半魔転生―異世界は思いの外厳しく―

狐山犬太

文字の大きさ
4 / 53
第一章 異世界にて編

第三話 「自力で」

しおりを挟む
 グウェスとの初めての魔術修行から早一週間。
 家から少し離れた空き地でこっそりと、毎日魔力を練り上げ、感覚を養う。

 魔術を使用するために、現時点で確認できた必要なステップは三つだ。
 ・魔力を練る。
 ・魔素を視認、及び知覚する。
 ・行使する魔術を詠唱する。
 この三つのステップはほぼ完璧にこなせているはずだ。

 が、しかし。
 やはり魔術は行使できない。
 何かが足りない?
 思いだせ、グウェスは何て言っていた。

『魔術を使うには、自分の魔力を使ってこの魔素に触れるんだ。そして、自分が起こしたい現象をイメージして、現実に呼び込む』

 触れる?呼び込む?
 恐らくキーワードはこの二つだろう。

『少し意地悪な教え方だったけどな』

 グウェスはこうも言っていた。
 果たして言葉通りに受け取っていいものか……

 何はともあれ、やってみないことには始まらない。 
 魔力を練る。
 体を風のようなものが包むのを感じる。
 目に魔力を流し、魔素を視認する。

 ここからだ、ここから恐らくは『魔素に触れる』という工程が存在する。
 たしか、グウェスは魔力を使って触れるって言ってたな……
 よし、魔力を動かせないか試してみるか。
 練り上げた魔力を、手に集中して動かせないか試す。

 いや難しいなコレ。
 全然思った通りに動かせないぞ。
 何度もトライしてようやく、指先の魔力を少し動かすことに成功する。
 その頃には息も絶え絶えだったのだが。

「ハァッ……ハァッ……キッツ…………魔力って、練って動かすだけでこんなに疲れるのか……」

 だがこんなところで諦めるわけにはいかない。
 自分にチートじみた能力や恩恵が無いのなら、努力して死に物狂いでも掴んでみせる。
 俺はなんとしても、異世界ファンタジーを満喫するのだ!


 ----

 さらに十日が経過した。
 あれから魔力の操作はかなり上達している。
 今では約2mの場所まで魔力を届かせることが出来る。

 同時に、魔素に触れるということがどういうことなのか、少しずつ理解できてきた。
 魔力が魔素に触れると、まるで炎をあげるまえの火種のようにチリチリと活性化する。
 ならば後は炎を上げるだけだ。

 しかし魔術を唱えるだけで成功するものか?
 現に、今の今まで失敗続きだ。
 グウェスはイメージしろと言っていた。
 呼び込むではなく、呼び起こす。
 事象を描きあげる。
 前世で培った知識と経験、そして妄想力を結集しろ。
 俺なら出来る。

 目標は正面の小さな岩。
 手本は既に見ている。
 集まる魔素に狙いを定め、魔力を練る。
 魔素に触れる感覚が伝わってくる。
 ここだ。
 イメージは槍のように突き出る岩。
 鋭利な尖端、大きくなくてもいい、小さな、タケノコの様な物でいい。
 息を吸い、吐く。

岩の槍ストーンランス

 唱えたと同時に、伸ばした魔力と魔素が結びつき形を成すのが分かる。
 種火だった魔素は、俺の魔力を糧に炎へと変わる。
 炎は俺のイメージをなぞるようにして形を成し、質量を得る。
 そして、そこには小さな、およそ20cm程の槍とはお世辞にも呼べないものが突き出ていた。
 目標の岩は割れるどころか小さく欠けるだけ。

 だが。
 込み上げる。
 充足感にも似た、これは、達成感か。

「やった……やったぞ!!出来た!出来たんだ!!」

 年甲斐もなくはしゃいでしまう。
 いや、五歳か。
 まあいいさ、嬉しいものは嬉しいんだ。
 とうとう魔術が使えたんだ、今なら何だって出来そうだ!
 と、
 湧き上がる全能感とは裏腹に、冷静に分析を始めるサラリーマンの俺がいた。

 成功したとて油断は禁物だ。
 『魔術』という技術についての疑問点を整理してみよう。
 グウェスの時とは違って、槍を形成するまでの時間に差があった。
 これは恐らく『慣れ』の問題だろう。
 回数をこなせば上達するようなものだと、直感が告げている。
 どちらにしてもこの疑問は後々わかる事として、浮上した最大の疑問。

 遠くに離れた場所への魔術の行使だ。
 グウェスが初めて槍を見せてくれた時は、危険を考慮してか岩までの距離は約5m程だった。
 グウェスはそこまで魔力を伸ばしていたのか?
 答えは恐らくノーだ。
 それではあまりに非効率だ。
 ではどうやって?
 魔術は魔素と魔力の結びつきなくして成立しない。

「むぅぅぅ~ん…………」

 唸りながら無意識に練った魔力を前方に伸ばし、疲労感に襲われ中断する。
 待て。
 中断した際に切り離した魔力が、消失するまでの僅かな時間漂っている。
 そうだ、伸ばすんじゃない、飛ばすんだ!
 善は急げ、物は試しだ!

 イメージしろ。
 魔力を手のひらに集中させ、前方の岩に向かって、押し出す様に射出する。
 体から魔力を切り離すのは想像以上に困難だった。
 ゆっくりとピストンで押し出されるようにして、手のひらから小さな魔力の塊が前方へと飛んでいく。
 大きさにして10cm、速度にして時速10kmも出ていない。
 出来た! 不格好極まりないが成功だ!
 もう一度、今度は魔力に詠唱と術のイメージを乗せて飛ばす。

岩の槍ストーンランス!」

 射出された魔力は目標とした場所へ至ると同時に、イメージ通りの小さな槍を成した。
 成功だ、大成功だ。
 自力で考え、答えに至った。
 先程とは比べ物にならない達成感が身を包む。
 前世で経験したどんな成功よりも気持ちいい。
 やはり今の俺なら何でも出来る! 

 そんな思考に駆られ、手のひらに先刻よりも更に多くの魔力を、注げるだけの魔力を注ぎ詠唱と共に撃ち出す。

 ズガッッッッ!!!!

 と大きな音を立て3mに届くかという巨大な槍の完成を見届けると同時に、俺の意識はプツリと途切れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

酔っぱらったせいで、勇者パーティーを洗脳してしまった

透けてるブランディシュカ
ファンタジー
悪友のせいで酔ったら。(※重複投稿しています)仲仁へび

うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや

静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。 朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。 「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。 この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか? 甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

処理中です...