって行った!
彼らはこの村の戦士だ。
ダーン!!
一発の銃声が響き、次の瞬間、戦士の一人が前のめりに崩れるように倒れた。
それを見た瞬間、シャーマンの一人のハロナが、素早く馬上の男たちの風上に周り、懐に隠し持っていた乾燥した植物に火を付けた。
その煙が男たちを包み込む。
「ハロナ!いけない!おやめなさい!」
シーマが叫ぶようにとがめたが、ハロナはこの言葉を無視して、すぐさま何やら口の中で唱えだした。
カカは、心の底から恐ろしく震え上がる思いがした。
「呪いの言葉…」
ラウアも胸の辺りをおさえながら呟いた。カカと同じように恐ろしい気配に震えているようだ。
「ああ…」
シーマは、2・3歩ふらつくように前に出たが、そこで立ち止まった。
ハロナが今行っていることは、禁断の儀式。
皆を守り幸せにするためには、その真反対のことも知っておかねばならない。
この「呪いの言葉」とハロナが火を付けた乾燥した植物もその一つ。
この植物は、麻薬の一種で幻覚作用をもたらす。
そして、「呪いの言葉」は悪霊の力を借りて対象の者に死よりも恐ろしい恐怖を与える、と言われている。
そして、何よりも禁断と言われた理由が、その術者もその呪いに飲まれてしまうと言うこと。
知っておかないといけないが、使うべきではないと教えられたこの儀式。
今、目の前でハロナが行っている…。
男たちの様子がしだいにおかしくなり、ある者は泣きじゃくり、ある者は気がふれたように頭を掻きむしり…。
わずかに正気を保っている男が、何とか他の男たちを連れて逃げるように村から去って行った。
と、同時にハロナがその場にうずくまる。
シーマが駆け寄り抱き起こすが、すでにハロナは息をしていなかった。
シーマはハロナの胸に顔をうずめ、小さな声でしぼり出すように嘆いた。
「愚か者…、無茶をしおって…。大地に還るにはまだ早いだろう。」
村の被害は大きかった。村の大半の家屋が焼かれ、田畑は踏み潰され、怪我を負った者、命を落とした者も多くいた。
そして、村はシャーマンを一人失った。
しかしながら、幸いと言っていいかの分からないが、ハロナの命がけの行動で、この村に手を出すと呪われるという噂が異国人に広まっていった。
異国人の襲撃から数年。
村の復興はほとんど終わっていた。
カカは、15歳になった。
あの襲撃の後からシーマは、寝食を忘れたかのようにほとんどの時間を祈りに使っていた。
こちらから声をかけてやっと食事をするという具合だ。
この日もカカは食事を持ってシーマの所へ行き、部屋の前に立った。。
「…?」
いつもなら、シーマの祈りの声が聞こえるはずなのだが、何も聞こえない。
不思議に思いながらもカカは部屋に入った。
「シーマ様!!」
シーマが、薄暗い部屋の祭壇の前で倒れていた!
シーマは、年齢のこともあるのだろうが、かなり体調が良くなかったようだ。
シーマを皆と共に床に寝かす。
こんなに細く小さかっただろうか?そう、シーマのシワシワの手を見ながらカカは思った。
シーマは、薄らと目を開けて順番にシャーマンたちの名前を呼んだ。
そして、呼ばれた者がシーマの口元に耳を近づけると、一人づつに愛のこもった言葉を送った。
カカも呼ばれた。
「…カカ、あなたはここでは一番小さい。これから、まだまだたくさんの色んな事を経験していく」
シーマはカカの胸元を震える手で指し示しながら続ける。
「…いいかい、大切なことは、心に聞いて、…幸せをね」
シーマは、ゆっくりと息を吐いた。
その瞬間、シーマの身体から何か暖かく大きな気配があふれ出て、カカの身体を突き抜けて行った。
シーマは、大地に還った。
そして、カリーがシーマの後を継いだ。
カリーが後を継いでから半年ほど過ぎた。
カリーは、シーマがそうしていたようにその一日のほとんどを使って祈りを捧げていた。
今までは、カリーがカカたち後輩の世話というか指導をしてきた。が、その役目は今はキリと言う30歳代後半のシャーマンが行っている。
カリーは、とても真面目で一つ一つのことをきっちりきっちりと行うタイプだったので、何かしらするときにちょっと手を抜くと、よくカリーに怒られていた。
しかし、キリはわりとおおらかで、あまり注意はしないので、カカはちょっとホッとした。
そんなある日、カリーに祈りの場に集まるように告げられた。
カカたちが集まると、カリーはゆっくりと口を開いた。
「・・次のシャーマンをここに迎えるときが来ました」
カカは思わずラウアの顔を見た。
ラウアは、ニコッと微笑んだ。
・・・新しい私たちの仲間。
カカがここに来て以来、新たなシャーマンは現れてはいなかった。
元々、そんなにここに迎えるシャーマンは現われないとは聞いていたが、今回、約12年ぶりの出来事になる。
シャーマンとして選ばれこの地に来るのは、いわゆる何らかの秀でた力を元々持っている場合と、何かのきっかけでその力が表に現れた者達だ。
以前にシーマにカカはその事について聞いたことがあった。
『その力とは特別な物なの?』
『いいや、特別な物ではないよ。本当は皆が持っている力だよ。違いと言ったら、それを上手く使えるかどうか。ほとんどの者が内に秘めたまま一生を終えるんだよ』
そう、シーマが言っていたことを思い出した。
それから約1ヶ月後、キリとラウアの2人が新たなシャーマンを迎えに行った。
それを見送りながらカカは、自分もこう言う風にして迎えられたのか…、と思ったが、あまりにも小さい頃だったからほとんど覚えてはいない。
数刻後、2人は8歳くらいの女の子を連れて帰ってきた。
名前をミーアと言った。
カリーもカカも優しく迎えたが、ミーアはいきなり全く知らないところに連れてこられて、緊張しているのか怯えているのか、ずっとしたを向いていたままだった。
この地に来たとき、ラウアがそうカカにしてくれたように、一番年少の者のカカが、新入りの面倒を見ることになった。
翌日になってもミーアはおどおどとしていた。
言葉数も少ないし、いつも下を見ている。
何て言うか、怯えていると言うよりは、緊張している?
どうしたらいいものかと、カカが対応に困っているとキリが耳打ちした。
「この子はね、元々人見知りする子みたいよ。両親以外、あまり他人と喋るのが苦手みたいね。だからかしらね、この子は植物と心を通わせるのが得意なのよ」
ミーアが育てた植物は、明らかに他の者が育てた植物よりも大きく・丈夫に・早く成長した。
また、枯れかけた植物がミーアが世話をすることで復活したこともあった。
植物と会話をするとかというのではなく、植物の生命力を最大限に引き出す見たいな感じだろう。
「そっか、そうだよね、人と話すのが苦手で、いきなり両親のいないところに連れてこられたんだもんね。不安だよね」
カカは考えた。人と仲良くするのが苦手なミーア。どうしたらいい?
しばらく考えていたカカは、何かを思い付いたのかどこかに走って行った。
しばらくしてまた帰ってくると、キョロキョロとミーアを探した。
カカは、何かを包み込むように膨らみを付けて手と手を胸の前で合わせている。
広場の片隅で、小さな黄色い花の前でしゃがみ込んでその花を見ているミーアを見付けると、膨らませた手の形はそのままにして、ミーアの所へ駆けていった。
カカが、近付いてきたのに気付き、ミーアはもじもじしながら下を向いた。
「ミーア、これ見て」
ミーアの前にその膨らみを持たせた両手を差し出す。
「見ててね」
そう言って、ゆっくりと両手を開いた。
その両手からは、数羽の小さく可愛らしい蝶がヒラヒラと舞い上がった。
「わぁ…」
ミーアは、その光景に小さな声で歓喜の声を上げた。
蝶はしばらくミーアの周りを飛んでからどこかに飛び去っていった。
それを見送るとミーアは、カカの腕を掴み、
「ね、ね、どうやったの?何で蝶々さんが?」
キラキラと眼を輝かせながら言った。
「別に私がやったんじゃ無いのよ。ただね、ミーアと仲良くなりたいからそのきっかけを作るお手伝いをしてくださいって、蝶々さんにお願いしたの」
「お願い?」
「そう、そうしたら数羽の蝶々さんが手の中に入ってくれて、さっき、ミーアの周りを楽しそうに飛んでくれたのよ」
カカが、にっこりと微笑んだ。
このことがきっかけで、ミーアもカカたちと打ち解け、皆とも仲良くなることが出来た。
新たに1人のシャーマンの仲間が増えた。
ミーアがカカに打ち解けると、他のシャーマンたちと打ち解けるには時間はそんなにかからなかった。
今ではここでのシャーマンとしての日々の生活が、もう当たり前のことになっていた。
ここの所、ちまたでは1~2年ほど前から嫌な噂が流れてきていた。
この地の果てにある海よりもさらに向こうの地から、異種族の人間がやって来た。
そして、その者達は見知らぬ武器を手に好き放題やっていると…。
ただ、カカのいるこの村はかなり内陸にあるためほとんど他の村(部族)との交流はなかった。
しかし、その時は来てしまった。
その日の前の夜までは変わらない日常だった。
そして、明け方に遠くから聞こえる嫌な音でカカは目を覚ました。
まだ、はっきりしない頭で目をこすりながら、その音に集中した。
「…人の声?」
その時、ラウアが突き破る勢いでカカの所に駆け込んできた!
「カカ!早く!シーマ様のところへ!」
シーマは、すでに外に出て村の方を厳しい表情で見ていた。
カカも同じように村の方を見る。
黒煙が上がっている!
「…悲鳴?」
嫌な音と思っていたその正体は、人々の悲鳴だった。
その時、一人の村の男が転がるように駆け込んできた!
「ここは、男子禁制ですよ!」
カリーがそう叫んだが、男はそれを無視して、シーマの前に来ると息を切らしながら言った。
「お逃げください!早く!」
シーマは、その男の肩に手をやり言った。
「私たちはこの村のシャーマンです。さあ、行きますよ」
カカたちが村の方へ行くと、そこはすでに今までに見たことがない景色へと変わっていた。
田畑は踏み潰され、火を付けられ倒壊している住居、逃げ惑う人々、倒れて動かない人々。
そして、馬にまたがった数名の見たこともない格好と容姿をした数名の男たち。
その手には槍とは全く形の違う武器らしき物を持っていた。
カカは後に、その武器はライフルという物で、その男たちが別の大陸から来た人間だと知る。
シーマがその馬に乗った男の一人の前に立ち塞がった。
「去れ!」
いつも穏やかなシーマの声とは思えない、地の底から響くような声でシーマが男たちに向かって叫んだ。
馬上の男たちは、ある者はニヤニヤ嫌な笑みを浮かべながら、ある者はライフルをおもちゃのように掲げながらシーマの方を見る。
「去れ!」
今一度、シーマが叫ぶ。
男たちは面倒くさそうにシーマに近づいて来た。
その時、数名の村人が槍を持って、馬上の男たちに向かって行った!
彼らはこの村の戦士だ。
ダーン!!
一発の銃声が響き、次の瞬間、戦士の一人が前のめりに崩れるように倒れた。
それを見た瞬間、シャーマンの一人のハロナが、素早く馬上の男たちの風上に周り、懐に隠し持っていた乾燥した植物に火を付けた。
その煙が男たちを包み込む。
「ハロナ!いけない!おやめなさい!」
シーマが叫ぶようにとがめたが、ハロナはこの言葉を無視して、すぐさま何やら口の中で唱えだした。
カカは、心の底から恐ろしく震え上がる思いがした。
「呪いの言葉…」
ラウアも胸の辺りをおさえながら呟いた。カカと同じように恐ろしい気配に震えているようだ。
「ああ…」
シーマは、2・3歩ふらつくように前に出たが、そこで立ち止まった。
ハロナが今行っていることは、禁断の儀式。
皆を守り幸せにするためには、その真反対のことも知っておかねばならない。
この「呪いの言葉」とハロナが火を付けた乾燥した植物もその一つ。
この植物は、麻薬の一種で幻覚作用をもたらす。
そして、「呪いの言葉」は悪霊の力を借りて対象の者に死よりも恐ろしい恐怖を与える、と言われている。
そして、何よりも禁断と言われた理由が、その術者もその呪いに飲まれてしまうと言うこと。
知っておかないといけないが、使うべきではないと教えられたこの儀式。
今、目の前でハロナが行っている…。
男たちの様子がしだいにおかしくなり、ある者は泣きじゃくり、ある者は気がふれたように頭を掻きむしり…。
わずかに正気を保っている男が、何とか他の男たちを連れて逃げるように村から去って行った。
と、同時にハロナがその場にうずくまる。
シーマが駆け寄り抱き起こすが、すでにハロナは息をしていなかった。
シーマはハロナの胸に顔をうずめ、小さな声でしぼり出すように嘆いた。
「愚か者…、無茶をしおって…。大地に還るにはまだ早いだろう。」
村の被害は大きかった。村の大半の家屋が焼かれ、田畑は踏み潰され、怪我を負った者、命を落とした者も多くいた。
そして、村はシャーマンを一人失った。
しかしながら、幸いと言っていいかの分からないが、ハロナの命がけの行動で、この村に手を出すと呪われるという噂が異国人に広まっていった。
異国人の襲撃から数年。
村の復興はほとんど終わっていた。
カカは、15歳になった。
あの襲撃の後からシーマは、寝食を忘れたかのようにほとんどの時間を祈りに使っていた。
こちらから声をかけてやっと食事をするという具合だ。
この日もカカは食事を持ってシーマの所へ行き、部屋の前に立った。。
「…?」
いつもなら、シーマの祈りの声が聞こえるはずなのだが、何も聞こえない。
不思議に思いながらもカカは部屋に入った。
「シーマ様!!」
シーマが、薄暗い部屋の祭壇の前で倒れていた!
シーマは、年齢のこともあるのだろうが、かなり体調が良くなかったようだ。
シーマを皆と共に床に寝かす。
こんなに細く小さかっただろうか?そう、シーマのシワシワの手を見ながらカカは思った。
シーマは、薄らと目を開けて順番にシャーマンたちの名前を呼んだ。
そして、呼ばれた者がシーマの口元に耳を近づけると、一人づつに愛のこもった言葉を送った。
カカも呼ばれた。
「…カカ、あなたはここでは一番小さい。これから、まだまだたくさんの色んな事を経験していく」
シーマはカカの胸元を震える手で指し示しながら続ける。
「…いいかい、大切なことは、心に聞いて、…幸せをね」
シーマは、ゆっくりと息を吐いた。
その瞬間、シーマの身体から何か暖かく大きな気配があふれ出て、カカの身体を突き抜けて行った。
シーマは、大地に還った。
そして、カリーがシーマの後を継いだ。
カリーが後を継いでから半年ほど過ぎた。
カリーは、シーマがそうしていたようにその一日のほとんどを使って祈りを捧げていた。
今までは、カリーがカカたち後輩の世話というか指導をしてきた。が、その役目は今はキリと言う30歳代後半のシャーマンが行っている。
カリーは、とても真面目で一つ一つのことをきっちりきっちりと行うタイプだったので、何かしらするときにちょっと手を抜くと、よくカリーに怒られていた。
しかし、キリはわりとおおらかで、あまり注意はしないので、カカはちょっとホッとした。
そんなある日、カリーに祈りの場に集まるように告げられた。
カカたちが集まると、カリーはゆっくりと口を開いた。
「・・次のシャーマンをここに迎えるときが来ました」
カカは思わずラウアの顔を見た。
ラウアは、ニコッと微笑んだ。
・・・新しい私たちの仲間。
カカがここに来て以来、新たなシャーマンは現れてはいなかった。
元々、そんなにここに迎えるシャーマンは現われないとは聞いていたが、今回、約12年ぶりの出来事になる。
シャーマンとして選ばれこの地に来るのは、いわゆる何らかの秀でた力を元々持っている場合と、何かのきっかけでその力が表に現れた者達だ。
以前にシーマにカカはその事について聞いたことがあった。
『その力とは特別な物なの?』
『いいや、特別な物ではないよ。本当は皆が持っている力だよ。違いと言ったら、それを上手く使えるかどうか。ほとんどの者が内に秘めたまま一生を終えるんだよ』
そう、シーマが言っていたことを思い出した。
それから約1ヶ月後、キリとラウアの2人が新たなシャーマンを迎えに行った。
それを見送りながらカカは、自分もこう言う風にして迎えられたのか…、と思ったが、あまりにも小さい頃だったからほとんど覚えてはいない。
数刻後、2人は8歳くらいの女の子を連れて帰ってきた。
名前をミーアと言った。
カリーもカカも優しく迎えたが、ミーアはいきなり全く知らないところに連れてこられて、緊張しているのか怯えているのか、ずっとしたを向いていたままだった。
この地に来たとき、ラウアがそうカカにしてくれたように、一番年少の者のカカが、新入りの面倒を見ることになった。
翌日になってもミーアはおどおどとしていた。
言葉数も少ないし、いつも下を見ている。
何て言うか、怯えていると言うよりは、緊張している?
どうしたらいいものかと、カカが対応に困っているとキリが耳打ちした。
「この子はね、元々人見知りする子みたいよ。両親以外、あまり他人と喋るのが苦手みたいね。だからかしらね、この子は植物と心を通わせるのが得意なのよ」
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また、枯れかけた植物がミーアが世話をすることで復活したこともあった。
植物と会話をするとかというのではなく、植物の生命力を最大限に引き出す見たいな感じだろう。
「そっか、そうだよね、人と話すのが苦手で、いきなり両親のいないところに連れてこられたんだもんね。不安だよね」
カカは考えた。人と仲良くするのが苦手なミーア。どうしたらいい?
しばらく考えていたカカは、何かを思い付いたのかどこかに走って行った。
しばらくしてまた帰ってくると、キョロキョロとミーアを探した。
カカは、何かを包み込むように膨らみを付けて手と手を胸の前で合わせている。
広場の片隅で、小さな黄色い花の前でしゃがみ込んでその花を見ているミーアを見付けると、膨らませた手の形はそのままにして、ミーアの所へ駆けていった。
カカが、近付いてきたのに気付き、ミーアはもじもじしながら下を向いた。
「ミーア、これ見て」
ミーアの前にその膨らみを持たせた両手を差し出す。
「見ててね」
そう言って、ゆっくりと両手を開いた。
その両手からは、数羽の小さく可愛らしい蝶がヒラヒラと舞い上がった。
「わぁ…」
ミーアは、その光景に小さな声で歓喜の声を上げた。
蝶はしばらくミーアの周りを飛んでからどこかに飛び去っていった。
それを見送るとミーアは、カカの腕を掴み、
「ね、ね、どうやったの?何で蝶々さんが?」
キラキラと眼を輝かせながら言った。
「別に私がやったんじゃ無いのよ。ただね、ミーアと仲良くなりたいからそのきっかけを作るお手伝いをしてくださいって、蝶々さんにお願いしたの」
「お願い?」
「そう、そうしたら数羽の蝶々さんが手の中に入ってくれて、さっき、ミーアの周りを楽しそうに飛んでくれたのよ」
カカが、にっこりと微笑んだ。
このことがきっかけで、ミーアもカカたちと打ち解け、皆とも仲良くなることが出来た。
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